第1章
1
(先回りされてた!?)
屋敷を抜け出すことも、此方の方に逃げてくることも読まれていたのかと舞は息をのむ。
「……悪いな。……此処で逃す訳にはいかないんだ」
「「「!?」」」
それでも相手が一人ならどうにか出来るのではないかと思っていた時、前に立つ人物が口を開く。
その声にか言葉にかはわからないが、光輝、夜天、聖羅が目を見開いたのがわかった。
「……お前、まさか……、本当に……」
「……このタイミングで現れるかよ、普通……」
「知ってる人なの?」
呟いた光輝と夜天に舞が問い掛けたと同時に、聖羅が前に出た。
「……知ってるわ。彼等は一年前から、私は数百年も前からね」
「えっ?」
「……その格好、似合ってないわね。……それに、その姿を見てると正直、頭にきてしょうがないの。……直ぐに脱いで戻ってきなさい。……封魔!」
「「!!」」
聖羅が呼んだ名に、舞と麗香は驚いて視線を向ける。
その名は情報交換をしていた時に何度か出てきていたものだった。
「今ならまだ戻ってこれるわ。奪った封印具を返して、ちゃんと説明してくれれば……」
「……それは無理ですね。今話したところで、誰も信じはしない。……俺は俺の目的を果たすだけ」
言いながらフードを外した封魔の目が舞の方へ向けられる。
(私?……ううん、違う)
自分を見ていると思ったが、すぐに少しずれていることに気付く。
彼が見ているのは、麗香だった。
(やっぱり、狙われているのは麗香!!)
「……悪いことは言わない。そいつを渡してくれさえすれば、危害は加えない」
「って言われてもな」
「……前のお前の言うことなら聞いたかもしれないけど」
光輝と夜天の言葉に封魔の目が細められる。
「止めなさい、封魔!取り返しがつかなくなるわよ!!」
聖羅が声を上げるが、彼は剣の柄に手を掛ける。
「っ!!」
それを見た聖羅が上空に向けて、光弾を放つ。
宙で弾けたそれは何かの合図のように見えた。
2
それを確認した封魔が剣を引き抜き、地を蹴る。
だが、斬りかかってきた剣は聖羅の結界に阻まれ、火花を散らしただけだった。
「ちっ!」
「待って!手を出さないで!……大丈夫。さっきので神蘭達が気付いた筈、皆が来るまで私にも防いでいることくらいできるから!それより、二人は……」
封魔に攻撃しようとした光輝を止めた聖羅が視線を動かす。
そこにはいつの間にか仮面を付けた者達がいた。
「夜天!」
「ああ!」
それを確認した光輝と夜天が向かっていく。
「二人は私の傍に」
聖羅が言って、封魔へと視線を戻す。
そこでは一度距離を取っていた封魔が剣を構え直していた。
「はあっ!!」
さっきとは構えが違う気がして、舞が様子を伺っていると、封魔は今度は距離を保ったまま剣を振るう。
「っ!!」
そこから放たれた衝撃波が結界へとぶつかる。
それから立て続けに衝撃波が叩き込まれ、耐えられなくなったらしい聖羅が吹き飛ばされてしまう。
それを確認して近付いてくる封魔から庇うように麗香を背後に隠すと、舞は彼を睨み付けた。
「封魔!」
「「封魔様!!」」
その時、そう声がして、神蘭達が現れた。
3
「封魔、何して……」
身体を起こしている聖羅と剣を抜いている封魔を見て、神蘭が戸惑ったように問い掛ける。
「…………」
「……なるほどね。これが貴方の答えと思っていいのかしら?」
「星蓮さん?」
無言のままの封魔に星蓮が言い、舞は彼女を見た。
「前に私と会った時、貴方はある目的があると言ってた。今其方にいるということは、その目的が【其方】でなければならないということかしら?」
「…………」
「無言は肯定と見なすわ。……でも、意外ね。一番魔神族を恨んでいるのは、貴方だと私は思っていたんだけど?」
何の意図があるのか、話し掛け続ける星蓮に、誰もが警戒しつつも戸惑っているのがわかる。
そんな中で不意に封魔が皮肉気に笑った。
「……何のつもりだ?」
「別に深い意味はないわ。ただ、私には神帝に報告する義務があるのよ」
「…….だとしても、今、答える訳にはいかないな」
そう言った封魔が誰かを見た気がしたが、その視線は直ぐに逸らされた。
「……ここは一度退かせてもらう」
「この状況で逃げられると思うのか?」
「ああ」
飛影に封魔が頷いた時、彼の背後の空間が歪んだのがわかった。
「「「「「「「!」」」」」」」
「「封魔様!」」
それに光輝や夜天、神蘭達が反応し、封魔の部下だと名乗った星夜と楓が声を上げたが、封魔はその中へと姿を消していった。
「……逃げられたな」
「でも、今のは……」
「……刹那の力だろうな」
莉鳳と星蓮の声に夜天が返す。
(刹那って、確か……)
「……先輩と一緒にいるはずだって言ってた人?」
「今のがそいつの能力だっていうのか?」
「ああ。間違いない」
飛影に夜天が頷く。
その声を聞きながら舞は、封魔が姿を消した辺りをじっと見ている神蘭達の様子を伺い、溜息をついた。
(先回りされてた!?)
屋敷を抜け出すことも、此方の方に逃げてくることも読まれていたのかと舞は息をのむ。
「……悪いな。……此処で逃す訳にはいかないんだ」
「「「!?」」」
それでも相手が一人ならどうにか出来るのではないかと思っていた時、前に立つ人物が口を開く。
その声にか言葉にかはわからないが、光輝、夜天、聖羅が目を見開いたのがわかった。
「……お前、まさか……、本当に……」
「……このタイミングで現れるかよ、普通……」
「知ってる人なの?」
呟いた光輝と夜天に舞が問い掛けたと同時に、聖羅が前に出た。
「……知ってるわ。彼等は一年前から、私は数百年も前からね」
「えっ?」
「……その格好、似合ってないわね。……それに、その姿を見てると正直、頭にきてしょうがないの。……直ぐに脱いで戻ってきなさい。……封魔!」
「「!!」」
聖羅が呼んだ名に、舞と麗香は驚いて視線を向ける。
その名は情報交換をしていた時に何度か出てきていたものだった。
「今ならまだ戻ってこれるわ。奪った封印具を返して、ちゃんと説明してくれれば……」
「……それは無理ですね。今話したところで、誰も信じはしない。……俺は俺の目的を果たすだけ」
言いながらフードを外した封魔の目が舞の方へ向けられる。
(私?……ううん、違う)
自分を見ていると思ったが、すぐに少しずれていることに気付く。
彼が見ているのは、麗香だった。
(やっぱり、狙われているのは麗香!!)
「……悪いことは言わない。そいつを渡してくれさえすれば、危害は加えない」
「って言われてもな」
「……前のお前の言うことなら聞いたかもしれないけど」
光輝と夜天の言葉に封魔の目が細められる。
「止めなさい、封魔!取り返しがつかなくなるわよ!!」
聖羅が声を上げるが、彼は剣の柄に手を掛ける。
「っ!!」
それを見た聖羅が上空に向けて、光弾を放つ。
宙で弾けたそれは何かの合図のように見えた。
2
それを確認した封魔が剣を引き抜き、地を蹴る。
だが、斬りかかってきた剣は聖羅の結界に阻まれ、火花を散らしただけだった。
「ちっ!」
「待って!手を出さないで!……大丈夫。さっきので神蘭達が気付いた筈、皆が来るまで私にも防いでいることくらいできるから!それより、二人は……」
封魔に攻撃しようとした光輝を止めた聖羅が視線を動かす。
そこにはいつの間にか仮面を付けた者達がいた。
「夜天!」
「ああ!」
それを確認した光輝と夜天が向かっていく。
「二人は私の傍に」
聖羅が言って、封魔へと視線を戻す。
そこでは一度距離を取っていた封魔が剣を構え直していた。
「はあっ!!」
さっきとは構えが違う気がして、舞が様子を伺っていると、封魔は今度は距離を保ったまま剣を振るう。
「っ!!」
そこから放たれた衝撃波が結界へとぶつかる。
それから立て続けに衝撃波が叩き込まれ、耐えられなくなったらしい聖羅が吹き飛ばされてしまう。
それを確認して近付いてくる封魔から庇うように麗香を背後に隠すと、舞は彼を睨み付けた。
「封魔!」
「「封魔様!!」」
その時、そう声がして、神蘭達が現れた。
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「封魔、何して……」
身体を起こしている聖羅と剣を抜いている封魔を見て、神蘭が戸惑ったように問い掛ける。
「…………」
「……なるほどね。これが貴方の答えと思っていいのかしら?」
「星蓮さん?」
無言のままの封魔に星蓮が言い、舞は彼女を見た。
「前に私と会った時、貴方はある目的があると言ってた。今其方にいるということは、その目的が【其方】でなければならないということかしら?」
「…………」
「無言は肯定と見なすわ。……でも、意外ね。一番魔神族を恨んでいるのは、貴方だと私は思っていたんだけど?」
何の意図があるのか、話し掛け続ける星蓮に、誰もが警戒しつつも戸惑っているのがわかる。
そんな中で不意に封魔が皮肉気に笑った。
「……何のつもりだ?」
「別に深い意味はないわ。ただ、私には神帝に報告する義務があるのよ」
「…….だとしても、今、答える訳にはいかないな」
そう言った封魔が誰かを見た気がしたが、その視線は直ぐに逸らされた。
「……ここは一度退かせてもらう」
「この状況で逃げられると思うのか?」
「ああ」
飛影に封魔が頷いた時、彼の背後の空間が歪んだのがわかった。
「「「「「「「!」」」」」」」
「「封魔様!」」
それに光輝や夜天、神蘭達が反応し、封魔の部下だと名乗った星夜と楓が声を上げたが、封魔はその中へと姿を消していった。
「……逃げられたな」
「でも、今のは……」
「……刹那の力だろうな」
莉鳳と星蓮の声に夜天が返す。
(刹那って、確か……)
「……先輩と一緒にいるはずだって言ってた人?」
「今のがそいつの能力だっていうのか?」
「ああ。間違いない」
飛影に夜天が頷く。
その声を聞きながら舞は、封魔が姿を消した辺りをじっと見ている神蘭達の様子を伺い、溜息をついた。