短編小説

【主な登場人物】
・少年のセオドール王子
・少年のティモ
・その他、ティモの家族たち等

【注意】
・容姿を嘲る表現がございます






『風と友達になった日』




「やーい、ブサイク!」

「その腹に何が入ってんだよ、デブ!!」

「チビデブブサイクの三拍子がそろってるなんて、逆にスゲーよなぁ! あはは!」

自分が物心ついた頃から―いや、おそらくそれ以前から投げつけられていたであろう、言葉の暴力の数々。
それらは残酷で無慈悲で、どこまでも陰湿だった。

□■□

ティモシー・スラウリ、呼び名はティモ。
スラウリ家の8人きょうだいの末っ子である彼は、生まれ持った外見のせいで、愛されるどころか、きょうだい達からも周りの貴族の子ども達からも馬鹿にされる日々を送っていた。
幼いティモは、その仕打ちに耐えるしかない。

…訳がなかった。

ティモはおそろしく、負けん気の強い子どもだったのだ。
自分に悪口を吐いてくる奴等を、持ち前の腕力と脚力で殴りつけたり、蹴り飛ばしたりしていた。
ティモはケンカにも強かったのだ。
しかし、多勢に無勢、あまりにも分が悪かった。
誰かを殴ると、仲間連中が仕返しに来る。
誰かを蹴りつけた後は、その何倍もの仕返しがやって来る。

それでも、ティモはけして折れなかった。
周囲の大人達も味方になってくれないのだから、自分で何とかするしかないのだ。

□■□

ティモの家系であるスラウリ家は、かつては大河の水運業を牛耳る名家であり、今でも尚、王都では強い影響力を持つ上流貴族である。
また、美男美女が多い家柄としても有名だった。

…末っ子のティモを除いては。

あまりにも他のきょうだい達と容姿が異なるため、母は不貞を疑われてしまい、そのため彼女はティモになるべく関わらないようになってしまった。

父も母もきょうだい達も、外面とプライドの高さだけは一丁前だった。
そして、家族の中で唯一「異質な存在」であるティモを軽んじることで、「家族の団結力」を高めているように見えた。

そんな家族のことが、ティモはずっと嫌いで嫌いで仕方がなかった。

末息子で、しかも一族にとって「お荷物」な自分が家業を継ぐことは、万に一もありえない。
それならば、こんなクソみたいな家とは早々に縁を切りたい。
ティモは常々そう思っていた。

―どこか、別の貴族の家に奉公に出るか、それとも自身で事業を立ち上げるか。

どちらにしても、まずは知識が必要だ。
馬鹿な兄・姉たちが社交界と恋愛にうつつを抜かしている間に、ティモはあらゆる勉学、特に経営学を熱心に学んでいた。

勉学を続けた影響か、苛めに対するティモの報復方法も、徐々に変わっていった。
昔は力にものを言わせてやり返していたが、相手の弱みを徹底的に調べ上げ、それを元に精神的に追い詰めるという狡猾な手段を取るようになった。

「情報を制する者が、戦いを制する」

なるほど、そのようになった。
次々と弱みを握られていったきょうだい達や周りの貴族の子ども達は、ティモへの嫌がらせをやめるようになった。
代わりに、彼らはティモを「最初から存在しないもの」のように扱い始めたが、ティモにとってはそちらの方がはるかにマシだった。

□■□

とある日。
スラウリ家の屋敷玄関の前に、何やら立派な馬車がとまっているのを、ティモは自室から見かけた。
遠目からでも分かるほどに毛艶の良い4頭の馬と、身なりの良い御者、そして美しい装飾をほどこされた車体。

―あんなに立派な馬車は見たことが無い。おそらく、自分たちよりも格上の貴族のものだろう…。
ティモはそう結論づけた。

来客が来ることは家族の誰からも告げられていないが、数日前から父や母、きょうだい達全員が浮足立っていたのは、このせいだったらしい。

窓から馬車を見下ろすティモに気付いた使用人は一言、「ティモ様は一階の応接間に行ってはならないとのご命令です」とだけ告げた。

自分はこの来客に「家族」として紹介されることはないということか。

―そうだよなぁ、俺はこの家では「存在しない人間」だもんな。

この時、ティモはまだ11歳の少年だったが、もはや自分の人生に対して、達観した心持ちになっていた。

「…一階の応接間にさえ行かなければいいんだろう?」

使用人にそう吐き捨て、来客一行と出会わないようにティモはそっと外の庭へと抜け出した。
空の青さと、気候の良さが忌々しかった。

―ああ、馬鹿らしい。全てが、馬鹿らしい。見た目が違うだけで、こんなにも理不尽な扱いを受けるものなのか。神様は実に不公平なものだ。

庭にあったベンチに腰をかけ、ティモは自分の人生を恨んだ。
「達観した気持ちになっていた」のは、強がりだったかもしれない。
本当は……。

―もっと美しい外見で生まれたかった。
―もっと愛らしい姿に生まれてきたかった。
そうすれば、自分の人生はきっと、もっと良いものになっただろうに。

ティモの心は、暗く沈んだ。



と、その時。

「こんにちは!」

突然、見知らぬ少年がティモの前にやって来て、元気な挨拶をしてきたのだ。

「うわっ!?」

ティモは心底、驚いた。まさかこんな所で、家族や使用人以外の誰かと出会うとは思ってもみなかったのだ。

「びっくりした…」

驚いたティモは、声を掛けてきた目の前の少年を凝視した。

「ごめんなさい、驚かせてしまって…」

申し訳なさそうに謝る少年は、とても愛らしい顔をしている。
黒髪と黒目が、太陽の光を浴びてきらきらと輝いているように見えた。
見るからに仕立ての良い、美しい純白の服には豪華な金色の刺繍がほどこされていた。
どう見ても、上流階級出身の少年だ。
年齢は自分とそう変わらないように見えるが、スラリとしていて背も高く、優雅な服装がよく似合っていた。

……全てが、自分とは真逆。

美しい少年と、醜い自分。

ティモは羞恥心と嫉妬心に駆られ、その場にいることができなかった。
声を掛けてきた少年をキッと睨みつけ、足早にその場を去ろうとした。

「あ、待って!」

少年の声が後ろから聞こえたが、ティモは無視をした。

―あんなに容姿に恵まれた子と一緒にいたくない。隣に並びたくない。…関わり合いたくもない。
きっと、向こうも自分なんかに興味は無いだろう。

…と思っていたら。

「待ってってば!」

後ろから、ぎゅっと腕を掴まれた。

「うわっ…!?」

存外に強い力で掴まれたため、ティモは再び驚いた。

「な…、何なんだよ…!?」

黒髪の少年は、ティモの声に臆することなく、腕をしっかり掴んだままである。

「ちょ、ちょっと…離せよ…」

「僕の質問に答えてくれたら、手を離すよ」

少年の目は、まっすぐ自分の目を見ている。相変わらず、ティモの腕は掴まれたままだ。
10秒近くの無言の攻防戦の末、根負けしたティモが「分かった、分かったから。早く離してくれ…」と降参する羽目になった。

すると、黒髪の少年は「やった!」と心底嬉しそうに叫んだ。コロコロと表情や声が変わる子だ。

ティモは、訳が分からなかった。こんな子は、ティモの人生の中で初めて出会ったタイプの子だ。

「君は、この家の子?」

少年の質問に、ティモの顔は曇った。

―この家の連中は、そうじゃないことを願ってるんだろうけどな。

でも目の前のその子に言えるはずもなく。

「…ああ、まぁ…一応、な」と曖昧に答えた。

―この子も、俺のことを馬鹿にするのかな。
「ご両親やごきょうだいと全然似てないんだね」とか。
「君はどうしてそんなに太っているの?」とか…。

他の奴等に言われるのは慣れっこだったが…、何故だろう。
この少年にだけは、そう言われたくないと感じてしまった。

「そう。あのね、もし良かったらなんだけど…、この庭を案内してもらえないかな? …駄目かな?」

少年の反応は、ティモの想定外のことだった。

「え、庭を…?」

「うん! 君の家の庭は、とても綺麗だね! さっき玄関から入る時に、珍しい花が咲いているなぁと思って。あと、あそこの噴水をもっと近くで見たくて!」

少年の黒い瞳の中に、火花が輝いているように見えた。
声も興奮気味で、本当に興味があってお願いしているのだということがよく分かった。

「まぁ…別にいいけど」

「本当!? ありがとう!」

笑顔が、とても眩しかった。
すると少年は、後ろから付いて来ていた護衛らしき男達(4人もいる!)の方に顔を向け、「…ちょっとだけ、良いかな…?」と申し訳なさそうにお願いをしていた。
一番手前にいた男が、やれやれ…といった表情で肩をすくめ、「少しだけですよ」と言った。
もしかしたら、こういったやり取りは彼らにとってよくあることなのかもしれない。

許可を得た少年は、満面の笑みを浮かべて、再びティモの方に向き直った。

「やった! …えっと…あ、いけない。自己紹介がまだだったね」

はたと気付いた少年は、慣れた手つきで身なりを整え、優雅にお辞儀をしてみせた。

「初めまして。僕はセオドールと申します。以後、どうぞお見知りおきを」

…すいぶんと仰々しい自己紹介に、ティモはあっけにとられてしまった。
そんなティモの様子を見て、セオドールは少し不安そうな表情を見せた。

「…もしかして、僕、何か失礼なことを言ったかな…?」

ハッとしたティモは、慌ててそれを否定する。

「あ、いや、違う違う! その…君の挨拶の仕方がとても…礼儀正しかったから、びっくりしただけ!」

「そう…? なら良かった」

セオドールは再び笑顔になった。その微笑みは、ティモの周りでは見たことがないような、純粋で、とても綺麗なものだった。

「君の名前も聞いてもいいかな?」

「あ、ああ、そうだった。えっと、俺はティモシーだ…いや、ティモシーと、申します…。みんなティモって呼んでるから、ティモで良いよ。…あ~、その、ティモと呼んでください、ませ…? よろしく、どうぞ…??」

セオドールの笑顔に見とれていたこと、そして彼の挨拶を真似しようとして、ティモはよく分からない自己紹介をしてしまった。

―しまった、これじゃあ馬鹿みたいじゃないか!

ティモは恥ずかしさのあまり、頭を抱えそうになったが、セオドールは「ふふっ」と柔らかく笑って、握手を求めてきた。

「よろしくね、ティモ」

ティモが握った彼の手はとても柔らかく、そして温かかった。

初対面の人間に自分の外見をじろじろと見られたり、露骨に嗤われたりするのが常だったティモは、この瞬間、不思議な高揚感に包まれた。
目の前にいるこの子は、明らかに他の奴等とは違う…。

□■□

それから、ティモはセオドールに庭を案内した。
庭園の入り口に、先程セオドールが「珍しい花」と言っていた大ぶりの花が咲いている。

「そうそう、この花! この国ではあまり見ない品種だよね。ティモはこの花の名前を知ってる?」

濃いピンクの花を興味深そうに眺めながら、セオドールはティモに問いかけた。

「ええっと…何だったかな…。最近、図鑑で見たことがあったんだけど…。…確か、ボタン、だったかな…?」

ティモは記憶力がとても良く、一度読んだ本の内容は大体覚えている。知識を付けるために片っ端から読んだ本の中には、植物の図鑑もあった。
ただ、記憶力は良くとも、ティモは花にあまり関心が無かったため、正直なところ、名前があっているかは分からない。

「ああ、ボタン! そうだ、僕も図鑑で見たことがある。東の国が原産地だったよね? 実物は初めて見たよ! とても綺麗…」

どうやら、名前は合っていたらしい。
咲き誇るボタンの花に囲まれたセオドールの姿は、まるで絵画のモデルのようだった。

その後も、ティモは自分の知る限りの知識を総動員させて、セオドールに庭園を案内してみせた。
後ろから付き従う護衛達は少々退屈そうだったが、セオドール自身は好奇心の塊のような子で、あれこれと質問をしてくる。
答えに窮する質問もあったが、セオドールは「すごい、ティモって物知りなんだね!」としきりに褒めてくれた。
ティモから見れば、セオドールの方がよほど博識だったが、彼からは上流階級特有の高慢さや人を見下すそぶりは一切感じなかった。

「世の中には、こんなに賢くて性格のいい子がいるのか…」と、ティモは感心しきりだった。
自分の周りにいる人間ときたら、外見は良いものの、口を開けば他人の悪口や下らない噂話、それに自意識過剰な戯言ばかりを言う馬鹿ばかりだというのに。

あいつらの下品さと言ったら、本当に下らない―……

そう思ったところで、ティモはハッとした。

…こんな風に周りを見下している俺も…あいつらと似た者同士かもしれない。

―そうだ…セオドールの姿を見た時。俺はすぐにこの子の外見を見てしまった。そして、勝手に嫉妬して、挙句の果てには彼のことを無視してしまった。

最低じゃないか。

―…俺も結局、あいつらと同じことをしていたのか…。

「ティモ? どうかした? 気分でも悪いの?」

急に無口になったティモを心配したセオドールが、声を掛ける。

「ああ…ごめん、何でもない」

「そう?」

セオドールの笑顔を曇らせたくなくて、ティモは笑ってみせた。

□■□

「ティモ、庭をたくさん案内してくれてありがとう! もし良かったら…今度は君の話が聞きたいな」

「…俺の?」

ティモは少し戸惑ったが、同時に嬉しくも思った。
自分の話を聞きたいと言ってくれる人が、今までに全くいなかったからだ。

「うん! 例えば…そうだなぁ。ティモは何をするのが好き?」

「何を…」

―何を、するのが好き?

真っ先に思い浮かんだことは、「食べること。特に、甘いものには目がない」だったが…、食い意地の張った卑しい奴だと思われるのが恥ずかしくて、言うのをやめた。

他にも、今熱心に取り組んでいることと言えば読書ではあるが…、それは将来自立した生活を送るためにやっていることで、「好きだからしている」とは違う気がした。

…「俺を馬鹿にしてきた連中の弱みを握って、復讐してやるのが好き」?
いやいや、それも駄目だ! そんなことは、セオドールに言えるわけがない。

しばらくの間、ティモは答えを絞り出そうとうんうんと唸っていた。その間、セオドールは口をはさまず、辛抱強くティモの返答を待ってくれていた。

「…走るのが」

ようやく、ティモの口が開いた。

「走るのが、好きかな」

「走るのが?」

ティモはゆっくりと、言葉を選びながら話し始めた。

「そう。走るのが、好きだな。俺はこう見えて足がすごく速いんだ。むしゃくしゃした時、近くの草原に行って…思いっきり走るんだ。そうしたら、頭が少しスッキリする。
走ってる時は…そうだな、風になった気分だ」

「風に…」

「ああ。自由な風だ。どこにだって、行ける」

「…自由な風、どこにだって、行ける…」

セオドールは少しうつむき、ティモの言葉を反復する。

その様子を見て、ティモは急に恥ずかしくなってきた。

「あっ、でも、アレだよな、こんなデブな俺が『足が速い』って言っても、信じてもらえないよな! ごめんな、馬鹿なことを言って…」

「信じるよ」

セオドールが、珍しくティモの話をさえぎった。

「ティモの言ってること、信じるよ」

彼は、至極真面目な顔で、ティモの瞳を見つめた。

「だって、ティモの言葉と声に嘘を感じなかったもの。それに…」

そう言うと、セオドールはティモの足を見た。

「ティモの足って、すごく筋肉質だもの。庭を案内してくれた時だって、動きがすごく機敏だった」

ティモはセオドールの観察眼に、心底驚いた。
この短い間に、そんなところまで見ていたとは。

しかし、驚いた表情のティモを見て、セオドールは「しまった…」と小さく呟いた。

「ごめんなさい、普通はそんなところまで見ないよね…。『足を見てた』だなんて、気持ち悪いよね…」

「えっ!? いや、そんなことは…、確かに、びっくりはしたけど…」

「…父上や母上からも、よく𠮟られるんだ…。『お前は好奇心が強すぎる。もっと落ち着いた振る舞いをしなさい』って…」

しゅん、としたセオドールの姿を見て、ティモはいたたまれない気持ちになってしまった。

―こんなに利発で、気遣いができる子なのに、そんなことを言われてしまうのか…。

上流階級の子どもは大変だな…とティモは思った。自身も、一応は伯爵家の子どもなのだが。

しんみりとした空気を変えたくて、ティモはセオドールにある「提案」を持ちかけてみた。

「…あそこの木まで、一緒に走ってみないか?」

そう言われたセオドールは、一瞬きょとんとした顔になったが、すぐに高揚した様子になった。

「うん! やってみたい!」

「じゃあ、競走だな。まぁ、俺が勝つと思うけど?」

ティモがわざと意地悪っぽく言うと、セオドールは「そんなの、やってみないと分からないじゃないか!」とぷりぷり怒っていた。
そんな顔も可愛いなと、ティモは思ってしまった。

今二人がいるところから、その木までは約20mはあるだろうか。

「よし、じゃあ、3、2、1でスタートな」

子ども二人の様子を見て、護衛の男達は少し焦った様子だったが、そんなことはお構いなしだ。

「3、2、1、スタート!」

□■□

差は圧倒的だった。
ティモは本当に、一陣の風のように、セオドールの隣を吹き抜けていった。
息を切らしたセオドールの表情には、負けた悔しさよりも尊敬の意が見てとれた。

「すごい…! 驚いたよ、ティモってば本当に、風みたいだった!!」

セオドールは、宝石のように輝く瞳を向けながら、「すごく、格好良かった!」と讃美の言葉をかけてくれた。

その時、ティモは自分の世界が完全に変わってしまったと確信した。

ティモにとっては、むしろ、セオドールの方が「暗く沈んだ自分の心に吹き抜けた風」のように感じられたのだ。

―この子ともっと仲良くなりたい。
―この子が見ている世界を、一緒に見てみたい。

強い願望が湧いてきた。

「…セオドール。もし良かったら…俺と友達に…」

そう言いかけた時。

「セオドール様! どちらにおいでですか!? そろそろ帰るお時間ですよ!!」と、護衛達とは違った、壮年の男の声が聞こえた。

―…クソッ! なんて間が悪いんだ!!

ティモは心の中で盛大に舌打ちをした。

「いけない、もう行かなきゃ…」

名残惜しそうに、セオドールが呟く。

「…そうか…」

ティモの心は、かつてない程に落ち込んだ。
もう、この子とはこれっきりなんだろうか? …いや、父達があの男と上手く商談(だろうか?)を出来ていたら、あるいは…。

「ティモ、今日は本当にありがとう! お陰でとっても楽しい時間が過ごせたよ」

差し出されたセオドールの温かい手を、ティモはぎゅっと握りしめる。

「ああ…俺も、楽しかったよ…」

この手を離すのが、惜しい。
「また来て欲しい」「また会いたい」…そう言えばいい。
しかし、どうしてもその言葉が出てこなかった。

すると。

「ティモ」

「…うん?」

セオドールの黒々とした綺麗な瞳が、すぐ近くにあった。
心臓が早鐘を打っていた。

「僕と、友達になってくれないかな? 君さえよければ…なんだけど」

その問いに対するティモの答えは、一つしかありえなかった。

「…もちろん!」

□■□

ティモがセオドールの本当の身分を知り、目玉がひっくり返る事態になったのは、それから数ヶ月経ってからのことだった。






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