Love to you
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9月10日、仕事の昼休憩中
お月見をしようと蒼からLINEが来ていた。
やることなすことがいちいち可愛い。
わかったよ、楽しみにしてると返事をしていたら
口元が緩んでいたらしい、
後輩から「彼女さんですか?」と聞かれた。
「今日お月見をするらしい」と言ったところ、
「そんなこと言ってくれる彼女さん、めちゃ可愛いっすね!」っと言われたもんで、
気分が良くなって「そなの。俺の可愛い未来の奥さん」と
返したらちょっと引かれた。
「黒尾先輩がべた褒めするとなんかイメージ変わりますね」
「俺のことなんだと思ってたの」
「ドSキャラですかね。罵ってそう」
「それ悪口じゃない?」
そんな会話をしながら、後輩とも上手くやっていけてる感じではある。
俺の生活は蒼中心になっていて、それから家族(ジャスミン含む)、友達、仕事関係といった感じに括られている。今じゃ蒼がいなきゃまともな生活できるのかどうか不安だ。またウーバー生活に戻りそう。
そんな感じで今日、蒼がお月見をしようと言ってくれたので、酒とつまみを買って帰ることにした。
…
…
定時だ。俺はダッシュで退勤し、マッハで家に帰った。
「ただいーーー…」
「おかえりなさいませ、鉄朗様」
俺の未来の奥さんが、正座をして丁寧に頭を下げて迎えてくれた。
「えーと、どういうプレイ?」
「お食事の準備が出来ております。今夜は満月ということで、テラス席をご用意させていただきました」
お荷物お預かりします、と言って言われるがままテラス席(ベランダ)にを案内された。
そこにはテーブルと椅子がふたつ。
秋刀魚の塩焼き(大好物)に小鉢、ごはん、テーブルの真ん中には丸い団子がピラミッド上に小さく積み上げられていた。
「ほんとにお月見するのね」
「さようでございま」
「す、までいいなさいよ」
「お腹空いた。はやく食べよう」
「設定どこいったの」
そんなこんなで、お月見の始まり。
「酒買ってきたけど、蒼も飲む?」
「うーん…久しぶりに飲もかな」
「そういえば酔った蒼ってどうなんの」
「人格変わるって言われる」
「ははっ!そりゃ楽しみだ」
「今日の仕事はどうだった?」
「今日はプロ選手たちに会ったりしてた。あとは上司への企画のプレゼンかね」
「そういうのも仕事なんだ。大変そう」
「俺は楽しくやってるよ」
「鉄はどうしてバレー続けなかったの?」
核心をつく蒼の発言。あまり公に話したこと無かったけど、この際語ってみるか。
ん
「俺がバレーにハマったのは小房の頃。今の音駒高校の猫又監督に初めてあった日がその頃だったんだ。些細なことだったけど、感銘を受けたよ。
高校もそれで選んだ。うちの高校のバレー部の応援旗、『繋げ』って書いてあるんだけど、
まさにプレーもそこを目指してて、粘り強く、ボールが落ちる前に、何がなんでも繋げって感じだったのね。
卒業する前に、俺は実業団に入るか、その他の選択肢を作るかで悩んでたんだけど、俺がほんとにやりたいことってなんなんだって考えた時、『バレーボールを繋ぐ仕事がしたい』って思ったのよ。
バレーをやる側も、応援する側も、審判も、みんながバレーを続けて、見続けてくれる限りバレーは廃らない。もっともっとバレーボールという競技を一般の人にも身近なものになって欲しいと思った。それでバレー協会の道に進んだんだ」
「めちゃくちゃ深い理由があったんだね。なんか感動しちゃう」
「面白い話じゃないけどな」
「今の鉄、すごくカッコイイよ。やっぱ仕事選びって大事だね」
「蒼は産婦人科以外に選択肢はなかったの?」
「なかった。その道以外、考えたこともなかった。確固たる決意です」
「それはそれでスゲーよな。実際ちゃんと道を外さず歩いてるし」
「勉強も楽しいし、新しいことを知れるのは楽しいし、興味があることが仕事にできるって素敵じゃない?
鉄のバレーボールにハマったきっかけの一部に猫又監督がいるように、私も今の専攻にハマったきっかけに親がいる。きっかけって大事だと思うよ。見逃すと知らないまま時だけが過ぎていっちゃう。お互いいいタイミングでいい師匠を見つけたね」
「恩師ってのは大事にしなきゃなんねーな。今度挨拶いこ」
「私も行きたーい」
「行ってみるか?」
「え、いいの?行きたい!」
「じゃあ、猫又監督に連絡しとくわ。土日どっちがで見に行こう」
「やったー」
「つか、この月見団子、蒼がつくったの?」
「そうだよ。味ついてるから、食べてみて」
「…ん、んま。ほんのり甘い」
「食後にぴったりでしょ?しかも今宵は満月で、イベントに丁度いいタイミングでした」
「あの下僕みたいなお出迎え設定はなんだったの」
「最後までやり切ろうと思ったけど飽きちゃった」
「ふつーに頭下げられてびっくりしたからね」
「またいつかやる」
「やらんでいいです!」
…
…
「ん〜」
「どうしたの蒼チャン」
「鉄、可愛いなぁ〜」
「何何、何事」
「可愛いなぁって、ちゅーしたくなるなぁって」
「あ、もしかして酔ってらっしゃいます?」
「ん〜どっちでもいいよ。鉄〜よしよし」
「ワックスついてるからやめなさい」
「鉄〜ちゅーしよ〜」
「君、飲みで酔ったらそんなことばっかり言ってるの。オニーサン心配なんだけど」
「他の人にはいわらいよ〜」
「呂律回らなくなってくし」
蒼が席を立ち、俺の隣にやってきて、無理やり顔を自分の方へ向けキスをされた。
「!!」
「ん〜美味しい?」
ビールを口に含んでいたらしい。俺の喉に通っていく。
それから何度も何度も口付けは続いた。
〜〜〜♪
「由利香だ」
「でなよ」
「もしもーし、ゆりかァ〜え?酔ってる?酔ってらいよぉ〜。え?黒尾さんに変われ?黒尾さ〜ん、由利香から電話れす」
「もしもし、由利香ちゃん?ナイスタイミング。今蒼と飲んでるんだけどさ、蒼って酔ったらどうなんの?」
「蒼は酔うとキス魔になります。あ、でも基本女子のみにですよ。メンズと飲む時は量を抑えてます」
「なるほどね…今蒼酔ってるから、要件あるなら明日がいいかも、うん、ごめんね。ありがとう、じゃあね」
「酔ってらい〜んー」
再び俺の唇にキスをし、ビールを少しずつ流し込む。
今度は氷を口に含みお互いの口内でコロコロ転がす。
溶けるまで、40秒。ずっとキスをしていた。
「蒼チャン、こういうの慣れてないンじゃなかったの?」
「キスは好き〜ハグみたいなもの」
ハグと一緒にされたら困るのだが。
「俺にはいいけど、他の人には迷惑かけちゃダメだからね」
「んー、わかった」
ほんとにわかったんだろうか…。次の日には忘れてそうだな。
「明日起きたら由利香ちゃんに電話しな、いい?」
「ん」
おりゃ介護人か?
蒼が眠いと駄々をこねるのでお月見どころじゃなくなった。
蒼を抱えて寝室に向かうまでずっと首を噛みつかれていた。
月見は1人ですることに。
そういえば蒼と付き合って7ヶ月かぁ。
1年なんてあっという間なんだろうな。
あの子は将来俺より稼ぐ子になってしまう。
産婦人科なんて24時間体制の仕事だし、
そう思うと男としてやれることって家事とか、たまに飯作ったり、洗濯したりとか、それくらいか。
ガタンッ バタンッ
寝室からとてつもない音がした。
「蒼、どうし…」
そこには、輪っかになったネクタイと倒れてる蒼の姿が。
「蒼…どうしてそんな!!」
蒼の両腕をギュッと掴んで大声をあげてしまった。
「お父さん…お父さんに逢いたい…」
酔ってるからなのか?この奇行…様子がおかしい。
あるとするならば…
「蒼、今日なんの日なんだよ」
「おと、お父さんの誕生日だった…」
「だから首吊ってほんとの父親に会おうとしたのか?」
「お父さんに会いたいの…!だから最後に鉄と晩酌して、
寝たフリして鉄のネクタイでやろうとしたら失敗しちゃった…」
「馬鹿野郎!仮にお前が死んだとして、本当に父親に会えると思ってるのか?魂だけは生きてるとでも思ってるのか?そんなの綺麗事だ!お前が死んだらお前の魂も無くなる。父親に会えるような世界じゃないかもしれない。そんな理由で勝手に死なないでくれ!」
そういえば蒼は昔自殺しようとした事があると言っていたな。それも父親絡みか。
「お願いだから、生きていてくれ」
「う…ひっく…うっ…うぅ…」
愛する人が、心に傷があって泣いてる姿が、小さな子供のように見えた。
蒼を抱きしめて再びベッドに寝かせる。
「辛い気持ちになったら、俺に頼るか、寝てなさい」
頭を撫でたあと、親が子供を寝かしつける時にするような、お腹をトン、トンとしばらくしていたら、蒼は眠ってしまった。
「何もしてやれなくてごめんな。蒼の過去をあまりに知らなくて、わかってやることが出来なくてごめんな。その分、これから先は楽しいことでいっぱいにしてやるから、死にたいなんて思わないでくれ」
おでこにキスをして、晩酌後の片付けをしていたら蒼が寝室からでてきた。
「どうした?なんか飲む?」
蒼はブンブンと首を振る。
「鉄と一緒に寝たいから、待つ」
「ははっ、可愛いかよ」
そう言って食器を片し、俺はシャワーを浴びて寝室へ向かった。
そこには頬杖を付いて窓を除きながら座っている蒼の姿が。
「今度は飛び降りようなんて考えてないだろうな」
「違う。お父さんにはもう会えないんだなって、わかって、昔のことを思い出していただけ」
「生きてりゃ、苦しいこととか何度も直面するだろうけど、いろんなことやってたら、忘れちまったり、時間が解決してくれる時もある」
「そう…そうだよね」
「とりあえず今日はゆっくり休め。寝るぞ」
「うん。鉄のこと抱き枕にしていい?」
「おお、好きなだけだきつけ」
「ありがとう」
そう言って蒼はすぐに眠ってしまった。
寝顔が幼く見えた。
まさか今日、こんな日に蒼があんな事するとは思ってもなかった。俺には何が出来る?蒼のために、なにができるんだろう。
深く、深く考えさせられる一日だった。
お月見をしようと蒼からLINEが来ていた。
やることなすことがいちいち可愛い。
わかったよ、楽しみにしてると返事をしていたら
口元が緩んでいたらしい、
後輩から「彼女さんですか?」と聞かれた。
「今日お月見をするらしい」と言ったところ、
「そんなこと言ってくれる彼女さん、めちゃ可愛いっすね!」っと言われたもんで、
気分が良くなって「そなの。俺の可愛い未来の奥さん」と
返したらちょっと引かれた。
「黒尾先輩がべた褒めするとなんかイメージ変わりますね」
「俺のことなんだと思ってたの」
「ドSキャラですかね。罵ってそう」
「それ悪口じゃない?」
そんな会話をしながら、後輩とも上手くやっていけてる感じではある。
俺の生活は蒼中心になっていて、それから家族(ジャスミン含む)、友達、仕事関係といった感じに括られている。今じゃ蒼がいなきゃまともな生活できるのかどうか不安だ。またウーバー生活に戻りそう。
そんな感じで今日、蒼がお月見をしようと言ってくれたので、酒とつまみを買って帰ることにした。
…
…
定時だ。俺はダッシュで退勤し、マッハで家に帰った。
「ただいーーー…」
「おかえりなさいませ、鉄朗様」
俺の未来の奥さんが、正座をして丁寧に頭を下げて迎えてくれた。
「えーと、どういうプレイ?」
「お食事の準備が出来ております。今夜は満月ということで、テラス席をご用意させていただきました」
お荷物お預かりします、と言って言われるがままテラス席(ベランダ)にを案内された。
そこにはテーブルと椅子がふたつ。
秋刀魚の塩焼き(大好物)に小鉢、ごはん、テーブルの真ん中には丸い団子がピラミッド上に小さく積み上げられていた。
「ほんとにお月見するのね」
「さようでございま」
「す、までいいなさいよ」
「お腹空いた。はやく食べよう」
「設定どこいったの」
そんなこんなで、お月見の始まり。
「酒買ってきたけど、蒼も飲む?」
「うーん…久しぶりに飲もかな」
「そういえば酔った蒼ってどうなんの」
「人格変わるって言われる」
「ははっ!そりゃ楽しみだ」
「今日の仕事はどうだった?」
「今日はプロ選手たちに会ったりしてた。あとは上司への企画のプレゼンかね」
「そういうのも仕事なんだ。大変そう」
「俺は楽しくやってるよ」
「鉄はどうしてバレー続けなかったの?」
核心をつく蒼の発言。あまり公に話したこと無かったけど、この際語ってみるか。
ん
「俺がバレーにハマったのは小房の頃。今の音駒高校の猫又監督に初めてあった日がその頃だったんだ。些細なことだったけど、感銘を受けたよ。
高校もそれで選んだ。うちの高校のバレー部の応援旗、『繋げ』って書いてあるんだけど、
まさにプレーもそこを目指してて、粘り強く、ボールが落ちる前に、何がなんでも繋げって感じだったのね。
卒業する前に、俺は実業団に入るか、その他の選択肢を作るかで悩んでたんだけど、俺がほんとにやりたいことってなんなんだって考えた時、『バレーボールを繋ぐ仕事がしたい』って思ったのよ。
バレーをやる側も、応援する側も、審判も、みんながバレーを続けて、見続けてくれる限りバレーは廃らない。もっともっとバレーボールという競技を一般の人にも身近なものになって欲しいと思った。それでバレー協会の道に進んだんだ」
「めちゃくちゃ深い理由があったんだね。なんか感動しちゃう」
「面白い話じゃないけどな」
「今の鉄、すごくカッコイイよ。やっぱ仕事選びって大事だね」
「蒼は産婦人科以外に選択肢はなかったの?」
「なかった。その道以外、考えたこともなかった。確固たる決意です」
「それはそれでスゲーよな。実際ちゃんと道を外さず歩いてるし」
「勉強も楽しいし、新しいことを知れるのは楽しいし、興味があることが仕事にできるって素敵じゃない?
鉄のバレーボールにハマったきっかけの一部に猫又監督がいるように、私も今の専攻にハマったきっかけに親がいる。きっかけって大事だと思うよ。見逃すと知らないまま時だけが過ぎていっちゃう。お互いいいタイミングでいい師匠を見つけたね」
「恩師ってのは大事にしなきゃなんねーな。今度挨拶いこ」
「私も行きたーい」
「行ってみるか?」
「え、いいの?行きたい!」
「じゃあ、猫又監督に連絡しとくわ。土日どっちがで見に行こう」
「やったー」
「つか、この月見団子、蒼がつくったの?」
「そうだよ。味ついてるから、食べてみて」
「…ん、んま。ほんのり甘い」
「食後にぴったりでしょ?しかも今宵は満月で、イベントに丁度いいタイミングでした」
「あの下僕みたいなお出迎え設定はなんだったの」
「最後までやり切ろうと思ったけど飽きちゃった」
「ふつーに頭下げられてびっくりしたからね」
「またいつかやる」
「やらんでいいです!」
…
…
「ん〜」
「どうしたの蒼チャン」
「鉄、可愛いなぁ〜」
「何何、何事」
「可愛いなぁって、ちゅーしたくなるなぁって」
「あ、もしかして酔ってらっしゃいます?」
「ん〜どっちでもいいよ。鉄〜よしよし」
「ワックスついてるからやめなさい」
「鉄〜ちゅーしよ〜」
「君、飲みで酔ったらそんなことばっかり言ってるの。オニーサン心配なんだけど」
「他の人にはいわらいよ〜」
「呂律回らなくなってくし」
蒼が席を立ち、俺の隣にやってきて、無理やり顔を自分の方へ向けキスをされた。
「!!」
「ん〜美味しい?」
ビールを口に含んでいたらしい。俺の喉に通っていく。
それから何度も何度も口付けは続いた。
〜〜〜♪
「由利香だ」
「でなよ」
「もしもーし、ゆりかァ〜え?酔ってる?酔ってらいよぉ〜。え?黒尾さんに変われ?黒尾さ〜ん、由利香から電話れす」
「もしもし、由利香ちゃん?ナイスタイミング。今蒼と飲んでるんだけどさ、蒼って酔ったらどうなんの?」
「蒼は酔うとキス魔になります。あ、でも基本女子のみにですよ。メンズと飲む時は量を抑えてます」
「なるほどね…今蒼酔ってるから、要件あるなら明日がいいかも、うん、ごめんね。ありがとう、じゃあね」
「酔ってらい〜んー」
再び俺の唇にキスをし、ビールを少しずつ流し込む。
今度は氷を口に含みお互いの口内でコロコロ転がす。
溶けるまで、40秒。ずっとキスをしていた。
「蒼チャン、こういうの慣れてないンじゃなかったの?」
「キスは好き〜ハグみたいなもの」
ハグと一緒にされたら困るのだが。
「俺にはいいけど、他の人には迷惑かけちゃダメだからね」
「んー、わかった」
ほんとにわかったんだろうか…。次の日には忘れてそうだな。
「明日起きたら由利香ちゃんに電話しな、いい?」
「ん」
おりゃ介護人か?
蒼が眠いと駄々をこねるのでお月見どころじゃなくなった。
蒼を抱えて寝室に向かうまでずっと首を噛みつかれていた。
月見は1人ですることに。
そういえば蒼と付き合って7ヶ月かぁ。
1年なんてあっという間なんだろうな。
あの子は将来俺より稼ぐ子になってしまう。
産婦人科なんて24時間体制の仕事だし、
そう思うと男としてやれることって家事とか、たまに飯作ったり、洗濯したりとか、それくらいか。
ガタンッ バタンッ
寝室からとてつもない音がした。
「蒼、どうし…」
そこには、輪っかになったネクタイと倒れてる蒼の姿が。
「蒼…どうしてそんな!!」
蒼の両腕をギュッと掴んで大声をあげてしまった。
「お父さん…お父さんに逢いたい…」
酔ってるからなのか?この奇行…様子がおかしい。
あるとするならば…
「蒼、今日なんの日なんだよ」
「おと、お父さんの誕生日だった…」
「だから首吊ってほんとの父親に会おうとしたのか?」
「お父さんに会いたいの…!だから最後に鉄と晩酌して、
寝たフリして鉄のネクタイでやろうとしたら失敗しちゃった…」
「馬鹿野郎!仮にお前が死んだとして、本当に父親に会えると思ってるのか?魂だけは生きてるとでも思ってるのか?そんなの綺麗事だ!お前が死んだらお前の魂も無くなる。父親に会えるような世界じゃないかもしれない。そんな理由で勝手に死なないでくれ!」
そういえば蒼は昔自殺しようとした事があると言っていたな。それも父親絡みか。
「お願いだから、生きていてくれ」
「う…ひっく…うっ…うぅ…」
愛する人が、心に傷があって泣いてる姿が、小さな子供のように見えた。
蒼を抱きしめて再びベッドに寝かせる。
「辛い気持ちになったら、俺に頼るか、寝てなさい」
頭を撫でたあと、親が子供を寝かしつける時にするような、お腹をトン、トンとしばらくしていたら、蒼は眠ってしまった。
「何もしてやれなくてごめんな。蒼の過去をあまりに知らなくて、わかってやることが出来なくてごめんな。その分、これから先は楽しいことでいっぱいにしてやるから、死にたいなんて思わないでくれ」
おでこにキスをして、晩酌後の片付けをしていたら蒼が寝室からでてきた。
「どうした?なんか飲む?」
蒼はブンブンと首を振る。
「鉄と一緒に寝たいから、待つ」
「ははっ、可愛いかよ」
そう言って食器を片し、俺はシャワーを浴びて寝室へ向かった。
そこには頬杖を付いて窓を除きながら座っている蒼の姿が。
「今度は飛び降りようなんて考えてないだろうな」
「違う。お父さんにはもう会えないんだなって、わかって、昔のことを思い出していただけ」
「生きてりゃ、苦しいこととか何度も直面するだろうけど、いろんなことやってたら、忘れちまったり、時間が解決してくれる時もある」
「そう…そうだよね」
「とりあえず今日はゆっくり休め。寝るぞ」
「うん。鉄のこと抱き枕にしていい?」
「おお、好きなだけだきつけ」
「ありがとう」
そう言って蒼はすぐに眠ってしまった。
寝顔が幼く見えた。
まさか今日、こんな日に蒼があんな事するとは思ってもなかった。俺には何が出来る?蒼のために、なにができるんだろう。
深く、深く考えさせられる一日だった。