第2章・妄愛5

色々な事があった1日だったので、光司は空港前のホテルで休ませて貰った。

アッシュはその間に渡航の準備をする。

当座の衣服などは出来るだけ少なく、カバンにまとめた。

最後にスウェイドへの連絡を取った。

「お約束通り、私にお任せ下さい。途中、連絡は入れますので。スウェイド様は、お願いしておりました事をやっておいて下さいね」

電話の向こうで何やら叫んでいる。

アッシュは溜め息をついた。

「ちゃんと事前に救出致しましたよ。……何ですか。そんな事言ったって仕方ないでしょう。自業自得です。……もう切りますよ。失礼します」

困った人だな、と思いながら、やや強引にアッシュは電話を切った。

光司を見ると、先程までよく眠っていると思っていたのに、今は何やらうなされていた。

「やだ……触る……な。……いや……」

さっきまでのザイールの事を夢に見ているのだろうか。

苦しそうな光司の悪夢を解放する為に起こした方が良いのか、もう少しギリギリまで寝かせてやった方が良いのか、アッシュには分からなかった。

「コウジ様……大丈夫ですか?」

寝顔を覗き込むと、不意に光司の手が伸びてきて、アッシュの後ろ首に回った。

「スウェイド、して……ねぇ、来て……」

光司の唇がアッシュに触れたかと思うと、その舌がアッシュの口の隙間から滑り込んで、焦がれるように舌を絡ませてきた。

「……んっ、んっ、あっぅ……、あ……ん……」

乳飲み児が、母の母乳を飲むように、必死に吸い付いてきた。

その甘美な誘惑に、アッシュの脳内が痺れる。

やがてアッシュの方が光司の唇を貪るようにねぶり始めた。

止めなければ。

止めなければ。

気持ちと反比例して、その口付けは更に濃厚なものとなり、やがて光司の下半身がモジモジとうねり出した。

「あっはぁ……スウェ……イドぉ……」

熱い吐息を吐いて、納得がいったのか、光司はまた深い眠りについた。

アッシュは自分の唇を押さえて、困惑していた。

自分は今、何をしていたのか。

誘われるがままに引き寄せられ、光司の甘い唇に酔ってしまった。

性行為のような濃厚なキスは、まだ自分の体の中に燃え燻り、半身が熱く勃ち上がりかけている。

「何という事を……。相手は御正室様だぞ?スウェイド様の大切な……」

アッシュは暴走しそうになる自身を必死に抑え込んだ。
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