なんでもない、ただの愛 /カカシ落ち
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「廻天之力」
「なっ!なにがどうなってやがる?!」
「なぜ浮いている?!幻術か?!」
「…紫電」
「ガハァッ………」
「こちらB地点、敵二名捕獲しました…はい、C地点の応援ですね。行きます」
気絶した敵を縛り口寄せしたハチに乗せて移動する。
「ハチ、ごめんね。こんな小汚い連中乗せて」
「大丈夫だぜー。久しぶりに外の空気も吸いたかったし」
「ふふ。はい、コーラ」
「ゴクッゴクッ プハー 美味いなぁ!」
C地点に到着した。
「桃木先輩、様子はどうですか」
「敵一名が子供を連れてあの小屋に匿っているんだ」
「なるほど。捕らえますね。龍黒眼…!」
私の目が黒くなる。
「……敵と子供は…離れてますね。
……廻天之力」
バキッメリッ
小屋の戸が力技で剥がされていく。同時に敵も浮いた状態ででてきた。
「お前……その目と術は…」
「秘術です。龍黒眼は相手がどこにいるか見て分かります。廻天之力は目に見えない龍を自在に操作できます」
「いつの間にそんな……」
「龍神様に訓練についてもらいました」
「龍神が…?龍神も忍術を使えるんだな……」
「龍遁の術は龍神様に教わったんですよ」
「そうなのか……?でも確かに、蒼が暗部に来た時には既にいくつかの龍遁は扱えていたな…」
「そうなんです!それからもちょこちょこ覚えていきました」
桃木先輩は桃色の髪、桃色の瞳をしている、桃木一族のうちの一人だ。桃木一族は毒殺と近距離戦を得意としていて、毒薬の調薬なども暗殺で頼むことが多い。だが中遠距離戦が不得意なため、今回のように距離を保たれた場合の戦力には欠ける。
「子供の様子を見てきてください」
「あ、あぁ!」
捕らえた敵を縛ろうとした、その時ーーー。
「ぺっ」
敵に唾をかけられた。右の頬に。
「おめーみてぇなくノ一風情、どうせ男共に守られなきゃ生きていけねーんだろ?あ?」
「負け犬の遠吠えにしか聞こえないぞ、雑魚」
「お前みたいなやつ男の忍とヤリまくってんだろ?!そうしないと出世出来ないもんなァ!!!」
「……蒼!」
「……!」
……気づけば敵を絞殺していた。任務は捕らえるだけ、なのに。
「あ…桃木先輩…すみません……」
桃木先輩は最初は動揺している様子だったが、すぐに落ち着いて私の肩に手を添えて「大丈夫だよ」と言ってくれた。
「敵の抵抗が強かったって言おう。そうしたら大丈夫」
「…いえ!然るべき措置は受けます!私が無心で敵の首を絞めたから……わたしが…」
「蒼、落ち着け」
「……任務失敗してすみません…」
「失敗と決めるのはお前じゃない。火影様だ」
「カカシ様……」
泣きそうな私の頬に手で触れ、苦しそうな顔をする桃木先輩。
「そう自分を責めるな。俺も昔、毒薬で相手を麻痺させるだけの任務で薬を強く作りすぎて殺したことがある。そのとき自分を責めたが、責めたところでなんの意味もないんだと悟った。悪者相手に罪悪感を感じる必要なんてない。蒼は悪いことをしたわけではない」
「桃木先輩……」
結局ボロボロに泣いてしまった。
桃木先輩と、火影室に報告書を持っていったとき、カカシ様は赤くなった私の瞳を見逃さなかった。
「敵を捕らえるはずが、抵抗された末絞殺してしまった、ねぇ……そんなことより、なんで蒼は泣きはらしてんの?」
私にじゃなく、桃木先輩に火の粉が飛びかかる。
「それは……自分の身の上話をしたら蒼が泣いてしまいまして……」
庇ってくれている。でも、カカシ様には通用しない。
「あらかた蒼がこいつ絞め殺して、桃木がカバーするようなこと言って泣いたってところでしょ」
大正解だ。ぐうの音も出ない。
「桃木先輩は悪くありません!」
「蒼は悪くありません!」
「二人して庇い合って……なんらかの措置はあると思っててね。あ、二人ともだからね」
「……はい」
「はい、俺は大丈夫です」
火影室を後にする。
「ぐすっ……うっ……」
「蒼、また泣いて」
「罰するなら私だけでいいのに、なんで桃木先輩もなんですかぁ…!」
「別にいいよ。俺も悪かったし。気にすんな」
「私、抗議しますから!!」
「ははっ。急に頼もしいなぁ。でも、無理しないでね」
「はい!お任せ下さい!」
……
……
帰宅後。
「カカシ様の靴がある……よし」
ただいま戻りました!!!」
「おかえり」
「?カカシ様、なんか怒ってますか?」
「いや、別に」
絶対怒ってる……それでも!!
「カカシ様!お願いします!処罰の件、桃木先輩だけははずしてください!私の単独行動なんです!!」
「はぁー、言うと思った」
だからあそこでは二人とも処罰するって言ったの。と、カカシ様は落ち着いた様子で言う。
「桃木は何か隠してる感じあったし…事故じゃなかったってわけね」
「はい……だから悪いのは私だけでいいんです」
「んー、わかったよ。ま、蒼を泣かせたって点はひっかかるけどね」
「……カカシ様…さん!」
「今日ベッドで、覚悟しといてね」
ニコーっと笑ってシャワーを浴びに行ったカカシ様。
覚悟って……そういうこと……?!
数分後……
「はい、蒼もシャワー浴びてきな」
「そういえばまだ夕飯が……」
「いいから浴びてきな」
「はいいい」
シャワーを浴び終えると、いつの間にか食卓に様々な料理が並べられていた。
「これ……どうしたんですか?」
「蒼暗かったし、景気付けにどうかなと思って蒼の好物を出前で頼んでたのよ」
「カカシさん……!!」
「蒼、こっちにおいで」
カカシ様は自分の膝の上に私を座らせた。
「はい、あーん」
「こっこれは、どういうプレイでしょうか……」
「いいから、あーん」
カカシ様が近づける箸をあーんと口にする。
「美味しい?」
「はい……」
「はい、次、あーん」
「あーん…もぐもぐ…」
結局、食べ終わるまでカカシ様のあーんは続いた。
「はい、歯磨きするよ」
カカシ様は自分の手に歯ブラシを掴み私の歯を磨こうとする。
「え……」
「はい、あーん」
「あ、あーん……」
ゴシゴシと優しく磨かれる。なんだかこそばい。
「はい、うがいしに行くよー」
カカシ様は私を抱えて洗面所に行き、私はやっと地に足がつけた。私がうがいしている間にカカシ様も歯磨きを始めた。
「待っててね」
「…………」
ダッ
待っててねと言われて待ってていいことがあるか!
私はスリッパを履いて駆け足で家を出た。
「はぁ……はぁ……」
今日のカカシ様は変だ。やっぱり桃木先輩とのこと怒ってるのかな?あの家にいたら何されるか分かんないよ〜。
「……っわぁ!!!!!」
カカシ様が目の前に現れた。
「蒼」
カカシ様に手を掴まれた瞬間、私は気絶してしまった。
……
……
……
「……はっ!!!」
「起きた?」
カカシ様がいる!!私、家に帰ってる!!!
「何があったんですか?!」
「あの時あそこにいた俺、雷遁・影分身だったから。ちょっと蒼の手握ったらすぐに失神したよ」
したよ、じゃないですよ!!
「どうやって家に??」
「そりゃお姫様抱っこしてだよ。いや〜、みんなの視線すごかったな〜」
「!!!私、外出歩けないじゃないですか!!」
「大丈夫大丈夫。みんな明日には忘れてるよ」
どこからそんな自信がでてくるんだこの人は!!!
お姫様抱っこされてる人なんて翌日に忘れたりしないだろう!!!鮮明に覚えてるわ!!!
「そんなことより蒼、ベッドで覚悟しててねって言ったの、忘れてないよね?」
「……はて、なんのこと「桃木の処罰なくしてほしいんだよね?」しっかり覚えてます!!!よろしくお願いします!!!」
カカシ様はそれはそれは元気で深夜2時までたっぷり濃い時間を過ごした。
ーーー翌日、桃木先輩の処罰はなし。
私は謹慎10日間を命じられた。
もう昨日で罰は受けたようなもんだ……。