第3章・君のとなりに2

近頃、理苑が家に来ていない。

メールで『大学のレポートが忙しいから、しばらく来れない』と連絡があったが、今までどんなにバイトが忙しくて帰りが遅くなっても帰って来ていたので、おかしいとは思っていた。

理苑の気持ちを疑う事はなかったが、何かあったのではないかと感じていた。

だが祥太郎は、理苑が自分から言いたくなるまで待とうと決めていた。

ちょうど、就職や行事で何かと忙しい時期だ。

急がすような事はしたくない。

そうして、理苑が来なくなって2回目の週末、祥太郎の家のインターフォンが鳴った。

扉を開けると、長身の男が立っていた。

「来斗くん?」

「久しぶり。祥太郎。……理苑、いてるか?」

「いや……、ここん所、来てなくて……。てか、中に入って?」

祥太郎は家に入るように促した。

靴を脱ぎ、来斗が部屋に入ると、その長身のお陰で部屋がぐっと狭く感じる。

理苑がいた時と同じ感覚に見舞われて、祥太郎は寂しく感じていた自分に気が付いた。

コーヒーを来斗に差し出すと、今度は祥太郎から聞き出した。

「理苑、家に帰ってないん?」

「いや、今までも帰ってなかったみたいなんやけどな。俺はもう、実家におらんから知らんかってんけど……」

来斗が、ため息をついた。

「理苑、親父とケンカしたみたいやねん」

「おじさんと?」

そう言えば、来斗も若い頃、若気の至りで父親とケンカしては、よく家を飛び出していたのを思い出した。

そんな来斗も今では父親の後を継ぎ、家庭では妻と2人の子供を溺愛する『良き父』だ。

「理苑な、親父の会社の経理やるつもりで今の大学入ったんやけど……。親父が『お前とはもう他人や!出ていけ!』って勘当したらしくて」

初耳だった。

確かに、理苑と来斗の父は厳しい人だったが、勘当ともなると余程の事だ。
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