銀ちゃんが好きな女の子
お礼画面(超短編小説)
おなまえをどうぞ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
【小さな猫と大きな猫】
2021-02-22 / 猫の日記念
猫を預かる簡単な依頼だと銀時は言った。けれど電話をかけてきた新八は「***さん、助けて下さい!」と叫んでいた。ワケも分からず猫缶と牛乳を持って万事屋を訪ねたら、入れ違いに出てきた神楽と定春は、げっそりした顔だった。
「あんなヤンチャ坊主とは付き合ってらんないネ……新八と下にいるから、後は***に任せたアル」
そう言って階段へ消えていく。居間では倒れたテレビの電源コードが嚙み切られていた。ソファには穴が開いて、壁には爪を研いだ跡があった。
うわぁと青ざめてたら、机の向こうで蹲っていた銀時が顔を上げて「遅ぇよ!」と怒鳴った。床に押さえつけられていたのは、小さな真っ白い子猫だった。
「わぁぁ!かわいい猫ちゃんじゃないですか!」
「はぁぁ!?全然かわいくねんだけど!悪魔なんだけど!見ろよコレ、銀さんのイケメンが台無しだぞコレ。どーしてくれんのこれぇ!!」
そう言う銀時の頬はひっかき傷だらけ。走り回る子猫を掴んだら、大暴れされたらしい。毛を逆立てた猫は震えながら「シャーッ」と威嚇していた。
「銀ちゃん、この子はきっと知らない場所に怯えてるだけです。ミルクをあげたら落ち着くかも……」
半信半疑の銀時を説き伏せて、部屋の隅で縮こまった子猫に牛乳を差し出す。最初は怖がっていたけれど、敵意がないと分かると牛乳を飲み、最後は***の膝に乗ってくれた。
「さすが田舎育ちは違ぇよな。ホラ、銀さんはシティ派だから犬とか猫とか、お呼びじゃないんだよね~」
「そんなこと言って、定春の面倒ちゃんと見てるじゃないですか……よしよし怖かったね、もう大丈夫だよ、すぐに迎えに来るからね、ご主人様が」
銀時の言葉を受け流して、子猫をそっと抱き上げる。飼い主さんと離れて寂しいから暴れたんだね。まだ赤ちゃんだし心細くて当然だよ。そう思いながら***が顔を上げると、銀時がじっとこちらを見ていた。
「えっ、なぁに?私なにか変なこと言いました?」
「いや別に……***、今のヤツもっぺん言って」
「今のって、定春の面倒ちゃんと見てるってヤツ?」
「違ぇ、もっと後の……すぐに誰が迎えに来るって?」
「えっと、迎えにくるのは……ご、ご主人様?」
「はぁ~……え、なにお前、俺のこと誘ってんの?えろえろメイドの***ちゃんは、銀さんとのハードなSMプレイをご所望ですか?真っ昼間から"ご主人様ぁ"ってねだるなんざ、盛りのついたメス猫かっつーの!」
「メスッ……!?何変なこと言ってるんですか!」
見当違いなのに赤い瞳がきらめくから困ってしまう。三日月形の目で「ぐへへ」と笑った銀時が、両手を掲げて迫ってくる。後ずさっても部屋の角には逃げ場が無かった。どうしよう、と焦る***の腕から、子猫が突然ピョンッと飛んだ。
「ニャアッ!!」
「ギャ!イダッ、ちょ、やめっ、いってぇ!!」
銀時の顔に飛びかかった子猫は、下唇にガブッと噛みついた。鋭利な牙が刺さって、唇から血がピューッと吹き出す。慌てて引き離すと銀時は「このバカ猫がっ!」と目に涙を浮かべて怒っていた。
「ごしゅじ……か、飼い主さんが居なくて、淋しいんです。構って欲しくて甘えてるだけだから、許してあげましょう、銀ちゃん、ね?」
「けッ」と言ってヘソを曲げた銀時の顔の傷に、絆創膏を貼ろうとしたけど、ミャーミャーと鳴く猫に纏わりつかれて出来なかった。ソファをトントンと叩いた銀時に「なー膝ァ」と言われて、***は膝枕をしようと座ったけれど、銀髪頭が膝に乗る前に白い塊がヒュッと割り込んだ。ふて腐れた銀時はひとりソファで横になって、ジャンプを被るといびきをかきはじめた。
「ミャア!」
ぴょんっと肩に乗った子猫が***の顔をペロペロと舐める。タンポポの綿毛みたいな白い毛が頬を撫でて、唇までペロリとされた。
「うふふッ……お口は、く、くすぐったいよぉ!」
懐いた子猫が愛らしくて、夕方までめいっぱい遊んだ。飼い主が迎えに来た時には離れがたいほど仲良くなった。子猫を引き取って依頼人が帰っても、銀時はまだ眠っていた。ジャンプをよけたら頬のひっかき傷が痛々しい。起こさないようにそぉっと絆創膏を貼る。噛まれた下唇は血が滲んで、指先で触れたら少し腫れていた。
———そう言えば、私もあの子に唇を舐められた……
「あ、これって、間接、キス、だ……」
呟いた直後、***は猛烈に恥ずかしくなった。なんちゃってアハハ、と独りで笑って、赤らんだ頬を手でぱたぱたと仰ぐ。銀時が寝てて良かったと思いながら立ち上がろうとしたら、突然手首をぐいっと掴まれた。
「へぇ~、なにお前、そんなに俺とキスしたかったの?寝顔でムラムラしちゃうくらい?」
「なっ……、ぎ、銀ちゃん、起きてたの!?」
「起きてたっつーか寝てねぇし。***がバカ猫とニャンニャンしてる間もず~っと起きてたしぃ~……ったく、ようやく帰ってせいせいしたわ。っつーことでぇ……」
よっこいせ、と気の抜けた声と同時に強く手を引かれた。ぐらっと傾いた***の身体を太い腕が受け止めて、ぐるんっと仰向けにする。気づいた時にはソファに組み敷かれて、銀時と天井を呆然と見上げていた。
「やっ、な、何すっ……んんっ、んぅ!?」
身を屈めた銀時のキスはいつもと少し違った。真っ先に下唇をはむっと噛まれて驚いた。赤い瞳にじぃっと見つめられながら、柔く甘噛みされていたのが段々と強く歯を立てられて、痛くなってくる。硬い胸をパシパシと叩いて抵抗したら、ますます噛む力が増して***は「ん゛~~~っ」と泣きそうな声を上げた。大きな手で頭を抑えつけられて、顔を背けることもできない。
「ひっ……ぎ、んひゃ、い、った、ぃッ!」
嗚咽まじりに言った唇がヤケドしたみたいにひりひりする。それでも意地悪は続いて、歯形がついた唇を銀時がぱくっとくわえると、じゅうっと強く吸ってから離れた。
「~~~~~っ、痛いよ銀ちゃん、やめてくださ、」
「やめねぇよ。***が言ったんだろ、淋しいだけだから許してやれって。構って欲しくて甘えてるだけだって。俺も一緒なんですけど。猫なんかに膝枕やらキスやら許しちゃう彼女のせーで、銀さんご機嫌斜めなんですけどぉ」
「ね、ねぇ、それって……銀ちゃんは私に構って貰えなくて、その……淋しかったってことですか?」
恥ずかしくて赤くなりながら尋ねたら、銀時は「あ゛?」と怒ったような声を出した。そして気まずそうに目を逸らすのは図星の証拠で、***は思わず「ぷっ」と吹き出してしまった。
「笑ってんじゃねーよコラ」
「あっ……!んっ、ふぁ、あ、」
気恥ずかしさを誤魔化すように、銀時はまた口づけてきた。今度は唇同士がぴたりと合わさる。お互いの下唇が腫れているせいで、いつものキスよりずっと熱っぽい。ぼやけた視界で銀色の髪が揺れていた。蛍光灯で照らされてキラキラした毛先が、あの子猫と似ている。
ぼうっとしていると銀時は眉間にシワを寄せて、唇をくっつけたまま言った。
「よそ見してねぇで、ちゃんと構えよ、ご主人様ァ」
「んっ!?……ご、ごめ、ぁっ、」
———こんなに大きな猫、飼った覚えはないなぁ
そう思いながら唇を深く重ねている間、***の耳にはずっと、子猫が甘えるように鳴く「ミャア」という声が響き続けていた。
--------------------------------------------------
【2021-0222猫の日記念】小さな猫と大きな猫
2021-02-22 / 猫の日記念
猫を預かる簡単な依頼だと銀時は言った。けれど電話をかけてきた新八は「***さん、助けて下さい!」と叫んでいた。ワケも分からず猫缶と牛乳を持って万事屋を訪ねたら、入れ違いに出てきた神楽と定春は、げっそりした顔だった。
「あんなヤンチャ坊主とは付き合ってらんないネ……新八と下にいるから、後は***に任せたアル」
そう言って階段へ消えていく。居間では倒れたテレビの電源コードが嚙み切られていた。ソファには穴が開いて、壁には爪を研いだ跡があった。
うわぁと青ざめてたら、机の向こうで蹲っていた銀時が顔を上げて「遅ぇよ!」と怒鳴った。床に押さえつけられていたのは、小さな真っ白い子猫だった。
「わぁぁ!かわいい猫ちゃんじゃないですか!」
「はぁぁ!?全然かわいくねんだけど!悪魔なんだけど!見ろよコレ、銀さんのイケメンが台無しだぞコレ。どーしてくれんのこれぇ!!」
そう言う銀時の頬はひっかき傷だらけ。走り回る子猫を掴んだら、大暴れされたらしい。毛を逆立てた猫は震えながら「シャーッ」と威嚇していた。
「銀ちゃん、この子はきっと知らない場所に怯えてるだけです。ミルクをあげたら落ち着くかも……」
半信半疑の銀時を説き伏せて、部屋の隅で縮こまった子猫に牛乳を差し出す。最初は怖がっていたけれど、敵意がないと分かると牛乳を飲み、最後は***の膝に乗ってくれた。
「さすが田舎育ちは違ぇよな。ホラ、銀さんはシティ派だから犬とか猫とか、お呼びじゃないんだよね~」
「そんなこと言って、定春の面倒ちゃんと見てるじゃないですか……よしよし怖かったね、もう大丈夫だよ、すぐに迎えに来るからね、ご主人様が」
銀時の言葉を受け流して、子猫をそっと抱き上げる。飼い主さんと離れて寂しいから暴れたんだね。まだ赤ちゃんだし心細くて当然だよ。そう思いながら***が顔を上げると、銀時がじっとこちらを見ていた。
「えっ、なぁに?私なにか変なこと言いました?」
「いや別に……***、今のヤツもっぺん言って」
「今のって、定春の面倒ちゃんと見てるってヤツ?」
「違ぇ、もっと後の……すぐに誰が迎えに来るって?」
「えっと、迎えにくるのは……ご、ご主人様?」
「はぁ~……え、なにお前、俺のこと誘ってんの?えろえろメイドの***ちゃんは、銀さんとのハードなSMプレイをご所望ですか?真っ昼間から"ご主人様ぁ"ってねだるなんざ、盛りのついたメス猫かっつーの!」
「メスッ……!?何変なこと言ってるんですか!」
見当違いなのに赤い瞳がきらめくから困ってしまう。三日月形の目で「ぐへへ」と笑った銀時が、両手を掲げて迫ってくる。後ずさっても部屋の角には逃げ場が無かった。どうしよう、と焦る***の腕から、子猫が突然ピョンッと飛んだ。
「ニャアッ!!」
「ギャ!イダッ、ちょ、やめっ、いってぇ!!」
銀時の顔に飛びかかった子猫は、下唇にガブッと噛みついた。鋭利な牙が刺さって、唇から血がピューッと吹き出す。慌てて引き離すと銀時は「このバカ猫がっ!」と目に涙を浮かべて怒っていた。
「ごしゅじ……か、飼い主さんが居なくて、淋しいんです。構って欲しくて甘えてるだけだから、許してあげましょう、銀ちゃん、ね?」
「けッ」と言ってヘソを曲げた銀時の顔の傷に、絆創膏を貼ろうとしたけど、ミャーミャーと鳴く猫に纏わりつかれて出来なかった。ソファをトントンと叩いた銀時に「なー膝ァ」と言われて、***は膝枕をしようと座ったけれど、銀髪頭が膝に乗る前に白い塊がヒュッと割り込んだ。ふて腐れた銀時はひとりソファで横になって、ジャンプを被るといびきをかきはじめた。
「ミャア!」
ぴょんっと肩に乗った子猫が***の顔をペロペロと舐める。タンポポの綿毛みたいな白い毛が頬を撫でて、唇までペロリとされた。
「うふふッ……お口は、く、くすぐったいよぉ!」
懐いた子猫が愛らしくて、夕方までめいっぱい遊んだ。飼い主が迎えに来た時には離れがたいほど仲良くなった。子猫を引き取って依頼人が帰っても、銀時はまだ眠っていた。ジャンプをよけたら頬のひっかき傷が痛々しい。起こさないようにそぉっと絆創膏を貼る。噛まれた下唇は血が滲んで、指先で触れたら少し腫れていた。
———そう言えば、私もあの子に唇を舐められた……
「あ、これって、間接、キス、だ……」
呟いた直後、***は猛烈に恥ずかしくなった。なんちゃってアハハ、と独りで笑って、赤らんだ頬を手でぱたぱたと仰ぐ。銀時が寝てて良かったと思いながら立ち上がろうとしたら、突然手首をぐいっと掴まれた。
「へぇ~、なにお前、そんなに俺とキスしたかったの?寝顔でムラムラしちゃうくらい?」
「なっ……、ぎ、銀ちゃん、起きてたの!?」
「起きてたっつーか寝てねぇし。***がバカ猫とニャンニャンしてる間もず~っと起きてたしぃ~……ったく、ようやく帰ってせいせいしたわ。っつーことでぇ……」
よっこいせ、と気の抜けた声と同時に強く手を引かれた。ぐらっと傾いた***の身体を太い腕が受け止めて、ぐるんっと仰向けにする。気づいた時にはソファに組み敷かれて、銀時と天井を呆然と見上げていた。
「やっ、な、何すっ……んんっ、んぅ!?」
身を屈めた銀時のキスはいつもと少し違った。真っ先に下唇をはむっと噛まれて驚いた。赤い瞳にじぃっと見つめられながら、柔く甘噛みされていたのが段々と強く歯を立てられて、痛くなってくる。硬い胸をパシパシと叩いて抵抗したら、ますます噛む力が増して***は「ん゛~~~っ」と泣きそうな声を上げた。大きな手で頭を抑えつけられて、顔を背けることもできない。
「ひっ……ぎ、んひゃ、い、った、ぃッ!」
嗚咽まじりに言った唇がヤケドしたみたいにひりひりする。それでも意地悪は続いて、歯形がついた唇を銀時がぱくっとくわえると、じゅうっと強く吸ってから離れた。
「~~~~~っ、痛いよ銀ちゃん、やめてくださ、」
「やめねぇよ。***が言ったんだろ、淋しいだけだから許してやれって。構って欲しくて甘えてるだけだって。俺も一緒なんですけど。猫なんかに膝枕やらキスやら許しちゃう彼女のせーで、銀さんご機嫌斜めなんですけどぉ」
「ね、ねぇ、それって……銀ちゃんは私に構って貰えなくて、その……淋しかったってことですか?」
恥ずかしくて赤くなりながら尋ねたら、銀時は「あ゛?」と怒ったような声を出した。そして気まずそうに目を逸らすのは図星の証拠で、***は思わず「ぷっ」と吹き出してしまった。
「笑ってんじゃねーよコラ」
「あっ……!んっ、ふぁ、あ、」
気恥ずかしさを誤魔化すように、銀時はまた口づけてきた。今度は唇同士がぴたりと合わさる。お互いの下唇が腫れているせいで、いつものキスよりずっと熱っぽい。ぼやけた視界で銀色の髪が揺れていた。蛍光灯で照らされてキラキラした毛先が、あの子猫と似ている。
ぼうっとしていると銀時は眉間にシワを寄せて、唇をくっつけたまま言った。
「よそ見してねぇで、ちゃんと構えよ、ご主人様ァ」
「んっ!?……ご、ごめ、ぁっ、」
———こんなに大きな猫、飼った覚えはないなぁ
そう思いながら唇を深く重ねている間、***の耳にはずっと、子猫が甘えるように鳴く「ミャア」という声が響き続けていた。
--------------------------------------------------
【2021-0222猫の日記念】小さな猫と大きな猫