第2章・君がいるだけで4

祥太郎が直輝と合うのは、終業式以来だった。

「祥くん、最近、理苑と会うてるんか」

「うん。何や、直くん、また機嫌悪くなるんやめてや」

「そんなんならんわ。あれは昔の事やろ。今、考えたら僕も大人げなかった。あの時は、理苑がいつもお前を傷付けてるんような気がして、ムカついてたんや」

「え?そうなん?」

初めて聞く、直輝の本心だった。

「アイツ、祥くんの体調とか気持ちとか何も考えんと、家に押し掛けてきてガーガー騒いでたやろ?昔から祥くんを振り回してるみたいで腹立っててん」

「俺、理苑にそんなん思った事ないで」

「分かってる。それにアイツもお前の事、大事にしてるんも今は理解出来るし。それこそ理苑とケンカ腰やった僕こそ、祥くんを困らせてたな。……ゴメン」

「そんなん良いけど……。そしたら今度、3人で会うても怒らんでおれる?」

「会うてもエエよ。理苑が嫌やなかったら」

あまり笑わない直輝が珍しく笑った。ロボット製作は順調だった。

正直言うと、理苑の手伝いはあまり手助けにならなかったが、二人が過ごす時間の楽しさが、理苑の不器用さを感じさせないでいた。

時々、直輝も参加してくれた。

初めはギクシャクしていた直輝と理苑だったが、どちらからも歩み寄る形で、以前のような険悪さは無くなっていった。

「直輝、スゴいな。何でそんなに配線が分かるんや?」

「ていうか、理苑が不器用過ぎるやろ。僕がセッティングしていった後、それ崩さんといてな」

「うっ……もう、そこは触らんようにしとく」

2人が自然に話すようになって、一番嬉しかったのは、恐らく祥太郎だ。

2人が仲良く出来ない事をいつも辛く思っていた。

こうして和解して、高校最後の作品を3人で作れて良かった。

上手くいけば、直輝が付き合いのある教授に見て貰えるらしい。

「俺、何か食うもん、持ってくるわ」

そう言って、祥太郎は台所に向かった。

直輝と理苑が、久しぶりに2人きりになった
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