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第1章・君をいつの間にか5

祥太郎は昼の英語の授業から登校してきた。

あれだけ痩せていた体は、平均的な体型に戻っていたが、バスケ部にいる自分と比べたら、20センチは差が付いているように見えた。

それでも、あの病的な見た目からは見違えるようで、色白には変わりなかったが、小学生の時の健康的な祥太郎を思い出させた。

思わず嬉しくなって、理苑は祥太郎に駆け寄った。

「久しぶりやな!祥太郎!元気になったんか」

「うん。あんだけ酷かった頭痛が、全然無くなってん。だから、車椅子も乗らんでも歩けるようになって……」

「ちょっと前から、マシになってたんやろ?何で連絡くれへんかってん。夏祭りも来てたって、他の奴に聞いて……」

理苑がそう言うと、祥太郎はうつ向いてしまった。

「声……掛けようかと思ったんやけど、理苑、女の子といてたから、邪魔したらアカンかと思うて……」

冷水を浴びさせられたように、血の気が引いた。

あの時は、バスケ部のメンバーと出掛けていた。

ただ、言われてみれば高橋を筆頭に、女子からやたら絡まれていた気がする。

祥太郎には、それが彼女とデートしてるように見えたのだろうか。

そう思うと、背中に冷水を浴びたように震え上がった。

「いや、ちゃうねん。それ、部活の奴やろ?オレ、バスケ部のみんなと行ってたし」

「理苑は昔から人に囲まれてるもんな。幼稚園の時からアイドルみたいやった」

「ちょっ……祥太……」

言い掛けた理苑の言葉を遮るように、午後の授業が始まるチャイムが鳴った。

それは何だか祥太郎の方から、2人の間に線引きされたような気がした。



久々に訪れた学校の授業は、受けた事のない英語だったからというだけではなく、まるで内容が頭に入ってこなかった。

理苑に対して、何だかひがみっぽく言ってしまった。

小さい頃から人気者の理苑は、常に人の輪の中心にいた。

彼がやたらに自分を構ってくれるのは、幼稚園の入学式で泣き止まない自分の世話をしたきっかけから、クセのようになってるだけだ。

理苑と祥太郎は、趣味も話題も何もかも合わない。

それに気が付いたのは、小学生の時に女子から「祥太郎の面倒みて、いつも大変ね」と言われている理苑を見てからだ。

確かに、理苑には自分と付き合って、メリットは何もない。

どうせ成績も良くて、部活でも活躍している理苑と、まるで勉強をする機会のなかった自分とは、進路が分かれる。

もうそろそろ、優しい理苑を自分の世話係から解放してやりたい。

祥太郎は、そう改めて実感する。

久しぶりの学校は楽しみで仕方なかったはずなのに、やけに時間の流れが遅く感じた。
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