chuchu 短編
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練習中、志賀先生の呼び出しでグラウンドの入口へ向かった。
「こんにちは」
そこには 知らない人が2人。と、志賀先生がいた。
「一ノ瀬、こちら大坂体育大学の監督の横山監督と部長の中田さん」
「はじめまして!一ノ瀬蒼と申します!」
「はじめまして。今日は、君の腕前を見に来ました。もし良ければ、投げてくれない?」
「はい!...タカヤ!」
「おう!準備はできてんよ!」
「スピードガンで測らせてください」
横山監督がタカヤの後ろで構える。
タカヤがミットを構えて座る。
「一球!」
私はミットへ向けて全力で球を投げる。
ビュン
パァン!
「133km...まさかそんな、日本女子野球界最速じゃないか?変化球は何が投げれる?」
「投げますねー」
10種の変化球をお披露目し、横山監督は唖然としていた。
「こんな...こんな逸材の子がなぜマネージャーなんかやってるんだ?福岡の殆どの公式戦で優勝してると聞いた。今は埼玉で女子野球はやってないと...どうしてだ?」
「いやまぁ、色々ありまして。でも大学では野球復活する予定です!」
「ぜひうちに来て欲しい!キミなら即スタメンで試合に出て欲しい」
「あはは。ほかのスカウトの人たちも同じこと言ってました」
「どこからスカウトを受けたんだい?」
「帝透と、平聖大、あとは巨人です」
「競合揃いじゃないか...そりゃこんな逸材放っておけないもんな。一ノ瀬さん、うちの練習見に来ない?」
「いいんですか?あ、あと、男子野球に興味がある子が1人いるんで一緒に連れてきて大丈夫ですか?というか、そこにいる捕手なんですけど」
「歓迎するよ。日程を決めよう」
部活が休みの日に行くことが決まった。
それじゃ、また今度と言って横山監督と中田さんは、帰っていった。
日曜日、タカヤを連れて大阪まで向かった。
「坂大は男子も女子も野球に力をいれてるみたい」
「そりゃ楽しみだな」
「ついたぁ...!」
私とタカヤ、初の大阪である。
「たこ焼き食べよ、たこ焼き」
「その前に、ほら」
「あ!部長の中田さん!」
「はは、名前覚えてくれてよかった」
「今日はよろしくお願いします!」
「お願いします!」
「車用意してるから、乗って、大学まで行くよ」
「あの、坂大の女子野球部の成績ってどんな感じですか?」
「2021年に公式戦で優勝してるよ。尚棐って大学を知ってるかい?最近はそこが一強だね」
「尚棐...知ってます。でも男子の硬式野球部はないですよね?」
「そうだね。もしかしてキミ達2人、同じ大学を目指しているのかい?」
「そうです。同じ大学の野球部に入ろうと思ってます」
「へぇ...仲がいいんだね。いいと思うよ。同じ大学で、お互いに各々切磋琢磨して試合に挑む。大事な事だと思うよ」
着いたよ、と言って中田さんが扉を開けてくれた。
「ありがとうございます!」
「監督、一ノ瀬さん連れてきました」
「おう、何日ぶりかだね。元気にしてる?」
「はい!この日を楽しみにしてました!今選手の皆さんはなにされてるんですか?」
「今は紅白戦をやってる。うちは投内連携とか、紅白戦とか、試合形式の練習が多いんだ。トスやTには時間をかけない」
「試合に直結しないから、ですか?」
「その通り。だからキャッチボール終わったらすぐ紅白戦をやる。そのあとはノック、バッピ、筋トレをする。最後にやるのが反復横跳びしながらボールをキャッチする練習」
「反復横跳び?」
「反射神経を鍛えるためにやってる。ボールを取るまでの時間、動作、それを鍛える」
「なんだか楽しそうですね。うちでも取り入れられないかカントクに聞いてきます」
「監督にとって大事なことってなんですか?」
タカヤがド直球に聞いてきた。
「そうだね...日本一になるチームは、日本一になるための「準備」を怠らない。
準備の質が、すべての結果を決める。
勝てた試合では次も勝つためにどんな準備をするか、そして負けた試合は何が準備不足であったのかを考えること。野球を通して「準備の質が結果を決める」ということの大切さを学び、その経験を「将来への準備」につなげてほしいと願っているよ」
「なるほど...監督にとって勝つ準備ってどういうことですか?」
「高いパフォーマンスを出す努力やどのように試合を運べば勝てるかという事前の検討とかかな。
準備の段階で気付く起こり得るリスク対応とか、そこから生まれる余裕や自信は、準備を万端にすることの大きなメリットと言える」
「...すごく勉強になります」
「君たちは試合に勝つためにどんな準備をしてる?」
「勝っても負けても試合が終わったあとの反省会や、情報共有、月に2回のメントレなどしています」
「メントレか。いいと思うよ、それは続けた方がいい」
「一ノ瀬蒼がいるーー!!!」
紅白戦が終わって、女子たちがベンチへ戻ってきた。
「ぎゃー!生一ノ瀬蒼!女神!」
「サイン!サインください!」
「何?君有名人なの?」
監督が不思議そうにしている。
「監督は男だから知らないでしょうけど、女性雑誌の表紙飾るくらい有名なモデルなんですよ!」
「一ノ瀬蒼さん!サインください!」
「はーい、並んでください」
「もしかして大学に見学行く度にこんな感じなのか?」
「ははっ、そうですね。でもすぐ終わるんで、そんな苦じゃないですよ」
「野球もやって、モデルもやって、君は将来どうなりたいの?」
「野球は、大学までにします。それ以降はモデル1本でやっていきます」
「そうか...君くらいの実力なら巨人や西武、阪神も黙ってないだろうに」
「はは、色んな人に言われます。でも私の意思は変わりません」
「そうか...こら!お前たち!そこまでにして次ノックやるぞ!」
「「「はい!!!」」」
監督がノックの準備をする。
「まぁ、気長に見ていって」
「ありがとうございます!」
それから選手たちがバッピ、反復横跳びをする光景を見て男子野球部の方へ向かった。
「こんにちはー」
「こんにちは!君の隣にいるのが見学したいって言ってた子?」
「はい、阿部と申します」
「監督の松田です。よろしくね」
「今は何されてるんですか?」
「今はセーフティバントの練習してる」
「全員ですか?」
「そう、いつどこでその機会が訪れるかわからないからね。バントってやっぱりみんな怖いでしょ?だから練習で慣れてもらうんだ。一塁に走りきるまでが練習」
「やっぱりバントって大事ですよね。にしても...」
タカヤも私も全体を見渡す。
「設備整ってますね」
「そう、そこは惜しまず学校側に頼んだよ。練習中試合なんかも、うちですることが多いね」
「部員は何名いるんですか?」
「178人いるよ。スタメン争いは、紅白戦でやっていくね」
「すごく人数が多いですね...オレの主観ですけど、やっぱり監督についていきたいって思いが強いんだと思います。」
「はは!ホントにそうだったら嬉しいなぁ。阿部くん、ポジションはどこ?」
「キャッチャーです」
「最速で何kmの球を受けた?」
「155kmの球を受けました。速い球、やっぱりキャッチャーとしては捕れて嬉しいですね。ちなみに隣にいる一ノ瀬は133km出せます」
「女子でその速度?!もしかして日本一じゃないの?」
そうだなぁ...と監督が何かを考えている。
「うちの4番と1打席勝負しようよ」
「「えっ」」
「あんま固まんないで、気楽に投げてくれたらいいから」
「私がピッチャーですか?」
「133kmも出せれば、男子相手でも闘えるよ。キャッチャーは阿部くんね」
「堀田!ちょっとこい!」
「はい!」
「今からこの2人と1打席勝負してくれ」
「へ?俺がですか?」
「だから呼んだんだよ」
「「よろしくお願いします!」」
「わかりました。メット被ってきます」
「阿部くんは、うちの防具使っていいから」
「はい!」
こうして坂大の4番と1打席勝負することになった。
「初めから攻めてくぞ」
「うん、私もそのつもり」
一球目、パームボール
ビュンッ
パァン!
「?!なんだ今の球...」
もういっちょパームボール
ビュンッ
パシィッ!
一球ストレートで遊んで
最後はクイック!
ヒュッ
ブンッ
パァンッ
「打てなかったです...最初の二球、あれなんですか?」
「パームボールです。投げてる人少ないんで、目くらましによく使います」
「こら4番!4番らしく仕事しろ!」
「すんませんした!」
「練習戻っていいぞ!」
4番さんは練習に戻って行った。
「頼りない4番ですまんね」
「いえ、勝負できて良かったです。自信に繋がります」
「一ノ瀬さんは変化球何種もってるの?」
「右手と左手合わせて10くらいですね」
「両利きなの?すごいなぁ」
「選手の練習になるので、覚えました。キャッチャーはいつも阿部くんに頼んでます」
「なるほど...もしかしてだけど君たち付き合ってるの?」
「な、なんでわかったんですかっ」
「一緒の大学見学したいなんて、それ以外ありえないでしょ」
私は顔が赤くなる。
「はは!いいと思うよ。でも練習に支障が出ない程度にね」
「はい!そこは自負してます!」
「一ノ瀬さんと阿部くん、2人ともうちに来るの楽しみにしてるよ」
「「ありがとうございました!!」」
帰りは駅まで中田さんに送ってもらった。
「うち、どうだった?」
「雰囲気がとても良かったです。野球に対する姿勢も真面目で」
「男子野球部はかなり人数が多くて大変そうでした」
「はは!あっこから、スタメン選ぶんだもんなぁ。大変だよ」
「どうしてあんなに人数集まるまで坂大は大きくなったんですか?」
「やっぱ監督の力が大きいね。監督についていきたいって子が多いんだ」
「あ、その気持ちなんだかわかります。私もカントクについていきたいって思ってマネジとして入部しました」
「オレも春休みからカントクの元で野球やりたいって思いました」
「ははっ!女性って聞いてたけど、いい監督さんなんだろうね」
着いたよ、と言ってドアを開けてくれる中田さん。紳士的だ。
「今日はありがとうました!勉強になりました!」
「ありがとうございました!」
「うちに来てくれるのを楽しみにしてるよ」
そう言って中田さんは帰って行った。
電車の中。
「どうだった?」
タカヤが不安そうに話す。
「うーん、候補としては帝透の次かな。練習中の工夫はやっぱり帝透が勝ってた」
「オレは、女子野球部の監督が言ってた"準備"ってのが気になったな」
「私も監督の話に同意見だった。西浦に足りないのはソレだよ」
「カントクにも言ってみようぜ」
月曜日、偵察に行って"準備"の大切さをカントクに伝えた。
「そうだね。それはすごく大事な事だと思う。きっちり準備すれば緊張もしない、ミスもしない。
勝つための準備、負けてしまったあとの準備が、ゆくゆく公式戦の優勝に近づく一歩だと思う。どんな準備が必要か?みんなで話し合ってみましょう」
カントクはやっぱり凄い。改めて感心する。
みんなの"準備"とやらを聞いてみた。
それぞれ色んな案があったけど、一番はやっぱりメントレだった。技術はあとから着いてくる。でもメントレはそう簡単に力づくものにはならない。
「カントク、メントレの回数増やせますか?」
「ん!聞いてみるね」
こうして坂大の弾丸ツアーは幕を下ろした。
「こんにちは」
そこには 知らない人が2人。と、志賀先生がいた。
「一ノ瀬、こちら大坂体育大学の監督の横山監督と部長の中田さん」
「はじめまして!一ノ瀬蒼と申します!」
「はじめまして。今日は、君の腕前を見に来ました。もし良ければ、投げてくれない?」
「はい!...タカヤ!」
「おう!準備はできてんよ!」
「スピードガンで測らせてください」
横山監督がタカヤの後ろで構える。
タカヤがミットを構えて座る。
「一球!」
私はミットへ向けて全力で球を投げる。
ビュン
パァン!
「133km...まさかそんな、日本女子野球界最速じゃないか?変化球は何が投げれる?」
「投げますねー」
10種の変化球をお披露目し、横山監督は唖然としていた。
「こんな...こんな逸材の子がなぜマネージャーなんかやってるんだ?福岡の殆どの公式戦で優勝してると聞いた。今は埼玉で女子野球はやってないと...どうしてだ?」
「いやまぁ、色々ありまして。でも大学では野球復活する予定です!」
「ぜひうちに来て欲しい!キミなら即スタメンで試合に出て欲しい」
「あはは。ほかのスカウトの人たちも同じこと言ってました」
「どこからスカウトを受けたんだい?」
「帝透と、平聖大、あとは巨人です」
「競合揃いじゃないか...そりゃこんな逸材放っておけないもんな。一ノ瀬さん、うちの練習見に来ない?」
「いいんですか?あ、あと、男子野球に興味がある子が1人いるんで一緒に連れてきて大丈夫ですか?というか、そこにいる捕手なんですけど」
「歓迎するよ。日程を決めよう」
部活が休みの日に行くことが決まった。
それじゃ、また今度と言って横山監督と中田さんは、帰っていった。
日曜日、タカヤを連れて大阪まで向かった。
「坂大は男子も女子も野球に力をいれてるみたい」
「そりゃ楽しみだな」
「ついたぁ...!」
私とタカヤ、初の大阪である。
「たこ焼き食べよ、たこ焼き」
「その前に、ほら」
「あ!部長の中田さん!」
「はは、名前覚えてくれてよかった」
「今日はよろしくお願いします!」
「お願いします!」
「車用意してるから、乗って、大学まで行くよ」
「あの、坂大の女子野球部の成績ってどんな感じですか?」
「2021年に公式戦で優勝してるよ。尚棐って大学を知ってるかい?最近はそこが一強だね」
「尚棐...知ってます。でも男子の硬式野球部はないですよね?」
「そうだね。もしかしてキミ達2人、同じ大学を目指しているのかい?」
「そうです。同じ大学の野球部に入ろうと思ってます」
「へぇ...仲がいいんだね。いいと思うよ。同じ大学で、お互いに各々切磋琢磨して試合に挑む。大事な事だと思うよ」
着いたよ、と言って中田さんが扉を開けてくれた。
「ありがとうございます!」
「監督、一ノ瀬さん連れてきました」
「おう、何日ぶりかだね。元気にしてる?」
「はい!この日を楽しみにしてました!今選手の皆さんはなにされてるんですか?」
「今は紅白戦をやってる。うちは投内連携とか、紅白戦とか、試合形式の練習が多いんだ。トスやTには時間をかけない」
「試合に直結しないから、ですか?」
「その通り。だからキャッチボール終わったらすぐ紅白戦をやる。そのあとはノック、バッピ、筋トレをする。最後にやるのが反復横跳びしながらボールをキャッチする練習」
「反復横跳び?」
「反射神経を鍛えるためにやってる。ボールを取るまでの時間、動作、それを鍛える」
「なんだか楽しそうですね。うちでも取り入れられないかカントクに聞いてきます」
「監督にとって大事なことってなんですか?」
タカヤがド直球に聞いてきた。
「そうだね...日本一になるチームは、日本一になるための「準備」を怠らない。
準備の質が、すべての結果を決める。
勝てた試合では次も勝つためにどんな準備をするか、そして負けた試合は何が準備不足であったのかを考えること。野球を通して「準備の質が結果を決める」ということの大切さを学び、その経験を「将来への準備」につなげてほしいと願っているよ」
「なるほど...監督にとって勝つ準備ってどういうことですか?」
「高いパフォーマンスを出す努力やどのように試合を運べば勝てるかという事前の検討とかかな。
準備の段階で気付く起こり得るリスク対応とか、そこから生まれる余裕や自信は、準備を万端にすることの大きなメリットと言える」
「...すごく勉強になります」
「君たちは試合に勝つためにどんな準備をしてる?」
「勝っても負けても試合が終わったあとの反省会や、情報共有、月に2回のメントレなどしています」
「メントレか。いいと思うよ、それは続けた方がいい」
「一ノ瀬蒼がいるーー!!!」
紅白戦が終わって、女子たちがベンチへ戻ってきた。
「ぎゃー!生一ノ瀬蒼!女神!」
「サイン!サインください!」
「何?君有名人なの?」
監督が不思議そうにしている。
「監督は男だから知らないでしょうけど、女性雑誌の表紙飾るくらい有名なモデルなんですよ!」
「一ノ瀬蒼さん!サインください!」
「はーい、並んでください」
「もしかして大学に見学行く度にこんな感じなのか?」
「ははっ、そうですね。でもすぐ終わるんで、そんな苦じゃないですよ」
「野球もやって、モデルもやって、君は将来どうなりたいの?」
「野球は、大学までにします。それ以降はモデル1本でやっていきます」
「そうか...君くらいの実力なら巨人や西武、阪神も黙ってないだろうに」
「はは、色んな人に言われます。でも私の意思は変わりません」
「そうか...こら!お前たち!そこまでにして次ノックやるぞ!」
「「「はい!!!」」」
監督がノックの準備をする。
「まぁ、気長に見ていって」
「ありがとうございます!」
それから選手たちがバッピ、反復横跳びをする光景を見て男子野球部の方へ向かった。
「こんにちはー」
「こんにちは!君の隣にいるのが見学したいって言ってた子?」
「はい、阿部と申します」
「監督の松田です。よろしくね」
「今は何されてるんですか?」
「今はセーフティバントの練習してる」
「全員ですか?」
「そう、いつどこでその機会が訪れるかわからないからね。バントってやっぱりみんな怖いでしょ?だから練習で慣れてもらうんだ。一塁に走りきるまでが練習」
「やっぱりバントって大事ですよね。にしても...」
タカヤも私も全体を見渡す。
「設備整ってますね」
「そう、そこは惜しまず学校側に頼んだよ。練習中試合なんかも、うちですることが多いね」
「部員は何名いるんですか?」
「178人いるよ。スタメン争いは、紅白戦でやっていくね」
「すごく人数が多いですね...オレの主観ですけど、やっぱり監督についていきたいって思いが強いんだと思います。」
「はは!ホントにそうだったら嬉しいなぁ。阿部くん、ポジションはどこ?」
「キャッチャーです」
「最速で何kmの球を受けた?」
「155kmの球を受けました。速い球、やっぱりキャッチャーとしては捕れて嬉しいですね。ちなみに隣にいる一ノ瀬は133km出せます」
「女子でその速度?!もしかして日本一じゃないの?」
そうだなぁ...と監督が何かを考えている。
「うちの4番と1打席勝負しようよ」
「「えっ」」
「あんま固まんないで、気楽に投げてくれたらいいから」
「私がピッチャーですか?」
「133kmも出せれば、男子相手でも闘えるよ。キャッチャーは阿部くんね」
「堀田!ちょっとこい!」
「はい!」
「今からこの2人と1打席勝負してくれ」
「へ?俺がですか?」
「だから呼んだんだよ」
「「よろしくお願いします!」」
「わかりました。メット被ってきます」
「阿部くんは、うちの防具使っていいから」
「はい!」
こうして坂大の4番と1打席勝負することになった。
「初めから攻めてくぞ」
「うん、私もそのつもり」
一球目、パームボール
ビュンッ
パァン!
「?!なんだ今の球...」
もういっちょパームボール
ビュンッ
パシィッ!
一球ストレートで遊んで
最後はクイック!
ヒュッ
ブンッ
パァンッ
「打てなかったです...最初の二球、あれなんですか?」
「パームボールです。投げてる人少ないんで、目くらましによく使います」
「こら4番!4番らしく仕事しろ!」
「すんませんした!」
「練習戻っていいぞ!」
4番さんは練習に戻って行った。
「頼りない4番ですまんね」
「いえ、勝負できて良かったです。自信に繋がります」
「一ノ瀬さんは変化球何種もってるの?」
「右手と左手合わせて10くらいですね」
「両利きなの?すごいなぁ」
「選手の練習になるので、覚えました。キャッチャーはいつも阿部くんに頼んでます」
「なるほど...もしかしてだけど君たち付き合ってるの?」
「な、なんでわかったんですかっ」
「一緒の大学見学したいなんて、それ以外ありえないでしょ」
私は顔が赤くなる。
「はは!いいと思うよ。でも練習に支障が出ない程度にね」
「はい!そこは自負してます!」
「一ノ瀬さんと阿部くん、2人ともうちに来るの楽しみにしてるよ」
「「ありがとうございました!!」」
帰りは駅まで中田さんに送ってもらった。
「うち、どうだった?」
「雰囲気がとても良かったです。野球に対する姿勢も真面目で」
「男子野球部はかなり人数が多くて大変そうでした」
「はは!あっこから、スタメン選ぶんだもんなぁ。大変だよ」
「どうしてあんなに人数集まるまで坂大は大きくなったんですか?」
「やっぱ監督の力が大きいね。監督についていきたいって子が多いんだ」
「あ、その気持ちなんだかわかります。私もカントクについていきたいって思ってマネジとして入部しました」
「オレも春休みからカントクの元で野球やりたいって思いました」
「ははっ!女性って聞いてたけど、いい監督さんなんだろうね」
着いたよ、と言ってドアを開けてくれる中田さん。紳士的だ。
「今日はありがとうました!勉強になりました!」
「ありがとうございました!」
「うちに来てくれるのを楽しみにしてるよ」
そう言って中田さんは帰って行った。
電車の中。
「どうだった?」
タカヤが不安そうに話す。
「うーん、候補としては帝透の次かな。練習中の工夫はやっぱり帝透が勝ってた」
「オレは、女子野球部の監督が言ってた"準備"ってのが気になったな」
「私も監督の話に同意見だった。西浦に足りないのはソレだよ」
「カントクにも言ってみようぜ」
月曜日、偵察に行って"準備"の大切さをカントクに伝えた。
「そうだね。それはすごく大事な事だと思う。きっちり準備すれば緊張もしない、ミスもしない。
勝つための準備、負けてしまったあとの準備が、ゆくゆく公式戦の優勝に近づく一歩だと思う。どんな準備が必要か?みんなで話し合ってみましょう」
カントクはやっぱり凄い。改めて感心する。
みんなの"準備"とやらを聞いてみた。
それぞれ色んな案があったけど、一番はやっぱりメントレだった。技術はあとから着いてくる。でもメントレはそう簡単に力づくものにはならない。
「カントク、メントレの回数増やせますか?」
「ん!聞いてみるね」
こうして坂大の弾丸ツアーは幕を下ろした。