第1章・呪縛1
無宗教の光司は宗教上、頭のクフィーヤは被る必要もなく、動き易いものを着たいと言った。
数ある出された服の中から、一番地味で簡単なベストと、ゆったりとした下衣、留めるベルトを借りた。
それでもその服装は、着た事もないような凝った装飾がなされていて、奴隷にこんな服を着せてふざけるスウェイドを訝しく思った。
アッシュに連れて来られたダイニングは、何人座れるのか分からない程の大きなテーブルに、華美な装飾のキャンドルスタンド、天井には星空のような大きなシャンデリアが燦然と輝いていた。
とんでもなく場違いな場所に面食らい、Uターンした光司を、スウェイドは逃がさんと抱き寄せた。
「コウジ、どこへ行く?先程より、見られるようにはなったな。しかし、このように明るい髪の色は日本人には普通なのか?」
肩を抱かれる光司を、冷たい目で見る美女が二人……アッシュの説明から、第ニ側室のクロエと、第三側室のマライカだと直ぐに分かった。
第一側室のリエカの横にいる双子のエレナイとアブドルは、コウジを見るなり、振り切れんばかりに手を振ってきた。
「コウジ、紹介しよう」
そう言って、スウェイドが順に説明したのは予想通りで、アッシュの悪意ある解説は当を得ていた。
「皆にも紹介しておく。この者は、コウジ・クサカ。今日から私の第四側室として暮らす。男だからハーレムには入れないので、本殿で暮らす」
スウェイドから改めて下された言葉に、第ニ側室のクロエから悲鳴が上がった。
「殿下!何を思われて、男を側室になどと!正気とは……」
クロエがスウェイドに食って掛かろうとすると、一瞬、呆然自失していた光司が叫んだ。
「なっ……!あ、アンタ!馬鹿じゃねーの?男で平民の俺を、側室とかっ……、マジで、アンタ馬鹿だろ!」
スウェイドを王子とも思わない光司の無礼な物言いに、本人以外の全員が凍りついた。
スウェイドは光司の顎をスッと持ち上げ、まるでキスをするかのように身を屈めた。
「もっと飾り立てろ、コウジ。もう少し食べて太れば、お前はさらに美しくなるだろう。そして、その体で私を悦ばせろ」
スウェイドの性的意味を含んだ言い様に、瞬間沸騰した光司は、派手な音を立ててその頬を打った。
即座に衛兵全員が飛びかからんとした。
「騒ぐな!」
スウェイドが一喝する。
「私の新しい大事な側室だ。まだ、初夜も済ませておらぬから、照れているのだ。私を、可愛い飼い猫が爪を立てた位で、怒る心狭い飼い主にさせるつもりか」
やっぱり、コウジは新しい側室だったのね~!と、嬉々としてはしゃぐエレナイの声がダイニングに響き渡った。
その場を取り繕うように、第一側室のリエカが光司に近付いて来た。
「コウジ。私はリエカです。大きな茶色い瞳が可愛い方ね。殿下の一目惚れかしら?仲良くして下さいね」
「いや……俺は側室とか……」
光司が正そうとすると、リエカは人差し指を唇の前に立てて「しー」と小声で囁いた。
「ここは私の顔を立てて下さる?コウジ。このままでは、収集がつきそうにないから」
そうして若干の気不味さのある夕食会は、リエカの笑顔と、エレナイとアブドルの明るい話題で、何とか時間は過ぎ去ってくれたのだった。
数ある出された服の中から、一番地味で簡単なベストと、ゆったりとした下衣、留めるベルトを借りた。
それでもその服装は、着た事もないような凝った装飾がなされていて、奴隷にこんな服を着せてふざけるスウェイドを訝しく思った。
アッシュに連れて来られたダイニングは、何人座れるのか分からない程の大きなテーブルに、華美な装飾のキャンドルスタンド、天井には星空のような大きなシャンデリアが燦然と輝いていた。
とんでもなく場違いな場所に面食らい、Uターンした光司を、スウェイドは逃がさんと抱き寄せた。
「コウジ、どこへ行く?先程より、見られるようにはなったな。しかし、このように明るい髪の色は日本人には普通なのか?」
肩を抱かれる光司を、冷たい目で見る美女が二人……アッシュの説明から、第ニ側室のクロエと、第三側室のマライカだと直ぐに分かった。
第一側室のリエカの横にいる双子のエレナイとアブドルは、コウジを見るなり、振り切れんばかりに手を振ってきた。
「コウジ、紹介しよう」
そう言って、スウェイドが順に説明したのは予想通りで、アッシュの悪意ある解説は当を得ていた。
「皆にも紹介しておく。この者は、コウジ・クサカ。今日から私の第四側室として暮らす。男だからハーレムには入れないので、本殿で暮らす」
スウェイドから改めて下された言葉に、第ニ側室のクロエから悲鳴が上がった。
「殿下!何を思われて、男を側室になどと!正気とは……」
クロエがスウェイドに食って掛かろうとすると、一瞬、呆然自失していた光司が叫んだ。
「なっ……!あ、アンタ!馬鹿じゃねーの?男で平民の俺を、側室とかっ……、マジで、アンタ馬鹿だろ!」
スウェイドを王子とも思わない光司の無礼な物言いに、本人以外の全員が凍りついた。
スウェイドは光司の顎をスッと持ち上げ、まるでキスをするかのように身を屈めた。
「もっと飾り立てろ、コウジ。もう少し食べて太れば、お前はさらに美しくなるだろう。そして、その体で私を悦ばせろ」
スウェイドの性的意味を含んだ言い様に、瞬間沸騰した光司は、派手な音を立ててその頬を打った。
即座に衛兵全員が飛びかからんとした。
「騒ぐな!」
スウェイドが一喝する。
「私の新しい大事な側室だ。まだ、初夜も済ませておらぬから、照れているのだ。私を、可愛い飼い猫が爪を立てた位で、怒る心狭い飼い主にさせるつもりか」
やっぱり、コウジは新しい側室だったのね~!と、嬉々としてはしゃぐエレナイの声がダイニングに響き渡った。
その場を取り繕うように、第一側室のリエカが光司に近付いて来た。
「コウジ。私はリエカです。大きな茶色い瞳が可愛い方ね。殿下の一目惚れかしら?仲良くして下さいね」
「いや……俺は側室とか……」
光司が正そうとすると、リエカは人差し指を唇の前に立てて「しー」と小声で囁いた。
「ここは私の顔を立てて下さる?コウジ。このままでは、収集がつきそうにないから」
そうして若干の気不味さのある夕食会は、リエカの笑顔と、エレナイとアブドルの明るい話題で、何とか時間は過ぎ去ってくれたのだった。