1回裏となり、ゲンセーくんがマウンドに立つ。
タカヤのリードのお陰で塁に出たのは1人だけ。
二死二塁、変化球とストレートを組み合わせながらタカヤやカントクの読み通りに展開は進む。

タカヤの指示になんの躊躇いもなく首を振るゲンセーくんに、レンは驚きガシャンっとベンチに倒れた。

「ゲンセーくん、タカヤの高目の指示に首を振ってますね」

カントクに声をかける。

「ピッチャーからしたら打たれるぞ、打たれるのは俺なんだぞって気持ちが大きいんだろうね。阿部くんも相手の情報がない中よくリードできてると思うんだけどな」

たしかに、川越北の情報をほとんど得ることができなかったのに、タカヤは力強いリードをしていると思う。でもゲンセーくんとの信頼関係はまだ浅いから、お互いにお互いの欲しい一球が絡み合わないのだ。

どうしても高目に指示をだしてくるタカヤに対し、ゲンセーくんは大丈夫なわけ？といった表情をしている。

指示は内角高目だったが、投げたボールは大きく外れた。

「多分、阿部くんは今のはストライクにしてほしかったでしょうね」

カントクの読みが正しいと思う。

タカヤの指示にまた首を振るゲンセーくん。

ついにスリーボールになってしまった。

タカヤはボールの指示を出し、塁を埋めることにした。

「埋めたわけね。まぁそれも良し」

カントクも納得している。

タイムをとってゲンセーくんとタカヤが何か話している。多方、次はリード通りに投げろとでも指示してるのだろう。

ゲンセーくんはムスッとした顔をしている。
が、サインに首を振らずに投げた。

カキンッ

相手は打ち損じてアウトとなった。

スリーアウトで交代、それでもゲンセーくんはなんだか不満そうな顔をしている。

「ナイピッチ！」

と言われても、尚納得いかないようだ。

2回表、ユウイチローがゲンセーくんに声をかけていた。ブホッと吹き出すゲンセーくん。
よかった、機嫌が悪いわけではなかったみたいだ。


西浦の攻撃が、再び始まる。