第3章・昇華2

機体は王族専用の搭乗口に止まった。

王族のプライベートジェットは、あらゆるテロ対策の為に、厳重な警備を敷いた専用口に止まる決まりになっている。

タラップから降りようとした光司の目に、大勢の付き人を連れた男が映った。

「う……そ……。……スウェイド……」

足を止めた光司は、アッシュに促されタラップを降りた。

下まで降りると、豪華な装飾や刺繍を施した正装のスウェイドが手を広げて光司を出迎えた。

「お帰り。コウジ」

「スウェイド……」

大きな胸の中に光司は抱き込まれた。

嗅ぎ慣れたスウェイドの、香を焚き染めたような薫りが鼻腔をくすぐる。

その匂いで、ヴァリューカに帰って来た実感がやっと湧いてきた。

光司もスウェイドの腰に手を回した。

「コウジがいないこの数日間は、何十日にも感じた。もし、日本から帰って来なかったらどうしよう、もう私には会いたくもないのかと。もし、コウジを連れて帰って来なかったら、アッシュの奴を八つ裂きにしてやると思っていた」

「冗談に聞こえないですから、やめて下さい」

光司の背後に立っていたアッシュが即答した。

「夢のようだ……コウジ。もう、私から離れるな。こんな気持ちは、二度とごめんだ」

「スウェイド。……俺……」

「愛している。コウジ。お前しかいらない。お前でなければ、ダメなんだ。これからも、ずっと側にいてくれ」

スウェイドの予想もしない愛の言葉に、光司は息も出来なくなった。

途端に目から滝のような涙が溢れ、止まらなくなった。

「スウェイド……好き。……好き。……俺も、スウェイドが大好きだ……」

背の高いスウェイドは、腰を折るようにして屈み、光司のその涙をキスで拭った。

後から後から溢れ出て来る涙を拭うような、スウェイドのキスは止まる事がなく。

そして、その光司の茶色い大きな瞳を覗いて、コツンと額を合わせたかと思うと、光司の顎を掬い上げ、唇にキスをした。

光司も背伸びをして、スウェイドの後ろ首にその腕を回した。

キスは徐々に深くなり、スウェイドは光司の体をまさぐり始めて、周りの人間の目も憚らず、その触れ合いがどんどん濃厚なものになっていくものだから、終いにはアッシュに「いい加減にして下さい」と怒られる始末だった。
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