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第6章

1
「まさか俺をスパイだと疑ってるのか? 」
「……そうですね。何をしていたか、ちゃんと説明してくれれば疑わなくてもよくなるかもしれませんが」
「……まぁ、俺にも用はあるのさ。……それより、よく無事だったな。力を使えるようになってきたとはいえ、戦闘経験のほとんどないお前等だけでどう凌いだんだ? 」
「……思わない助けが入って逃がしてくれたんです。その人が斬りつけていた場所が……、あなたの怪我している場所と同じなんですよ」
助けてくれた封魔の名は出さないで話す。
夜遅くにこっそりと抜け出したこともあり、あの場に彼が現れたことを知る者は舞、聖奈、綾を除けば襲撃者だけだ。
「それに、逃げる時、私は一度だけ振り返ったんです。その時に……、仮面が外れたのも見ました」
正直いえば少し距離があった為、はっきりとは見えていなかったのだが、そう言えば白羅は笑い出した。
「くくっ、ははははは。……何だ、とっくにばれてたって訳か。……それにあいつが現れたのも計算外だ。何処で知ったのか、あの場に来るなんてな。……俺の任務は失敗ってことか」
呟いたかと思うと、白羅から殺気が放たれる。その手には昨夜の襲撃者と同じ大剣が握られていた。
「!! 」
「だが、このまま帰る訳にはいかない。……一人だけでも始末する」
その言葉に一人で追いかけてきてしまったことを後悔する。
(やっぱり飛影にだけでも話しておけばよかった)
そう思ってももう遅い。
その時、別の殺気を感じたのと同時に白羅へと斬りかかる影があった。
「またお前か!! 」
「正体がばれたなら、さっさと諦めて戻ったらどうだ! 」
切りかかったのは封魔で、剣を交えたまま睨み合う。
(どうしよう……、そうだ)
空を見上げて思い付き、上空へと手を翳す。
(お願い!誰でもいいから気付いて! )
そして一つ深呼吸した後、舞は空へ向けて力を放った。
2
「ちっ! 」
舞の力が上空へと上がるのを見て、白羅が舌打ちし、封魔を蹴り飛ばす。
彼が体勢を整えている間に白羅は舞へと接近していた。
「えっ!? 」
大剣を持っている筈なのに何故か斬りつけてはこないで、舞の身体はただ突き飛ばされ、白羅はそのまま背を向けた。
何故そんな事をするのかと思っていると、幾つもの足音が聞こえてきた。
(しまった……)
「「舞!! 」」
「舞ちゃん! 」
駆けつけてきた飛影達は白羅が魔神族だとまだ知らない。
彼等からしたら、封魔が舞を狙ってきたように見えると思い、舞は口を開いた。
「皆、これは……」
「こいつが舞を狙ってきた。神子としての力を扱えるようになったから、邪魔だと言ってな」
だが、それに被せるように白羅が言い、飛影達の視線は封魔へと向けられた。
「……じゃあ、昨日の夜は私達を油断させる為だったってこと?」
「昨日の夜?」
「昨日、白羅さんに話があるって呼び出されて外にいた時、魔神族に襲われたんです。その時、助けてくれたんですけど、油断させる為の作戦だったんですね」
「……」
聖奈と綾の言葉に、否定の声は上がらない。
「封魔、お前……」
「この間の光の街の件に続いて、こんな……」
「一年前の戦いの時は普通だったのに、一体どうしちゃったのよ?」
「本当に……、魔神族についたのか?そこまでお前は堕ちちまったのかよ! 」
神蘭、龍牙、鈴麗、白夜の表情の中にも失望のようなものが見える。
そんな彼等と今の状況を見ていた聖羅が目を閉じ、一つ息を吐いたあと、封魔を見据える。
「……よくわかったわ。私達が馬鹿だったみたい」
「!!ちょっと待って!これは違う……」
何を言おうとしているのか予想がついて、舞は止めようとしたが、白羅からの鋭い視線に言葉に止めてしまう。
「……これ以上、神界へ刃を向けることや仲間、神子の命を狙うことは許さない。せめて、私達の手で……」
その言葉に白羅が愉しげに笑ったのがわかった。
3
(こんなことになるなら、皆を呼ばない方がよかったかも)
今の状況を見ながら、舞は思う。
封魔も味方とはいえないが、白羅が敵側だとわかった今、どうにかして他の皆にも知らせなければならない。
だが、舞の行動は白羅に逆手にとられ、封魔が完全に敵だと判断されてしまっている。
抵抗するつもりはあるらしいが、いつかのように腕輪を外すつもりはないらしい彼は徐々に追い詰められつつあった。
「ぐっ……」
光弾に吹き飛ばされ、背後にあった木に身体を叩きつけられた封魔が崩れ落ちる。
それを見て、割って入るなら今しかないと舞が動こうとした時、それより前に何本かの矢が飛んできて、距離を詰めようとしていた神蘭達の足を止めた。
「そこまでです! 」
「花音! 」
「先輩! 」
声に視線を向けると、弓を構えた花音が立っていた。
その彼女の後ろで風が渦を巻く。
そこに現れたのは風夜で、いつの間に助け出したのか、彼は封魔に肩を貸し此方へと冷えた視線を向けてきていた。
「前に忠告した筈だったんだけどな。……目に見えてるものだけが全てじゃないって」
「あなただったんですね」
花音が言いながら、白羅へ矢を向ける。
「あなたが舞ちゃん達を監視し、力が目覚めるようなら始末するように言われていた魔神族……」
「……何だ?他の奴等がいないから単独で動いていると思っていたが、やはり話は聞いていたのか? 」
「いいえ」
花音は首を横に振る。
「逆です」
「……何? 」
「私が舞ちゃん達が狙われていることを聞いて、封魔さんに伝えたんです。……私が聞いた話の相手があなただったんですね」
「まぁ、お前を疑っていたのは封魔だったけどな」
花音と風夜の言葉に、舞も本当のことを伝えるなら今しかないと思った。
「先輩達が言ってるとおりです」
「舞!? 」
驚いたように見てくる聖奈から、白羅へと視線を移す。
「今だって本当は、……本当に襲ってきたのは白羅さんの方です」
「……何? 」
「……くくっ」
驚きの声が上がる中、白羅が笑い出す。
「ははははは、……一人で来たように見せかけておいて、あと二人連れてきてたのか。……俺は天華の転生者の行動を逆手にとっていたつもりだったが、お前に裏をかかれていたという訳か」
「……正確には、……二人が勝手に追いかけてきた、だ」
風夜から離れつつ、封魔が言う。
「刹那は花音の味方だからな」
「ふん。……だが、俺の邪魔をしたということは、魔神族への敵対とみなされる。俺が報告すれば、向こうにいる動ける奴等はともかく、動けない奴等はどうなるか……、楽しみだな」
そう言って、白羅は姿を消した。
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