銀ちゃんが好きな女の子
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【恋人がサンタクロース】2020-12-24 Xmas記念
二十四日の二十三時、万事屋のこたつは温かい。テーブルには食べかけのクリスマスケーキ。テレビでは、恋人がサンタクロース、と陽気な歌が流れてる。楽しいイブの夜なのに、隣に座る銀時は不機嫌で、じとっとした目で***を睨んでいた。その原因は一時間前、もう寝ると布団に向かった神楽ちゃんが告げたひと言だ。
「サンタは子供らにプレゼント配ってんのに、銀ちゃんは自分の彼女にすら何も買えないなんて、ほんとに甲斐性なしアルな。***はこんなマダオが彼氏で可哀そうネ」
可愛い顔に似合わない辛辣さに銀時だけでなく、***までピシッと凍った。おやすみネ、と押し入れが閉まると、銀時は部屋の隅で膝を抱え、床に「の」の字を書いていた。いじける銀時を必死になだめて、こたつに引き入れて、ケーキを口に運んでやると「どーせ俺なんて」という自虐は途切れた。しかし、得意の開き直りで怒りだした銀時が、矛先を***に向けたから驚いてしまった。
「買えないんじゃなくて買わねぇだけだし!っつーか、お前が何も欲しがらねぇのが悪いんだぞ!***が銀ちゃんコレ欲しい~とか、アレ貰えたらお礼にミニスカサンタしてあげる~とか、可愛いおねだりしてれば、俺だってもっと本気出したんですけど!?神楽に馬鹿にされずにすんだんですけどぉ~!?ぃよぉ~~~し、分かった、欲しいモンあんならさっさと言えよ!内臓でも金玉でも売って、銀さんが買ってきてやらぁコノヤロォォォ!!!」
「内臓売ってまで欲しい物なんてあるわけないでしょ!」
「あぁっ!?お前まで俺を馬鹿にすんのかよ!」
そんなんじゃないよ、と***は頭を抱えた。
本当に欲しい物なんて無い。しいて言えば先々月に立て替えた家賃を返してほしい。けど、そんなこと言ったらますます怒るのが目に見えてる。うーん、と困り果ててうつむいたら、すぐそこに欲しい物があった。
「あ、じゃぁ、これ欲しいです。このサンタさん」
「はぁ?サンタさんってそれ、砂糖じゃねーか」
ツンツンと指で突いたのはケーキの上の砂糖菓子。クリームの間に立つ小さなサンタの背中に、フォークを刺して掲げた。食べたことないから食べてみたい。へらりと笑った***がそう言うと、銀時は呆れたように「はぁ~」と溜息を吐いた。
「あ、ねぇねぇ、これ見てください!このサンタさん目にやる気がなくって、銀ちゃんにそっくりだよ!」
「オイィィィ!俺は糖尿だけど砂糖の塊と一緒にすんなよ!しかもオメェ、銀ちゃんに似てるとか言いながら、背中にぶっすりフォーク突き刺してんじゃねーかよ!イテテテテッ、何か背中痛ぇよ、バカな***に食われそうで怖ぇよー」
ふざけて痛がるのが可笑しくて、***は悪戯を思いついた。あーん、とわざとらしくサンタの足を食べたら、銀時は自分の足を押さえて「いってぇぇ!」と飛び跳ねた。あははっと笑って腕を齧ると「うがぁぁ!」と叫んでのけ反った。身体が半分無くなる頃、銀時はこたつから飛び出していた。ついに頭だけになると床をのたうち回っていた。
大げさな演技にゲラゲラ笑った***が涙ぐんでいたら、銀時は声もなく笑ってこたつの中に戻ってきた。残ったサンタの頭を食べようとする***を手を、大きな手が掴んで止めた。
「オイィィィ!食うなよ、俺の頭ァァァ!!」
「ヤダよ、私のだもん!離してください!!」
つかみ合って騒いでいると、急に強い力が***の肩を後ろへ押した。ぱったりと仰向けに倒れた顔の横に銀時が両手をつく。フォークだけが畳にぽたりと落ちた。
「あれ!?サンタさんが無い!!」
「んな心配しねーでも、ちゃんと食わしてやるって」
知らぬ間に奪われたサンタの頭が、銀時の口に放り込まれた。ああっ!と声を上げるうちに口づけられて、砂糖の塊を乗せた舌が入り込んできたから、***は驚いてしまった。
「んんっ……!んむっ!?」
ころんっと転がる小さな球体を、熱い舌が押しつぶす。絡めとられた舌の間で擦れて、溶けた砂糖菓子は甘いだけの何かになり、しばらくするとジャリジャリした粒になった。その粒さえ唾液に溶けきって消えた頃、ようやく唇が離れた。恥ずかしくて顔を赤くした***を見下ろして、銀時が意地悪な声で言った。
「欲しいモン貰えて、満足かよ?」
「う、うん、あの、あのね銀ちゃん……私、銀ちゃんと一緒に過ごせるだけで、十分ですからね?」
「ははっ、んなこた知ってるよ……ったくよ、お前ってほんとに銀さんが好きね。こーんな金も無ぇ仕事も無ぇ、足も臭ぇ、ガキふたりと犬の面倒までついてくるオッサン、どこがいいんだか気が知れねぇよ」
らしくもなく自嘲気味に笑うから胸が切ない。こたつ布団の上に押し倒されたまま、***は腕を伸ばして銀時の首に抱き着いた。そんなこと言わないでほしい。本当に銀ちゃんさえ居れば、それだけでいいのに。言葉が見つからずにただ黙ってしがみついていると、気づけば大きな手が***の身体を這いまわり、お尻やお腹をまさぐられていた。
「なっ……!?ちょ、ちょっと、どさくさに紛れてそーゆーのやめてください!こんなとこで!」
「っんだよぉ~~~!今のは完全にこたつセックスになだれ込む流れだったろーが。ムードぶち壊してんじゃねーよ、***ー!!」
ぶ厚い胸板を必死に押し返して、***は銀時の腕の中から脱け出した。時計を見るともう零時近い。もうすぐクリスマスがやってくる。こんな夜更けまで起きていたのは、神楽が熟睡するのを待っていたから。サンタクロースの代わりに銀時と***で、プレゼントを届けるためだったのだ。
ねぇ銀ちゃん早く、と急かすと「ちぇっ」と唇を尖らせた銀時が、サンタの衣装に着替えはじめた。***が持参したトナカイのツノがついたカチューシャを頭に装着すると、銀時は「なんだよソレ!馬鹿丸出しじゃねーか!」とお腹を抱えて笑っていた。
和室の襖を開くと、暗いリビングに神楽のいびきが響いていた。よしよし寝てる。これならこっそり贈り物を置いてこれる。プレゼント入りの白い袋を肩に担いだ銀時が先に出て、後から続いた***が襖を閉めると、視界は真っ暗になった。
暗闇に浮かぶ銀時のサンタ姿と大きな袋を、***は眺めていた。その袋の中には神楽の為にふたりで選んだオモチャやお菓子が、いっぱい入っている。それを見ていた***の心の中で、急に「それだけじゃない」という声がした。
———それだけじゃない……この袋の中には私の欲しい物がぜんぶ入ってる。ねぇ銀ちゃん、銀ちゃんは私のサンタさんだから、この袋に神楽ちゃんや新八くんや定春を入れて、臭い足も滞納した家賃も丸ごと一緒に、私の所に来てほしいよ。クリスマスじゃなくたっていい。いつだって私は銀ちゃんを待ってるから……
言えっこない言葉を心で唱えたら、口から勝手に笑いが漏れた。いぶかしげに振りむいた銀時が眉を寄せて、小さな声で咎めた。
「なに笑ってんだよトナカイ、危ねぇから前見ろ」
「ごめんね……ちゃんとついていくよ、サンタさん」
くすくす笑い合うと銀時が***の手をぎゅっと握った。忍び足で暗闇をゆっくりと進み、ようやく押し入れにたどり着く。恋人のサンタクロースが、音ひとつ立てずにそぉっと引き戸を開くのを、トナカイの***は微笑みながら、じっと見ていた。
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【2020 Xmas記念】恋人がサンタクロース
2020-12-24
二十四日の二十三時、万事屋のこたつは温かい。テーブルには食べかけのクリスマスケーキ。テレビでは、恋人がサンタクロース、と陽気な歌が流れてる。楽しいイブの夜なのに、隣に座る銀時は不機嫌で、じとっとした目で***を睨んでいた。その原因は一時間前、もう寝ると布団に向かった神楽ちゃんが告げたひと言だ。
「サンタは子供らにプレゼント配ってんのに、銀ちゃんは自分の彼女にすら何も買えないなんて、ほんとに甲斐性なしアルな。***はこんなマダオが彼氏で可哀そうネ」
可愛い顔に似合わない辛辣さに銀時だけでなく、***までピシッと凍った。おやすみネ、と押し入れが閉まると、銀時は部屋の隅で膝を抱え、床に「の」の字を書いていた。いじける銀時を必死になだめて、こたつに引き入れて、ケーキを口に運んでやると「どーせ俺なんて」という自虐は途切れた。しかし、得意の開き直りで怒りだした銀時が、矛先を***に向けたから驚いてしまった。
「買えないんじゃなくて買わねぇだけだし!っつーか、お前が何も欲しがらねぇのが悪いんだぞ!***が銀ちゃんコレ欲しい~とか、アレ貰えたらお礼にミニスカサンタしてあげる~とか、可愛いおねだりしてれば、俺だってもっと本気出したんですけど!?神楽に馬鹿にされずにすんだんですけどぉ~!?ぃよぉ~~~し、分かった、欲しいモンあんならさっさと言えよ!内臓でも金玉でも売って、銀さんが買ってきてやらぁコノヤロォォォ!!!」
「内臓売ってまで欲しい物なんてあるわけないでしょ!」
「あぁっ!?お前まで俺を馬鹿にすんのかよ!」
そんなんじゃないよ、と***は頭を抱えた。
本当に欲しい物なんて無い。しいて言えば先々月に立て替えた家賃を返してほしい。けど、そんなこと言ったらますます怒るのが目に見えてる。うーん、と困り果ててうつむいたら、すぐそこに欲しい物があった。
「あ、じゃぁ、これ欲しいです。このサンタさん」
「はぁ?サンタさんってそれ、砂糖じゃねーか」
ツンツンと指で突いたのはケーキの上の砂糖菓子。クリームの間に立つ小さなサンタの背中に、フォークを刺して掲げた。食べたことないから食べてみたい。へらりと笑った***がそう言うと、銀時は呆れたように「はぁ~」と溜息を吐いた。
「あ、ねぇねぇ、これ見てください!このサンタさん目にやる気がなくって、銀ちゃんにそっくりだよ!」
「オイィィィ!俺は糖尿だけど砂糖の塊と一緒にすんなよ!しかもオメェ、銀ちゃんに似てるとか言いながら、背中にぶっすりフォーク突き刺してんじゃねーかよ!イテテテテッ、何か背中痛ぇよ、バカな***に食われそうで怖ぇよー」
ふざけて痛がるのが可笑しくて、***は悪戯を思いついた。あーん、とわざとらしくサンタの足を食べたら、銀時は自分の足を押さえて「いってぇぇ!」と飛び跳ねた。あははっと笑って腕を齧ると「うがぁぁ!」と叫んでのけ反った。身体が半分無くなる頃、銀時はこたつから飛び出していた。ついに頭だけになると床をのたうち回っていた。
大げさな演技にゲラゲラ笑った***が涙ぐんでいたら、銀時は声もなく笑ってこたつの中に戻ってきた。残ったサンタの頭を食べようとする***を手を、大きな手が掴んで止めた。
「オイィィィ!食うなよ、俺の頭ァァァ!!」
「ヤダよ、私のだもん!離してください!!」
つかみ合って騒いでいると、急に強い力が***の肩を後ろへ押した。ぱったりと仰向けに倒れた顔の横に銀時が両手をつく。フォークだけが畳にぽたりと落ちた。
「あれ!?サンタさんが無い!!」
「んな心配しねーでも、ちゃんと食わしてやるって」
知らぬ間に奪われたサンタの頭が、銀時の口に放り込まれた。ああっ!と声を上げるうちに口づけられて、砂糖の塊を乗せた舌が入り込んできたから、***は驚いてしまった。
「んんっ……!んむっ!?」
ころんっと転がる小さな球体を、熱い舌が押しつぶす。絡めとられた舌の間で擦れて、溶けた砂糖菓子は甘いだけの何かになり、しばらくするとジャリジャリした粒になった。その粒さえ唾液に溶けきって消えた頃、ようやく唇が離れた。恥ずかしくて顔を赤くした***を見下ろして、銀時が意地悪な声で言った。
「欲しいモン貰えて、満足かよ?」
「う、うん、あの、あのね銀ちゃん……私、銀ちゃんと一緒に過ごせるだけで、十分ですからね?」
「ははっ、んなこた知ってるよ……ったくよ、お前ってほんとに銀さんが好きね。こーんな金も無ぇ仕事も無ぇ、足も臭ぇ、ガキふたりと犬の面倒までついてくるオッサン、どこがいいんだか気が知れねぇよ」
らしくもなく自嘲気味に笑うから胸が切ない。こたつ布団の上に押し倒されたまま、***は腕を伸ばして銀時の首に抱き着いた。そんなこと言わないでほしい。本当に銀ちゃんさえ居れば、それだけでいいのに。言葉が見つからずにただ黙ってしがみついていると、気づけば大きな手が***の身体を這いまわり、お尻やお腹をまさぐられていた。
「なっ……!?ちょ、ちょっと、どさくさに紛れてそーゆーのやめてください!こんなとこで!」
「っんだよぉ~~~!今のは完全にこたつセックスになだれ込む流れだったろーが。ムードぶち壊してんじゃねーよ、***ー!!」
ぶ厚い胸板を必死に押し返して、***は銀時の腕の中から脱け出した。時計を見るともう零時近い。もうすぐクリスマスがやってくる。こんな夜更けまで起きていたのは、神楽が熟睡するのを待っていたから。サンタクロースの代わりに銀時と***で、プレゼントを届けるためだったのだ。
ねぇ銀ちゃん早く、と急かすと「ちぇっ」と唇を尖らせた銀時が、サンタの衣装に着替えはじめた。***が持参したトナカイのツノがついたカチューシャを頭に装着すると、銀時は「なんだよソレ!馬鹿丸出しじゃねーか!」とお腹を抱えて笑っていた。
和室の襖を開くと、暗いリビングに神楽のいびきが響いていた。よしよし寝てる。これならこっそり贈り物を置いてこれる。プレゼント入りの白い袋を肩に担いだ銀時が先に出て、後から続いた***が襖を閉めると、視界は真っ暗になった。
暗闇に浮かぶ銀時のサンタ姿と大きな袋を、***は眺めていた。その袋の中には神楽の為にふたりで選んだオモチャやお菓子が、いっぱい入っている。それを見ていた***の心の中で、急に「それだけじゃない」という声がした。
———それだけじゃない……この袋の中には私の欲しい物がぜんぶ入ってる。ねぇ銀ちゃん、銀ちゃんは私のサンタさんだから、この袋に神楽ちゃんや新八くんや定春を入れて、臭い足も滞納した家賃も丸ごと一緒に、私の所に来てほしいよ。クリスマスじゃなくたっていい。いつだって私は銀ちゃんを待ってるから……
言えっこない言葉を心で唱えたら、口から勝手に笑いが漏れた。いぶかしげに振りむいた銀時が眉を寄せて、小さな声で咎めた。
「なに笑ってんだよトナカイ、危ねぇから前見ろ」
「ごめんね……ちゃんとついていくよ、サンタさん」
くすくす笑い合うと銀時が***の手をぎゅっと握った。忍び足で暗闇をゆっくりと進み、ようやく押し入れにたどり着く。恋人のサンタクロースが、音ひとつ立てずにそぉっと引き戸を開くのを、トナカイの***は微笑みながら、じっと見ていた。
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【2020 Xmas記念】恋人がサンタクロース
2020-12-24