第2部 二つの家族の章
1
「サイガさん!? 」
声のした方を見て、壁に寄りかかっている少年の姿にユウナは声を上げた。
「なっ!?一体、何処から入った!? 」
「以前、情報屋として依頼を受けた客がこの研究所にいてな」
「そいつにいれてもらったのか?」
そう問いかけた研究員の男に、サイガは首を横に振った。
「いや、何度か来ているうちに潜入ルートみたいなものもわかってくるんでな。……職業柄ってやつか」
そう戯けるように言って、サイガは研究者の男を見据えた。
「……悪いことは言わない。今すぐその二人を解放するんだ」
「……それは出来な……」
「もし解放できないなら、この研究所は軍に包囲されるだけでなく、突入される」
断ろうとしたのだろう男の言葉を遮り 、サイガはニヤリと笑った。
「それと、お前達が組んでいる二つの組織は今回の件知らないらしいな。お前達のこの勝手な行動、知ったらどうなるかな? 」
「っ!! 」
笑みを浮かべたまま、そう続けるサイガに研究員は言葉を詰まらせた。
「さあ、どうする? 」
「っ!!わ、わかった。諦める」
「……賢明な判断だな」
サイガに促すように問いかけられて、研究員は肩を落として答える。
返答を聞いたサイガは頷きながら呟くと、ユウナとシルファの方を見てから自分についてこいというように踵を返した。
2
サイガについていくと、彼が入ってきた時と同じルートなのだろうか、他の研究員達とは顔を合わせることなく外へ出ることができた。
「「ユウナ!」」
外へ出た瞬間、聞こえてきた声にユウナは視線を向ける。
そこにはリリアとコウの姿があった。
「お兄ちゃん!リリアさんも!」
驚いていたユウナに二人が駆け寄ってくる。
「大丈夫!?怪我は?」
目の前にくるなり両肩に手を置いて問いかけてくるリリアに、ユウナは頷くとどうして二人がいるのかとサイガを見る。
彼は研究員に軍が包囲しているようなことを言っていたのだが、二人以外の姿は見えなかった。
「軍は?私を助ける為に、お兄様達が動いたんじゃ……」
ユウナと同じようにサイガの言葉を覚えていたのだろうシルファが問う。
「ああ。あれはあの時、言っただけだ 」
「えっ?」
「う、嘘だったの? 」
「……現時点ではな」
声を上げたユウナとシルファに、サイガは肩を竦めた。
「現時点って……」
「軍は待機状態なの。あまり騒ぎを大きくしたくないっていうことで、まずは私達が来たのよ」
「最も、あと一時間俺達が城へ連絡しなければ、軍が動いただろうがな」
リリアが言うのを聞いた後、サイガはコウとリリアを見た。
「さてと、俺の仕事はここまでだ。後はそっちでやっといてくれ。レイドにもよろしくな」
「ああ」
頷いたコウに、サイガはニヤリと笑う 。
「俺が今受けていた仕事を中断させたうえ、仕事先を一つなくしたようなものだからな。……報酬、期待してるって伝えてくれ」
そう言うと、サイガはヒラヒラと片手を振って去っていこうとし、何か思い出したように振り返った。
「と、忘れるところだった。これ…… 」
「?」
近付いてきたサイガから小さく折りたたんだ紙を手渡される。
「サービスだ。どう使うかは好きにしろ」
言って、今度こそ立ち去っていく。
それが何なのかと紙を開いて、ユウナはそこに書かれていたことに目を見開いた 。
「サイガさん!? 」
声のした方を見て、壁に寄りかかっている少年の姿にユウナは声を上げた。
「なっ!?一体、何処から入った!? 」
「以前、情報屋として依頼を受けた客がこの研究所にいてな」
「そいつにいれてもらったのか?」
そう問いかけた研究員の男に、サイガは首を横に振った。
「いや、何度か来ているうちに潜入ルートみたいなものもわかってくるんでな。……職業柄ってやつか」
そう戯けるように言って、サイガは研究者の男を見据えた。
「……悪いことは言わない。今すぐその二人を解放するんだ」
「……それは出来な……」
「もし解放できないなら、この研究所は軍に包囲されるだけでなく、突入される」
断ろうとしたのだろう男の言葉を遮り 、サイガはニヤリと笑った。
「それと、お前達が組んでいる二つの組織は今回の件知らないらしいな。お前達のこの勝手な行動、知ったらどうなるかな? 」
「っ!! 」
笑みを浮かべたまま、そう続けるサイガに研究員は言葉を詰まらせた。
「さあ、どうする? 」
「っ!!わ、わかった。諦める」
「……賢明な判断だな」
サイガに促すように問いかけられて、研究員は肩を落として答える。
返答を聞いたサイガは頷きながら呟くと、ユウナとシルファの方を見てから自分についてこいというように踵を返した。
2
サイガについていくと、彼が入ってきた時と同じルートなのだろうか、他の研究員達とは顔を合わせることなく外へ出ることができた。
「「ユウナ!」」
外へ出た瞬間、聞こえてきた声にユウナは視線を向ける。
そこにはリリアとコウの姿があった。
「お兄ちゃん!リリアさんも!」
驚いていたユウナに二人が駆け寄ってくる。
「大丈夫!?怪我は?」
目の前にくるなり両肩に手を置いて問いかけてくるリリアに、ユウナは頷くとどうして二人がいるのかとサイガを見る。
彼は研究員に軍が包囲しているようなことを言っていたのだが、二人以外の姿は見えなかった。
「軍は?私を助ける為に、お兄様達が動いたんじゃ……」
ユウナと同じようにサイガの言葉を覚えていたのだろうシルファが問う。
「ああ。あれはあの時、言っただけだ 」
「えっ?」
「う、嘘だったの? 」
「……現時点ではな」
声を上げたユウナとシルファに、サイガは肩を竦めた。
「現時点って……」
「軍は待機状態なの。あまり騒ぎを大きくしたくないっていうことで、まずは私達が来たのよ」
「最も、あと一時間俺達が城へ連絡しなければ、軍が動いただろうがな」
リリアが言うのを聞いた後、サイガはコウとリリアを見た。
「さてと、俺の仕事はここまでだ。後はそっちでやっといてくれ。レイドにもよろしくな」
「ああ」
頷いたコウに、サイガはニヤリと笑う 。
「俺が今受けていた仕事を中断させたうえ、仕事先を一つなくしたようなものだからな。……報酬、期待してるって伝えてくれ」
そう言うと、サイガはヒラヒラと片手を振って去っていこうとし、何か思い出したように振り返った。
「と、忘れるところだった。これ…… 」
「?」
近付いてきたサイガから小さく折りたたんだ紙を手渡される。
「サービスだ。どう使うかは好きにしろ」
言って、今度こそ立ち去っていく。
それが何なのかと紙を開いて、ユウナはそこに書かれていたことに目を見開いた 。