第21章
1
先程より力が集まったのを感じる。
(今なら……いける! )
「……どいて! 」
前にいる飛影、風夜、封魔に叫んで、剣を振り上げる。
「いっけぇー!! 」
三人が飛び退いたのに合わせて、剣を振り下ろす。
放った剣圧が大剣の顔が放ったものとぶつかり合い、そこに少し遅れて、花音と神蘭が放ったものが合わさる。
その瞬間、自分達の力が完全に上回ったのを感じた。
花音と神蘭に視線をやり、二人が頷くのを確認する。
「「「はああああっ! 」」」
『ぐあああああっ! 』
溜めていた力を一気に解放すると、飛影達との攻防で威力が落ちていたのだろう剣圧を押し返していく。
堪えることが出来なかったのだろう、大剣の顔の絶叫が聞こえ、辺り一面が光に包まれる。
光が止んだ時には宙に浮いていた筈の大剣は地へと突き刺さっていた。
「…………」
警戒しながらも近付いていき、大剣の鍔の部分を覗き込む。
そこにはただ水晶があるだけで、凶悪な顔は見えなかった。
「……いなくなってる」
「さっきので消えたのかな? 」
背後から近付いてきた花音が言う。
「それならいいんだけど……」
もう一度大剣を見る。
何故かまだ終わったような気がしない 。
その予感が当たったのは、それからすぐのことだった。
2
「!! 」
僅かだが感じ取れた気配に、舞は視線を向ける。
そこでは水晶から抜け出したのだろう 、魔宝具の顔が身体を得て、宙に浮いていた。
『くそっ……、このままで終わるとは思うなよ。今回は負けてしまったが、再び眠れば力は回復する。だが、その前に……』
そう言った元大剣の顔は、何か品定めをするような笑みを浮かべると、ふわふわと移動していく。
それを視線で追い掛けていくと、その顔は飛影、風夜、封魔の頭上で止まり 、消耗しきって膝をついている三人をニヤニヤと見下ろしていた。
『俺様が眠る前に器を探さないとなぁ 。……ちょうどいい具合に、次の器によさそうなのが三人もいる』
三人の間を飛び回って、嬉しそうに続ける。
『三人全員っていうのも……有りかもなぁ! 』
疲労困憊といった様子の三人に対し、言ったかと思うとその目が光る。
「「「っ……! 」」」
その瞬間、膝をついていた三人の身体が痙攣し、目を見開いた。
「どうした!? 」
異変に気付いた神蘭が声を掛ける。
「……待……て……、今は……駄目だ ……」
治癒を行おうとしたのだろう花音に、風夜が制止の声を上げる。
「えっ!? 」
「……今、俺達を……回復……したら ……」
その言葉がどういうことかわからないようで戸惑っている花音が視線を向けてくる。
(これは……)
視線を受けて、舞が気配を読むと、何故か三人を魔宝具の顔のものだろう力が包んでいた。
『やっぱりなぁ……。三人共、俺様と波長が合いそうだ。では、早速……、俺様の器になってもらおうかぁ』
「……くっそ……」
「……っ……、花音、離れろ」
「っ! 」
飛影が舌打ちし、風夜が近くにいた花音を突き飛ばす。
言葉を発することはなかったが、何かを堪えるような抵抗しているような封魔の顔を見て、次に楽しそうな魔宝具の顔を見る。
その瞬間、自分の中で何かが切れたのを感じた。
3
「……いい加減にしなよ」
『ん? 』
自分でも低い声が出た気がする。
それに魔宝具の顔が視線を向けてきた 。
『何だぁ?俺は今忙しいんだ。器になれない奴は黙ってろ』
「……悪いけど、その器の件、諦めてもらうよ」
言いつつ、舞は手を翳す。
『ちょ……、待て……! 』
「回復なんてさせないよ。……あなたは、ここで消えて」
そう言ったのは舞だったのか、自分の中の〈天華〉だったのか。
判断は出来なかったが、次の瞬間、舞は宙にいる大剣の顔に向けて力を放っていた。
『ぎゃあああ! 』
悲鳴が徐々に小さくなっていく。
その声が聞こえなくなり、一つの力と気配が消えるのを感じて、舞は力の放出を止める。
一応、視線を巡らせて周囲を確認すると、今度こそ大剣の顔は見えなかった 。
(……やっと終わったかな? )
内心で呟いていると、少し離れた場所から倒れるような音がする。
そこでは既に限界を越えていた飛影、風夜、封魔が倒れていた。
「……っ!! 」
花音と神蘭が駆け寄っていくのを見て 、舞も行こうとして立ち眩みがして座り込む。
身体中が重くて怠い。
(……ちょっと、力を使い過ぎたかな ……)
座り込み、次に感じた強烈な眠気に、舞は内心で呟く。
一度それを自覚してしまうと、もう抗うことが出来なくなってしまう。
意識が落ちる前、最後に見たのは驚いたように名を呼ぶ花音と、通信機で誰かに連絡をとっている神蘭の姿だった 。
先程より力が集まったのを感じる。
(今なら……いける! )
「……どいて! 」
前にいる飛影、風夜、封魔に叫んで、剣を振り上げる。
「いっけぇー!! 」
三人が飛び退いたのに合わせて、剣を振り下ろす。
放った剣圧が大剣の顔が放ったものとぶつかり合い、そこに少し遅れて、花音と神蘭が放ったものが合わさる。
その瞬間、自分達の力が完全に上回ったのを感じた。
花音と神蘭に視線をやり、二人が頷くのを確認する。
「「「はああああっ! 」」」
『ぐあああああっ! 』
溜めていた力を一気に解放すると、飛影達との攻防で威力が落ちていたのだろう剣圧を押し返していく。
堪えることが出来なかったのだろう、大剣の顔の絶叫が聞こえ、辺り一面が光に包まれる。
光が止んだ時には宙に浮いていた筈の大剣は地へと突き刺さっていた。
「…………」
警戒しながらも近付いていき、大剣の鍔の部分を覗き込む。
そこにはただ水晶があるだけで、凶悪な顔は見えなかった。
「……いなくなってる」
「さっきので消えたのかな? 」
背後から近付いてきた花音が言う。
「それならいいんだけど……」
もう一度大剣を見る。
何故かまだ終わったような気がしない 。
その予感が当たったのは、それからすぐのことだった。
2
「!! 」
僅かだが感じ取れた気配に、舞は視線を向ける。
そこでは水晶から抜け出したのだろう 、魔宝具の顔が身体を得て、宙に浮いていた。
『くそっ……、このままで終わるとは思うなよ。今回は負けてしまったが、再び眠れば力は回復する。だが、その前に……』
そう言った元大剣の顔は、何か品定めをするような笑みを浮かべると、ふわふわと移動していく。
それを視線で追い掛けていくと、その顔は飛影、風夜、封魔の頭上で止まり 、消耗しきって膝をついている三人をニヤニヤと見下ろしていた。
『俺様が眠る前に器を探さないとなぁ 。……ちょうどいい具合に、次の器によさそうなのが三人もいる』
三人の間を飛び回って、嬉しそうに続ける。
『三人全員っていうのも……有りかもなぁ! 』
疲労困憊といった様子の三人に対し、言ったかと思うとその目が光る。
「「「っ……! 」」」
その瞬間、膝をついていた三人の身体が痙攣し、目を見開いた。
「どうした!? 」
異変に気付いた神蘭が声を掛ける。
「……待……て……、今は……駄目だ ……」
治癒を行おうとしたのだろう花音に、風夜が制止の声を上げる。
「えっ!? 」
「……今、俺達を……回復……したら ……」
その言葉がどういうことかわからないようで戸惑っている花音が視線を向けてくる。
(これは……)
視線を受けて、舞が気配を読むと、何故か三人を魔宝具の顔のものだろう力が包んでいた。
『やっぱりなぁ……。三人共、俺様と波長が合いそうだ。では、早速……、俺様の器になってもらおうかぁ』
「……くっそ……」
「……っ……、花音、離れろ」
「っ! 」
飛影が舌打ちし、風夜が近くにいた花音を突き飛ばす。
言葉を発することはなかったが、何かを堪えるような抵抗しているような封魔の顔を見て、次に楽しそうな魔宝具の顔を見る。
その瞬間、自分の中で何かが切れたのを感じた。
3
「……いい加減にしなよ」
『ん? 』
自分でも低い声が出た気がする。
それに魔宝具の顔が視線を向けてきた 。
『何だぁ?俺は今忙しいんだ。器になれない奴は黙ってろ』
「……悪いけど、その器の件、諦めてもらうよ」
言いつつ、舞は手を翳す。
『ちょ……、待て……! 』
「回復なんてさせないよ。……あなたは、ここで消えて」
そう言ったのは舞だったのか、自分の中の〈天華〉だったのか。
判断は出来なかったが、次の瞬間、舞は宙にいる大剣の顔に向けて力を放っていた。
『ぎゃあああ! 』
悲鳴が徐々に小さくなっていく。
その声が聞こえなくなり、一つの力と気配が消えるのを感じて、舞は力の放出を止める。
一応、視線を巡らせて周囲を確認すると、今度こそ大剣の顔は見えなかった 。
(……やっと終わったかな? )
内心で呟いていると、少し離れた場所から倒れるような音がする。
そこでは既に限界を越えていた飛影、風夜、封魔が倒れていた。
「……っ!! 」
花音と神蘭が駆け寄っていくのを見て 、舞も行こうとして立ち眩みがして座り込む。
身体中が重くて怠い。
(……ちょっと、力を使い過ぎたかな ……)
座り込み、次に感じた強烈な眠気に、舞は内心で呟く。
一度それを自覚してしまうと、もう抗うことが出来なくなってしまう。
意識が落ちる前、最後に見たのは驚いたように名を呼ぶ花音と、通信機で誰かに連絡をとっている神蘭の姿だった 。