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お礼画面(超短編小説)

おなまえをどうぞ

about a girl
銀ちゃんが好きな女の子
なまえ

【日常シリーズ】no.3 例えば

 例えば、テレビから聞こえたCMソングを鼻歌で歌う。するとその数分後に、***が同じ歌を鼻歌で歌っていたりする。

 例えば、天気予報を熱心に見ながら結野アナを可愛いと言う。すると***が「結野アナの髪型にしてもらおうかな」と眉間にしわを寄せて言ってから、雑誌の切り抜きをもって美容院に行こうとしたりする。

 例えば、***がなんとなく買ってきたというコンビニ袋の中身が、銀時の好きなお菓子やジュースばかりだったりする。

 そういう些細なことが積もり積もって、ときどき銀時の心臓はつぶれそうなほど締め付けられる。***を思う時に溢れ出す感情に、どんな名前をつければいいのか分からなくて。

 例えば、「お前って、ほんとに俺のこと好きだね」と銀時が言う。するとさくらんぼのように真っ赤になった***が「急に何てこと言うんですか!恥ずかしいからやめてください!」と怒る。
 その顔を見ていると、二文字の言葉が浮かんでくる。

———あえて言うなら「幸福」っつーのかね……
 例えば、銀時はそう名付けたくなる。
 すると自分を見つめる***の黒い瞳が、どこまでも澄んでいて、ひとつの嘘もないことに気が付いたりする。

 ***の瞳に宿る、銀時を思う気持ちはあまりに強い。その確固たる存在は、空気や水のようにあたりまえにそこにある。誰にも、何にも、脅かされることのない強さで、自分を思ってくれる人がいるという、幸福。
 そのかけがえのなさに、銀時の胸は何度も満たされてきた。

 守ってやりたいとか、幸せにしてやりたいとか、そんな大げさなことは銀時には言えない。ただ絶対に***の手を離しはしまいという決意は、日々ますます強くなっていくばかりだ。

 例えば、***に「銀ちゃん」と名前を呼ばれるたびに。例えば、いつものあの笑顔で、微笑みかけられるたびに。

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【日常】no.3 例えば
2019-0410
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