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第6章

1
「…………」
疲れた身体を引き摺るように花音は魔神族のアジトの中を歩いていた。
(……段々、この力にも慣れてきたかな)
先程までの魔神族の兵達の訓練でのことを思い出す。
天奏達も早く光鈴としての力に慣れさせようとしているのか、少しの擦り傷や切り傷でも力を使わされ、くたくたではあったが、力の使い方に慣れたという意味ではよかった。
とにかく今は休みたいと足を進めていると、近くの部屋から誰かの話し声が聞こえてきた。
(この声……)
聞き覚えのある声に思わず足を止める。
気付かれないように出来るだけ気配を消して、様子を伺う。
中にいる魔神族の男は通信機で誰かと話しているようだった。
(何を話しているんだろう?)
耳を澄ませると、男の声がはっきりと聞こえてきた。
「そうか。天華の転生者達が……。わかった。そちらでの監視は続けろ。……そうだ。……判断はお前に任せる。もし危険だと思ったら、お前が始末しろ。麗玲様と天奏様の手を煩わせるようなことにはするな。……ああ。また報告を待っている」
会話の終わりそうな気配に、花音は慌ててその場を離れる。
(でも、今のって……)
相手側の言っていたことまではわからない。
だが、放っておいていいことではないだろう。
(風夜か封魔さんに一応伝えておいた方がいいかも)
疲れていて休みたい気持ちはまだあったが、先に二人を探すことにした。
2
二人を探し始めて少し経った頃、花音が見付けた時、風夜は雷牙と話していた。
「風夜!雷牙君! 」
声を掛けてから、二人の様子が少し張り詰めているように感じた。
「……何かあったの? 」
「……いや、大したことじゃない。それより、花音は何か用があったんだろ。俺はもう行くから」
片手を振り、雷牙が去っていく。それを見送り、溜め息をついていた風夜が花音を見た。
「それで花音は一体何の用だったんだ? 」
「……うん」
雷牙のことも気にはなったが、今は先程聞いたことを伝えることにする。
「それを信じるなら、誰かがスパイとして、舞達といるって考えてよさそうだな。……それも何かあれば、舞達を始末しようとしている。……封魔にこのことは? 」
「まだ話してない。伝えようと思ってたけど、先に風夜を見付けたから」
「そうか。封魔にも早く知らせた方がいいだろうな。……今は呼び出されてはいないはずだから、いつものところにいるはずだ」
「わかった」
言われて、花音はその場所に向かうことにした。
風夜に聞いた通り、封魔の姿は過去の闘神達が閉じ込められている水晶の前にあった。
「……何かあったのか? 」
水晶を見上げたまま、封魔が問い掛けてくる。
「……はい。実は……」
風夜にも伝えたことをもう一度伝える。
「何!? 」
それを聞いた封魔が振り返った。
「今のは本当か? 」
「はい、確かにそう言っていました。相手が誰なのかまではわかりませんでしたけど……」
「いや、それなら俺に心当たりがある」
そう返した封魔が少し考えるようにする。
「……少し危険かもしれないが、……動くしかないか……」
呟いたかと思うと、封魔は辺りを見回し、声を潜めた。
「……星夢を呼んできてくれ。少し見てもらいたいことがある。その後で俺は少し留守にする」
花音にぎりぎり聞こえるくらいの声で言うと、白鬼にも話してくると去って行ってしまった。
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