銀ちゃんが愛する女の子
ふたりの夢のくに
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【13:00】
(問2)
心霊系が苦手な人間がお化け屋敷を楽しめるか?
「ねぇ銀ちゃん……ちょっとだけ手を離してもらえます?力が強すぎて痛いよ」
「あ゙ぁ゙!?っんだよ、***!お前が遊園地デートでは手を繋ぐのが鉄則っつったんだろーが!***が銀さんとお手々つなぎてぇっつったんだろーがぁぁぁ!優しい彼氏が甘えさせてやってんだから、遠慮すんなよ***~!!!」
「いやホント、甘えさせてくれてありがと銀ちゃん……でもなんか、そのぉ……銀ちゃんさっきから手汗がすごいんだけど、大丈夫ですか?手がびしょびしょだよ?それにそんなに力いっぱいされると指が折れちゃいそうです。もうちょっと優しく握ってください」
園内マップ上の「お化け屋敷」という存在に、銀時はとっくに気付いていた。気付いていて***がそこに注目しないように、さりげなく回避ルートを通っていたのだ。
しかし、気を抜いた瞬間に看板を見つけた***が「銀ちゃん!お化け屋敷、行きましょう」と言った途端、全身の血液が凍った気がした。
手を引かれて列に並ぶ。行列が進んでいくにつれて、周りの景色や装飾がおどろおどろしくなっていく。BGMが「ひゅ~どろどろぉ~…」と鳴りはじめ、しばらくすると既に中に入った客の「ギャァァァ」という叫び声が聞こえてきた。
「見て見て銀ちゃん!このお化け屋敷、全長500メートルもあるんですって。中は迷路みたくなってて、オバケが飛び出してきたり、追いかけられたりしながら、正しいルートでゴールしなきゃいけないんですって!楽しみですね!ちゃんとゴールできるかなぁ?」
遊園地初体験の***は、もちろんお化け屋敷も初めてだ。目を輝かせて壁に書かれた説明書きを読み上げている。***にとって楽しみで仕方がないことが、銀時にとっては恐怖でしかない。全長500メートル?おいおい、どう考えても長すぎるだろ。オバケが追いかけてくる?なにそれ、追いかけてくれなんて俺は頼んでないけど?
そんなことを考えているうちに順番が回ってきた。渡された懐中電灯を照らしながら、真っ暗な迷路の中に足を踏み入れる。内心「ひぃぃぃ」と悲鳴を上げた銀時は、後ろから***の両肩をつかみ、小さな背中に隠れるように身体を縮めた。
「ちょ、ちょっと銀ちゃん……か、肩が取れちゃいそうです。さっきも言ったけど、もう少し優しくつかんでよぉ」
「ああッ!?めっさ優しくしてんだろーが!ごっさソフトタッチだろーが!おおおおお前こそ、何ちんたら歩いてんだよ!さっさと進めよ!ももももももしかして***、怖いのか?真っ暗なのが怖いんだろ?っんだよ、しょうがねぇな***ちゃんは!正直に言えよ正直に!怖いんなら戻ろうか?銀さんは戻ってもいーよ?今ならまだ戻れるよ?」
「いや、銀ちゃんが引っぱるから全然進まないんだってば……銀ちゃんこそすごい汗だけど大丈夫ですか?もしかしてお化け屋敷、怖かった?」
そう言って肩越しに振り返った***はにっこり笑っている。微塵も怖がるそぶりを見せず、小さな肩に置かれた銀時の手を、ぽんぽんと優しく撫でた。
「こここここ怖くねぇよ!ぎ、銀さんが怖ぇのは血糖値と結野アナの占いで最下位になることだけだからぁ!お化け屋敷のやっすい作りモンの幽霊なんざ、全ッ然怖くねぇからぁぁぁ!!!」
バンッッッ!!!!!
「ギャァァァ!!!!!」
まるで銀時の言葉を聞いていたかのように横のドアが開き、中からミイラの人形が倒れてきた。叫び声を上げた銀時は、***の着物の袖に顔をうずめる。
その後も数歩進むたびに様々な仕掛けが飛び出してきた。火の玉が飛んできた時、銀時は後ろから***を羽交い絞めするようにぎゅうぎゅうと抱きしめた。糸で吊るされたコンニャクが頬をかすめた時、顔から***の胸に飛び込んで、腰に腕を回して抱き着いた。
「はぁっ、はぁっ……ぜ、全然怖くねぇし。ほほほほら、***、もうすぐゴールだぞ。あの明るくなってる所が出口だろ?出口だよね?お願い出口って言って300円あげるから!」
「えっ、もう出口ですか?ずっと銀ちゃんがくっついてたから、私ほとんど何も見えなかったよぉ」
まっすぐな通路の100メートルくらい先が明るい。恐らくこれがこのお化け屋敷の最終コーナーだろう。ホッとした銀時はようやく***から離れて、その手をやんわりとにぎった。ここからは彼氏らしくエスコートしながらゴールしようと一歩踏み出した瞬間、背後からドドド…と物音がした。
ぎくりとして振り返ると同時に、真後ろの扉が観音開きになる。中からゾンビのようなオバケが数十人飛び出してきて、ふたり目指して駆け寄ってきた。
「ンギャァァァァァァ!!!!!!」
「わッ!ちょ、銀ちゃんッ!?なにす、きゃぁッ!」
身体が勝手に動いて、立ちつくす***の膝裏に腕を回すと肩にかつぎ上げた。持ち上げられた***は驚きで足をバタつかせ、銀時の背中をこぶしで叩いていたが、そんなことに構っている暇はなかった。‟とにかく逃げろ、ゾンビよりも速く走れ”と本能の命じるままに駆け出した銀時は、一目散に出口を目指した。
「おかえりなさいませ!お疲れ様です!!」
ゴールで出迎えたスタッフは、***を肩にかついだ銀時を見て、ぎょっとしていた。しかし、すぐに気を取り直して口を開いた。
「お客様たちのペアが、このアトラクション開設以来、最速タイムでのゴール記録を更新致しました!おめでとうございます!!」
ぜぇはぁと息をする銀時には、そのスタッフの声はよく聞こえなかった。ただ銀時は、肩から***を下ろす勇気が出ずに困っていた。
しょせん作り物のオバケを怖がる自分を、彼女である***に知られたくなかった。万が一、憐れんだ目でも向けられた日には彼氏としての威厳が保てない。性根の優しい***のことだから、銀時のそんな姿を見たところで「格好悪い」なんてきっと言わない。むしろ心配したり、自分がお化け屋敷に連れ込んだことを後悔して、申し訳なさそうにするだろう。
眉を八の字に下げた愛らしい顔で、叱られた子犬のように潤んだ目をして「銀ちゃんごめんね」と謝られたら、それこそ銀時のプライドはガタガタと音を立てて崩れ落ちてしまうだろう。
「オオオオオイ、***、大丈夫か!?オメーが怖ぇ思いしねぇように銀さんが助けてやったぞ!か、感謝しやがれ!」
お化け屋敷から少し離れ、ようやく***を肩から下ろす。我ながら無理があると思いながらも、必死で取り繕う言葉を口にした。気まずい思いで恐る恐る***の顔をのぞきこんだ瞬間、銀時は驚いて息が止まった。
てっきり呆れているか憐れんでいるかと思った***は、満面の笑みを浮かべていた。きらきらと輝いた瞳で銀時を見上げた顔は、まるで憧れのヒーローに遭遇した子供のような表情を浮かべていた。
「銀ちゃんすごいですッ!ものすっごくかっこよかったです!!私、銀ちゃんの肩の上からずっと後ろを見てたんですけど、すごい人数のゾンビが追いかけてきてたんだよ。あんなのに捕まったらすぐ食べられちゃって怖いなってくらいの、はちゃめちゃな人数だったんだよ!なのに銀ちゃんは全然ひるまずに、私まで助けて走ってくれるなんて、とっても素敵でした!あの『エイリアンVSヤクザ』で、百匹のエイリアンにひとりで立ち向かっていく丈のアニキみたいでした!!すごいよ銀ちゃん、かっこいいよ!!私たち最速タイムだって!!!」
奇跡的に***は、銀時が怖がっていたことには気付いていなかった。怯えて逃げていたことも、自分を助けて走ってくれたと勘違いしている。銀時は***の言葉を聞いてホッとすると同時に、鼻の穴を膨らませて得意げな顔をして喜んだ。
「そりゃまぁ、銀さんくらいになると?こんなの楽勝っつーか?こんくらいのお化け屋敷だったら、目ぇつぶってたってゴールできたっつーの!だっはっは!喜べ、***、お前の彼氏はお化け屋敷を最速で制覇する男だぞ!!!」
「本当にすごいです銀ちゃん!初めて入ったお化け屋敷で、迷いもせずにゴールできるなんて!これなら次は、もっと速いタイムを叩き出せますね!」
「………へ?」
瞳を輝かせた***が、銀時の手を両手でぎゅっとにぎると、期待を込めた目で見つめた。いつも愛らしい言葉ばかりを言う桃色の唇が動いて、無邪気な声で銀時が耳を疑うようなことを言い放った。
「銀ちゃん、もう1回、いや……もう5回くらい挑戦したらきっと、遊園地の人もびっくりするくらいのタイムでゴールできると思うんです!よし!もう一度入りましょう!!次は私も足手まといにならないように一生懸命走りますから!行こう銀ちゃん!!!」
「えぇぇぇぇぇ!!!!!」
顔を真っ青にした銀時の手を***がガシッとつかみ、再びお化け屋敷の入り口を目指して猛ダッシュする。もう一度あの恐怖を体験するなんて死ぬほど嫌だ。しかし「こんなお化け屋敷は楽勝」と言ってしまった手前「もう入りたくない」とは口が裂けても言えなかった。
―――なにこれ!?なにこの子!?え、もしかしてさっきのジェットコースターの仕返し!?いや、***はそんなことできるような器用な女じゃねぇや。本気で「銀ちゃんカッコイイ」って思うような無邪気な小娘だわ。いや、そう思われんのはめっさ嬉しいけど、そう思ってる***はごっさ可愛いけど……けど、どーすんのコレ!?どーなんの俺ェェェ!!?
真っ暗なお化け屋敷に出ては入りを更に3回繰り返し、銀時と***は最速タイムを更新し続けた。最後の3回目では、入る前から銀時は***を肩に担ぎ上げていた。入口から出口まで、銀時の肩の上でお化け屋敷を体験した***は大興奮だった。
係員に「この記録はそうそう抜かれるタイムではない」と言わしめて***は満足し、ようやくお化け屋敷を離れた。青白い顔でふらふらと歩く銀時に向かって、邪気のない笑顔の***は明るい声で話しかけた。
「銀ちゃんの肩の上からだと視界が広いから、お化け屋敷の怖いところがぜ~んぶ見えて、すっごく楽しかった!入ってすぐに倒れてきたミイラは、人形じゃなくて人ですよ人!後ろから追いかけてきてたの、銀ちゃん気付いてました?私たちあともう一歩でつかまりそうだったんです。包帯が少しずつ取れて、中からドロドロした死体の」
「うわぁぁぁぁぁ!ちょっ、お前、黙れって!!いったん俺を休ませろ!!もうなんなのこの子!?なんなのこの悪気のなさぁ!!誰かぁ!助けてぇぇぇぇ!!!」
その銀時の叫び声は、遊園地じゅうに響きそうなほどの大声だった。
(問2)
心霊系が苦手な人間がお化け屋敷を楽しめるか?
(解1)
人を楽しませることはできる(ただし***限定)
---------------------------------------------
【13:00】to be continued.
(問2)
心霊系が苦手な人間がお化け屋敷を楽しめるか?
「ねぇ銀ちゃん……ちょっとだけ手を離してもらえます?力が強すぎて痛いよ」
「あ゙ぁ゙!?っんだよ、***!お前が遊園地デートでは手を繋ぐのが鉄則っつったんだろーが!***が銀さんとお手々つなぎてぇっつったんだろーがぁぁぁ!優しい彼氏が甘えさせてやってんだから、遠慮すんなよ***~!!!」
「いやホント、甘えさせてくれてありがと銀ちゃん……でもなんか、そのぉ……銀ちゃんさっきから手汗がすごいんだけど、大丈夫ですか?手がびしょびしょだよ?それにそんなに力いっぱいされると指が折れちゃいそうです。もうちょっと優しく握ってください」
園内マップ上の「お化け屋敷」という存在に、銀時はとっくに気付いていた。気付いていて***がそこに注目しないように、さりげなく回避ルートを通っていたのだ。
しかし、気を抜いた瞬間に看板を見つけた***が「銀ちゃん!お化け屋敷、行きましょう」と言った途端、全身の血液が凍った気がした。
手を引かれて列に並ぶ。行列が進んでいくにつれて、周りの景色や装飾がおどろおどろしくなっていく。BGMが「ひゅ~どろどろぉ~…」と鳴りはじめ、しばらくすると既に中に入った客の「ギャァァァ」という叫び声が聞こえてきた。
「見て見て銀ちゃん!このお化け屋敷、全長500メートルもあるんですって。中は迷路みたくなってて、オバケが飛び出してきたり、追いかけられたりしながら、正しいルートでゴールしなきゃいけないんですって!楽しみですね!ちゃんとゴールできるかなぁ?」
遊園地初体験の***は、もちろんお化け屋敷も初めてだ。目を輝かせて壁に書かれた説明書きを読み上げている。***にとって楽しみで仕方がないことが、銀時にとっては恐怖でしかない。全長500メートル?おいおい、どう考えても長すぎるだろ。オバケが追いかけてくる?なにそれ、追いかけてくれなんて俺は頼んでないけど?
そんなことを考えているうちに順番が回ってきた。渡された懐中電灯を照らしながら、真っ暗な迷路の中に足を踏み入れる。内心「ひぃぃぃ」と悲鳴を上げた銀時は、後ろから***の両肩をつかみ、小さな背中に隠れるように身体を縮めた。
「ちょ、ちょっと銀ちゃん……か、肩が取れちゃいそうです。さっきも言ったけど、もう少し優しくつかんでよぉ」
「ああッ!?めっさ優しくしてんだろーが!ごっさソフトタッチだろーが!おおおおお前こそ、何ちんたら歩いてんだよ!さっさと進めよ!ももももももしかして***、怖いのか?真っ暗なのが怖いんだろ?っんだよ、しょうがねぇな***ちゃんは!正直に言えよ正直に!怖いんなら戻ろうか?銀さんは戻ってもいーよ?今ならまだ戻れるよ?」
「いや、銀ちゃんが引っぱるから全然進まないんだってば……銀ちゃんこそすごい汗だけど大丈夫ですか?もしかしてお化け屋敷、怖かった?」
そう言って肩越しに振り返った***はにっこり笑っている。微塵も怖がるそぶりを見せず、小さな肩に置かれた銀時の手を、ぽんぽんと優しく撫でた。
「こここここ怖くねぇよ!ぎ、銀さんが怖ぇのは血糖値と結野アナの占いで最下位になることだけだからぁ!お化け屋敷のやっすい作りモンの幽霊なんざ、全ッ然怖くねぇからぁぁぁ!!!」
バンッッッ!!!!!
「ギャァァァ!!!!!」
まるで銀時の言葉を聞いていたかのように横のドアが開き、中からミイラの人形が倒れてきた。叫び声を上げた銀時は、***の着物の袖に顔をうずめる。
その後も数歩進むたびに様々な仕掛けが飛び出してきた。火の玉が飛んできた時、銀時は後ろから***を羽交い絞めするようにぎゅうぎゅうと抱きしめた。糸で吊るされたコンニャクが頬をかすめた時、顔から***の胸に飛び込んで、腰に腕を回して抱き着いた。
「はぁっ、はぁっ……ぜ、全然怖くねぇし。ほほほほら、***、もうすぐゴールだぞ。あの明るくなってる所が出口だろ?出口だよね?お願い出口って言って300円あげるから!」
「えっ、もう出口ですか?ずっと銀ちゃんがくっついてたから、私ほとんど何も見えなかったよぉ」
まっすぐな通路の100メートルくらい先が明るい。恐らくこれがこのお化け屋敷の最終コーナーだろう。ホッとした銀時はようやく***から離れて、その手をやんわりとにぎった。ここからは彼氏らしくエスコートしながらゴールしようと一歩踏み出した瞬間、背後からドドド…と物音がした。
ぎくりとして振り返ると同時に、真後ろの扉が観音開きになる。中からゾンビのようなオバケが数十人飛び出してきて、ふたり目指して駆け寄ってきた。
「ンギャァァァァァァ!!!!!!」
「わッ!ちょ、銀ちゃんッ!?なにす、きゃぁッ!」
身体が勝手に動いて、立ちつくす***の膝裏に腕を回すと肩にかつぎ上げた。持ち上げられた***は驚きで足をバタつかせ、銀時の背中をこぶしで叩いていたが、そんなことに構っている暇はなかった。‟とにかく逃げろ、ゾンビよりも速く走れ”と本能の命じるままに駆け出した銀時は、一目散に出口を目指した。
「おかえりなさいませ!お疲れ様です!!」
ゴールで出迎えたスタッフは、***を肩にかついだ銀時を見て、ぎょっとしていた。しかし、すぐに気を取り直して口を開いた。
「お客様たちのペアが、このアトラクション開設以来、最速タイムでのゴール記録を更新致しました!おめでとうございます!!」
ぜぇはぁと息をする銀時には、そのスタッフの声はよく聞こえなかった。ただ銀時は、肩から***を下ろす勇気が出ずに困っていた。
しょせん作り物のオバケを怖がる自分を、彼女である***に知られたくなかった。万が一、憐れんだ目でも向けられた日には彼氏としての威厳が保てない。性根の優しい***のことだから、銀時のそんな姿を見たところで「格好悪い」なんてきっと言わない。むしろ心配したり、自分がお化け屋敷に連れ込んだことを後悔して、申し訳なさそうにするだろう。
眉を八の字に下げた愛らしい顔で、叱られた子犬のように潤んだ目をして「銀ちゃんごめんね」と謝られたら、それこそ銀時のプライドはガタガタと音を立てて崩れ落ちてしまうだろう。
「オオオオオイ、***、大丈夫か!?オメーが怖ぇ思いしねぇように銀さんが助けてやったぞ!か、感謝しやがれ!」
お化け屋敷から少し離れ、ようやく***を肩から下ろす。我ながら無理があると思いながらも、必死で取り繕う言葉を口にした。気まずい思いで恐る恐る***の顔をのぞきこんだ瞬間、銀時は驚いて息が止まった。
てっきり呆れているか憐れんでいるかと思った***は、満面の笑みを浮かべていた。きらきらと輝いた瞳で銀時を見上げた顔は、まるで憧れのヒーローに遭遇した子供のような表情を浮かべていた。
「銀ちゃんすごいですッ!ものすっごくかっこよかったです!!私、銀ちゃんの肩の上からずっと後ろを見てたんですけど、すごい人数のゾンビが追いかけてきてたんだよ。あんなのに捕まったらすぐ食べられちゃって怖いなってくらいの、はちゃめちゃな人数だったんだよ!なのに銀ちゃんは全然ひるまずに、私まで助けて走ってくれるなんて、とっても素敵でした!あの『エイリアンVSヤクザ』で、百匹のエイリアンにひとりで立ち向かっていく丈のアニキみたいでした!!すごいよ銀ちゃん、かっこいいよ!!私たち最速タイムだって!!!」
奇跡的に***は、銀時が怖がっていたことには気付いていなかった。怯えて逃げていたことも、自分を助けて走ってくれたと勘違いしている。銀時は***の言葉を聞いてホッとすると同時に、鼻の穴を膨らませて得意げな顔をして喜んだ。
「そりゃまぁ、銀さんくらいになると?こんなの楽勝っつーか?こんくらいのお化け屋敷だったら、目ぇつぶってたってゴールできたっつーの!だっはっは!喜べ、***、お前の彼氏はお化け屋敷を最速で制覇する男だぞ!!!」
「本当にすごいです銀ちゃん!初めて入ったお化け屋敷で、迷いもせずにゴールできるなんて!これなら次は、もっと速いタイムを叩き出せますね!」
「………へ?」
瞳を輝かせた***が、銀時の手を両手でぎゅっとにぎると、期待を込めた目で見つめた。いつも愛らしい言葉ばかりを言う桃色の唇が動いて、無邪気な声で銀時が耳を疑うようなことを言い放った。
「銀ちゃん、もう1回、いや……もう5回くらい挑戦したらきっと、遊園地の人もびっくりするくらいのタイムでゴールできると思うんです!よし!もう一度入りましょう!!次は私も足手まといにならないように一生懸命走りますから!行こう銀ちゃん!!!」
「えぇぇぇぇぇ!!!!!」
顔を真っ青にした銀時の手を***がガシッとつかみ、再びお化け屋敷の入り口を目指して猛ダッシュする。もう一度あの恐怖を体験するなんて死ぬほど嫌だ。しかし「こんなお化け屋敷は楽勝」と言ってしまった手前「もう入りたくない」とは口が裂けても言えなかった。
―――なにこれ!?なにこの子!?え、もしかしてさっきのジェットコースターの仕返し!?いや、***はそんなことできるような器用な女じゃねぇや。本気で「銀ちゃんカッコイイ」って思うような無邪気な小娘だわ。いや、そう思われんのはめっさ嬉しいけど、そう思ってる***はごっさ可愛いけど……けど、どーすんのコレ!?どーなんの俺ェェェ!!?
真っ暗なお化け屋敷に出ては入りを更に3回繰り返し、銀時と***は最速タイムを更新し続けた。最後の3回目では、入る前から銀時は***を肩に担ぎ上げていた。入口から出口まで、銀時の肩の上でお化け屋敷を体験した***は大興奮だった。
係員に「この記録はそうそう抜かれるタイムではない」と言わしめて***は満足し、ようやくお化け屋敷を離れた。青白い顔でふらふらと歩く銀時に向かって、邪気のない笑顔の***は明るい声で話しかけた。
「銀ちゃんの肩の上からだと視界が広いから、お化け屋敷の怖いところがぜ~んぶ見えて、すっごく楽しかった!入ってすぐに倒れてきたミイラは、人形じゃなくて人ですよ人!後ろから追いかけてきてたの、銀ちゃん気付いてました?私たちあともう一歩でつかまりそうだったんです。包帯が少しずつ取れて、中からドロドロした死体の」
「うわぁぁぁぁぁ!ちょっ、お前、黙れって!!いったん俺を休ませろ!!もうなんなのこの子!?なんなのこの悪気のなさぁ!!誰かぁ!助けてぇぇぇぇ!!!」
その銀時の叫び声は、遊園地じゅうに響きそうなほどの大声だった。
(問2)
心霊系が苦手な人間がお化け屋敷を楽しめるか?
(解1)
人を楽しませることはできる(ただし***限定)
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【13:00】to be continued.