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第6章

1
「はあ……」
溜め息と共に舞はベッドに倒れ込んだ。
聖羅から力の使い方を教わるようになってから三日。朝からの訓練でくたくただった。
「……舞はまだましだよ。私達なんて力を目覚めさせるところからだったんだから」
「……舞ちゃんがどんどん進んでいくから、追いつかなくっちゃって、ハイペースだしね」
同じように横になっている聖奈と綾に言われ、舞は少し身体を起こして二人を見た。
「でも、二人も凄いよ。もう力の制御を教えてもらい始めてるじゃん」
「まあ、聖羅さんも少し驚いてたけどね」
その時、舞達の部屋の扉が叩かれた。
「はい」
一番近くにいた舞が扉を開けると、そこには白羅が立っていた。
「何か? 」
「少し話がある。三人共少し出られるか? 」
「此処じゃ駄目なんですか? 」
「ああ。この街の……、そうだな、塔の前で待っていてくれ」
それだけ言って立ち去っていく。
「えっ……?塔って、今から? 」
聞こえていたのだろう聖奈が言う。
「時間も遅いのにね。……そんなところにまで行かなきゃ、出来ない話なのかな? 」
「でも、断れなかったし、行くしかないよ」
溜め息をついて舞は言ったが、妙な胸騒ぎがしていた。
2
「ねぇ、まだ来ないの? 」
「呼び出したのは向こうなのにね」
塔の前に着いて数分、来る気配のない白羅に不満がもれる。
「確かに遅いね。……私達以外の人達はみんな、もう寝てるみたいだし」
街中からも光が消えている。
その時、不意に近くで殺気を感じた。
「きゃっ……!? 」
咄嗟に飛び退いたものの、受身をとれず地面に倒れこむ。
それでもすぐに身体を起こし、自分がいた場所を見れば、そこには大剣が振り下ろされていた。
「魔神族!? 」
大剣を構え直した仮面の男に、舞達に緊張が走った。
「何で此処に……、こんな時間に……」
「神子としての力を覚醒させる訳にはいかないんでな。……三人共、此処で死んでもらう! 」
大剣を構えて突っ込んでくる仮面の男から向けられる殺気に動きがとれない。
(このままじゃ……)
「死ね! 」
すぐ目の前に迫ってきた大剣に諦めかける。だが、その剣は舞達の前に割って入ってきた剣に受け止められた。
「「「なっ!? 」」」
それが誰の物なのか辿ったところでその人物を見た舞達が驚きの声を上げたのと、剣の持ち主だった封魔が大剣を弾いたのはほぼ同時だった。
「な、何で……? 」
「邪魔をするな! 」
声を上げた男が再度振った剣を再び受け止め、封魔は口を開く。
「……やはり動いたか。……今日も動かないと思って、戻らなくて正解だったな」
そこで肩越しに舞達を見てくる。
「戦えないなら邪魔だ。他の奴等に気付かれる前に戻れ」
「「「っ……! 」」」
それに言い返したいとは思ったが、三人がいないことに他の者達が気付かないうちに戻らなければならないのは確かだ。
何故助けるのかはわからないが、ここは任せるしかないだろう。
そう判断し走りだす。
その後ろで聞こえ出した激しい剣撃の音が気になり、舞は少し離れた所で一度立ち止まる。
振り返ると、ちょうど踏み込んだ封魔が腕を斬りつけ、怯んだ所に追撃を加えていた。
その際、仮面に掠ったのかそれが外れて、遠目ではあったが知っている顔が見えた気がした。
2
「「「ふあああ」」」
「……何だ、お前ら、三人揃って欠伸なんかして……」
ほぼ同時に欠伸をした舞、聖奈、綾に飛影が視線を向けてくる。
「寝不足か?……一体、夜に出掛けて何をしていたんだか」
(ば、ばれてるし)
そう思って苦笑した時、白羅が歩いてくるのが見えた。
何処かへ出掛けて行こうとしているのか、外へ出て行く。
それを見て、舞は後を追いかけようと足を向ける。
「おい! 」
「ちょっと舞! 」
飛影と聖奈が引き止めるように声を上げたが、舞の頭には昨夜の事を確かめることしたなかった。
「白羅さん! 」
屋敷を出て街からも出た所で、舞は呼び掛ける。
「……何か用か? 」
「……その腕の怪我、どうしたんですか? 」
僅かに見える白い包帯を指して、問いかける。
「これか。何でもないさ」
その言葉から本当のことを話す気はないのだと感じ、舞は口を開いた。
「本当のことをちゃんと話してください」
「本当も何も、俺はちゃんと話しているさ」
それに舞は一度口を閉じ、昨夜、最後に見た光景を思い出す。
「……あなたは昨夜、私達を呼び出しました。でも、そこにあなたは来なかった。待っていた私達の前に現れたのは、私達を狙った魔神族でした」
「…………」
「あなたはその時、何処で何をしていたんですか? 」
その言葉に白羅の雰囲気が少し変わった気がした。
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