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第3章・昇華2

スウェイドのプライベートジェットは、それは豪華なもので、機内の部屋は宮殿の中かと見紛う程に装飾されていた。

光司は、自分の為だけにこれを飛ばすのは申し訳ないと言ったが、アッシュが飛行機に乗る上で何かあったらスウェイドに顔向け出来ないと言うので、渋々、乗った。

「アッシュ、今回は色々と我が儘を聞いてくれてありがとう」

「大した事はしておりませんが。コウジ様のお気持ちは済まれたでしょうか」

「済んだ!済んだ!もう、思い残す事はない!……いや……、渋谷のクレープは、もう一回、食べたかったかなぁ?」

「えぇっ?まさかのクレープ!?」

アッシュは目を丸くして驚いたが「それをスウェイド様の前で絶対に言わないで下さい。クレープ屋ごと買い込んで宮殿に置きかねない」と嘆いた。

本当にやりかねないので、光司も想像して笑った。

「あとは、今、着てるジーンズは部屋着にしたいな。動きやすいし、カッコいい!」

「その位なら、スウェイド様もお許し下さるかと思いますよ。公式の場では、正装か、スーツを着用しなければいけないかとは思いますが」

「……スーツは緊張するな……。一生、1人で着られる自信がない……。ネクタイが」

「ネクタイは私か、スウェイド様でも結んで下さいますよ」

光司は、今回のスーツ着用が余程に懲りたらしい。

確かに、光司のスーツ姿は、着慣れないからか服に負けている感は否めなかった。

機体がヴァリューカ国内に入り、上空を旋回し始める。

光司はこの数日間で決心していた。

スウェイドの性欲処理の為だけに存在する自分かも知れない。

それでも、光司を誰よりも求め、大事にしてくれる、もうそれだけでも良いと思った。

自分が、スウェイドを好きな気持ちだけは、これからも変わらずにいたい。

帰ったら正妃として恥じない行動が取れるように、もっと学ばねばならない。

側室の時とは違い、表舞台に出る事が増えるだろう。

『男の正室だからダメなんだ』と言われたくはない。

飛行機が降下していくのを感じた。

ヴァリューカは晴天であった。
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