短編小説
【主な登場人物】
・セオドール王子
・近衛兵隊の副隊長イグナツ
【注意】
・BL表現を含んでおりますので、苦手な方はご注意ください。
『この世に生を受けた理由』
誕生日など、一度たりとも祝われたことがなかった。
母には疎まれ、父には物のように扱われてきたのだから、当然だ。
誕生日など、ただ単純に、老いていくことを確認する日に過ぎない。
…ただ、何故だろう。
あの方には、今日が自分の誕生日だと伝えたくなった。
どんな反応を返してくれるのだろうか。
ただの部下である自分にも、祝いの言葉をかけてくれるのだろうか。
執務室で書類に目を通している最中のセオドール王子に、オレはさりげなく言ってみた。
「そう言えば、今日はオレの誕生日なんですよ」
すると、王子の動きがピタリと止まった。
そして、彼は少し驚いたような顔をしてこちらを向いた。
「そうなのか!? おっと…」
思いがけず大きな声が出てしまったようで、王子は「すまない」と謝り、手で口元を隠した。そして、何やら嬉しそうに、ふふっと笑った。
「いや、イグナツが自分のことを教えてくれるなんて、今までに無かったから…嬉しくなってしまって」
「嬉しい…?」
「ああ。誕生日は人生で最も大切な日のひとつだろう? 君という存在が、生まれてきた記念すべき日だ」
そして、セオドール王子は真っすぐオレの目を見つめながら—
「おめでとう、イグナツ」
と言って、優しく笑ってくれた。
王子のその言葉、その柔和な微笑み…。
それだけで、オレは生まれてきて良かったと思えた。
オレが生まれてきたのは、この人と出会うためだったのだ。
了
・こちらの作品は、pixivでもお読みいただけます。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21224255
・セオドール王子
・近衛兵隊の副隊長イグナツ
【注意】
・BL表現を含んでおりますので、苦手な方はご注意ください。
『この世に生を受けた理由』
誕生日など、一度たりとも祝われたことがなかった。
母には疎まれ、父には物のように扱われてきたのだから、当然だ。
誕生日など、ただ単純に、老いていくことを確認する日に過ぎない。
…ただ、何故だろう。
あの方には、今日が自分の誕生日だと伝えたくなった。
どんな反応を返してくれるのだろうか。
ただの部下である自分にも、祝いの言葉をかけてくれるのだろうか。
執務室で書類に目を通している最中のセオドール王子に、オレはさりげなく言ってみた。
「そう言えば、今日はオレの誕生日なんですよ」
すると、王子の動きがピタリと止まった。
そして、彼は少し驚いたような顔をしてこちらを向いた。
「そうなのか!? おっと…」
思いがけず大きな声が出てしまったようで、王子は「すまない」と謝り、手で口元を隠した。そして、何やら嬉しそうに、ふふっと笑った。
「いや、イグナツが自分のことを教えてくれるなんて、今までに無かったから…嬉しくなってしまって」
「嬉しい…?」
「ああ。誕生日は人生で最も大切な日のひとつだろう? 君という存在が、生まれてきた記念すべき日だ」
そして、セオドール王子は真っすぐオレの目を見つめながら—
「おめでとう、イグナツ」
と言って、優しく笑ってくれた。
王子のその言葉、その柔和な微笑み…。
それだけで、オレは生まれてきて良かったと思えた。
オレが生まれてきたのは、この人と出会うためだったのだ。
了
・こちらの作品は、pixivでもお読みいただけます。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21224255