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第2章・君がいるだけで3

ライブはオールスタンディングだった。

祥太郎が隣を見ると、アニメソングしか聴いた事のない理苑は、勿論、こんな場所に来た経験もなくて、周りをキョロキョロと見回しては騒いでいた。

「なぁ、祥太郎!あの人、スゴい格好やな!全身、皮でギラギラ光ってる!てか、男ばっかりやな。いっそ心地良い位やわ」

「お前はスタンディングに向いた身長やなぁ。そんだけ背ぇ高かったら、見えん事ないもんな」

「祥太郎、肩車、したろか?」

「いらんわ!」

祥太郎は、憎まれ口を叩く理苑の背中を軽く殴った。

開演5分前になったので、ホール内に入った。

祥太郎は拳を振り上げたり、激しくヘドバンするタイプではなかったので、一階の後ろの方で観る事にした。

それでも結構な人でギュウギュウだった。

「祥太郎、大丈夫か?」

「お前な、俺、もう健康やねんで。こんなんで今から悲鳴上げてたら、2時間以上あるのんに持たんやん」

「え?2時間もあんの?」

「そんなすぐ終わるライブに、こんな高い金額の金、出すか!」

照明が一瞬真っ暗になって、音楽が流れ始めた。

始めは良かったが、スタンディングライブだけあって、だんだん人がひしめき合って次第に自分の体の自由がなくなってきた。

理苑と離れてまうかな……と思っていたら、力強い腕が祥太郎の体を引き寄せた。

背中が温かくなる。

理苑が後ろから、自分を抱き寄せている事に気が付いた。

やがて、耳に温かな息がかかるのを感じた。

祥太郎は誰かに見られたら……と心配になったが、激しい音楽に酔いしれてる人々は、二人を気にする事なく、頭を振りまくっていた。

祥太郎は、自分の鼓動の音が耳までガンガン響いて、その後の音楽が最後までまともに聴こえる事はなかった。
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