銀ちゃんが愛する女の子
ふたりの夢のくに
おなまえをどうぞ
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【9:00】
ワァァァ―――…、キャァァァ―――…
波打つレールの上を、猛スピードで滑走するジェットコースター。固定された白馬や馬車が、グルグル回るメリーゴーランド。色とりどりの箱型の乗り物を揺らしながら、そびえ立つ大観覧車。大江戸遊園地では今日も客の期待通り、夢の時間が流れている。
「なぁ、***~、確かに銀さんは誕生日なんかどうでもいいし、お前のしたいことすれば~って言ったけどさぁ………なんで遊園地?」
呆れた顔でそう問いかけた銀時の声は、隣の***には聞こえていなかった。両手で持った園内マップとにらめっこする***の瞳は、まるで宝石箱を見ているみたいに輝いていた。マップから顔を上げた***が、満面の笑みで銀時を見つめる。口を開くと楽しいことを相談する子供のような声を出した。
「銀ちゃん、どこから回ろうか!?私、ぜんぶの乗り物に乗ってみたいです!!」
1時間前の朝8時、いつも通り配達の仕事を終えて万事屋へやって来た***は、一目散に寝室へと駆けこんだ。寝ている銀時から掛け布団をはぎ取り、「ん゙ぁ゙~?あにすんだよぉ~」と目をこすりながら起き上がった銀時に向かって、2枚のチケットつきつけた。
「銀ちゃん!ついに10日です!約束通り、お出かけしてください!一緒に夢の国に行こう!」
「あ゙ぁぁぁ~?夢の国なら銀さんついさっきまで行ってたんだけど?今だって目ぇ閉じればすぐに戻れっけど?いきなり来て、眠りという夢から人を引きずり出しといて、もっぺん夢の国に行けっつーのは、一体どーゆー了見だよ***~!銀さんはお前をそんなにワガママ娘に育てた覚えはありませんよぉ~」
「その夢じゃなくて遊園地です遊園地!お誕生日の日はお前のしたいことしろって銀ちゃん言ったじゃん。行きたいとこ付き合ってやるって……だから、遊園地に行きましょう!」
瞳をキラキラと輝かせた***が、銀時の腕をつかんで立ち上がらせようとする。しかしまだ眠たそうな顔であくびをしている銀時は、布団から尻を上げる気配がない。そして面倒くさそうな口調で答えた。
「いやいやいや……***さぁ~ん…もうちょっと銀さんの気持ちを汲んでくれてもいいんじゃねぇの?そりゃ、俺はもうオッサンだし、誕生日なんて祝うような歳でもねぇから、10日は***のしたいことしろっつったけどさぁ~………いや、でも彼氏の誕生日だぞ?***の大好きな銀さんの、念に一度の記念日だぞ?それも付き合って初めての?それをお前、遊園地って……ガキの遊びじゃねぇっつーの。他になんかあっただろ、もっと色っぽいプレゼントとか、サプライズ的なヤツがあっただろーがよぉぉぉ」
「えっ!!?銀ちゃん欲しい物あったの?‟ケーキさえ食えりゃなんもいらねぇ”って言ってたから、ケーキしか用意してないよ!欲しい物があるなら教えてって言ったのに!もぉ~なんですか!?何が欲しいんですか!?」
慌てた顔で問いただす***を見て、銀時はニヤニヤと笑った。その顔はまるで「よくぞ聞いてくれた」というような表情だった。
「んなもん決まってんだろーが、お前だよお前!!銀さんが欲しいものはでっけぇ箱に入った***に決まってんだろ。リボンで全身ぐるぐる巻きの***だろ。全裸かスッケスケの下着姿の***だろぉぉぉ!あ、ナース服でもいいな。いや、でもやっぱ一番は全裸だな。そんで箱から出てきて ‟プレゼントはあ・た・し!銀ちゃんに***のヴァージンをあ・げ・る!” に決まって…イダダダダダッ!!!!」
「馬鹿ァァァ!なななな、なに言ってるんですか!そ、そんなことできないよ!変態ッ!や、やっぱりプレゼントは遊園地です!それ以外は却下!早く準備してください!!」
火山が噴火したかのように、顔から湯気を出して真っ赤になった***が、銀時のほほを指で強くつねる。そのほほを引っ張って銀時を立ち上がらせると、いつもの服と着物を投げつけた。
寝室で銀時が着替える間、居間で待つ***は赤い顔のまま、ぷんぷんと怒っていた。しかし、着替えた銀時が寝室から出てきて「しゃーねぇなぁ、行きゃいいんだろ行きゃぁ~。夢の国でもゴリラの国でも、どこでも行ってやるよ***お嬢様ぁ~!!」と言うやいなや、***は嬉しそうにぱっと顔を輝かせた。
「あっちにジェットコースターとメリーゴーランドがあるみたいです。ほらほら銀ちゃん!はやく乗りに行きましょう!!」
銀時の着物の袖をぐいぐいと引っ張りながら進む***が、楽しそうに振り返って言った。子供のようにはしゃぐ顔が、まだ寝起きの銀時にはまぶしい。
「へーへ―…どこでもついてきますよぉ~」
***とは対照的に、ダラダラとした足取りの銀時は引きずられるように歩いていた。その姿に気付いた***は急にぴたりと足を止めて、不安げな顔で銀時を見上げた。
「ごめん銀ちゃん……私つい浮かれて、はしゃいじゃったけど……もしかして銀ちゃんは遊園地、あんまり好きじゃなかったですか?」
心配そうな顔で眉を八の字に下げた***を見下ろして、銀時は「はぁ~」と深いため息をついた。
「あのさぁ、***~、お前みてぇな小娘とちがって、銀さんはとっくにハタチを過ぎた大人なわけよ。なんつーかさぁ、遊園地を夢の国と思って、はしゃぐ時期は過ぎたっつーの?夢から覚めたオッサンの荒んだ目には、夢の魔法もかからねぇっつーの?どっちかってぇと遊園地なんかより、***とホテルに行けた方がずっといい夢見れるくらいだからね?」
その言葉を聞いて、***は残念そうに肩を落としてしょんぼりとした。今にも泣きそうな***の顔を見て銀時は、こんなことならハッキリと欲しい物を言えばよかったと後悔する。数週間前から***は、銀時に会う度に「お誕生日なにが欲しいですか?」「なにかしたいことはありますか?」「なんでもあげるから教えてください」と尋ねてきた。
まるで金魚のフンのようにくっついてきて、何度もその質問してくる姿が愛らしくて「別にぃ」とはぐらかし続けたのがいけなかった。さっさと「プレゼントはお前がいい」と言ってやればよかったのだ。もちろん初心な***がそれを容認するかは別としても。
「あの……は、初めてなんです……」
「へ?」
肩を落としたままの***が、片手で園内マップをぐしゃりと握りしめた。もう一方の手で銀時の着物の袖をぎゅっとつかむと、とても小さな声でつぶやく。よく聞こえなかったので、銀時は***に近づいて、身をかがめると耳を傾けた。困った顔をゆっくりと上げた***は、恥ずかしそうに小さな声を出し、銀時の耳にささやいた。
「銀ちゃん、私……遊園地、初めてなんです……田舎にはこんな所ないから。スーパーの同僚の子たちがすごく楽しい夢の国って言ってて、ずっと行ってみたかったの……でも、初めては銀ちゃんとがいいって思ってて……銀ちゃんとだったらきっと、他の人と行くよりずっとずっと楽しいだろうなって。だって遊園地はカップルのデートスポットの定番なんでしょう?」
「っ……!!!」
すねた子供のように***の唇は少しだけ尖っていた。その桃色の唇からこぼれ出た「初めては銀ちゃんとがいい」という言葉が、銀時の心臓を強く撃ち抜いた。
―――そりゃそうだ、コイツは田舎生まれ田舎育ち。遊園地なんざ見るのも遊ぶのも初めてに決まってる。っつーことは今日は***の初めての遊園地?つまり***の初体験?……んなもん、最初っから最後まで全部、俺のもんに決まってんだろぉがぁぁぁ!!!!!
「でも銀ちゃんのお誕生日なのに、銀ちゃんが楽しめなかったら意味がないです……遊園地はやめて、どこか別のところに、」
「オイ、***、誰が楽しくねぇっつったよ?夢の国だろーがメスゴリラの国だろーが、お前とだったら俺はどこだって楽しめるっつーの。よかったな***、大好きな銀さんと念願の遊園地デートじゃねぇか!……で、お前、いちばん最初に何してぇんだよ?ジェットコースター?回転木馬?なんでも言えよ***、一緒に乗ってやっから」
***の手から園内マップを取り上げた銀時が、ふふんという得意げな顔をして笑いかけた。その顔を見た途端、***の表情はふにゃりと崩れた。それは笑っているのに今にも泣き出しそうな顔で、まるで頭から花が咲きそうなほど喜びに満ち溢れていた。
袖をつかんでいた***の手がそっと下りて、銀時の手のひらのなかに、細い指がするりとすべりこんできた。そして冷たい小さな手が銀時の手をぎゅっと握った。自分から手を繋いだのが恥ずかしいのか、***のほっぺは淡い薄紅色に染まった。
「ありがとう銀ちゃん……あの、いちばん最初にしたいことは、手を繋ぐことです……ずっと手を繋いでいるのが遊園地デートの鉄則だって、お妙さんが言ってました!」
「ぶっ!!お前さぁ、なに自分で言って自分で照れてんだよ。それとさぁ、そのふにゃふにゃした赤い顔やめろよぉ~、銀さんまで恥ずかしくなるでしょーが!……ったく、頭から花咲かしちまってよぉ~。***、俺は思うんだけど、お前って実は夢の国から来た妖精かなんかじゃねーの?今日は夢の国に来たっつーか、実はここが***の実家なんじゃねぇの?かぶき町というごみ溜めから、故郷に帰って来たんじゃねぇのぉぉぉ~?」
「はぁ~!?それどういう意味ですか!?また私のこと馬鹿にしてぇ!!」
怒った口調で銀時に言い返しながらも、春が来そうなほどの温かい笑顔を浮かべた***が、銀時の手を引いて走り出す。「ジェットコースターとメリーゴーランドはこっちです!」と言ってちょこちょこと小走りをする***に、手を引かれた銀時の顔もまた、小春日和のように微笑んでいた。
恋人たちの夢の時間は、まだはじまったばかり。
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【9:00】to be continued.
ワァァァ―――…、キャァァァ―――…
波打つレールの上を、猛スピードで滑走するジェットコースター。固定された白馬や馬車が、グルグル回るメリーゴーランド。色とりどりの箱型の乗り物を揺らしながら、そびえ立つ大観覧車。大江戸遊園地では今日も客の期待通り、夢の時間が流れている。
「なぁ、***~、確かに銀さんは誕生日なんかどうでもいいし、お前のしたいことすれば~って言ったけどさぁ………なんで遊園地?」
呆れた顔でそう問いかけた銀時の声は、隣の***には聞こえていなかった。両手で持った園内マップとにらめっこする***の瞳は、まるで宝石箱を見ているみたいに輝いていた。マップから顔を上げた***が、満面の笑みで銀時を見つめる。口を開くと楽しいことを相談する子供のような声を出した。
「銀ちゃん、どこから回ろうか!?私、ぜんぶの乗り物に乗ってみたいです!!」
1時間前の朝8時、いつも通り配達の仕事を終えて万事屋へやって来た***は、一目散に寝室へと駆けこんだ。寝ている銀時から掛け布団をはぎ取り、「ん゙ぁ゙~?あにすんだよぉ~」と目をこすりながら起き上がった銀時に向かって、2枚のチケットつきつけた。
「銀ちゃん!ついに10日です!約束通り、お出かけしてください!一緒に夢の国に行こう!」
「あ゙ぁぁぁ~?夢の国なら銀さんついさっきまで行ってたんだけど?今だって目ぇ閉じればすぐに戻れっけど?いきなり来て、眠りという夢から人を引きずり出しといて、もっぺん夢の国に行けっつーのは、一体どーゆー了見だよ***~!銀さんはお前をそんなにワガママ娘に育てた覚えはありませんよぉ~」
「その夢じゃなくて遊園地です遊園地!お誕生日の日はお前のしたいことしろって銀ちゃん言ったじゃん。行きたいとこ付き合ってやるって……だから、遊園地に行きましょう!」
瞳をキラキラと輝かせた***が、銀時の腕をつかんで立ち上がらせようとする。しかしまだ眠たそうな顔であくびをしている銀時は、布団から尻を上げる気配がない。そして面倒くさそうな口調で答えた。
「いやいやいや……***さぁ~ん…もうちょっと銀さんの気持ちを汲んでくれてもいいんじゃねぇの?そりゃ、俺はもうオッサンだし、誕生日なんて祝うような歳でもねぇから、10日は***のしたいことしろっつったけどさぁ~………いや、でも彼氏の誕生日だぞ?***の大好きな銀さんの、念に一度の記念日だぞ?それも付き合って初めての?それをお前、遊園地って……ガキの遊びじゃねぇっつーの。他になんかあっただろ、もっと色っぽいプレゼントとか、サプライズ的なヤツがあっただろーがよぉぉぉ」
「えっ!!?銀ちゃん欲しい物あったの?‟ケーキさえ食えりゃなんもいらねぇ”って言ってたから、ケーキしか用意してないよ!欲しい物があるなら教えてって言ったのに!もぉ~なんですか!?何が欲しいんですか!?」
慌てた顔で問いただす***を見て、銀時はニヤニヤと笑った。その顔はまるで「よくぞ聞いてくれた」というような表情だった。
「んなもん決まってんだろーが、お前だよお前!!銀さんが欲しいものはでっけぇ箱に入った***に決まってんだろ。リボンで全身ぐるぐる巻きの***だろ。全裸かスッケスケの下着姿の***だろぉぉぉ!あ、ナース服でもいいな。いや、でもやっぱ一番は全裸だな。そんで箱から出てきて ‟プレゼントはあ・た・し!銀ちゃんに***のヴァージンをあ・げ・る!” に決まって…イダダダダダッ!!!!」
「馬鹿ァァァ!なななな、なに言ってるんですか!そ、そんなことできないよ!変態ッ!や、やっぱりプレゼントは遊園地です!それ以外は却下!早く準備してください!!」
火山が噴火したかのように、顔から湯気を出して真っ赤になった***が、銀時のほほを指で強くつねる。そのほほを引っ張って銀時を立ち上がらせると、いつもの服と着物を投げつけた。
寝室で銀時が着替える間、居間で待つ***は赤い顔のまま、ぷんぷんと怒っていた。しかし、着替えた銀時が寝室から出てきて「しゃーねぇなぁ、行きゃいいんだろ行きゃぁ~。夢の国でもゴリラの国でも、どこでも行ってやるよ***お嬢様ぁ~!!」と言うやいなや、***は嬉しそうにぱっと顔を輝かせた。
「あっちにジェットコースターとメリーゴーランドがあるみたいです。ほらほら銀ちゃん!はやく乗りに行きましょう!!」
銀時の着物の袖をぐいぐいと引っ張りながら進む***が、楽しそうに振り返って言った。子供のようにはしゃぐ顔が、まだ寝起きの銀時にはまぶしい。
「へーへ―…どこでもついてきますよぉ~」
***とは対照的に、ダラダラとした足取りの銀時は引きずられるように歩いていた。その姿に気付いた***は急にぴたりと足を止めて、不安げな顔で銀時を見上げた。
「ごめん銀ちゃん……私つい浮かれて、はしゃいじゃったけど……もしかして銀ちゃんは遊園地、あんまり好きじゃなかったですか?」
心配そうな顔で眉を八の字に下げた***を見下ろして、銀時は「はぁ~」と深いため息をついた。
「あのさぁ、***~、お前みてぇな小娘とちがって、銀さんはとっくにハタチを過ぎた大人なわけよ。なんつーかさぁ、遊園地を夢の国と思って、はしゃぐ時期は過ぎたっつーの?夢から覚めたオッサンの荒んだ目には、夢の魔法もかからねぇっつーの?どっちかってぇと遊園地なんかより、***とホテルに行けた方がずっといい夢見れるくらいだからね?」
その言葉を聞いて、***は残念そうに肩を落としてしょんぼりとした。今にも泣きそうな***の顔を見て銀時は、こんなことならハッキリと欲しい物を言えばよかったと後悔する。数週間前から***は、銀時に会う度に「お誕生日なにが欲しいですか?」「なにかしたいことはありますか?」「なんでもあげるから教えてください」と尋ねてきた。
まるで金魚のフンのようにくっついてきて、何度もその質問してくる姿が愛らしくて「別にぃ」とはぐらかし続けたのがいけなかった。さっさと「プレゼントはお前がいい」と言ってやればよかったのだ。もちろん初心な***がそれを容認するかは別としても。
「あの……は、初めてなんです……」
「へ?」
肩を落としたままの***が、片手で園内マップをぐしゃりと握りしめた。もう一方の手で銀時の着物の袖をぎゅっとつかむと、とても小さな声でつぶやく。よく聞こえなかったので、銀時は***に近づいて、身をかがめると耳を傾けた。困った顔をゆっくりと上げた***は、恥ずかしそうに小さな声を出し、銀時の耳にささやいた。
「銀ちゃん、私……遊園地、初めてなんです……田舎にはこんな所ないから。スーパーの同僚の子たちがすごく楽しい夢の国って言ってて、ずっと行ってみたかったの……でも、初めては銀ちゃんとがいいって思ってて……銀ちゃんとだったらきっと、他の人と行くよりずっとずっと楽しいだろうなって。だって遊園地はカップルのデートスポットの定番なんでしょう?」
「っ……!!!」
すねた子供のように***の唇は少しだけ尖っていた。その桃色の唇からこぼれ出た「初めては銀ちゃんとがいい」という言葉が、銀時の心臓を強く撃ち抜いた。
―――そりゃそうだ、コイツは田舎生まれ田舎育ち。遊園地なんざ見るのも遊ぶのも初めてに決まってる。っつーことは今日は***の初めての遊園地?つまり***の初体験?……んなもん、最初っから最後まで全部、俺のもんに決まってんだろぉがぁぁぁ!!!!!
「でも銀ちゃんのお誕生日なのに、銀ちゃんが楽しめなかったら意味がないです……遊園地はやめて、どこか別のところに、」
「オイ、***、誰が楽しくねぇっつったよ?夢の国だろーがメスゴリラの国だろーが、お前とだったら俺はどこだって楽しめるっつーの。よかったな***、大好きな銀さんと念願の遊園地デートじゃねぇか!……で、お前、いちばん最初に何してぇんだよ?ジェットコースター?回転木馬?なんでも言えよ***、一緒に乗ってやっから」
***の手から園内マップを取り上げた銀時が、ふふんという得意げな顔をして笑いかけた。その顔を見た途端、***の表情はふにゃりと崩れた。それは笑っているのに今にも泣き出しそうな顔で、まるで頭から花が咲きそうなほど喜びに満ち溢れていた。
袖をつかんでいた***の手がそっと下りて、銀時の手のひらのなかに、細い指がするりとすべりこんできた。そして冷たい小さな手が銀時の手をぎゅっと握った。自分から手を繋いだのが恥ずかしいのか、***のほっぺは淡い薄紅色に染まった。
「ありがとう銀ちゃん……あの、いちばん最初にしたいことは、手を繋ぐことです……ずっと手を繋いでいるのが遊園地デートの鉄則だって、お妙さんが言ってました!」
「ぶっ!!お前さぁ、なに自分で言って自分で照れてんだよ。それとさぁ、そのふにゃふにゃした赤い顔やめろよぉ~、銀さんまで恥ずかしくなるでしょーが!……ったく、頭から花咲かしちまってよぉ~。***、俺は思うんだけど、お前って実は夢の国から来た妖精かなんかじゃねーの?今日は夢の国に来たっつーか、実はここが***の実家なんじゃねぇの?かぶき町というごみ溜めから、故郷に帰って来たんじゃねぇのぉぉぉ~?」
「はぁ~!?それどういう意味ですか!?また私のこと馬鹿にしてぇ!!」
怒った口調で銀時に言い返しながらも、春が来そうなほどの温かい笑顔を浮かべた***が、銀時の手を引いて走り出す。「ジェットコースターとメリーゴーランドはこっちです!」と言ってちょこちょこと小走りをする***に、手を引かれた銀時の顔もまた、小春日和のように微笑んでいた。
恋人たちの夢の時間は、まだはじまったばかり。
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