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第1章・君をいつの間にか6

「オイ、オイ。世の中はクリスマスで盛り上がってんのに、シケたツラ、してんな」

リビングでテレビをぼんやり眺めながら寝そべる理苑の足を、来斗が蹴りながら言った。

「うっさいな!来斗も家にいてるやんか」

「俺は夕方から彼女と約束してるんです~。独り身の理苑くんとは違います~」

「はぁ~?何人のオンナと約束してはるんですか~?お兄様~?」

「失礼な事言うな!俺はもう、本命一人に絞ってるわ」

来斗は理苑の隣のソファーに腰掛けた。

190センチを越える来斗よりは、若干、低い理苑だが、二人が揃うだけでリビングが狭く感じる。

ここに、さらに長身の父が加わると「空気が薄くなる!」と言って、母は眉間にシワを寄せるのが常だった。

「理苑、お前最近、祥太郎とつるんでないらしいやん?あれだけ祥太郎、祥太郎って言うてたお前やのに、彼女でも出来たんか」

「そんなんおらんから、クリスマスやのに家でゴロゴロしてんねんやんか。察しろや、来斗!」

「お前、見た目を裏切る三枚目やからか?モテへんねんな~。俺が中3の時なんかは、女が離してくれんかったわ」

「……それ……今の彼女に言うたろか?オマエも今日は独り身になるで」

「……やめてください」


来斗と理苑は、並ぶと自然にボケ突っ込みが成立してしまう。

それは仲の良い証拠でもあった。

「さっきな、家帰る途中で、祥太郎に会うたで。何か深刻な顔してるから、クリスマスやし、彼女でも待ってんのと……」

「そ、それっ!ど、どこで会うたんやっ!」

「何焦ってんねん、お前……。そこの丸山公園やん。今日はホワイトクリスマスになるらしいから、あいつ、体弱いのに外出てて大丈夫なんかと……」

「……出掛けてくる!」

さっきまで、トドのように寝そべっていた理苑は、すっくと立ち上がった。

「お前もちゃんと上着、着て行けよ~。……って、オイ!俺の上着、着て行くなや!」

理苑は家を飛び出した。
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