Love to you second season
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なんてことない日常のはずだった。
蒼は産休を取り、妊娠8ヶ月に迫っていた。
「ただいまー」
仕事から帰宅した直後、すぐに蒼の異変に気づいた。
ソファで丸くなり、お腹を抱えて顔をしかめている。
「お腹が、ずっと痛い。いつもと違う…カチカチに硬いの……」
蒼の震える声を聞き、嫌な汗が背中を伝った。
蒼が病院へ電話すると、電話口の助産師の声は緊迫していたという。
「一刻も早く、今すぐ連れてきてください」と。
「大丈夫、すぐ着くからな」
蒼を助手席に乗せ、シートを倒し、俺は運転席に飛び乗った。
夜の道路を、焦る心を必死に抑えながら走らせる。
チラリと助手席を見る。
蒼は目を閉じ、青ざめた顔で激しい痛みに耐えていた。
これまで、妊婦健診にはできる限り一緒に行った。
エコーに映る小さな足、力強い心音。「順調ですね」という医師の言葉に、二人でどれほど安堵し、未来を語り合っただろう。
妊娠8ヶ月。ベビーベッドも買い、名前の候補も絞り込んで、あと少しで会えるはずだった。
「痛い、痛い……」
蒼の小さな呻き声が車内に響く。
赤ん坊は大丈夫なのか。なぜこんなことになったのか。
信号待ちのたびに、蒼の手を握る。
その手は冷たく、小刻みに震えていた。
「神様、頼むから、二人を助けてくれ」
ハンドルを握る両手に力が入り、指の関節が白くなる。バックミラーに映る自分の顔は、恐怖で引きつっていた。
遠くに病院の白い建物が見えてきた。
「もうすぐだ、もうすぐ着くからな!蒼!」
俺は声をかけるが、蒼はお腹をさすったまま、消え入りそうな声で呟いた。
「……動かないの。赤ちゃん、さっきから、全然動かないの……」
心臓がドクンと跳ねた。言葉が出ない。ただ、アクセルを踏み込む足が震えた。病院の救急口に車を滑り込ませると、すでにストレッチャーを持った看護師たちが待機していた。
開け放たれたドアから、蒼が運び出されていく。
俺はその後ろを、何もできないまま、ただ祈りながら追いかけるしかなかった。
ストレッチャーに乗せられた蒼が、慌ただしく処置室へと運び込まれていく。
「常位胎盤早期剥離の疑い! すぐにオペ室の準備をして!」
飛び交う医師や看護師たちの緊迫した声。
何が起きているのか、頭がついていかない。
「ご主人、ここで待っていてください」
扉が閉まり、俺は廊下にぽつんと取り残された。
手術室の赤いランプが点灯する。
『胎盤早期剥離』――スマホで必死に検索した画面には、「赤ちゃんへの酸素が途絶える」「母子ともに危険」という恐ろしい言葉ばかりが並んでいた。
「嘘だろ……頼む、蒼と子供を助けてくれ……」
頭を抱え、ただ祈るしかなかった。
二人が無事なら、他に何もいらない。
どれほどの時間が経っただろう。
手術室のランプが消え、医師が足早に出てきた。
マスク越しでも分かる、沈痛な表情。
「先生、妻は……赤ちゃんは……!」
すがるように駆け寄る俺に、医師は静かに首を振った。
「奥様の命に別状はありません。出血がひどく危険な状態でしたが、手術で一命を取り留めました」
一瞬、安堵が広がったのも束の間、医師の次の言葉に、世界のすべての音が消えた。
「ですが……赤ちゃんは、間に合いませんでした。胎盤が大きく剥がれてしまっており、病院に到着された段階で、すでに心音が停止していました。本当に、残念ですが……」
「え……?」
声が出なかった。喉の奥がカラカラに乾き、
呼吸の仕方を忘れたようになる。間に合わなかった?
心音が止まっていた?あんなに楽しみに待っていた、
俺たちの子供が、もういない。
「ご主人のせいでも、奥様のせいでもありません。
突発的に起こる、誰にも予測できない病気なんです」
医師が俺の肩に手を置き、静かに告げる。
その言葉が、どこか遠くの世界の出来事のように響いていた。
これから、目を覚ます蒼に、
俺はなんて言えばいいのだろう。
我が子を失った絶望の中で、蒼の引き裂かれるような悲しみを、俺はどうやって支えればいいのだろう。
廊下の白い光が、涙で激しく歪んでいった。
蒼は産休を取り、妊娠8ヶ月に迫っていた。
「ただいまー」
仕事から帰宅した直後、すぐに蒼の異変に気づいた。
ソファで丸くなり、お腹を抱えて顔をしかめている。
「お腹が、ずっと痛い。いつもと違う…カチカチに硬いの……」
蒼の震える声を聞き、嫌な汗が背中を伝った。
蒼が病院へ電話すると、電話口の助産師の声は緊迫していたという。
「一刻も早く、今すぐ連れてきてください」と。
「大丈夫、すぐ着くからな」
蒼を助手席に乗せ、シートを倒し、俺は運転席に飛び乗った。
夜の道路を、焦る心を必死に抑えながら走らせる。
チラリと助手席を見る。
蒼は目を閉じ、青ざめた顔で激しい痛みに耐えていた。
これまで、妊婦健診にはできる限り一緒に行った。
エコーに映る小さな足、力強い心音。「順調ですね」という医師の言葉に、二人でどれほど安堵し、未来を語り合っただろう。
妊娠8ヶ月。ベビーベッドも買い、名前の候補も絞り込んで、あと少しで会えるはずだった。
「痛い、痛い……」
蒼の小さな呻き声が車内に響く。
赤ん坊は大丈夫なのか。なぜこんなことになったのか。
信号待ちのたびに、蒼の手を握る。
その手は冷たく、小刻みに震えていた。
「神様、頼むから、二人を助けてくれ」
ハンドルを握る両手に力が入り、指の関節が白くなる。バックミラーに映る自分の顔は、恐怖で引きつっていた。
遠くに病院の白い建物が見えてきた。
「もうすぐだ、もうすぐ着くからな!蒼!」
俺は声をかけるが、蒼はお腹をさすったまま、消え入りそうな声で呟いた。
「……動かないの。赤ちゃん、さっきから、全然動かないの……」
心臓がドクンと跳ねた。言葉が出ない。ただ、アクセルを踏み込む足が震えた。病院の救急口に車を滑り込ませると、すでにストレッチャーを持った看護師たちが待機していた。
開け放たれたドアから、蒼が運び出されていく。
俺はその後ろを、何もできないまま、ただ祈りながら追いかけるしかなかった。
ストレッチャーに乗せられた蒼が、慌ただしく処置室へと運び込まれていく。
「常位胎盤早期剥離の疑い! すぐにオペ室の準備をして!」
飛び交う医師や看護師たちの緊迫した声。
何が起きているのか、頭がついていかない。
「ご主人、ここで待っていてください」
扉が閉まり、俺は廊下にぽつんと取り残された。
手術室の赤いランプが点灯する。
『胎盤早期剥離』――スマホで必死に検索した画面には、「赤ちゃんへの酸素が途絶える」「母子ともに危険」という恐ろしい言葉ばかりが並んでいた。
「嘘だろ……頼む、蒼と子供を助けてくれ……」
頭を抱え、ただ祈るしかなかった。
二人が無事なら、他に何もいらない。
どれほどの時間が経っただろう。
手術室のランプが消え、医師が足早に出てきた。
マスク越しでも分かる、沈痛な表情。
「先生、妻は……赤ちゃんは……!」
すがるように駆け寄る俺に、医師は静かに首を振った。
「奥様の命に別状はありません。出血がひどく危険な状態でしたが、手術で一命を取り留めました」
一瞬、安堵が広がったのも束の間、医師の次の言葉に、世界のすべての音が消えた。
「ですが……赤ちゃんは、間に合いませんでした。胎盤が大きく剥がれてしまっており、病院に到着された段階で、すでに心音が停止していました。本当に、残念ですが……」
「え……?」
声が出なかった。喉の奥がカラカラに乾き、
呼吸の仕方を忘れたようになる。間に合わなかった?
心音が止まっていた?あんなに楽しみに待っていた、
俺たちの子供が、もういない。
「ご主人のせいでも、奥様のせいでもありません。
突発的に起こる、誰にも予測できない病気なんです」
医師が俺の肩に手を置き、静かに告げる。
その言葉が、どこか遠くの世界の出来事のように響いていた。
これから、目を覚ます蒼に、
俺はなんて言えばいいのだろう。
我が子を失った絶望の中で、蒼の引き裂かれるような悲しみを、俺はどうやって支えればいいのだろう。
廊下の白い光が、涙で激しく歪んでいった。
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