銀ちゃんが好きな女の子
お礼画面(超短編小説)
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【大晦日の夜】2020-1231
大晦日の夜、今年も残すところあと30分。万事屋のこたつで、***は眠気と戦っていた。向かって右、こたつに胸まで入った神楽が寝息を立てている。左側で同じく寝転んだ銀時は、顔にジャンプを乗せていびきをかいていた。向かいには音楽雑誌に突っ伏す新八。部屋の隅では定春が丸くなって寝ていた。
———え、日が変わったら初詣行くって言ってたけど、本当に行ける?神楽ちゃん、カウントダウンに起こして言ってたけど、これ起きるかな?
眠い目をこすって年越しを待つ。4人の脚が入り乱れるテーブルの下はぬくぬくと温かい。このままじゃ寝てしまうとこたつから脱け出た。机上のお菓子のゴミや、銀時が食べたおしるこのお椀を片付けていたら、急に背後から帯をつかまれた。
「へっ、わぁあっ……!?」
ぐんっと引かれて尻餅をつくと腰に腕が回った。いつの間にか膝に銀時が頭を乗せて、眠そうな目でこちらを見ていた。
「んだよ、***、まだ起きてたの」
「えっ、だって初詣行くんでしょう?それに神楽ちゃんを起こしてあげないと……」
「はぁ?お前バカじゃねーの?初詣なんざいつだっていーだろーが。それに神楽は一度寝たらそう簡単に起きねぇから、やめとけよ。無理に起こすと鉄拳食らって、年越しカウントダウンっつーか、天国へのカウントダウンになるぞマジで」
「えぇっ、それならそうと早く言ってよ!私ひとりで起きててバカみたいじゃないですか!」
「あー、ハイハイ、そんじゃ寝ろよホラ」
そう言って布団をぺろっとめくった銀時が、***をこたつに引き入れる。神楽ちゃんと新八君の前でこんなに密着するのはダメだよ、と言わなければいけないのに出来なかった。肩まで潜ったこたつの温もりにとても抗えない。向き合った***の腰を銀時の腕が抱き寄せた。
ボリュームを絞ったテレビから「10、9、8、」とカウントダウンの声がする。ああ今年が終わるんだ。そう思って顔をあげたら、やけに優しい眼差しの赤い瞳と目が合った。その瞬間、***は言い残したことを思い出す。慌ててまくし立てたから、口が回らなくて少し舌を噛んでしまった。
「あ、銀ひゃっ、今年は大変おしぇわになりました!来年もよろひくおねがいします!」
「ぶっ!何言ってんのか分かんねぇよ」
「だ、だから、来年も、」
そこまで言った時、遮るようにテレビから「ハッピーニューイヤー」の歓声が上がった。同時に、***の唇に銀時の唇がくっついた。わぁっと驚いた顔を、銀時が楽しそうに見ていた。触れたままの唇がふっと笑って、舌先で口をこじ開けられ、厚い舌がするりと入ってきた。
———甘い、銀ちゃん、おしるこ食べてたから……
かぁっと熱くなったほっぺたを、大きな手が包む。唇が触れては離れてを繰り返すほどにキスは深くなって、舌を吸われたら息もできない。苦しいのに気持ちがよくて、***は涙まじりにうっとりとした。うなじを掴まれて脱力しかけた瞬間、突然聞こえたのは神楽の声。ふたりして飛び跳ねてパッと顔を離した。
「んが、銀ちゃぁん!さっさとお年玉よこすネェ!」
慌てて***は両手で口を覆った。どうしよう!?もしかして見られちゃった!?隠れるように銀時に身を寄せて息をひそめたら、太い腕が背中をぎゅうっと抱き寄せた。すると新八の声まで聞こえて、***はますます青ざめた。
「んん~、無理だよ神楽ちゃん……銀さんは今月、すかんぴん、だから……ムニャムニャ」
それっきり、新八も神楽も何も言わない。しばらくすると、再び「すぅすぅ」という寝息が聞こえてきて、ふたりが寝言で会話していたと分かった。
***と銀時は一瞬きょとんとして見つめ合った直後、同時に「ぷっ」と吹き出してゲラゲラと笑った。
「ったくコイツら、寝言でも俺を馬鹿にしてやがらぁ」
そう言って銀時が***を抱き寄せる。寝言で名前を呼ばれて嬉しいくせに。そう思ったけど言わなかった。温かい銀時の手で頭を撫でられたら、突然の睡魔が***を襲った。銀時の背中に腕を回して、硬い胸に顔を押し当てると、頭上からもごもごした声が降ってきた。
「あー……まぁ、なんつーかその……コイツら共々、今年もよろしく頼むわ」
「ふふっ、何ですかそれ……コイツら共々なんて言っても、いちばん世話が焼けるの……銀ちゃん、だからね」
「あんだと!?俺のどこが世話が焼けんだよ!?お前こそ、今年はちったぁ成長しろよな。キスだけで泣きそうな顔しやがって。いつまでおぼこいガキでいるつもりだっつーの」
「そ、なこと……急に、言われても、無理、だよ」
うつらうつらとする***を銀時は呆れ顔で見ていた。うん、やっぱり無理だよ、だって銀ちゃんにキスされると、息をするのも精一杯だから。そう言いたいのに、猛烈に眠たくなって言葉にならなかった。最後の力をふり絞って、***は目を閉じながら呟いた。
「銀ちゃん、あけましておめでとう……今年も、」
よろしくね、と言えたかは分からない。でも閉じた瞼の上、鼻の頭、唇、そして最後はおでこに、銀時の乾いた唇が押し当てられるのを感じて、幸福な気持ちになった。眠りに落ちる耳元で、今年はじめて銀時に「***」と名前を呼ばれた。続けて「あけましておめでとう」と言った優しくて静かな声に耳を澄ましながら、***は確かに思っていた。
———今年も幸せいっぱいの年になるよ、銀ちゃん
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【2020-1231】大晦日の夜
2020-12-31
大晦日の夜、今年も残すところあと30分。万事屋のこたつで、***は眠気と戦っていた。向かって右、こたつに胸まで入った神楽が寝息を立てている。左側で同じく寝転んだ銀時は、顔にジャンプを乗せていびきをかいていた。向かいには音楽雑誌に突っ伏す新八。部屋の隅では定春が丸くなって寝ていた。
———え、日が変わったら初詣行くって言ってたけど、本当に行ける?神楽ちゃん、カウントダウンに起こして言ってたけど、これ起きるかな?
眠い目をこすって年越しを待つ。4人の脚が入り乱れるテーブルの下はぬくぬくと温かい。このままじゃ寝てしまうとこたつから脱け出た。机上のお菓子のゴミや、銀時が食べたおしるこのお椀を片付けていたら、急に背後から帯をつかまれた。
「へっ、わぁあっ……!?」
ぐんっと引かれて尻餅をつくと腰に腕が回った。いつの間にか膝に銀時が頭を乗せて、眠そうな目でこちらを見ていた。
「んだよ、***、まだ起きてたの」
「えっ、だって初詣行くんでしょう?それに神楽ちゃんを起こしてあげないと……」
「はぁ?お前バカじゃねーの?初詣なんざいつだっていーだろーが。それに神楽は一度寝たらそう簡単に起きねぇから、やめとけよ。無理に起こすと鉄拳食らって、年越しカウントダウンっつーか、天国へのカウントダウンになるぞマジで」
「えぇっ、それならそうと早く言ってよ!私ひとりで起きててバカみたいじゃないですか!」
「あー、ハイハイ、そんじゃ寝ろよホラ」
そう言って布団をぺろっとめくった銀時が、***をこたつに引き入れる。神楽ちゃんと新八君の前でこんなに密着するのはダメだよ、と言わなければいけないのに出来なかった。肩まで潜ったこたつの温もりにとても抗えない。向き合った***の腰を銀時の腕が抱き寄せた。
ボリュームを絞ったテレビから「10、9、8、」とカウントダウンの声がする。ああ今年が終わるんだ。そう思って顔をあげたら、やけに優しい眼差しの赤い瞳と目が合った。その瞬間、***は言い残したことを思い出す。慌ててまくし立てたから、口が回らなくて少し舌を噛んでしまった。
「あ、銀ひゃっ、今年は大変おしぇわになりました!来年もよろひくおねがいします!」
「ぶっ!何言ってんのか分かんねぇよ」
「だ、だから、来年も、」
そこまで言った時、遮るようにテレビから「ハッピーニューイヤー」の歓声が上がった。同時に、***の唇に銀時の唇がくっついた。わぁっと驚いた顔を、銀時が楽しそうに見ていた。触れたままの唇がふっと笑って、舌先で口をこじ開けられ、厚い舌がするりと入ってきた。
———甘い、銀ちゃん、おしるこ食べてたから……
かぁっと熱くなったほっぺたを、大きな手が包む。唇が触れては離れてを繰り返すほどにキスは深くなって、舌を吸われたら息もできない。苦しいのに気持ちがよくて、***は涙まじりにうっとりとした。うなじを掴まれて脱力しかけた瞬間、突然聞こえたのは神楽の声。ふたりして飛び跳ねてパッと顔を離した。
「んが、銀ちゃぁん!さっさとお年玉よこすネェ!」
慌てて***は両手で口を覆った。どうしよう!?もしかして見られちゃった!?隠れるように銀時に身を寄せて息をひそめたら、太い腕が背中をぎゅうっと抱き寄せた。すると新八の声まで聞こえて、***はますます青ざめた。
「んん~、無理だよ神楽ちゃん……銀さんは今月、すかんぴん、だから……ムニャムニャ」
それっきり、新八も神楽も何も言わない。しばらくすると、再び「すぅすぅ」という寝息が聞こえてきて、ふたりが寝言で会話していたと分かった。
***と銀時は一瞬きょとんとして見つめ合った直後、同時に「ぷっ」と吹き出してゲラゲラと笑った。
「ったくコイツら、寝言でも俺を馬鹿にしてやがらぁ」
そう言って銀時が***を抱き寄せる。寝言で名前を呼ばれて嬉しいくせに。そう思ったけど言わなかった。温かい銀時の手で頭を撫でられたら、突然の睡魔が***を襲った。銀時の背中に腕を回して、硬い胸に顔を押し当てると、頭上からもごもごした声が降ってきた。
「あー……まぁ、なんつーかその……コイツら共々、今年もよろしく頼むわ」
「ふふっ、何ですかそれ……コイツら共々なんて言っても、いちばん世話が焼けるの……銀ちゃん、だからね」
「あんだと!?俺のどこが世話が焼けんだよ!?お前こそ、今年はちったぁ成長しろよな。キスだけで泣きそうな顔しやがって。いつまでおぼこいガキでいるつもりだっつーの」
「そ、なこと……急に、言われても、無理、だよ」
うつらうつらとする***を銀時は呆れ顔で見ていた。うん、やっぱり無理だよ、だって銀ちゃんにキスされると、息をするのも精一杯だから。そう言いたいのに、猛烈に眠たくなって言葉にならなかった。最後の力をふり絞って、***は目を閉じながら呟いた。
「銀ちゃん、あけましておめでとう……今年も、」
よろしくね、と言えたかは分からない。でも閉じた瞼の上、鼻の頭、唇、そして最後はおでこに、銀時の乾いた唇が押し当てられるのを感じて、幸福な気持ちになった。眠りに落ちる耳元で、今年はじめて銀時に「***」と名前を呼ばれた。続けて「あけましておめでとう」と言った優しくて静かな声に耳を澄ましながら、***は確かに思っていた。
———今年も幸せいっぱいの年になるよ、銀ちゃん
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【2020-1231】大晦日の夜
2020-12-31