オレの彼女は色白で、髪も白くて、瞳は大海原のように澄んだ碧色で、美人、というよりも、生きる彫刻と言った方が似合うくらい、とにかく美しい姿をしている。
そんな奴と付き合ってるオレ。正直劣等感を感じるときもある。オレなんかが付き合ってもいいのか？釣り合っているのか？周りから見たオレらはちゃんとカップルに見えているのか？
考えても仕方ないのに、時々急にいなくなっちまうんじゃないかと不安になるときもある。

Prrrrr....

思いに吹けていたら、彼女からの電話。

「もしもし、タカヤ？」

「おう、どうした」

「なんか今日一日様子がおかしかったからさ」

勘の鋭い彼女だ。というか、目で見てわかるくらい様子がおかしかったのか、オレは。

「なんというか、急にお前がいなくなったらどうしようかと思ってさ」

「どうしたの、タカヤらしくないよ。わたし、どこにも行かないよ」

その言葉を聞けただけでもこんなに安心するものなのだろうか。

「...ぐす」

「タカヤ？泣いてるの？どうしたの？」

ほんとにどうしたんだオレは。自分でも驚くくらい情緒不安定になっている。

「わたしはタカヤ以外の人と一緒になるつもりなんてないよ」

「あぁ、オレもお前と離れるつもりは無い」

でも、自分に自信が無い。
お前をオレといてよかったって思わせられるだけの自信が。

「タカヤ、私を信じて欲しい」

信じてるさ。疑う隙もないくらい。

「不安になってるのはわたしとずっと一緒にいられるかどうかでしょ？今は形のあるもので証明することはできないけどさ、わたしは誓うよ。これから先もずっとタカヤと一緒にいるって。タカヤが大好きだから」

「わりぃ..気使わせて。お前は世間一般的に有名なやつになって、大学卒業後はモデルに専念するって言って、なんか、遠くに感じてた」

「わたしとタカヤの絆はそんな事でこわれないよ」

「そう....だな、そうだな」

「そうだよ！こんなに好きあってるのに、タカヤは心配性すぎ！」

「そうだな...」

「わたしがどれだけタカヤしか眼中に無いか知らないでしょう？他の男の子と話しててもとってもつまんないんだから。タカヤのする話ならいくらでも聞いてたいよ」

「そうか、なんかゴメンな、ありがとな」

「全然！これからも何か不安があったら話して欲しい。いくらでもタカヤのこと好きって言ってあげるから！」

心にあった鉛が外れた音がした。

オレは何を心配してたんだろう。こんなにオレのことを好きでいてくれてるのに、オレはひとりで不安になって。バカみたいだ。


「ふっ...なんかオレ、かっこわりー」

「そんなことない！タカヤはかっこいいよ！他の人にとられないか心配するくらい！」

あぁ、こいつも同じこと思っていたのか。口には出さないだけで、お互いにお互いが遠のかないか不安だったんだ。

「なんか、話したらスッキリしたな」

「元気でた？ならよかった」

「あぁ、ありがとな」

「また不安になっちゃったりしたら、ひとりで抱え込まないで言ってね！わたしたちは一心同体！」

「わかった」

「じゃあまた明日学校でね！おやすみ！」

「おやすみ、またな」

...。

電話を切ると、自分のダサさに呆れてそれこそ蒼と一緒にいるためにはならないだろうと感じた。

「あーオレ、こんなに切羽詰まってたんだな...」

あまりに完璧な彼女に置いていかれないかという劣等感でいっぱいだったんだ。

オレたちに強い絆があるんだと教えてくれた蒼。

オレは不安感から蒼に助けられた。

今度はオレが支える番だ。蒼が何かに不安を感じていたらオレがそれを取り除いてやろう。

あらためて、オレの彼女はすげーヤツだなと感じた。

ありがとう蒼、お前が彼女で本当に良かった。

また明日、学校で。