第3章・昇華4
スウェイドと光司の結婚式は、ありとあらゆる満開の花に、満ちていた。
大学時代をアメリカで過ごしたスウェイドは、かなり前衛的な考えの持ち主で、今までの形式張った婚礼を撤廃し、華美な式を全面に押し出してテレビ放映する事で、ヴァリューカのイメージアップをも狙っていた。
何より、光司が男性な事もあって、女性ならではの宗教的行事は廃して、無宗教の光司への負担も減らした。
出来るだけ簡素に、華やかに。
それは、花嫁の祈りの儀式から始まりを告げた。
沢山の花火が打ち上げられ、人々は祭りのように踊り、酔いしれる。
王族や来賓の者達も、朝から晩まで、ダンスや歌や余興の宴に興じた。
「あ~……腹減った~」
「コウジ、声が大きい」
「だって、何にも食べてねーんだよ。俺
……。こんなに長い時間、何も食べてねーの、初めてだから、腹がグーグー、グーグー鳴って……」
「もう少しの辛抱だ」
スウェイドも光司も、白地に金の刺繍を施した婚礼衣装に身を包み、厳かに座していたが、二人の会話が報じられれば飛んでもない事になるであろう内容でだった。
「なぁ、俺達、睡眠時間あんの?」
「4時間は寝れるだろう。何だ?私と寝たいのか?」
「あんたと寝たら、睡眠時間、ゼロになるじゃんかよ……」
枕が別で良かったと心底思う光司だった。
灼熱の国ヴァリューカでの、この婚姻衣装は暑くて重く、光司の体から かなりの体力を消耗させている。
光司の手足はヘンナで紋様を描かれ、女性とも男性とも言えない中性的な衣装と、その小柄な体型と、日本人離れした大きな瞳に化粧を施す姿は、まるで物語の中の妖精のようであった。
2日目も神々に祈りと供物を捧げる事から始まり。
これでも減らしたのか?と光司が疑問に思う程の行事や儀式を終えて。
3日目には、光司は何度、衣装替えがあったか分からなくなってしまった。
これまでに何度も試着はしていたが、その中で何着か選んで着るものだと思っていた。
今になって思うと、試着したほとんどを着ているのではないかと思う程に着せ替えられた。
おまけにその度に、写真撮影があって、ポーズを取らされる。
スウェイドは光司が座っている間も、常に動き回っている。
恐らく、光司も動かなければならないだろう時も、1人で応対してくれていたのがありがたかった。
故に、スウェイドと離れている事も多かったが、常にリエカが側にいてくれたので、不安にならずに済んだ。
最後の儀式の時には、光司の意識は朦朧としていて、スウェイドが隣で支え、手を引いてくれなければ歩く事もままならない。
誓いの言葉は、リエカと何回も何回も練習したので、倒れそうな状態でも口からスラスラと出て来た。
3日目の夜にやっとあらゆる儀式を終えて、披露宴となった。
町中が花火で彩られ、人々は祝杯をあげた。
スウェイドは『容姿端麗な王子』として世界中に名を馳せていたので、更にその結婚式となると、あらゆる国のテレビ局が押し寄せて報道合戦となる。
光司は自分の事だけで、いっぱいいっぱいだったので知る事はなかったが、自分が世界中のテレビに映っている現実を知ったら卒倒するだろう過熱具合だった。
あらゆる国々からの来賓に、挨拶をするスウェイドと光司だったが、国王の代理や、大使や、首相、大統領といった、会った事もない高貴な身分の人々に光司は緊張の連続で、頭を下げるのがやっとだった。
ほとんど隠居の身で、滅多に表舞台に出て来ない王に対面した時は、緊張が頂点に達して、直後に倒れてしまった。
大学時代をアメリカで過ごしたスウェイドは、かなり前衛的な考えの持ち主で、今までの形式張った婚礼を撤廃し、華美な式を全面に押し出してテレビ放映する事で、ヴァリューカのイメージアップをも狙っていた。
何より、光司が男性な事もあって、女性ならではの宗教的行事は廃して、無宗教の光司への負担も減らした。
出来るだけ簡素に、華やかに。
それは、花嫁の祈りの儀式から始まりを告げた。
沢山の花火が打ち上げられ、人々は祭りのように踊り、酔いしれる。
王族や来賓の者達も、朝から晩まで、ダンスや歌や余興の宴に興じた。
「あ~……腹減った~」
「コウジ、声が大きい」
「だって、何にも食べてねーんだよ。俺
……。こんなに長い時間、何も食べてねーの、初めてだから、腹がグーグー、グーグー鳴って……」
「もう少しの辛抱だ」
スウェイドも光司も、白地に金の刺繍を施した婚礼衣装に身を包み、厳かに座していたが、二人の会話が報じられれば飛んでもない事になるであろう内容でだった。
「なぁ、俺達、睡眠時間あんの?」
「4時間は寝れるだろう。何だ?私と寝たいのか?」
「あんたと寝たら、睡眠時間、ゼロになるじゃんかよ……」
枕が別で良かったと心底思う光司だった。
灼熱の国ヴァリューカでの、この婚姻衣装は暑くて重く、光司の体から かなりの体力を消耗させている。
光司の手足はヘンナで紋様を描かれ、女性とも男性とも言えない中性的な衣装と、その小柄な体型と、日本人離れした大きな瞳に化粧を施す姿は、まるで物語の中の妖精のようであった。
2日目も神々に祈りと供物を捧げる事から始まり。
これでも減らしたのか?と光司が疑問に思う程の行事や儀式を終えて。
3日目には、光司は何度、衣装替えがあったか分からなくなってしまった。
これまでに何度も試着はしていたが、その中で何着か選んで着るものだと思っていた。
今になって思うと、試着したほとんどを着ているのではないかと思う程に着せ替えられた。
おまけにその度に、写真撮影があって、ポーズを取らされる。
スウェイドは光司が座っている間も、常に動き回っている。
恐らく、光司も動かなければならないだろう時も、1人で応対してくれていたのがありがたかった。
故に、スウェイドと離れている事も多かったが、常にリエカが側にいてくれたので、不安にならずに済んだ。
最後の儀式の時には、光司の意識は朦朧としていて、スウェイドが隣で支え、手を引いてくれなければ歩く事もままならない。
誓いの言葉は、リエカと何回も何回も練習したので、倒れそうな状態でも口からスラスラと出て来た。
3日目の夜にやっとあらゆる儀式を終えて、披露宴となった。
町中が花火で彩られ、人々は祝杯をあげた。
スウェイドは『容姿端麗な王子』として世界中に名を馳せていたので、更にその結婚式となると、あらゆる国のテレビ局が押し寄せて報道合戦となる。
光司は自分の事だけで、いっぱいいっぱいだったので知る事はなかったが、自分が世界中のテレビに映っている現実を知ったら卒倒するだろう過熱具合だった。
あらゆる国々からの来賓に、挨拶をするスウェイドと光司だったが、国王の代理や、大使や、首相、大統領といった、会った事もない高貴な身分の人々に光司は緊張の連続で、頭を下げるのがやっとだった。
ほとんど隠居の身で、滅多に表舞台に出て来ない王に対面した時は、緊張が頂点に達して、直後に倒れてしまった。