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第2章・君がいるだけで2

「しかし、お前、ホンマスゴいな。俺、途中から何しにここに来たんか分からんようになったわ」

「え?何が?」

「女の子からのナンパやん。俺、こんなんあったん、初めてやわ」

昼食はラーメンを食べたいという理苑に合わせて、暖簾をくぐった。

ラーメンだけを頼んだ祥太郎と違い、相変わらずの大食漢な理苑は、ラーメンとチャーハンと餃子を1人で注文していた。

「そんなんどうでも良いし。せっかく祥太郎と来てんのに、ホンマ面倒くさい」

にこやかに断っていた理苑だったので、予想外の厳しい反応に驚いた。

「お前な。世の中のモテない男からしたら、羨ましい事やと思うんやけど」

「祥太郎は女から声掛けられたら嬉しいか?」

真剣な眼差しで聞いてきたので、祥太郎も誤魔化す訳にいかないと思い、本心を答えた。

「前にママにも『彼女、出来たら連れてきて』って言われたから、言うた事あんねんけどな。俺、正直言うたら、付き合うとか結婚とか、考えられへん。……て言うか『女を好きになる』って事が、俺の中にないねん。これからも多分、ないと思う」

「今まで、好きになった子、いてないんか……」

「うん。おらんねん。俺、病気してた期間長いし、そういう感情が欠落してるかも知れへん」

それは正直な気持ちだった。

祥太郎は小さい頃から病気がちなのもあって、あまりにも趣味に力を注いでしまうからか、恋愛に振り回される気持ちが分からなかった。

人間的に欠落しているかな、と悩んだ事もあったが、こればかりは自分でもどうしようもない。

そう言い切ってしまうのには、理苑も眉をしかめた。

「祥太郎、人を好きになるん、辛い事もあるけど、めっちゃ楽しい事もあるで?」

良く考えたら、理苑とこんな話をするのは初めてだった。

そして、こんなに真摯な理苑も初めてだった。

「お前、好きな子おるんか」

「オレ、こう見えて、めっちゃ一途やねんで」

ニコニコと答えてきたものだから、祥太郎は「はい、はい」と適当な返事で返した。
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