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第2章

1
「……はぁっ……」
襲撃してきた魔神族が撤退してから戻って来た屋敷で、溜め息をついたのは光輝だった。
「……まだ復興してから少ししか経ってないのに、前程の被害ではないとはいえ、また直すところが出来るなんて……」
そう呟き頭を抱え込んでいる光輝を見つつ、舞は何かを話し合っている様子の神蘭達の方へ視線を移す。
彼女達はやはり襲撃中に現れた封魔のことについて話をしているようだった。
「ねぇ、舞」
そんな時、麗香が声を掛けてくる。
彼女を見ると、不安そうな表情をしていた。
「麗香、どうしたの?」
「……うん。……どうして、あの人達は私のことを狙ってくるのかなって思って……、私はあの人達の何なんだろう?」
「……」
そう言われても、舞は何と返せばいいのかわからず、事情を知っていそうな飛影を見た。
「貴方達なら何か知ってるんじゃないの?」
「それは……」
飛影が答えようとした時、ドアが開いて今まで部屋にはいなかった夜天が入ってきた。
「とりあえず、父上と母上にはさっきまでのことを報告してきた。それと、一つ悪い知らせがある」
「悪い知らせだって?」
夜天の言葉に光輝が顔を上げる。
「……ああ」
頷いた夜天の表情は固かった。
「先程入ってきた情報なんだがな、水蓮達の力が奪われたそうだ」
「何?」
光輝が低い声で呟き、それまで話し合っていた神蘭達が夜天の方を見る。
「……今の話、一体どういうことだ?」
「詳しくはまだ何とも……。火焔と水蓮、大樹が来るとは言ってたけどな」
「来るのは三人か?」
「とりあえずはな。近いから先に三人が来るだけで、他の奴等も後から来るんだろうけど」
夜天が溜め息をつく。
「…….何?力を奪われたって、どういうこと?」
何のことか分からず、舞は戸惑ったように部屋の中を見回す。
その時、光輝が自分の掌に光の球のような物を作ってみせた。
「俺達この世界の住人は其々種族ごとに特殊な力を持っている。俺は光、そこにいる夜天は闇、他にも火、水、雷、地など色んな力を持つ奴等がいるんだ」
「つまり、その力が使えなくなってしまったってこと?」
「そういうことだ。……ったく、これから一体何が起きようとしているんだ?」
手にあった光球を消し、光輝は溜め息をついた。
2
連絡を受けた二日後、光の街には火焔、水蓮、大樹の姿があった。
「それで力を奪われたと言っていたけど、何があった?」
「ああ。数日前の話だ」
問い掛けた光輝に、火焔が話し出す。
城に現れた仮面をつけた者達。
その者達に能力と宝珠を奪われたこと。
その者達が次々と様々な種族を襲い、それを繰り返していること。
「あと力を奪われていないのは、花音と雷牙、刹那、星夢を除いたらあんた達だけよ」
水蓮が光輝と夜天にそう言う。
「でも、この間来た奴等は、俺達には何もする気はなかったみたいだったけどな」
「……って、何だよ。襲撃自体はあったのか?」
「ああ」
火焔に頷いた夜天がチラっと舞の横にいる麗香を見た。
「……なるほど。別の目的があった訳か」
「前の戦いと同じく、安全な場所なんてないってことね」
視線で何があったのか察したらしい大樹が呟き、水蓮がうんざりしたように言う。
「でも、俺達以外の奴等も遅かれ早かれ此処に来るんだろう?もし本当に狙われているのが此処だとしたら、やっぱりばらけていた方がいいんじゃないか?」
「いや……」
その言葉に神蘭が首を横に振った。
「奴等が狙うのが力だけとは限らない。何があるかわからない以上、私達の目の届く範囲にいてほしい」
「……まぁ、その方が俺達からしても何かあった時に対処しやすいからな」
神蘭に続けて、龍牙が言う。
「だな。どのみち、此処に一度集まるつもりだったんだろ?予定通り、他の奴等にも来てもらっていいんじゃないか?」
「やっぱり、此処を拠点にするつもりかよ……」
「まぁ、仕方ないだろ。お前の許可さえあればいいんだからな」
「今はいないけど、花音ならあっさり許可しそうだけどね」
「……だから、漸く一年前の戦いから復興したっていうのに……」
白夜、夜天、水蓮に言われ、光輝はがくりと肩を落とした。
3
「…………」
数時間後、舞は光輝から与えられた部屋で少し頭の中を整理していた。
(何だかここ数日、慌ただしいなぁ)
そう思いつつ、溜め息をつく。
危機を知らせに来たのに、その相手である花音には相変わらず会えていない。
(先輩、今何処で何をしているんだろう?)
そんな事を思っていると、部屋のドアが叩かれ、麗香が顔を出した。
「麗香、どうしたの?」
「後から来るっていってた人達が着いたらしいよ。これから紹介するから、集まってくれだって」
「うん。わかった」
そう返して軽く身なりを整えると、待ってくれていた麗香の所へ近付く。
「やっと少しはゆっくり出来ると思ったのにね」
「……仕方ないよ。紹介が終われば、今度こそゆっくりと休めるんじゃないかな」
苦笑しながら言う麗香に、同じく苦笑いを返す。
「そうだといいけど……」
「……あはは、……とにかく、行こうか」
溜め息をつく麗香に、舞はそう言い、歩き出した。
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