Love to you
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新幹線に乗って宮城へ行く。
蒼は乗車早々眠っている。
なげーまつ毛、高い鼻、プクッとした唇。こんなにも大人しいと息をしているのか心配になるくらいに蒼は静かだ。
蒼の顔を眺めていると、パチッと蒼が目覚めた。
「視線を感じた」
鉄だったのかー、と言って、大きく伸びをする。
「蒼チャンぐっすり寝てたよ」
「ほんと?そんなに時間経った?」
「まだ1時間くらいだけど、あと30分くらいで着くね」
「そっかー。鉄、暇だったでしょ。ごめんね」
「全然。蒼の寝顔見てたらあっというまだったよ」
「夢の中で鉄が私を追いかけ回してたけど、あながち間違いじゃなかったのね」
「何それ、どーいう夢」
「そのまんまだよ、そのまんま」
「聞く限り悪夢じゃん」
「ははっ!確かに怖かった」
「俺はまだ蒼が夢にでてきたことないなぁ」
「夢って頭の中の情報を整理するために見るんだって」
「何それ。俺の脳みそからっぽってこと?」
「どう思うかは、鉄次第だね 笑」
「蒼が珍しく意地悪だなー」
「いつも意地悪な黒尾さん、ご気分は如何ですか?」
「蒼からされる意地悪なんて可愛いもんよ」
「くやしい…あ、そろそろ仙台着くね」
「仙台からは遠いのか?」
「ローカルに乗って、20分くらいで着くよ」
「了解」
蒼の案内でローカル電車に乗り、20分ほど経ってやたら田舎の駅に着いた。
「自然…って感じだな」
「褒めるとこがないからって無理しなくていいよ」
「蒼はここでどれくらい育ったんだ?」
「高卒までだよ。あ、お墓こっちー」
今度は墓場へと案内される。
「白尾家ノ墓」
という墓の前で、蒼は止まった。
「ここがお父さんのお墓だよ」
「苗字…白尾ってんだな」
「そう。あ、あはは!黒尾さんと真逆だね!お父さんが死んでなかったら、私は白尾蒼だったんだ!」
なんか運命だねーと名前は明るい素振りを見せるが、喪にふくした姿のやつがこんなケタケタ笑うはずがない。
「蒼、無理しなくていいんだぞ」
「えー、無理はしてないよ。お父さんには元気な姿を見て欲しい」
「なるほどな。とりあえず婚約の報告でもするか」
「お父さん、久しぶり。蒼だよ。今日一緒に来てくれたのは、私の将来の旦那さん、黒尾鉄朗くん。お父さんに会いに一緒にきてくれたの。お父さんがいなくなって6年経つけど、お母さんも元気にしてるし、お父さんも天国で元気にしてるといいな。お母さんも仕事が落ち着いたらまた来るって言ってたよ。待っててね」
「蒼のお父さん、黒尾鉄朗っていいます。蒼とは1年ほど前に出会い、結婚を前提にお付き合いさせてもらってます。天真爛漫な蒼にはいつも助けられてばかりで、お父さんたちの子育てあってこそだと思います。蒼を育ててくれてありがとうございました。必ず蒼を幸せにするので、見守っていてください」
蒼が造花を入れ替えている。
「蒼が高2の時に亡くなったんだな」
「うん。スキルス胃がんで発見が遅れてステージ4で、それからはあっという間だったよ」
「その…今は大丈夫か?」
「?…あはは、毎日元気な私見てたら平気だってわかるでしょ」
「いや、無理してんじゃねぇかなって…」
「まぁ無理はしてるよ。でもしょげてたって何も進まないでしょう?立ち止まっててもお父さんが生き返るわけじゃないし、前向くしかないじゃん」
「お前、苦しくないか?」
「今は新しいお父さんがいて、お母さんも私も幸せだよ。苦しくなんかないよー」
「そっか…ならいいんだけど…」
「はー、お腹すいたね〜。仙台名物の牛タンを食べて帰ろう!」
「お前が元気ならそれでいいよ…美味い店連れてってくれー」
「バッチリ予約済!任せなさーい」
蒼は俺が思ったよりもだいぶ大丈夫そうだった。
もっとしんみりするかなと思ったけど、蒼が平気ならそれでいい。無理だけはしないでほしいけど。
「もうすぐだよっ!」
蒼が手を繋いでくれた。なんか久しぶりな気がする。人の死に直面すると、当たり前は当たり前なんかじゃない、その一瞬一瞬が奇跡なんだとヒトは言う。
幸い俺の未来の奥さんは健康面は問題なさそうだが、いつ何が起こるかわからない。
来年も再来年もずっと、蒼の父親の墓には参りに行こう。そして色んなことがあったと報告しよう。
「蒼、生きててくれてありがとな」
「えっ、どしたの急に!」
不思議そうに見上げて顔を覗き込む蒼が愛しくて。
「一緒に長生きしような」
「…そういうことね!そうだね!無病息災!交通安全!100歳になるまで生きようね!」
「100歳になっても愛してるって言い続けるよ」
「言ったね?!忘れないからね?」
「おー、毎年言うわ。そういや俺らの記念日っていつだっけ?」
「2月2日だよ!たしかね!」
「もうすぐじゃん。旅行でも行くか」
「いいねぇ!やっぱりこの時期は沖縄かな?」
「ハワイでも行くか?」
「アリだねぇ!なんか楽しくなってきた!あ、店ついたー」
蒼がオススメする牛タンの店に着いた。年季が入った店だ。
「ここは牛タン定食1種類しか置いてない店で、素材で勝負してんの。味付けは塩かレモンだけ」
「網があるって事は、自分で焼くのね」
「そう。炭焼きだから美味しいよ」
「おまたせしました。牛タン定食2名様分になりまーす」
「提供はええな」
「メニューひとつしかないからね。さ、焼こー焼こー」
「分厚いな。俺が知ってる焼肉屋の牛タンと違う」
「食感がだいぶ変わるよ。クセになっちゃう」
「楽しみだなー。どれくらい焼くんだ?」
「返しながら2〜3分焼けば大丈夫だよ」
「さすが地元民、詳しいな」
「宮城のことなら任せなさい」
宮城のことなら、というのでちょっと聞いてみることにした。
「蒼って、烏野高校ってしってるか?」
「烏野ってあのバレーが有名なところ?」
「お、知ってはいるんだな」
「有名だよー。一時期全国常連だったから知らない人は居ないんじゃないかな」
「じゃあ、東京の音駒高校は?」
「音駒…も、バレーで全国行ってるよね?」
「なんだ、詳しいんだな」
「東京来てから色んな情報が飛び交ってることを思い知らされたよ。知らないことがないくらい」
「田舎育ちだとトレンドに疎くなるもんな」
「それは悪口デース」
「…蒼が元気でよかった。正直、落ち込むかなとか思ったけど、ほんとに無事そうでよかった。」
「元気だよ!はい!タン焼けたよ!」
「ありがとう。いただきます」
もぐもぐもぐ…
「噛みごたえがあって美味い」
もぐもぐもぐ…
「そうでしょ?絶妙な厚みだよね。天才だよ」
こうして宮城名物を食べ、20時発の新幹線に乗って東京へ帰った。その後は蒼も俺も疲れきってシャワー浴びてすぐに眠ってしまった。明日の朝は仕事か。足取りは重いな。
深い、深い眠りについた。
蒼は乗車早々眠っている。
なげーまつ毛、高い鼻、プクッとした唇。こんなにも大人しいと息をしているのか心配になるくらいに蒼は静かだ。
蒼の顔を眺めていると、パチッと蒼が目覚めた。
「視線を感じた」
鉄だったのかー、と言って、大きく伸びをする。
「蒼チャンぐっすり寝てたよ」
「ほんと?そんなに時間経った?」
「まだ1時間くらいだけど、あと30分くらいで着くね」
「そっかー。鉄、暇だったでしょ。ごめんね」
「全然。蒼の寝顔見てたらあっというまだったよ」
「夢の中で鉄が私を追いかけ回してたけど、あながち間違いじゃなかったのね」
「何それ、どーいう夢」
「そのまんまだよ、そのまんま」
「聞く限り悪夢じゃん」
「ははっ!確かに怖かった」
「俺はまだ蒼が夢にでてきたことないなぁ」
「夢って頭の中の情報を整理するために見るんだって」
「何それ。俺の脳みそからっぽってこと?」
「どう思うかは、鉄次第だね 笑」
「蒼が珍しく意地悪だなー」
「いつも意地悪な黒尾さん、ご気分は如何ですか?」
「蒼からされる意地悪なんて可愛いもんよ」
「くやしい…あ、そろそろ仙台着くね」
「仙台からは遠いのか?」
「ローカルに乗って、20分くらいで着くよ」
「了解」
蒼の案内でローカル電車に乗り、20分ほど経ってやたら田舎の駅に着いた。
「自然…って感じだな」
「褒めるとこがないからって無理しなくていいよ」
「蒼はここでどれくらい育ったんだ?」
「高卒までだよ。あ、お墓こっちー」
今度は墓場へと案内される。
「白尾家ノ墓」
という墓の前で、蒼は止まった。
「ここがお父さんのお墓だよ」
「苗字…白尾ってんだな」
「そう。あ、あはは!黒尾さんと真逆だね!お父さんが死んでなかったら、私は白尾蒼だったんだ!」
なんか運命だねーと名前は明るい素振りを見せるが、喪にふくした姿のやつがこんなケタケタ笑うはずがない。
「蒼、無理しなくていいんだぞ」
「えー、無理はしてないよ。お父さんには元気な姿を見て欲しい」
「なるほどな。とりあえず婚約の報告でもするか」
「お父さん、久しぶり。蒼だよ。今日一緒に来てくれたのは、私の将来の旦那さん、黒尾鉄朗くん。お父さんに会いに一緒にきてくれたの。お父さんがいなくなって6年経つけど、お母さんも元気にしてるし、お父さんも天国で元気にしてるといいな。お母さんも仕事が落ち着いたらまた来るって言ってたよ。待っててね」
「蒼のお父さん、黒尾鉄朗っていいます。蒼とは1年ほど前に出会い、結婚を前提にお付き合いさせてもらってます。天真爛漫な蒼にはいつも助けられてばかりで、お父さんたちの子育てあってこそだと思います。蒼を育ててくれてありがとうございました。必ず蒼を幸せにするので、見守っていてください」
蒼が造花を入れ替えている。
「蒼が高2の時に亡くなったんだな」
「うん。スキルス胃がんで発見が遅れてステージ4で、それからはあっという間だったよ」
「その…今は大丈夫か?」
「?…あはは、毎日元気な私見てたら平気だってわかるでしょ」
「いや、無理してんじゃねぇかなって…」
「まぁ無理はしてるよ。でもしょげてたって何も進まないでしょう?立ち止まっててもお父さんが生き返るわけじゃないし、前向くしかないじゃん」
「お前、苦しくないか?」
「今は新しいお父さんがいて、お母さんも私も幸せだよ。苦しくなんかないよー」
「そっか…ならいいんだけど…」
「はー、お腹すいたね〜。仙台名物の牛タンを食べて帰ろう!」
「お前が元気ならそれでいいよ…美味い店連れてってくれー」
「バッチリ予約済!任せなさーい」
蒼は俺が思ったよりもだいぶ大丈夫そうだった。
もっとしんみりするかなと思ったけど、蒼が平気ならそれでいい。無理だけはしないでほしいけど。
「もうすぐだよっ!」
蒼が手を繋いでくれた。なんか久しぶりな気がする。人の死に直面すると、当たり前は当たり前なんかじゃない、その一瞬一瞬が奇跡なんだとヒトは言う。
幸い俺の未来の奥さんは健康面は問題なさそうだが、いつ何が起こるかわからない。
来年も再来年もずっと、蒼の父親の墓には参りに行こう。そして色んなことがあったと報告しよう。
「蒼、生きててくれてありがとな」
「えっ、どしたの急に!」
不思議そうに見上げて顔を覗き込む蒼が愛しくて。
「一緒に長生きしような」
「…そういうことね!そうだね!無病息災!交通安全!100歳になるまで生きようね!」
「100歳になっても愛してるって言い続けるよ」
「言ったね?!忘れないからね?」
「おー、毎年言うわ。そういや俺らの記念日っていつだっけ?」
「2月2日だよ!たしかね!」
「もうすぐじゃん。旅行でも行くか」
「いいねぇ!やっぱりこの時期は沖縄かな?」
「ハワイでも行くか?」
「アリだねぇ!なんか楽しくなってきた!あ、店ついたー」
蒼がオススメする牛タンの店に着いた。年季が入った店だ。
「ここは牛タン定食1種類しか置いてない店で、素材で勝負してんの。味付けは塩かレモンだけ」
「網があるって事は、自分で焼くのね」
「そう。炭焼きだから美味しいよ」
「おまたせしました。牛タン定食2名様分になりまーす」
「提供はええな」
「メニューひとつしかないからね。さ、焼こー焼こー」
「分厚いな。俺が知ってる焼肉屋の牛タンと違う」
「食感がだいぶ変わるよ。クセになっちゃう」
「楽しみだなー。どれくらい焼くんだ?」
「返しながら2〜3分焼けば大丈夫だよ」
「さすが地元民、詳しいな」
「宮城のことなら任せなさい」
宮城のことなら、というのでちょっと聞いてみることにした。
「蒼って、烏野高校ってしってるか?」
「烏野ってあのバレーが有名なところ?」
「お、知ってはいるんだな」
「有名だよー。一時期全国常連だったから知らない人は居ないんじゃないかな」
「じゃあ、東京の音駒高校は?」
「音駒…も、バレーで全国行ってるよね?」
「なんだ、詳しいんだな」
「東京来てから色んな情報が飛び交ってることを思い知らされたよ。知らないことがないくらい」
「田舎育ちだとトレンドに疎くなるもんな」
「それは悪口デース」
「…蒼が元気でよかった。正直、落ち込むかなとか思ったけど、ほんとに無事そうでよかった。」
「元気だよ!はい!タン焼けたよ!」
「ありがとう。いただきます」
もぐもぐもぐ…
「噛みごたえがあって美味い」
もぐもぐもぐ…
「そうでしょ?絶妙な厚みだよね。天才だよ」
こうして宮城名物を食べ、20時発の新幹線に乗って東京へ帰った。その後は蒼も俺も疲れきってシャワー浴びてすぐに眠ってしまった。明日の朝は仕事か。足取りは重いな。
深い、深い眠りについた。