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第21章

1
吹っ飛んだ白羅の後を追っていくと、街の外へ出る。舞達の前では、既に白羅は身体を起こしていた。
「貴様等、よくもやってくれたな」
「街中ではそう暴れる訳にはいかないからな」
睨み付けてくる白羅にそう返した風夜の目が金から紅に変わり、
「……此処なら、俺達が全力を出しても問題ないだろ」
封魔が外した腕輪を失くさないようにか仕舞い込む。
(……ここからが本番だ)
その様子を見て、舞も気を引き締め直した。
『許さないぞ!お前等! 』
叫んだ大剣の口からエネルギー弾を放ってくる。
それを躱して、封魔が斬りかかるが受け止められ、弾かれる。そこへ風夜が風の刃を放った。
「ちっ! 」
封魔への追撃を邪魔された白羅が舌打ちして飛び退く。
その着地地点には既に飛影の姿があった。
「はあっ! 」
「ぐっ!」
飛影の槍が白羅の背を斬り裂いていく 。
(……当たった! )
初めて当たったダメージを負わせる攻撃に舞は心の中で叫ぶ。
だが、次の瞬間、吹き飛んだのは飛影だった。
「……っ……! 」
空中で体勢を立て直そうとする飛影に 、接近した白羅が大剣で斬り付けようとする。
飛影がそれに対処するのは間に合わないだろう。
(助けなきゃ! )
そう思うと同時に舞は、白羅に向けて 、急いで溜めた力を放つ。
「ぐあっ! 」
飛影に狙いを定めていた白羅にそれは命中する。
その間に着地し、距離をとった飛影にほっとしていると、その直後、神蘭の声が聞こえた。
「舞!! 」
「えっ!? 」
気付くと、目の前に衝撃波が迫っていた。
2
「わ、わわっ……! 」
慌てて飛び退いたところで、舞がそれまでいた場所を衝撃波が通り過ぎる。
(あ、危なかった……! )
当たっていたら、無事では済まなかっただろう。
ぎりぎりだったが避けられたことに安堵していると、次に花音の声がした。
「舞ちゃん!! 」
「……って、また私……! 」
今度は続け様にエネルギー弾が飛んでくる。
その内の何発かは花音が放った矢と相殺したが、それでも何発かは飛んできた。
(お、落ちつけ……)
先程の一発と違い、複数ある以上、まぐれで避けることは出来ないだろうと気持ちを落ち着かせる。
少し冷静になった所で、舞はあることに気付いた。
(あれ? )
避けながらも疑問を感じる。
「……遅いし……、何だか単純? 」
『何だと……、この小娘がぁ! 』
避けきったところで舞が呟いたのが聞こえたのだろう、大剣の顔が叫んだ。
『この俺様の攻撃が遅いだとぉ?単純だとぉ!なら、これでどうだぁ! 』
カッと開いた口に膨大な力が集まるのが見える。
『これを避けられるかぁ! 』
放たれたエネルギーは巨大な球となって迫ってきた。
3
「っ! 」
舞の前に出た神蘭が防ごうとしてか結界を張る。
「くっ!……うああっ! 」
だが、彼女の結界はすぐに壊され、衝撃で舞の近くへ吹っ飛ばされてくる。
「神蘭! 」
助け起こそうと手を貸しながら、迫ってくるエネルギー弾に視線を移すと、封魔の結界に受け止められたところだった。
「ぐっ! 」
踏み止まれないのか、彼の足が数メートル後退る。
『はーははは、まずは三人……、うぎゃああ! 』
その時、楽しそうな声を上げていた大剣が悲鳴を上げ、放たれていた力が四散した。
「な……、何?」
『痛っ、痛ででっ!俺様を狙って叩いてくるなぁ! 』
「た、叩くって? 」
どういうことなのかと呟きかけて、次の瞬間、叫んでいる顔の部分を打ち付けた魔力の鎖に思わず舞は苦笑した。
(あれで妨害したんだ……)
そんなことを思っていると、花音が神蘭に駆け寄ってきて、打ち付けていた背に手を翳す。
すぐに治せたのか、数秒で花音は封魔へ視線を移した。
「封魔さんは? 」
「大丈夫だ。怪我はない」
彼がそう返した時、ドオォンと地響きのような音が聞こえ、白羅の方へ視線を戻す。
だが、そこは今は煙に包まれていて姿が見えなかった。
4
煙がなくなっていくにつれて、白羅の姿が見えてきたが、完全に見えるようになる前に剣撃が飛んできた。
それを全員が躱したところで、舞はこの戦いが始まってからのことを思い出す。
(やっぱり……さっきから向こうの動きがよく見える。……それに)
先程感じた遅い、単純というのは誰と比べてそう思ったのだろうと考える。
それで思い付いたのは、風夜に付き合ってもらっていた五日間のことだった 。
(そうだ。私が比べてたのって……)
そう思って、少しすっきりした気持ちになる。
それとほぼ同時に、白羅の姿がはっきりと見えた。
「って、また巨大化してる! 」
先程に比べても大きくなっていることに、舞は声を上げた。
『どうだ!?これが俺様の最終形態だぁ! 』
「今度こそ、お前達を始末して、魔王の所へ行かないとなぁ」
紅い目を細めて言う白羅と、凶悪な顔を浮かべる大剣の顔に封魔が返す。
「だから、行かせる訳ないだろ」
『なら、やっぱり先に……』
「お前達を始末するしかないなぁ! 」
その言葉と共に、白羅が地を蹴り、接近してきた。
「うおおおおっ! 」
『うおらぁ! 』
「「っ!! 」」
その一撃を飛影と封魔が槍と剣を交差するようにして受け止めたものの、二人でも堪えきれないのか、若干押され気味になる。
『おっと、三度目はくらわんぞ! 』
それを見て、動こうとした風夜に向けて、大剣の顔がエネルギー弾を放つ。
「ちっ! 」
立て続けに放たれ、避けることに集中しているのを見て、大剣の顔は笑う。
『ははは、今の内だぞ』
「ああ、今度こそもらった! 」
白羅がそう言って、更に力を込めようとするのがわかった。
(……まずいよ、これ)
援護するにもどうすればいいのかと迷う。
その時、白羅の頭上に数本の矢が放たれているのに気付いた。
「ぐわあああ! 」
それらが一斉に白羅へ降り注ぐ。
「今だ!! 」
それと同時に、神蘭の声が聞こえる。
視線を動かすと、彼女は聖宝具である剣を振り上げていた。
そこから放たれた剣圧に合わせて、舞も同じように聖宝具の剣を振り上げる 。
(えっと、剣に力を流すイメージでいいのかな? )
見よう見まねで力を流すと、剣から強い光が放たれ、重圧のようなものを感じる。
堪らずに振り下ろすと、神蘭が放ったものより大きな剣圧となって、白羅へと向かっていった。
5
迫ってくる二つの聖宝具の剣圧に、危機感を感じたのか、飛び退こうとした白羅に、再び矢が降り注ぐ。
「うっ……、ぐあああああっ! 」
矢を浴びながらも、白羅は飛影と封魔を剣圧の方へ弾き飛ばした。
剣圧とぶつかりそうになった二人を強風が更に別の方向へと吹き飛ばし、剣圧は白羅へと直撃した。
「風夜! 」
それを見て、花音が何かを投げる。
何を投げたのか、それを確認しようとして、それが花音の持っていた筈の短剣だと気付いたのと同時に、短剣に魔力の鎖が巻き付いた。
受け取った聖宝具の短剣を自分に引き寄せることはせず、風夜はそれをそのまま操り出す。
「ぐあっ! 」
鎖を操り、短剣を動かす風夜の攻撃を一度は弾いた白羅に、再び短剣が迫る 。
それと同時に走り出した風夜は、弾かれた短剣を追うように飛び上がり、鎖を白羅の身体に巻き付けた後、何処かへ放るように手放す。
受け止めたのは封魔で、そのまま締め上げるように力を強める。
「このっ……! 」
拘束する鎖へと振り下ろそうとした大剣は飛影の槍に止められ、その直後、
「はあああっ! 」
上空から斬り下ろした風夜の短剣によって大剣と白羅の腕は切り離され、構え直した飛影の槍が白羅の身体を貫き 、接近した封魔が袈裟懸けに斬りつけた。
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