chuchu 短編
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「最近野球が楽しくない」
突然、野球バカがとんでもない事を発した。
そーいやこいつは根っからの飽き性だ。
女子野球も飽きて辞めて西浦に来たから、
いつかこうなることは必然だったのかもしれない。
「俺…気になる大学あるんだけど…」
「どこ?」
「早大の野球部。性別関係なく入れるらしい」
「えっ、それって、女子が男子に立ち向かうこともできるってこと?」
「そういうこと。一応女子サークルもあるみたいだけど」
蒼の表情が打って変わった。
「行こう行こう!今から電話してみる!」
さっきまで「野球が楽しくない」と言っていたやつが急に行動的になるなんてどういうことか。
「はい!はい!日曜日に行きます!よろしくお願いします!」
電話を終えた蒼がキラキラしている。
「試合することになったよ!」
「は?」
「元々わたしのスカウトに行こうとしてたらしい!」
「そんなとこにまで耳に届いてたのかよ…」
「わたしがピッチャーで、タカヤがキャッチャー!あとは部員の人が仲間になってくれる!」
「お前野球楽しくないんじゃなかったのかよ」
「これは別!フルで投げられる!タカヤとフルでバッテリーが組める!」
「回数の違いかよ…」
野球バカでもとんでもない野球バカだってことはよくわかった。
「日曜日楽しみだね!」
「おう…」
…
…
日曜日がやってきた。
「タカヤーおはよー!」
蒼はしっかり変装してきている。
前に一度きつく叱ったのが効いてるようだ。
とりあえず早大に行こう。
電車に揺られて眠そうになりながら必死に耐えて、無事早大に着いた。
「広いねー!さすが早大だね!設備もしっかりしてそう!」
ウキウキ気分の蒼を見るのは久しぶりな気がする。
こいつの野球への飢えを、誰が満たせるのだろうか。
「タカヤー、グラウンドどっちだろう」
「やべー、オレもわかんねぇ」
とりあえず一周してみたら、グラウンドが見えた。
「こんにちはー!」
「ちわっす!!」
「あー、この間電話した西浦の!僕は部長の月野と申します」
「初めまして!一ノ瀬蒼です!」
「阿部隆也です。今日はよろしくお願いします」
「ちょっと奥に居るのが監督の小宮監督。挨拶行こう」
月野さんについていく。グラウンドを見ると、めいっぱいメンテナンスされてるのがわかる。あと、他の部活が使ってない。野球部専用のグラウンドなんだ。
「小宮監督、女子の方でスカウトしたかった一ノ瀬さんと、早大に興味をもってくれた阿部くんです」
「どうも、小宮です。今ノック打ってるのがコーチの佐山、ブルペンにいるのが佐藤。佐佐コンビって呼んでる」
「佐佐コンビ…監督は何やられるんですか?」
「俺はそろそろ…練習終わりみたいだな。俺は紅白戦に主に活躍してるよ。今日は2人のバッテリーを楽しみにしていたんだ」
「わ、わたしも、わたし達も、楽しみにして来ました!」
「よろしく頼むね。じゃあ、始めようか。全員集合!
今日は高校生が見学と、うちの紅白試合を経験しにきてくれました。一ノ瀬さんと阿部くんです」
「わたしはっ、あ、待ってください」
言うや否や、蒼は変装していた帽子とヅラとサングラスを外した。
まるで烏の卵から白鳥が生まれたような激変っぷりだ。
周りの全員が驚いている。
「俺、見た事ある…」
「俺も…渋谷で看板になってた…」
「なんだなんだ、お前たちは一ノ瀬さんを知ってるのか?」
監督が不思議そうに聞く。
「この人モデルですよ…合っていれば」
「そうなのかい?」
「はは…はい、見た目がこんななので、モデルとして活躍しています。でも大学では真剣に野球やりたくて探しています!」
「すげー!初一ノ瀬蒼だ!」
「サインもらおう!」
「俺もサインほしー」
「はいはい、お前たちの私情はそこまで。今日は投げにきてくれたから、気抜くなよ!」
「「「はい!!!!」」」
すごい統率力だ。
1回表、蒼は後攻をとった。
早速見せるか。
インハイに全力のストレート!
「ストライク!」
指示通りとはいえ、インハイに投げられるってことは相当コントロールに自信がある証だ。全くこいつは、いつまでも貪欲だな。
次はどーすっかな…部の先輩に敵チームの一人一人の特徴は教えてもらった。
「今見た?球。速くねぇ?」
「その辺の高校球児と変わんねぇな」
次もストレートは通じる気がしねぇ。
パームボールで調子見るか。
ヒュン
パシィッ
「ストライク!」
振ってもこないな。緊張してんのか?
もう一つパームボール
ビュンッ
パァンッ
「ットライーク!アウト!」
もしかして見ろ、の指示が出ているのか?
見たところで、蒼の球種の多さで抑えられる気がしねーけどな。
2人目、こいつはひょろ長いけどリーチも長い。外角は飛ばされそうだから窮屈になるインハイでもいっかい…球種はとりあえずストレートで様子見…
ビュンッ
パシィッ
「ストライク!」
?
もしかして1週回るまで見ろの指示がでてるのか?
とりあえず次はスクリューで…
ビュンッ
ブンッ
!
お
初めて振った!見ろの指示がないならこいつら多分、慎重になりすぎて固まってんだ。
そんなんじゃ蒼は攻略できないぞ。
次もスクリューで低めに…
ブンッ
「ストライク!アウッ!」
「すんません!一球目ストライク、二、三はスクリューだと思います!」
「1番はなんの変化球かわからないと言うし、スクリューも投げられるし、持ち球が何種あるのかでだいぶ変わってくるぞ…3番!翻弄されるなよ!」
「はい!」
3番は小柄だからインコースを得意としている…外角で攻めて見るか。
外にシュート…
ビュンッ
パァンッ!
やっぱり初球は振らないんだな。そういう指導をされてるのだろう。
あまり初回でいろいろな球種を見せたくはない。
3回まではストレート、スクリュー、シュートで攻めよう。
もう1回、今度は真ん中にシュート
ビュンッ
パァンッ!
…絶妙だぜ。
「俺の時はシュートでした!球種はストレート、スクリュー、シュート、と謎の球は間違いないです!」
「その謎の球を何球も投げてこないってのが決め球なんだろう」
1回裏は先輩同士の闘いで0点に抑えられた。
「ごめん!一ノ瀬さん、阿部くん!次は点とるから!」
「まだ1回終わったばっかですよ!大丈夫です!」
「ちなみに相手投手の球種はなんですか?」
「ストレート、スライダー、カーブだよ」
「定石通りって感じだな…」
2回表、
4番だ。背も高いし、太さもある。鍛えられた体をしている。仕方がない、コイツにだけは球種を増やそう。
まずはアウトコースにストレート。
ビュンッ
カキン!
「ファール!」
初回から振ってきたな…。次はカットボール、外低め。
ビュンッ
ブンッ
「ストライク!」
さて、お次はパームボールで行くか?シンカーもありだが…
パームボールのサインをだすと、蒼は頷いた。
ビュンッ
パァンッ!
「ストライク!アウト!」
ふう、4番を切り抜けた。あとは3つの球種で凌げるだろう。
蒼は5番、6番も三振に抑えた。
「お前ら、高校生に抑えられてんだぞ!もっと頭を使え!知らない球種でも軌道を覚えたら振れるはずだ!3回までは見てもいい、4回から振っていけよ!」
「「「「はい!!!!」」」」
「一ノ瀬さん、ちょっといい?」
「は、はい!」
蒼がコーチに呼ばれた。
何を話しているんだろう。
「なんだって?」
「場合によってはこっちからもサインだすから、球種教えて欲しいって言われて」
「お前の球種の数じゃ今から覚えるのも無理だろう」
「うん、だからコースとかは任せるけど不安があったらサインしてだって」
「俺も見とかないといけないな」
「まぁ、大事な場面になったら、だからアウトとってれば大丈夫だよ」
そんなことを簡単に言える蒼のメンタルが羨ましいとさえ思う。
2回裏、先輩のおかげで1点先取。
でもまだ1点じゃ全然安心できない。
3回表、7.8.9を三振で抑えた。
もしかしてこれは狙えるんじゃないか?
ノーヒットノーラン。
3回裏、蒼の番だ。
ヒュン
パシッ
「ボール!」
?
えらい遅いな…
もしかして、球速落として投げてる?
ビュンッ
カキンッ
「ファール!」
やっぱりそうだ。相手の先輩は遠慮して球速を落としている。
ビュンッ
「舐めんな、よっ!」
カキーーーーーーン!
ボールは守備センターの頭を大きく超えて柵に当たった。
「三塁打だー!」
「一ノ瀬さんすげー!」
そして、9番の俺が蒼をホームに帰してやらないといけない。大仕事だ。
カキーーン!
いい当たり!蒼は?ホームにいる!俺も2塁まで走る!
先輩の二塁打もあって、オレもホームに帰ってこれた。
「おお…高校生コンビがいい仕事したなぁ」
ビクッとする先輩たち。
「打ってこいよ」
「うす!」
その後1.2番が塁に出て、3.4番のヒットで3点目を先取し、5.6番がアウトでチェンジになった。
4回表
こっから蒼の快進撃だぜ。思う存分投げろよ!
まずはグローブを持ち替えてシンカー、チェンジアップ、フォークで打ち取る。
続いて左に持ち替えてパームボール、チェンジアップ、スクリューを投げる。
最後はシンカー、ツーシーム、クイックで三者三振!
「今なんか持ち手変えてなかった?」
「だよな。よく見たらグローブの形も変だし」
「変化球もバンバン投げてたよな」
「1番、2番、3番!お前らは変化球見極められたか?」
「すみません…チェンジアップ、フォーク、恐らくシンカー、だったと思います」
「俺の時はツーシームとクイックでタイミングずらされました」
「今の所球種はいくつだ?」
「ストレートを入れると7種です」
「これはいよいよ難しくなってきたな…リードしてる捕手も通常の練習でバッテリー組んでるんだろうな。安定している。何より投手のコントロールがいい」
それから5.6回で先輩たちが3点先取、7回で1点取りコールドとなった。
私はこの日、タカヤのおかげでノーヒット・ノーランにすることができた。
「普段はどんな練習されてるんですか?」
監督に聞く。
「普段はポジションごとにノックの配置変えて打ったり、ノックの手が空いてるやつはキャッチボールやらせて、バッティング強いやつはマシンで140km〜変化球まで打たせてるよ。」
「はぁ…なんだか帝大みたいですね」
「何、君ら帝大にも行ったの?」
「はい…私が女子野球のスカウトきてて、どうせならってことで練習風景を見させてもらいました」
「キミ相当すごいよね。何種なげられるの?」
「両手合わせて10種です」
「試合はもちろんだけど練習にピッタリの投手だなぁ」
「はは!今マネジ兼練習相手をしています!」
「うん、キミは投げ続けた方がいい。でも、怪我しないようにね」
「はい!今日はありがとうございました!」
「また気になることがあったらいつでも来てくれていいからね」
「はい!では失礼します!」
…
「はぁ!久しぶりに長く投げられたから清々しい!」
「お前には疲れってもんがないのか」
「心地いい!」
「…ところで、どうだった?」
「練習方法は帝大みたいだなと思ったけど、選手の意識が低いな〜と思ったかな。逆に言えばギクシャクしてないところが良いところだけど」
「オレはお前とも練習できて有りかなと思った」
「確かに!大学でもバッテリー組めたらいいよね!」
第1候補を帝大にするか、早大にするかは、蒼の判断に任せよう。
「第1候補悩むな…」
「まぁ、時間はあるしまた見に行ってもいいし、ゆっくり決めようぜ」
「そうだね!」
帰りは2人でアイスを食べながら帰った。
突然、野球バカがとんでもない事を発した。
そーいやこいつは根っからの飽き性だ。
女子野球も飽きて辞めて西浦に来たから、
いつかこうなることは必然だったのかもしれない。
「俺…気になる大学あるんだけど…」
「どこ?」
「早大の野球部。性別関係なく入れるらしい」
「えっ、それって、女子が男子に立ち向かうこともできるってこと?」
「そういうこと。一応女子サークルもあるみたいだけど」
蒼の表情が打って変わった。
「行こう行こう!今から電話してみる!」
さっきまで「野球が楽しくない」と言っていたやつが急に行動的になるなんてどういうことか。
「はい!はい!日曜日に行きます!よろしくお願いします!」
電話を終えた蒼がキラキラしている。
「試合することになったよ!」
「は?」
「元々わたしのスカウトに行こうとしてたらしい!」
「そんなとこにまで耳に届いてたのかよ…」
「わたしがピッチャーで、タカヤがキャッチャー!あとは部員の人が仲間になってくれる!」
「お前野球楽しくないんじゃなかったのかよ」
「これは別!フルで投げられる!タカヤとフルでバッテリーが組める!」
「回数の違いかよ…」
野球バカでもとんでもない野球バカだってことはよくわかった。
「日曜日楽しみだね!」
「おう…」
…
…
日曜日がやってきた。
「タカヤーおはよー!」
蒼はしっかり変装してきている。
前に一度きつく叱ったのが効いてるようだ。
とりあえず早大に行こう。
電車に揺られて眠そうになりながら必死に耐えて、無事早大に着いた。
「広いねー!さすが早大だね!設備もしっかりしてそう!」
ウキウキ気分の蒼を見るのは久しぶりな気がする。
こいつの野球への飢えを、誰が満たせるのだろうか。
「タカヤー、グラウンドどっちだろう」
「やべー、オレもわかんねぇ」
とりあえず一周してみたら、グラウンドが見えた。
「こんにちはー!」
「ちわっす!!」
「あー、この間電話した西浦の!僕は部長の月野と申します」
「初めまして!一ノ瀬蒼です!」
「阿部隆也です。今日はよろしくお願いします」
「ちょっと奥に居るのが監督の小宮監督。挨拶行こう」
月野さんについていく。グラウンドを見ると、めいっぱいメンテナンスされてるのがわかる。あと、他の部活が使ってない。野球部専用のグラウンドなんだ。
「小宮監督、女子の方でスカウトしたかった一ノ瀬さんと、早大に興味をもってくれた阿部くんです」
「どうも、小宮です。今ノック打ってるのがコーチの佐山、ブルペンにいるのが佐藤。佐佐コンビって呼んでる」
「佐佐コンビ…監督は何やられるんですか?」
「俺はそろそろ…練習終わりみたいだな。俺は紅白戦に主に活躍してるよ。今日は2人のバッテリーを楽しみにしていたんだ」
「わ、わたしも、わたし達も、楽しみにして来ました!」
「よろしく頼むね。じゃあ、始めようか。全員集合!
今日は高校生が見学と、うちの紅白試合を経験しにきてくれました。一ノ瀬さんと阿部くんです」
「わたしはっ、あ、待ってください」
言うや否や、蒼は変装していた帽子とヅラとサングラスを外した。
まるで烏の卵から白鳥が生まれたような激変っぷりだ。
周りの全員が驚いている。
「俺、見た事ある…」
「俺も…渋谷で看板になってた…」
「なんだなんだ、お前たちは一ノ瀬さんを知ってるのか?」
監督が不思議そうに聞く。
「この人モデルですよ…合っていれば」
「そうなのかい?」
「はは…はい、見た目がこんななので、モデルとして活躍しています。でも大学では真剣に野球やりたくて探しています!」
「すげー!初一ノ瀬蒼だ!」
「サインもらおう!」
「俺もサインほしー」
「はいはい、お前たちの私情はそこまで。今日は投げにきてくれたから、気抜くなよ!」
「「「はい!!!!」」」
すごい統率力だ。
1回表、蒼は後攻をとった。
早速見せるか。
インハイに全力のストレート!
「ストライク!」
指示通りとはいえ、インハイに投げられるってことは相当コントロールに自信がある証だ。全くこいつは、いつまでも貪欲だな。
次はどーすっかな…部の先輩に敵チームの一人一人の特徴は教えてもらった。
「今見た?球。速くねぇ?」
「その辺の高校球児と変わんねぇな」
次もストレートは通じる気がしねぇ。
パームボールで調子見るか。
ヒュン
パシィッ
「ストライク!」
振ってもこないな。緊張してんのか?
もう一つパームボール
ビュンッ
パァンッ
「ットライーク!アウト!」
もしかして見ろ、の指示が出ているのか?
見たところで、蒼の球種の多さで抑えられる気がしねーけどな。
2人目、こいつはひょろ長いけどリーチも長い。外角は飛ばされそうだから窮屈になるインハイでもいっかい…球種はとりあえずストレートで様子見…
ビュンッ
パシィッ
「ストライク!」
?
もしかして1週回るまで見ろの指示がでてるのか?
とりあえず次はスクリューで…
ビュンッ
ブンッ
!
お
初めて振った!見ろの指示がないならこいつら多分、慎重になりすぎて固まってんだ。
そんなんじゃ蒼は攻略できないぞ。
次もスクリューで低めに…
ブンッ
「ストライク!アウッ!」
「すんません!一球目ストライク、二、三はスクリューだと思います!」
「1番はなんの変化球かわからないと言うし、スクリューも投げられるし、持ち球が何種あるのかでだいぶ変わってくるぞ…3番!翻弄されるなよ!」
「はい!」
3番は小柄だからインコースを得意としている…外角で攻めて見るか。
外にシュート…
ビュンッ
パァンッ!
やっぱり初球は振らないんだな。そういう指導をされてるのだろう。
あまり初回でいろいろな球種を見せたくはない。
3回まではストレート、スクリュー、シュートで攻めよう。
もう1回、今度は真ん中にシュート
ビュンッ
パァンッ!
…絶妙だぜ。
「俺の時はシュートでした!球種はストレート、スクリュー、シュート、と謎の球は間違いないです!」
「その謎の球を何球も投げてこないってのが決め球なんだろう」
1回裏は先輩同士の闘いで0点に抑えられた。
「ごめん!一ノ瀬さん、阿部くん!次は点とるから!」
「まだ1回終わったばっかですよ!大丈夫です!」
「ちなみに相手投手の球種はなんですか?」
「ストレート、スライダー、カーブだよ」
「定石通りって感じだな…」
2回表、
4番だ。背も高いし、太さもある。鍛えられた体をしている。仕方がない、コイツにだけは球種を増やそう。
まずはアウトコースにストレート。
ビュンッ
カキン!
「ファール!」
初回から振ってきたな…。次はカットボール、外低め。
ビュンッ
ブンッ
「ストライク!」
さて、お次はパームボールで行くか?シンカーもありだが…
パームボールのサインをだすと、蒼は頷いた。
ビュンッ
パァンッ!
「ストライク!アウト!」
ふう、4番を切り抜けた。あとは3つの球種で凌げるだろう。
蒼は5番、6番も三振に抑えた。
「お前ら、高校生に抑えられてんだぞ!もっと頭を使え!知らない球種でも軌道を覚えたら振れるはずだ!3回までは見てもいい、4回から振っていけよ!」
「「「「はい!!!!」」」」
「一ノ瀬さん、ちょっといい?」
「は、はい!」
蒼がコーチに呼ばれた。
何を話しているんだろう。
「なんだって?」
「場合によってはこっちからもサインだすから、球種教えて欲しいって言われて」
「お前の球種の数じゃ今から覚えるのも無理だろう」
「うん、だからコースとかは任せるけど不安があったらサインしてだって」
「俺も見とかないといけないな」
「まぁ、大事な場面になったら、だからアウトとってれば大丈夫だよ」
そんなことを簡単に言える蒼のメンタルが羨ましいとさえ思う。
2回裏、先輩のおかげで1点先取。
でもまだ1点じゃ全然安心できない。
3回表、7.8.9を三振で抑えた。
もしかしてこれは狙えるんじゃないか?
ノーヒットノーラン。
3回裏、蒼の番だ。
ヒュン
パシッ
「ボール!」
?
えらい遅いな…
もしかして、球速落として投げてる?
ビュンッ
カキンッ
「ファール!」
やっぱりそうだ。相手の先輩は遠慮して球速を落としている。
ビュンッ
「舐めんな、よっ!」
カキーーーーーーン!
ボールは守備センターの頭を大きく超えて柵に当たった。
「三塁打だー!」
「一ノ瀬さんすげー!」
そして、9番の俺が蒼をホームに帰してやらないといけない。大仕事だ。
カキーーン!
いい当たり!蒼は?ホームにいる!俺も2塁まで走る!
先輩の二塁打もあって、オレもホームに帰ってこれた。
「おお…高校生コンビがいい仕事したなぁ」
ビクッとする先輩たち。
「打ってこいよ」
「うす!」
その後1.2番が塁に出て、3.4番のヒットで3点目を先取し、5.6番がアウトでチェンジになった。
4回表
こっから蒼の快進撃だぜ。思う存分投げろよ!
まずはグローブを持ち替えてシンカー、チェンジアップ、フォークで打ち取る。
続いて左に持ち替えてパームボール、チェンジアップ、スクリューを投げる。
最後はシンカー、ツーシーム、クイックで三者三振!
「今なんか持ち手変えてなかった?」
「だよな。よく見たらグローブの形も変だし」
「変化球もバンバン投げてたよな」
「1番、2番、3番!お前らは変化球見極められたか?」
「すみません…チェンジアップ、フォーク、恐らくシンカー、だったと思います」
「俺の時はツーシームとクイックでタイミングずらされました」
「今の所球種はいくつだ?」
「ストレートを入れると7種です」
「これはいよいよ難しくなってきたな…リードしてる捕手も通常の練習でバッテリー組んでるんだろうな。安定している。何より投手のコントロールがいい」
それから5.6回で先輩たちが3点先取、7回で1点取りコールドとなった。
私はこの日、タカヤのおかげでノーヒット・ノーランにすることができた。
「普段はどんな練習されてるんですか?」
監督に聞く。
「普段はポジションごとにノックの配置変えて打ったり、ノックの手が空いてるやつはキャッチボールやらせて、バッティング強いやつはマシンで140km〜変化球まで打たせてるよ。」
「はぁ…なんだか帝大みたいですね」
「何、君ら帝大にも行ったの?」
「はい…私が女子野球のスカウトきてて、どうせならってことで練習風景を見させてもらいました」
「キミ相当すごいよね。何種なげられるの?」
「両手合わせて10種です」
「試合はもちろんだけど練習にピッタリの投手だなぁ」
「はは!今マネジ兼練習相手をしています!」
「うん、キミは投げ続けた方がいい。でも、怪我しないようにね」
「はい!今日はありがとうございました!」
「また気になることがあったらいつでも来てくれていいからね」
「はい!では失礼します!」
…
「はぁ!久しぶりに長く投げられたから清々しい!」
「お前には疲れってもんがないのか」
「心地いい!」
「…ところで、どうだった?」
「練習方法は帝大みたいだなと思ったけど、選手の意識が低いな〜と思ったかな。逆に言えばギクシャクしてないところが良いところだけど」
「オレはお前とも練習できて有りかなと思った」
「確かに!大学でもバッテリー組めたらいいよね!」
第1候補を帝大にするか、早大にするかは、蒼の判断に任せよう。
「第1候補悩むな…」
「まぁ、時間はあるしまた見に行ってもいいし、ゆっくり決めようぜ」
「そうだね!」
帰りは2人でアイスを食べながら帰った。