第2章・君がいるだけで9

その後は、ずっとホテルで過ごした。

というか、祥太郎の体中に散らばった、理苑のつけた赤い執着の印のお陰で、海どころではなくなってしまったのだ。

食べるのと風呂以外は、ほとんどベッドの中にいた。

時間が分からなくなる程に、二人は目眩く快楽の世界に身を投じていた。

祥太郎は理苑の発情するがままに、穿たれ、体内を蹂躙され、自らも尻を振りたくった。

拒絶は出来なかった。

それどころか、狂ったように求められる事に、体は狂喜していた。

たった1日で、祥太郎の体は別の生き物に変わってしまった。

だが、最後の夜だけは2人は穏やかに過ごした。

祥太郎の疲労が限界を極めていたので、触れ合うだけにした。

しかし、それは挿入伴わない分、感情の充足感はこれ以上なく、甘い空気の密度も濃く。

それは緩やかに祥太郎の気持ちを、理苑に向かせるには有意義な時間だった。

そんな幸せな時間は、永遠に続くように思えた。



帰りの電車でも、理苑からの溢れんばかりの熱情は、空気を通して締め付けるように祥太郎の体を取り巻いていた。

「祥太郎、夏休みが終わったら、オレ京都の学校に帰るけど……」

「うん……」

「週末には帰ってくるし。ホンマは毎日帰って来たいけど」

「……勉強せぇや。アホ」

「いやっ。冷たい!オレはずっと、一緒におりたいのに」

「学生の間はしゃあないやろ」

祥太郎は、車窓の流れる景色を見ながら、自分達の未来を思った。

「理苑は、家から通える大学を希望してるんやろ?俺、就職してしばらくしたら独り暮らしするから……」

「え?同棲してくれんの?」

「学生がこれ以上、親に甘えんな。……でも……たまには、家に泊まりに来てもいい……」

理苑はまるで、プロポーズされたように喜んだ。

離れて暮らす2人は、抱き合える時間がほとんどなかったが、その分、それを補うように理苑は熱烈に祥太郎を愛で満たした。

周りに隠れて求め合うのには、逆に2人を燃え上がらせ。

祥太郎も、理苑程に激しくはなかったが、確実に自分の中で『幼なじみ』から違うものに変化しているのを感じていた。
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