序章、ツイステッド・テール〜歪められた物語〜
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アグラバーの夜。仮縫いの花嫁衣装を眺めながら、ラティーファは姿見に映る自分に微笑みかけた。外からの月明かりに辛うじて照らし出されるその表情は、どこか満足そうでいて疲れ切っているようにも見えた。手には小瓶が握られており、逆三日月――――ウェイニング・クレセントの光が繊細なガラスに反射している。
「シャバーン様…………」
ラティーファは憂いと淡い恋心を込めながら、愛する人の名前を唇に乗せた。たとえその行為が罪だとしても、最期の時に呟きたい人の名は彼唯一人だ。
ラティーファは迷いのない手つきで小瓶の蓋を開けると、バルコニーへ出た。そして、月を愛しさの籠もった眼差しで見つめながら瓶の中身を煽った。刹那、胸を焼き尽くすような痛みに似た熱さが広がる。
苦しく無いと言えば嘘になる。
だが、ラティーファは確かに笑っていた。未完成の純白のドレスが、みるみるうちに口から零れ出る深紅の血で染まっていく。その赤色すら、愛するあの人に似ているなぁなどと思いながら、ラティーファは月を見上げたまま遠のいていく意識に身を任せた。
叶うのならば、最期にもう一度あの人に逢いたい。
その願いがどれほど望んでも叶わぬことを知りながら、ラティーファは目を閉じた。小瓶が手から滑り落ちる。瓶が大理石に当たって砕け落ちる音を聞きながら、彼女は一筋の涙を流した。
これは、ボタンの掛け違いのように巡り合った2人の物語である。
そしてもしも、そのボタンがもう一つ違って掛けられたら。
そんな、どこか歪んだ世界の物語――――ツイステッド・テールである。
「シャバーン様…………」
ラティーファは憂いと淡い恋心を込めながら、愛する人の名前を唇に乗せた。たとえその行為が罪だとしても、最期の時に呟きたい人の名は彼唯一人だ。
ラティーファは迷いのない手つきで小瓶の蓋を開けると、バルコニーへ出た。そして、月を愛しさの籠もった眼差しで見つめながら瓶の中身を煽った。刹那、胸を焼き尽くすような痛みに似た熱さが広がる。
苦しく無いと言えば嘘になる。
だが、ラティーファは確かに笑っていた。未完成の純白のドレスが、みるみるうちに口から零れ出る深紅の血で染まっていく。その赤色すら、愛するあの人に似ているなぁなどと思いながら、ラティーファは月を見上げたまま遠のいていく意識に身を任せた。
叶うのならば、最期にもう一度あの人に逢いたい。
その願いがどれほど望んでも叶わぬことを知りながら、ラティーファは目を閉じた。小瓶が手から滑り落ちる。瓶が大理石に当たって砕け落ちる音を聞きながら、彼女は一筋の涙を流した。
これは、ボタンの掛け違いのように巡り合った2人の物語である。
そしてもしも、そのボタンがもう一つ違って掛けられたら。
そんな、どこか歪んだ世界の物語――――ツイステッド・テールである。
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