運命の人となら 榛名落ち長編
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「蒼ちゃん、蒼ちゃん」
これは...夢?竜くん?
竜くん...会いたかった...!
「僕も蒼ちゃんに会えて嬉しいよ。けど...」
どうしたの?竜くん
「今の蒼ちゃんは見てて苦しくなるよ。昔みたいに、もっと笑って、泣いて、怒って、楽しんで」
笑う...?
「そうだよ。僕は笑顔の蒼ちゃんが大好きだった。だから元の蒼ちゃんに戻って欲しい。それからーーーーーーー。」
3年後の冬ーーーーーーー。
「ねーモトキ〜。聞いてる〜?」
「聞いてねー」
俺は今中学で仲良かった奴ら5人と遊びに来ている。
カラオケ。下手なやつが丹精込めて歌ってるのがキモチワルイ。
「んもう!スマホばっかり見てないでこっち向いて!」
ちゅーーーー
無理やり顔を向けられて、あんまり記憶のない女にキスされた。
「ばっ...!!お前何すんだよ!!!!」
「人の話聞いてないモトキが悪い〜。ね〜私たち付き合おうよ〜」
「無理だな」
「むっ...なんでよぅ」
「俺は恋愛に興味がないからだ」
「え...モトキってもしかして、ゲイ?」
「違うっつーの!もうお前どけ!人の上に跨るな!」
どこの誰が勘違いするかわからねーのに地元に安全地帯ってのはないのかね!まぁ...勘違いされて困る相手なんていないんだけど...。
「おーい!次バッセン行こうだってー!」
バッセン...まぁ投げるわけじゃないし行ってもいいか。ストラックアウト頼まれたらアップしてないから無理っていえばいいし。
「おう!行くー!」
タクシーに乗って、一番近いバッティングセンターについた。
「バッセン久しぶりだな〜」
「お?かずき、打てない時のための保険か?」
「ちげーよ!モトキは打てて当然だもんな〜」
「うちらは見とくね〜」
女子二人は観戦。
「ここのバッセンのMAX速度は130か。130...130...」
「ぶっ...ゆうすけ、急に立ち止まんなよ」
「いやモトキ...130キロのマシンがさ...あったんだけど、今使ってるの、女の子なんだよ...女の子だよな?あの体型」
すげー長打だ、と言うゆうすけの見る方向に目を向けると、黒髪ロングの細身の女性がバンバンボールをバットに当てていた。
カキーーーーーーン!
......?
カキーーーーーーーン!
あれ?俺あの子のスイング見たことあるぞ...?
そう、確か2年前、ARCに行った時ノック打ってた......。
カキーーーーーーーーン!
もしかして
カキーーーーーーーーン
もしかして...!
「蒼!!」
女性はビクリと体を震わせ、恐る恐るこちらを振り向いた。
「は、榛名先輩...?」
やっぱり蒼だ。蒼だ!蒼だ!
俺はいてもたってもいられず蒼を抱きしめていた。
「蒼...!」
「あ、は、榛名先輩、ここは危ないので、やめてください」
俺は蒼の手を握り同級生を差し置いてバッセンから出てった。
「蒼...元気だったか」
「はぁ...まぁ...」
「髪、すげ伸びたな」
「ヘアドネーションしたいので」
「へぇ...今何してんの」
「リトルリーグのコーチやってます」
「ははっ!蒼らしいな」
「...榛名先輩は、プロ入りおめでとうございます」
「知っててくれたのか。ありがとう。毎日忙しいよ」
「まぁ...テレビに映りますし」
「俺、ずっと蒼のこと探してたんだ。転校と同時に引越ししてるし、高校引退後ARC行ったらもう蒼はいねーし...」
「...私も、ずっと榛名先輩に言いたいことがありました」
「...!なんだ?なんでも言って!」
「...あの時傷つけて、本当にすみませんでした。悔いても悔いても自分が許せません」
「あの時ってーと、俺が蒼にフラれた時か」
「っ...。あの時の私は、色々なことが重なって榛名先輩どころじゃなかったんです」
俺どころじゃなかったってーのは、蒼の親父さんの話を聞いたからよくわかる。不眠症で、竜くんの呪いにかかって、俺が余計なこと言ったから。
「だからっ...私...ずっとずっと謝りたくて...」
再び蒼を抱きしめた。
「蒼自身が許せなくても、俺は許すよ」
「うっ...うぅー...」
何?蒼、泣いてんのか?泣いてるところなんて初めてじゃね?
ちょっと興味本位で蒼の顔を除く。
「ちょ...何見てるんですか...」
「いや、蒼ってどんなふうに泣くのかなーって」
「別に普通ですよ」
「むっふーん」
「なんですか、気持ち悪い」
「蒼が、感情を表に出してくれてるなーって」
「それは...竜くんが...助けてくれたから...」
え?ちょい待って?何この満ち足りたような好きな人と喋って紅潮したかのような表情は。俺こんな蒼見たことないぞ。なんつー顔してんだよ。
「あっ...竜くんてのは中三で亡くなった元彼氏で、夢に...でてきてくれたんです」
「夢?」
「はい。私は私らしく、素直な感情でいて欲しいって。それからーーーーーー」
この言葉を、俺は聞き逃すことなどなかった。
「好きな人には、もっと素直でいなさいって...」
それって...。
両手で顔を塞ぐ蒼。耳が赤くなってるのがわかる。
「蒼、俺、別れてから一度も彼女作らなかったんだ」
「それは...私もです」
「俺、期待していいんだよな?」
「......また榛名先輩を傷つけるかもしれません」
「それでも3年待てたぞ」
「また榛名先輩に迷惑かけるかもしれません」
「それは俺も同じだ。蒼に迷惑かけるかもしれない」
「それでも私は性懲りも無く榛名先輩を好きでいるんでしょう」
っ...。淡々とものすごい発言したな。
「これからのことは、ちょっと考えさせてください。好きだけじゃいけませんし」
「いよいよ俺らの人生に関わることだからな」
「はい。今日はもう帰ります」
「送る。今の蒼の家どこだ」
「ARCの近くです」
「...親父さんも心配性だな。時間遅いし、タクシーで帰ろう」
「はい...」
タクシーの中で、リトルリーグの話を聞いた。俺はプロの話をした。
お互いに、過去を蒸し返すようなことはしなかった。