銀ちゃんが好きな女の子
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【やきもちショコラティエ】
2021-02-15 / バレンタイン記念(2)
バレンタインの夕方、***の部屋に銀時がやってきた。
「銀さんまたチョコ貰っちったぁ」
へらっと笑った顔に閉めかけたドアを、ブーツの脚がこじ開けた。チョコを貰う度、彼女に知らせるのって嫌味っぽい。そう思いながら***は、知らない女性がくれたお菓子を食べる彼氏を、ちゃぶ台越しに眺めていた。
「あ?なんだコレ、茶色い粉かかったウンコみてぇ」
「ト、トリュフです!万事屋のお客さんがくれたのに、そんな風に言ったら失礼だよ銀ちゃん」
高級チョコを食べて「うまい」と言った銀時の目が輝くと、心臓がチクチクと痛んだ。
「なぁなぁ、***さぁ~ん、どーよ?どーなのよ?銀さんがバレンタインにチョコいっぱいもらって?モッテモテの彼氏が心配なんじゃねーの?」
「心配なんてそんな……むしろ良かったよ、私こんな高いの買えないし。トリュフ美味しそうですし」
私があげたクッキーよりもずっと。そんな幼稚な言葉は心に留めた。顔を逸らすと銀時は「ちぇっ」と唇を尖らせた。ああ、可愛くない女と思われてしまう。
今年のバレンタインは失敗だったと、***は後悔する。クッキー作りを彼氏に手伝わせるなんて、我ながらお粗末だと思う。でも銀時の方がお菓子作りは得意だし、前に「お前はお菓子より、煮物とか漬物とか年よりっぽいモンのがうまい」と言われた位だから仕方がない。
そのせいで尚更、目の前のトリュフチョコが恨めしい。香り立つカカオの甘い匂いさえ、苦々しいほど。
「あ?……なーに怖ぇ顔してんだよ、***」
「こ、怖い顔なんて、してないです」
夢中でチョコを頬張る姿を見てると、知らない人に銀時を奪われたような気がした。大人げないヤキモチなんて焼きたくない。醜い表情を見られたくなくて顔を背け、離れようとした***の腕を銀時がガシッと掴んで引き留めた。
「嘘つけ。ちょっとこっち来て、面ァ見せやがれ」
「やっ、やだ!」
あぐらをかく脚の間に引き寄せられて、背後から腰を抱かれた。長い指が***の手を包んで、無理やりチョコをひと粒つかませる。
「ほら、お前も食ってみ」
「え、ダメだよ、銀ちゃんが貰った物なのに」
いいから、と銀時は***の手を動かして口元に近づけた。渋々食べようとした途端、つかまれた手首が後ろに引かれる。チョコを持つ指ごと銀時にパクっと食べられて、なっ、と驚いて振り返るとニヤつく目に見下ろされた。ぬるついた舌で指をねぶられて顔がかぁっと熱くなる。ぱかりと開いた口が「なぁんつって嘘~、銀さんのチョコはあげません~!」と言った瞬間、ぷっちん、と堪忍袋の緒が切れた。
「もうっ……もうヤダっ!銀ちゃんの馬鹿!私には義理チョコ配るなって言っといて、自分は貰うなんてズルいです!このっ、あんぽんたん!」
そう言って睨んでもニヤニヤ笑いを返されて、ますますカチンと来た。怒りに突き動かされて、***は勢い任せに太い首に腕を回して抱き着いた。ココアの粉がついた唇に自分の唇をぎゅっと押し当てる。睫毛が触れ合う近さで目が合うと、恥ずかしさで泣きたくなった。でも頭の奥が燃えるように熱くて、***は自分でも自分を止められなかった。
———やだ、やだよ銀ちゃん、他の人からもらった物ばっかり、おいしいって食べないでっ……!
唇のココアパウダーを舌先で舐めたら、苦かった。こんな物に銀ちゃんを奪われてたまるか。そう思いながら猫のように必死に舐めて、綺麗にしてから顔を離す。堪えきれない涙がひと粒、ポタッと落ちると同時に、***は言った。
「これ、ひとりで食べないで。他の人のチョコで独り占めされないで。だって銀ちゃんは……私のだもん」
「ふははっ、やぁ~っと言いやがった」
嬉しそうに笑った銀時が***を押し倒した。馬乗りになって***の口にトリュフひとつを放り込む。「わっ!?」と叫んだ唇にすぐさま噛みつかれて、ぶ厚い舌が生チョコをぐにゅっと潰した。内頬や上顎に擦りつけられた塊が、唾液混じりのドロドロになる。それをじゅるっと吸った後で、銀時の喉がごっくん、と鳴った。吐息と共に「すっげぇ、うめぇ」と言った赤い瞳は、輝くどころかギラついていた。
「な、でっ……なんで、こんなこと、するのっ」
「んなもん、お前のその顔が見てぇからに決まってんだろ。***、お前、いま自分がどんな顔してるか知ってる?ヤキモチ焼いて目ぇうるうるさせて物欲しそーな顔、めっさそそるんですけどぉ。ったくよ~、人が必死に貰いモンのチョコ見せびらかしてんのに、いつまでも意地張ってんじゃねーよ、この頑固女」
悔しさにうぅっと唸る***の唇を、骨ばった指が割って新しいトリュフを押し込んだ。ほっぺを両手で包んだ銀時が顔を寄せて、静かに囁いた。
「どうでもいい女から貰った高ぇチョコなんかより、好きな女の焼いたヤキモチのが断然うめぇし、俺ァ食いたくてたまんねぇんだよコノヤロー」
「~~~~~っ、い、意地悪!!」
「そーだよ意地悪だよ。けど、そんな意地悪な男が好きなバカはお前だろーが」
ぐぅの音も出ない***の反論は、やっぱりお粗末だ。
「そ、そうですよ、バカですよ!チョコは作れないけどヤキモチと、あと煮物と漬物は得意だもん!」
そう叫んだ***に銀時は吹き出しながら「っとにバカ」と言って再び唇を重ねた。何度も舌を噛まれ、口の中いっぱいを舐められる。甘ったるいキスで頭の奥がとろけていく。情事の時のように細まった赤い瞳を見つめて***は、いっそ全身チョコレートになって銀ちゃんに溶けてしまいたい、と思っていた。
———やっぱり銀ちゃんの言う通り、私はヤキモチしか焼けない、憐れなショコラティエだ
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【2021-0215バレンタイン記念】やきもちショコラティエ
2021-02-15 / バレンタイン記念(2)
バレンタインの夕方、***の部屋に銀時がやってきた。
「銀さんまたチョコ貰っちったぁ」
へらっと笑った顔に閉めかけたドアを、ブーツの脚がこじ開けた。チョコを貰う度、彼女に知らせるのって嫌味っぽい。そう思いながら***は、知らない女性がくれたお菓子を食べる彼氏を、ちゃぶ台越しに眺めていた。
「あ?なんだコレ、茶色い粉かかったウンコみてぇ」
「ト、トリュフです!万事屋のお客さんがくれたのに、そんな風に言ったら失礼だよ銀ちゃん」
高級チョコを食べて「うまい」と言った銀時の目が輝くと、心臓がチクチクと痛んだ。
「なぁなぁ、***さぁ~ん、どーよ?どーなのよ?銀さんがバレンタインにチョコいっぱいもらって?モッテモテの彼氏が心配なんじゃねーの?」
「心配なんてそんな……むしろ良かったよ、私こんな高いの買えないし。トリュフ美味しそうですし」
私があげたクッキーよりもずっと。そんな幼稚な言葉は心に留めた。顔を逸らすと銀時は「ちぇっ」と唇を尖らせた。ああ、可愛くない女と思われてしまう。
今年のバレンタインは失敗だったと、***は後悔する。クッキー作りを彼氏に手伝わせるなんて、我ながらお粗末だと思う。でも銀時の方がお菓子作りは得意だし、前に「お前はお菓子より、煮物とか漬物とか年よりっぽいモンのがうまい」と言われた位だから仕方がない。
そのせいで尚更、目の前のトリュフチョコが恨めしい。香り立つカカオの甘い匂いさえ、苦々しいほど。
「あ?……なーに怖ぇ顔してんだよ、***」
「こ、怖い顔なんて、してないです」
夢中でチョコを頬張る姿を見てると、知らない人に銀時を奪われたような気がした。大人げないヤキモチなんて焼きたくない。醜い表情を見られたくなくて顔を背け、離れようとした***の腕を銀時がガシッと掴んで引き留めた。
「嘘つけ。ちょっとこっち来て、面ァ見せやがれ」
「やっ、やだ!」
あぐらをかく脚の間に引き寄せられて、背後から腰を抱かれた。長い指が***の手を包んで、無理やりチョコをひと粒つかませる。
「ほら、お前も食ってみ」
「え、ダメだよ、銀ちゃんが貰った物なのに」
いいから、と銀時は***の手を動かして口元に近づけた。渋々食べようとした途端、つかまれた手首が後ろに引かれる。チョコを持つ指ごと銀時にパクっと食べられて、なっ、と驚いて振り返るとニヤつく目に見下ろされた。ぬるついた舌で指をねぶられて顔がかぁっと熱くなる。ぱかりと開いた口が「なぁんつって嘘~、銀さんのチョコはあげません~!」と言った瞬間、ぷっちん、と堪忍袋の緒が切れた。
「もうっ……もうヤダっ!銀ちゃんの馬鹿!私には義理チョコ配るなって言っといて、自分は貰うなんてズルいです!このっ、あんぽんたん!」
そう言って睨んでもニヤニヤ笑いを返されて、ますますカチンと来た。怒りに突き動かされて、***は勢い任せに太い首に腕を回して抱き着いた。ココアの粉がついた唇に自分の唇をぎゅっと押し当てる。睫毛が触れ合う近さで目が合うと、恥ずかしさで泣きたくなった。でも頭の奥が燃えるように熱くて、***は自分でも自分を止められなかった。
———やだ、やだよ銀ちゃん、他の人からもらった物ばっかり、おいしいって食べないでっ……!
唇のココアパウダーを舌先で舐めたら、苦かった。こんな物に銀ちゃんを奪われてたまるか。そう思いながら猫のように必死に舐めて、綺麗にしてから顔を離す。堪えきれない涙がひと粒、ポタッと落ちると同時に、***は言った。
「これ、ひとりで食べないで。他の人のチョコで独り占めされないで。だって銀ちゃんは……私のだもん」
「ふははっ、やぁ~っと言いやがった」
嬉しそうに笑った銀時が***を押し倒した。馬乗りになって***の口にトリュフひとつを放り込む。「わっ!?」と叫んだ唇にすぐさま噛みつかれて、ぶ厚い舌が生チョコをぐにゅっと潰した。内頬や上顎に擦りつけられた塊が、唾液混じりのドロドロになる。それをじゅるっと吸った後で、銀時の喉がごっくん、と鳴った。吐息と共に「すっげぇ、うめぇ」と言った赤い瞳は、輝くどころかギラついていた。
「な、でっ……なんで、こんなこと、するのっ」
「んなもん、お前のその顔が見てぇからに決まってんだろ。***、お前、いま自分がどんな顔してるか知ってる?ヤキモチ焼いて目ぇうるうるさせて物欲しそーな顔、めっさそそるんですけどぉ。ったくよ~、人が必死に貰いモンのチョコ見せびらかしてんのに、いつまでも意地張ってんじゃねーよ、この頑固女」
悔しさにうぅっと唸る***の唇を、骨ばった指が割って新しいトリュフを押し込んだ。ほっぺを両手で包んだ銀時が顔を寄せて、静かに囁いた。
「どうでもいい女から貰った高ぇチョコなんかより、好きな女の焼いたヤキモチのが断然うめぇし、俺ァ食いたくてたまんねぇんだよコノヤロー」
「~~~~~っ、い、意地悪!!」
「そーだよ意地悪だよ。けど、そんな意地悪な男が好きなバカはお前だろーが」
ぐぅの音も出ない***の反論は、やっぱりお粗末だ。
「そ、そうですよ、バカですよ!チョコは作れないけどヤキモチと、あと煮物と漬物は得意だもん!」
そう叫んだ***に銀時は吹き出しながら「っとにバカ」と言って再び唇を重ねた。何度も舌を噛まれ、口の中いっぱいを舐められる。甘ったるいキスで頭の奥がとろけていく。情事の時のように細まった赤い瞳を見つめて***は、いっそ全身チョコレートになって銀ちゃんに溶けてしまいたい、と思っていた。
———やっぱり銀ちゃんの言う通り、私はヤキモチしか焼けない、憐れなショコラティエだ
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【2021-0215バレンタイン記念】やきもちショコラティエ