第3章・昇華4
4日目は、ヴァリューカの街中をパレードで廻る。
行く先々で花や紙吹雪で出迎えられて、ずっと男である引け目を感じていた光司は、人々の祝ってくれる姿を目の当たりにして、喜びの涙を流した。
「俺、スウェイドの正室になるなんてダメだって思ってた」
「世界中が寛容な訳ではないとは思うがな」
「それでも、喜んでくれる人もいて良かった」
「私は世界中が反対しても、お前以外とは結婚しない」
光司の化粧が涙で何度も崩れるので、リエカはそれを直すので大わらわだ。
ヴァリューカの王子が迎えた花嫁は男性であると、国々が興味半分で報道する事もあったが、光司の容貌が荘厳な衣装により性別不明な妖しさを漂わせて、総じてその美しさを報じるのがほとんどだった。
最後の宴が続く中、スウェイドは疲れて倒れる寸前の光司を連れ出して、夜の海辺に腰を下ろす。
スウェイドの膝の上で、グッタリとなった光司は、疲労困憊といった状態だった。
「ご苦労だったな。コウジ」
「これ、本当に行事、減らしたのかよ……。これ以上に色んな事をしないとならない女の人の式って、どんなんなんだよー」
「一応、儀式は減らして宴に変更したんだがな。お前が動かなくていいように」
「もう死ぬ。もう二度と結婚式なんてしない」
「当たり前だ。お前に私以外の人間と、結婚式なぞ挙げさせるものか」
スウェイドはキスをしようとして、やめた。
「これだけ、顔を塗りたくられたら、キスも出来ん」
「仕方ねーだろ。何か『不思議感を出す』とか言って、リエカさんが塗りたくったんだからさ……。俺、笑ったら、顔面の化粧がバリバリ剥がれ落ちそうで怖ぇよ」
スウェイドがクスクスと笑った。
「笑うな。俺は顔面が固まってるから、笑えねーんだよ」
海の小波が、二人の疲れを癒やす。
出会ってから、二人きりでこんなにゆっくり時が流れるような時間を過ごすのは、初めてかも知れない。
海上に浮かぶ月は、ゆらゆらと揺れ、緩やかに揺蕩っていた。
「コウジ、お前に出会えて良かった」
「あんたと出会った時の俺は、薄汚れてボロボロだったけどな」
「そんなボロボロのお前に、私は一目惚れだった訳だ」
「……恥ずかしいっ!最近のあんたは、エロいだけじゃなくて、言う事が何かギザで、恥ずかしいっ!」
「これからも一生、言い続けてやる。安心しろ」
あんなにスウェイドの愛を信じられなかったのが、嘘のようだ。
今では、光司が憤死しそうな程、毎日、これでもかと愛を囁いてくる。
「今夜、やっとお前を抱けるんだな。……私は欲求不満でおかしくなるかと思った」
「ま……今までのあんたの素行から考えると、こんなに禁欲したのは初めてだろうしな。お疲れさん」
「他人事みたいに言うな。お前もだ」
確かに、光司もこの魅力的な男を前にして、お預けされている時間が長すぎて苦しかったが、毎日のように愛の言葉を囁かれていたので、幸福感には満ちていた。
しかし、スウェイドは光司を見る度に、毎回、猛獣の如く襲いかからんとするものだから、アッシュが付きっきりになって手綱を引いていた。
そのあまりの過剰労働には、『お前のせいなんだから、結婚式までのアッシュの給料を倍にしろ』とスウェイドに言い付けた。
今日でやっと、式が終わる。
「今晩は、いっぱい気持ち良くしてくれるんだろ?俺、久しぶりだから、痛いの、嫌だぞ?」
「痛くなんぞするか。今晩から明日も丸1日、時間があるんだからな。ヤリまくってやる」
「あんたの、その意気込みが怖いよ ……」
「くそう……。今すぐここで、お前に挿れたい」
「馬鹿!まだ、式終わってないし、海岸でヤる馬鹿がいるか!……あ、いたわ……。……ここに」
海辺に波の音と、二人の笑い声だけが響いていた。
行く先々で花や紙吹雪で出迎えられて、ずっと男である引け目を感じていた光司は、人々の祝ってくれる姿を目の当たりにして、喜びの涙を流した。
「俺、スウェイドの正室になるなんてダメだって思ってた」
「世界中が寛容な訳ではないとは思うがな」
「それでも、喜んでくれる人もいて良かった」
「私は世界中が反対しても、お前以外とは結婚しない」
光司の化粧が涙で何度も崩れるので、リエカはそれを直すので大わらわだ。
ヴァリューカの王子が迎えた花嫁は男性であると、国々が興味半分で報道する事もあったが、光司の容貌が荘厳な衣装により性別不明な妖しさを漂わせて、総じてその美しさを報じるのがほとんどだった。
最後の宴が続く中、スウェイドは疲れて倒れる寸前の光司を連れ出して、夜の海辺に腰を下ろす。
スウェイドの膝の上で、グッタリとなった光司は、疲労困憊といった状態だった。
「ご苦労だったな。コウジ」
「これ、本当に行事、減らしたのかよ……。これ以上に色んな事をしないとならない女の人の式って、どんなんなんだよー」
「一応、儀式は減らして宴に変更したんだがな。お前が動かなくていいように」
「もう死ぬ。もう二度と結婚式なんてしない」
「当たり前だ。お前に私以外の人間と、結婚式なぞ挙げさせるものか」
スウェイドはキスをしようとして、やめた。
「これだけ、顔を塗りたくられたら、キスも出来ん」
「仕方ねーだろ。何か『不思議感を出す』とか言って、リエカさんが塗りたくったんだからさ……。俺、笑ったら、顔面の化粧がバリバリ剥がれ落ちそうで怖ぇよ」
スウェイドがクスクスと笑った。
「笑うな。俺は顔面が固まってるから、笑えねーんだよ」
海の小波が、二人の疲れを癒やす。
出会ってから、二人きりでこんなにゆっくり時が流れるような時間を過ごすのは、初めてかも知れない。
海上に浮かぶ月は、ゆらゆらと揺れ、緩やかに揺蕩っていた。
「コウジ、お前に出会えて良かった」
「あんたと出会った時の俺は、薄汚れてボロボロだったけどな」
「そんなボロボロのお前に、私は一目惚れだった訳だ」
「……恥ずかしいっ!最近のあんたは、エロいだけじゃなくて、言う事が何かギザで、恥ずかしいっ!」
「これからも一生、言い続けてやる。安心しろ」
あんなにスウェイドの愛を信じられなかったのが、嘘のようだ。
今では、光司が憤死しそうな程、毎日、これでもかと愛を囁いてくる。
「今夜、やっとお前を抱けるんだな。……私は欲求不満でおかしくなるかと思った」
「ま……今までのあんたの素行から考えると、こんなに禁欲したのは初めてだろうしな。お疲れさん」
「他人事みたいに言うな。お前もだ」
確かに、光司もこの魅力的な男を前にして、お預けされている時間が長すぎて苦しかったが、毎日のように愛の言葉を囁かれていたので、幸福感には満ちていた。
しかし、スウェイドは光司を見る度に、毎回、猛獣の如く襲いかからんとするものだから、アッシュが付きっきりになって手綱を引いていた。
そのあまりの過剰労働には、『お前のせいなんだから、結婚式までのアッシュの給料を倍にしろ』とスウェイドに言い付けた。
今日でやっと、式が終わる。
「今晩は、いっぱい気持ち良くしてくれるんだろ?俺、久しぶりだから、痛いの、嫌だぞ?」
「痛くなんぞするか。今晩から明日も丸1日、時間があるんだからな。ヤリまくってやる」
「あんたの、その意気込みが怖いよ ……」
「くそう……。今すぐここで、お前に挿れたい」
「馬鹿!まだ、式終わってないし、海岸でヤる馬鹿がいるか!……あ、いたわ……。……ここに」
海辺に波の音と、二人の笑い声だけが響いていた。