chuchu 短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ごくたまに、蒼が冷めた顔をしているときがある。天真爛漫、という言葉がぴったりであるあの蒼が、口角は下がり、目を合わせれば凍るような瞳をしていて、半分焦点も合わず、黙り込んでいるときがある。
それは練習や練習試合のときだったり、ベンチにいるときだったり、バスや電車の中で座っているときだったり、何かしら野球に関わっているときだけれど、機嫌が悪いを通り越して人が変わったかのように表情が変わる。それが正に今である。
「お前、今自分がどんな顔をしているかわかるか?」
練習試合の帰り、みんなで電車に乗って帰っている。
「え?」
「今何考えてた?」
「頭の中でスコアと配球と試合の流れ確認してた」
「今日一日の試合全部のか?」
「うん。」
「お前、たまにだけどすげー冷めた顔してるときあるぞ」
「ふーん」
「ふーんて、機嫌が悪いのか?」
「いや、違うけど」
「ムスッとした顔とも違う、怖ぇ顔してんだよ」
「考え事してるんだよ」
考え事してるだけでそんな冷めきった顔をするものか。
「なんか、全部どうでもいいやみたいな表情してんぞ」
「...そこまでないけど、ガックリしてるとそうなるのかなぁ」
「かなぁってお前、じゃあ今日は何にガックリしてんだよ。練習試合2試合とも勝ってるんだぞ」
「内容がクソすぎる」
同じく電車に乗って話が聞こえていたメンバーがビクリとする。
(今内容がクソって言った?)
(クソって言ったよな)
(勝ったのにクソってなに?)
「何がクソなんだよ、言ってみろよ」
「2回先取点2点入れられた時のエラー、5回でタイムリー打たれた時の守備位置、送球の判断、タイミング、肩の弱さ、その他諸々」
かなりの練習量をこなしてるのにどうして試合で成果をだせない?と蒼は言う。
「答え、充実した練習量をこなしたことに満足して終わっているから」
話が聞こえている花井、栄口、水谷が冷や汗をかきながら聞こえていないふりをする。
「完璧なプレーができる高校生の方が少ないだろ」
「じゃあなんのために練習こなしてンだって話。練習でミスしても点とられるわけじゃないもんね。みんなその程度でしか練習してないんじゃないの」
「ッあのなあ!」
痺れを切らした花井が怒号を飛ばす。
「練習やってるときはみんなちゃんと試合だと思ってやってんだよ!でも人間なんだから、その日の調子やプレッシャーでうまくいかないときだってあるだろ!」
「ないよ」
調子が悪いのは本人の責任でしょ、試合に合わせて調子を整えるのも練習でできるし、プレッシャーも練習で意識してれば感じなくなるよ。
試合だと思ってやってればね。
ハッキリと言い切る蒼。
「お前...お前はそうかもしれないけど、それが完璧には出来ない奴もいるんだよ!ていうか、大多数の高校生はそうだろ!」
「そんな意識じゃ甲子園なんて行けないよ」
「ッ...誰もがお前みたいに器用にこなせるわけじゃねぇんだよ」
「はぁ...いいんだよ別に、わたしが公式戦でるわけじゃないから。こういう些細なミスを気にしなくてもいいっていうなら、それでいいんじゃない?」
「そうじゃなくて、気になることがあんなら黙って怖ぇ顔してないでちゃんと口にしてくれよ!それがチームだろ!」
「それもそうだ」
じゃ、グラウンド戻ったら反省会しようと提案する蒼に調子をくずされる花井。
「あ、のなあ...はぁ...カントクに確認してからな」
「うんうん」
最初の頃とは打って変わってニッコリと笑顔になる蒼。
試合でミスしたらあんな冷たいこと言われるのかぁ...と恐怖を覚えた水谷。
今日俺は仕事したからいいよね?いいよな?と内心ドキドキする栄口。
「お前、顔に出やすいタイプだから思ったことあれば言えよ。ていうか、ピッチャーとしてはマイナス点だぞ」
「うぇーい...」
試合自体は悪い内容じゃなかったのに、ここまで細かくミスを見つけて指摘できるやつはカントクくらいしかいない。多分今日の反省会でカントクも同じことを言うだろう。
グラウンドに戻ると、カントクが待ち構えていた。
「花井くんから連絡もらったけど、
勝った試合でも反省会がやりたいんだって?
すごくいいと思うよ。みんな思ったこと言っていこう」
「じゃあまず1回表から」と蒼。
(((その段階から???)))
「待て蒼、その密度でやるとこのあとの練習時間が足りねぇ...ですよね?」
花井がカントクの様子を伺う。
「そうだね。さすがに1回ずつやるのは効率的じゃないかも」
「というわけだ、蒼。大事だと思うことから頼む」
そんなこんなで、蒼視点での試合の様子と特筆すべき欠点などいろいろ課題は出てきた。
「要はどのミスも実力じゃなくメンタルの問題だと思うのよ。カントク、メントレの回数を月1から月2に増やせませんか?」
「確認してみるね!」
「じゃあ、今日はランニング、キャッチボール、トスやって終わりな!」
「「おう!」」
「花井くん」
カントクに呼び止められる花井。
「今日の反省会ってなにか理由があったの?」
「蒼...一ノ瀬が、今日の試合はクソだったって言い出して」
「勝ち試合だったのに?」
「はい。内容がクソだったと。電車の中で守備位置や送球のタイミングとか、あれこれ言われました。その日の調子やプレッシャーとかでうまくいかないときもあるんだよって言ったらちゃんと練習してればないよってキッパリ言われて」
「あはは、蒼ちゃんらしいなぁ。あの子が強いのはそこの部分だろうね。花井くんたちになくて、あの子がもってるもの。メントレで補っていきましょう!」
「はい!よろしくお願いします!」
蒼の言いたいことはわかった。けどそれを実践するのってすげぇ難しいことなんじゃねーの?
メントレでどうにかなんのか?
でも、カントクも蒼の話に納得してたし、2人を信じるしかないのか。
...蒼の冷めた表情、マジで怖かったな。
もう二度と見ることがありませんように。
それは練習や練習試合のときだったり、ベンチにいるときだったり、バスや電車の中で座っているときだったり、何かしら野球に関わっているときだけれど、機嫌が悪いを通り越して人が変わったかのように表情が変わる。それが正に今である。
「お前、今自分がどんな顔をしているかわかるか?」
練習試合の帰り、みんなで電車に乗って帰っている。
「え?」
「今何考えてた?」
「頭の中でスコアと配球と試合の流れ確認してた」
「今日一日の試合全部のか?」
「うん。」
「お前、たまにだけどすげー冷めた顔してるときあるぞ」
「ふーん」
「ふーんて、機嫌が悪いのか?」
「いや、違うけど」
「ムスッとした顔とも違う、怖ぇ顔してんだよ」
「考え事してるんだよ」
考え事してるだけでそんな冷めきった顔をするものか。
「なんか、全部どうでもいいやみたいな表情してんぞ」
「...そこまでないけど、ガックリしてるとそうなるのかなぁ」
「かなぁってお前、じゃあ今日は何にガックリしてんだよ。練習試合2試合とも勝ってるんだぞ」
「内容がクソすぎる」
同じく電車に乗って話が聞こえていたメンバーがビクリとする。
(今内容がクソって言った?)
(クソって言ったよな)
(勝ったのにクソってなに?)
「何がクソなんだよ、言ってみろよ」
「2回先取点2点入れられた時のエラー、5回でタイムリー打たれた時の守備位置、送球の判断、タイミング、肩の弱さ、その他諸々」
かなりの練習量をこなしてるのにどうして試合で成果をだせない?と蒼は言う。
「答え、充実した練習量をこなしたことに満足して終わっているから」
話が聞こえている花井、栄口、水谷が冷や汗をかきながら聞こえていないふりをする。
「完璧なプレーができる高校生の方が少ないだろ」
「じゃあなんのために練習こなしてンだって話。練習でミスしても点とられるわけじゃないもんね。みんなその程度でしか練習してないんじゃないの」
「ッあのなあ!」
痺れを切らした花井が怒号を飛ばす。
「練習やってるときはみんなちゃんと試合だと思ってやってんだよ!でも人間なんだから、その日の調子やプレッシャーでうまくいかないときだってあるだろ!」
「ないよ」
調子が悪いのは本人の責任でしょ、試合に合わせて調子を整えるのも練習でできるし、プレッシャーも練習で意識してれば感じなくなるよ。
試合だと思ってやってればね。
ハッキリと言い切る蒼。
「お前...お前はそうかもしれないけど、それが完璧には出来ない奴もいるんだよ!ていうか、大多数の高校生はそうだろ!」
「そんな意識じゃ甲子園なんて行けないよ」
「ッ...誰もがお前みたいに器用にこなせるわけじゃねぇんだよ」
「はぁ...いいんだよ別に、わたしが公式戦でるわけじゃないから。こういう些細なミスを気にしなくてもいいっていうなら、それでいいんじゃない?」
「そうじゃなくて、気になることがあんなら黙って怖ぇ顔してないでちゃんと口にしてくれよ!それがチームだろ!」
「それもそうだ」
じゃ、グラウンド戻ったら反省会しようと提案する蒼に調子をくずされる花井。
「あ、のなあ...はぁ...カントクに確認してからな」
「うんうん」
最初の頃とは打って変わってニッコリと笑顔になる蒼。
試合でミスしたらあんな冷たいこと言われるのかぁ...と恐怖を覚えた水谷。
今日俺は仕事したからいいよね?いいよな?と内心ドキドキする栄口。
「お前、顔に出やすいタイプだから思ったことあれば言えよ。ていうか、ピッチャーとしてはマイナス点だぞ」
「うぇーい...」
試合自体は悪い内容じゃなかったのに、ここまで細かくミスを見つけて指摘できるやつはカントクくらいしかいない。多分今日の反省会でカントクも同じことを言うだろう。
グラウンドに戻ると、カントクが待ち構えていた。
「花井くんから連絡もらったけど、
勝った試合でも反省会がやりたいんだって?
すごくいいと思うよ。みんな思ったこと言っていこう」
「じゃあまず1回表から」と蒼。
(((その段階から???)))
「待て蒼、その密度でやるとこのあとの練習時間が足りねぇ...ですよね?」
花井がカントクの様子を伺う。
「そうだね。さすがに1回ずつやるのは効率的じゃないかも」
「というわけだ、蒼。大事だと思うことから頼む」
そんなこんなで、蒼視点での試合の様子と特筆すべき欠点などいろいろ課題は出てきた。
「要はどのミスも実力じゃなくメンタルの問題だと思うのよ。カントク、メントレの回数を月1から月2に増やせませんか?」
「確認してみるね!」
「じゃあ、今日はランニング、キャッチボール、トスやって終わりな!」
「「おう!」」
「花井くん」
カントクに呼び止められる花井。
「今日の反省会ってなにか理由があったの?」
「蒼...一ノ瀬が、今日の試合はクソだったって言い出して」
「勝ち試合だったのに?」
「はい。内容がクソだったと。電車の中で守備位置や送球のタイミングとか、あれこれ言われました。その日の調子やプレッシャーとかでうまくいかないときもあるんだよって言ったらちゃんと練習してればないよってキッパリ言われて」
「あはは、蒼ちゃんらしいなぁ。あの子が強いのはそこの部分だろうね。花井くんたちになくて、あの子がもってるもの。メントレで補っていきましょう!」
「はい!よろしくお願いします!」
蒼の言いたいことはわかった。けどそれを実践するのってすげぇ難しいことなんじゃねーの?
メントレでどうにかなんのか?
でも、カントクも蒼の話に納得してたし、2人を信じるしかないのか。
...蒼の冷めた表情、マジで怖かったな。
もう二度と見ることがありませんように。