第2章・妄愛5

泣きながら、双子は母にすがり付いた。

エレナイもアブドルも、光司が日本に帰ってしまったのだと嘆いた。

幼子達には、ほんの短期間の旅行だと告げても、頑なに聞き入れなかった。

「帰ってきますよ。コウジはヴァリューカの人間なんですから」

「母上~、私も日本に行く~!」

「すぐに帰って来ますよ。みんなで待っていましょう」

「父上~!」

アブドルは、近づいてきたスウェイドに抱き付いた。

スウェイドはその小さな体を抱き上げ、片手で支えると、アブドルは泣いてぐちゃぐちゃになった顔をクフィーヤに擦り付けてきたが、するがままにさせた。

エレナイを抱いているリエカが、そんなスウェイドに苦笑した。

「この度は随分と広いお心で、お許しになられましたのね」

「このまま無理矢理連れ戻しても、コウジの心は手に入らない」

「ちゃんとコウジの目を見て、愛しく思われているお気持ちを、お伝えになられましたか?」

スウェイドはリエカを振り返った。

自分はコウジをどう思っているのか。

逸る気持ちが先行して、考えた事もなかった。

「言っていた……と、思う。……多分」

「ちゃんとコウジの目を見て、愛しく思われているお気持ちを、はっきりと仰られました?」

スウェイドは黙り込んだ。

無言は認めたも同じであった。

「スウェイド様が、ここまで愛でられた事は、今までにございませんでしたよ?その溢れるお気持ちは、ちゃんとコウジに伝えてあげて下さいね」

コウジに早く会いたい。

会って、抱きしめて、キスをして、精一杯 慈しんで。

この気持ちを、ちゃんと伝えたい。

スウェイドは、今やっと自らの気持ちを素直に受け止めていた。
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