このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第19章

1
「そういえば、結局聞いてなかったな 」
不意に何かを思い出したように飛影が呟く。
「聞いてなかったって何を? 」
「封魔が気が付いたっていうんで、話してもらってなかったからな」
それを聞いて、舞も思い出す。
「そうだった。……実はずっと気になってたんだよね。先輩と風夜があのタイミングで来た訳」
舞もそう言えば、花音と風夜は一度顔を見合わせる。
その後、話し始めたのは花音だった。
「あの時ね、風夜の治療が終わった後 、天奏が現れて、私達一度彼女について行くことになったの」
「奴は俺達を逃すと言ってたが、すぐにそうすることは出来なかったらしくてな。部屋に連れて行かれた後、奴が花音に術を施した」
「術って……」
「危険なものじゃないよ。その術で私に光鈴の記憶が完全に戻った。あまり使わなかった術もそのお陰で使えるようになったしね」
「だが、何の為にそんなことを? 」
聞いていた龍牙が首を傾げる。
「……確かにその力があったから、封魔は助かったんだろうが」
「向こうからしたら、邪魔な能力の筈だよな」
そう言ったのは光月と星牙だったが、舞も同じ考えだった。
「……その天奏って奴、そういえば俺と姉上が神界にいた時も妙だったな」
その時、そう呟いたのは光輝だった。
「妙だったって何が? 」
「……俺達がお前達に飲ませた薬があっただろ?あれの解毒薬を渡してきたのが奴だ」
それを聞いて、舞も思い出したことがあった。
2
「そういえば、私も……」
「何か覚えがあるのか? 」
煌破に聞かれて舞は頷く。
「……先輩達を助けに行く前、麗玲達がいないことを教えに来たの。先輩達を助けるチャンスは今しかないってね 」
それを聞いた聖羅が難しい表情をする 。
「……わからないわね。……数百年前 、天奏は神界を裏切った。それなのに何故今になって、此方を手助けするようなことを」
聞きながら舞も考えてはみたが、理由はわからなかった。
(……理由はわからない。……でも… …)
今まで聞いてきた封魔の境遇。
神界の暗い闇の部分。
それを考えると、可能性として浮かんでくることが一つある。
(……可能性としては充分ありえるよね)
それでも、それを口にすることは出来ないと思う。
もし舞が今、思った通りだったとしても、彼女は封魔以上に麗玲よりの行動が多い。
(もう少し様子を見ようかな)
心の中でそう呟く。
天奏のこと以外にも片付けなければならない問題は沢山ある。
決断を下すのはもう少し後でもいいだろうと思った。
7/7ページ
スキ