「タカヤ」
クラスに、蒼がやってきた。
蒼を見たことないやつもいるから、注目の的だった。
とはいえ、蒼は気にもとめず俺の席まで来た。

「どうしたんだ？」

「今度の撮影で、男の人と撮るんだけど結構密着すると思うから言いにきた」

「他の男と...」

「コンセプトがモード系のペアルックファッションだから、顔近付けたり、手絡ませたりすると思う」

「...」

「あとで知られるよりマシだから先に言いに来た」

「...わかった。俺もそういうのは仕事だってきちんと割り切るよ」

「そうだと助かる」
ありがとう、と言って蒼は自分のクラスに戻って行った。


蒼が、自分以外の男と仲良くしてるところなんて、想像したくねぇ。
でも、雑誌が発売されたら多分見てしまうだろう。
複雑で仕方がない。嫌だなんて言えないのだ。

あいつは夢のためにやってるから、むしろ応援しないと行けねぇ。覚悟決めろ、オレ。



そして、二週間後、例の雑誌が発売された。
俺は本屋によってその雑誌のページをパラパラめくる。

...あった

相手はよく一緒に撮影すると言っていた男だった。
近い顔。今にも唇が重なりそうだ。
次のページではやはり手を絡めてソファで二人でもたれかかっている。

結構ショックを受けるかと思ったが、蒼の真剣な眼差しがそれを払拭してくれた。

いい写真だったなって、言ってやりたい。

少しの嫉妬心がないと言えば嘘になるが、
それは俺が不安になってる証拠で、
真面目に仕事してる蒼に失礼だ。

学校に行ったら、褒めてやろう。
お前は頑張ってるんだなって。
そしたらあいつは喜ぶかな。

オレのやな気持ちなんか押し殺して、
良い彼氏でいられるようにしたい。
蒼はオレの彼女なんだ。
堂々としていよう。

部活が始まるころ、蒼から話しかけてきた。
「雑誌、見た？」と。

オレはいつも通りのトーンで、みたぞ、かっこよかったなって言ってやった。
内心は複雑だが、そういわないと蒼に迷惑がかかる。

「タカヤ、不機嫌なの顔にでてるよ」

「は？」

「本当は全然かっこいいなんて思ってないでしょ」

心を見透かされているように蒼に不意をつかれた。

「私はタカヤが好き、でもこの仕事も好き。どっちも大事にしたいの。わかってくれる？」

「おぅ、オレは分かってるつもりだった。正直ちょっと嫉妬した部分もあったけど、お前のやりたいことを応援したいという気持ちの方が大きい」

さすがタカヤ！と言って背中を叩かれる。

「わたしはこれからも仕事が増えて、たまに学校これないときもあるから、休みの日はできるだけ一緒にいるようにしよう」

「そんなに忙しいのか。」

「沖縄まで撮影行くとか、ざらにあるよ」

「プロだな...オレにもお前みたいな取り柄があればいいんだけど」

「あるじゃん！野球！」
あれは取り柄じゃないだろ、とツッコミを入れる。

「取り柄だよ！キャッチャーは頭良くないとできないんだから、タカヤはもっと自信持っていいの！」

確かに、キャッチャーとしての自信はある。
でもこいつと俺じゃ世界が違いすぎるだろ。

「とにかく！あんまり自分を卑下しないで！」

タカヤはすごいんだよ！

蒼の言ってることは本音だろう。素直に受け入れることにした。

「キャッチャーとしてじゃなくても、私はタカヤが好きだよ！」

どっかで聞いたことがるあ言葉が羅列される。

「おう、なんか元気でた」