第1章・呪縛1

「スウェイド様!何のお戯れですか?あのような素性の知れぬ子供を奴隷になどと……。この現代にそのような差別的行動をなされますのは、問題でございます!」

アッシュは、スウェイドと幼なじみだったが、その他を圧倒するスゥェイドの風貌と違い、体こそ鍛えられていたが、温和な性格が滲み出た優しげな面立ちであった。

榛色の瞳と髪色は西洋のものであったが、肌の色はアラブ人そのものであり、合わさったその容貌は不思議な印象を与えていた。

その万人に好青年と思わせる顔立ちに、怒りと焦りを浮かべていた。

豪奢な執務室での口論は、執務とはまるで関係ない日本人の少年の話題が尽きる事なく、それに結論が出る様子もなかった。

「全く知れぬ訳でもない。コウジ・クサカ。15歳。日本人。男。……更に身元を明らかにしたければ、お前が調べろ」

「問題はそこではありません!『奴隷』という扱いに関して問題だと申し上げているのです!」

「あれは、コウジを納得させる為の虚言だ。どのように扱うかは、これから考える」

アッシュの胃がキリキリと傷んだ。

政治的手腕も、外交も狡獪な程に完璧なこの王子は、時折、自分の前では子供のような我が儘を言う。

幼なじみとしての甘えもあるのだろうが、この度のような行動は王族としても、国外への対面的にも不都合ではある。

「奥方様方や、御子様方には、何と申せられます?内紛の元になりますよ」

「後でごちゃごちゃモメそうな奴がいるからな。いっそ、最初に会わせてしまうか。……そうだな……第四側室としてでも」

「お戯れも程々になさって下さい!」

アッシュは、身分を忘れ激怒した。

「スウェイド様に正室様がおられるなら、多少の事は目を瞑ります。あのように毛色の違う、さらに男の側室などと……、更に揉めます!」

「正妃には第一側室のリエカを望んでいるが、アレが了承しないのだ。無理強いはしたくないのだから、待つしかあるまい。リエカを正室にすると言ってから紹介したら問題ないだろう」

問題あり過ぎです……とアッシュは呟いたが、もう、自分の言う事を聞きそうにないスウェイドに最後の約束だけはさせた。

「それでしたら、これだけはお聞き届け頂きます。リエカ様を近く必ず正室になさる事!しばらくはゴタゴタするでしょうから、それまで私をコウジに付ける事!それでも揉めるようでしたら、コウジはスラム街に返すか、日本に返します!」

好きにしろ、とスウェイドが言うと、今日視察してきた、そのスラム街の対処の話題になった。
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