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第3章・君のとなりに2

「理苑……何したん?」

「あいつな。就職の話になった時に言うたらしいねんけど……祥太郎と結婚するって」

祥太郎は、ヒュウっと喉を鳴らした。

来斗からのその言葉に、衝撃で心臓が止まるかと思った。

最早、理苑の両親だけでなく、来斗も自分達の事を知っている。

全身から血の気が引いていった。

「祥太郎……、俺はな。察しはついてるよ。お前、理苑に押しきられたやろう?
無理矢理、迫られたんちゃうか?」

「初めは……そうやったけど……」

「あいつ、昔からお前への独占欲はハンパなかったからな。俺はお前が痛ましいてしゃあない」

「来斗くんは、俺らの事、怒らへんのん?」

来斗は笑って、祥太郎の頭をグシャグシャと強引に撫でた。

「俺にとって、理苑も祥太郎も、大事な弟や。何があっても、それは変わらんよ」

祥太郎は涙腺から涙が溢れて来そうになるのを、ぐっと堪えた。

言葉に詰まる祥太郎をなだめるように、来斗は立ち上がって、祥太郎を背後から抱き締めた。

「理苑、親父にボコボコ殴られたみたいやからな……。祥太郎に傷見せたら心配さすかと思って、来られんのかもな。お前は動き難いやろから、俺が探しておくわ」

「来斗くん、ありがとう」

「また、連絡するから。理苑から連絡あっても、普段通りにしといたって?」

来斗は、あまり多くを語らずに帰って行った。

理苑の両親に2人の関係がバレたとあれば、繋がりのある母親同士から祥太郎の母へも何か伝わっているかも知れない。

祥太郎は重い足取りで、久しぶりに実家へ帰る事にした。

うちにバレたらどうなるだろう?、そう考えた事がない訳ではなかったが、現実に直面すると尻込みする。

二人にその感覚はなかったが、世間から見れば理苑と祥太郎の関係は『ゲイのカップル』という特殊なものだ。

何と切り出したら良いものか悩みながら実家への道のりを歩いていたら、前から男女のカップルらしき二人が歩いてきた。

とっさに、祥太郎は歩道橋下に隠れた。

理苑と背の高い女性だった。

隣の女性を、どこかで見た事があると考えていたら、中学校時代に理苑と噂になった女子で、同じバスケ部だった高橋だと思い至った。

何故、今頃、理苑は高橋と歩いているのだろう?

確かに家はお互いに近所だが、理苑は家出中のはずだ。

盗み見ると、高橋が嬉しそうに理苑の腕に、自らの腕を絡ませているのが見えた。

頭の中を、ガンガンと物凄い音の鐘がなる。

実家に帰るはずの祥太郎だったが、とてもまともに親と話せそうになくて、その道をUターンした。

真っ暗な自分の家に戻ると、郵便物の中に中学の同窓会のハガキを見つけた。

しばらく、そのハガキを見つめていたが、先程の理苑と高橋の姿が過って、そのハガキをゴミ箱に捨てた。
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