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第2章・妄愛3

「良い話を聞かせて貰ったよ」

「ザイール様のお力添えを頂けましたらと思いまして。何せ私は女の身ですので、出来る事に限界がありますから」

旧市街のカフェテラスで、優雅に紅茶を飲むには、まだ早い時間だった。

「マライカは、コウジを連れ出してくれるかな?飛行機の手配は僕がしよう。プライベートジェットなら、隠密に事が運べるからね」

「分かりました」

「しかし、クロエの件は大変だったね」

あの後、侍女は一命を取り留めたが、クロエの精神状態は日常を過ごせるものではないと判断され、入院となった。

「私、もう少し上手くクロエ様を誘導するつもりだったんですけれど……」

「コウジを殺すように誘導されたら困るよ。僕が。コウジを手に入れられなくなっちゃうじゃない?」

「ザイール様。コウジを日本になぞ連れて行くつもりはないのでしょう?」

マライカの問いにザイールは片方の眉を吊り上げて苦笑した。

「僕は嘘をつかないよ?ただ、ちゃんと僕のものにしてから、日本でデートするついでに、実家へ連れて行ってあげるつもりだし」

「悪いお方……」

「それにしても、スウェイドの執着は凄いね。僕は宮殿に出入り禁止になるし、何十の箱に入れてコウジを囲うつもりかな?クールなあいつが、こんなに囚われるなんて初めてだよ」

「スウェイド様は、今は、コウジの体に夢中なだけですわ。すぐに飽きられます。新しい玩具が楽しいだけですのよ」

そうとは思えない。

ザイールは、リエカを自分のものにしよう争った時には、こんな激しいスウェイドを見たことがなかった。

権力に任せて、リエカを強引に正室にする事だって出来たはずなのにしなかった。

光司に関しては、本人が望まなかっただろう側室の座も、正室にする事も、強行している。

スウェイドが光司に両親の出生を話したくないのは、手離したくないからだ。

スウェイドの何よりも大切なものには、特別に甘美な薫りがする。

「じゃ、連絡、待ってるから。首尾よく頼むよ」

去りながら、クロエにしてもマライカにしてもスウェイドの女運は最悪だと、ザイールは同情した。
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