銀ちゃんといつも一緒にいる女の子
まいにち♡銀ちゃん
おなまえをどうぞ
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【日曜日の銀ちゃん】
「***~、お前なんなの?言っとくけどアレだよ?急に機嫌悪くなられんのが、男はいちばん嫌いなんだからね?お前ら女は、言わなくても分かれって思ってるかもしんねぇけど、男っつーのは言わなきゃ分かんねぇ馬鹿な生きものなんだってぇ。言わなくても分かれっつーのはそりゃそっちのエゴだろ。だから説明しろよ説明をよ~!いくら銀さんが優秀な彼氏でも、急にふてくされた顔されたら無理だって。お手上げだってぇ。どうすんのこれ?どうしたのこの子?うんこかな?それとも便秘かな?って思うだろうが普通よぉぉぉ」
「う、うんこでも便秘でもないよ馬鹿っ!そんなふうに思うの銀ちゃんだけだよ!それに別にふてくされてなんかないしっ!機嫌悪くないしっ!!ぜ~んぜん、怒ってなんかないしっ!!!」
嘘だ。本当は私すごく怒っていて、機嫌が悪くて、ふてくされた顔をしてる。自分でも分かってる。こどもっぽくて嫌だと思ってる。でも、どうしてもこのイライラが無視できなくて「大人になろうよ***」という理性的な心の声すら聞き入れられない。
日曜日は1日ずっと銀ちゃんと一緒にいられるから幸せ。目覚めてすぐ「今日は銀ちゃんに会える」と思ったらそれだけで笑顔になれた。バイクで迎えに来た銀ちゃんは、私が銀ちゃんお気に入りのコーラルピンクの口紅をつけていることにすぐ気づいて「おー、いいじゃん」と言った。飛び跳ねるくらい嬉しかった。
映画館で映画がはじまる前から銀ちゃんは、キャラメルポップコーンを食べていた。「甘さが足りねぇ」と言って食べている銀ちゃんを見て笑ったら、「お前が笑っただけでゆれるんだなソレ」と言って、少し嬉しそうに私の耳でゆれるティアドロップのイヤリングを見た。涙が出そうなほど胸がときめいた。
暗い映画館でスクリーンをじっと見ていたら、急に銀ちゃんが身を乗り出してきて、キャラメル味のキスをしてきた。長い指で私の耳の下のキスマークを撫でて、「つけたの三日前だから薄くなってんな、上書きしていい」と銀ちゃんはささやいた。私が答える前に首にチクリとした痛みが走って、息ができないほどドキドキした。
不機嫌になったきっかけはご飯を食べた後、街を歩いている時に銀ちゃんが何気なく言った言葉だった。
「あ、オレ明日仕事入ってっから会えねぇけど、会社終わり気ぃ付けて帰れよ***」
それはとてもささいなことで、銀ちゃんは私も見ずに言った。でもそれを聞いた途端、私の胸はさっと冷たくなって思考は停止した。目の前が一瞬で真っ暗になり歩けなくなった。突然立ち止まった私のせいで繋いでいた手が離れた。
「おい、どーした」
振り向いた銀ちゃんの声でハッとして「ううん、なんでもない」と言ったけど、全然笑えなかった。それまで他愛のない話をしていた口もつぐんで、何も話せなくなってしまった。そしてその後、悲しい気持ちはイライラへと変化して、銀ちゃんに八つ当たりをしてしまった。
パフェを食べに入ったカフェで、ミニスカートの店員さんを見た銀ちゃんが「お、パンツ見えた」と言った。いつものことで普段は全然気にしないのに、私の口は勝手に「最低」と言っていた。吐き捨てるみたいな私の声を聞いて、銀ちゃんはきょとんとしていた。
「なぁなぁ、お前なに怒ってんだよ。銀さんなんもしてねぇじゃん。確かにパンツ見たのは悪かったかもしんねぇけど、目の前にパンツがあったら男なら誰だってパンツ見るだろ。そりゃ、いちばん見てぇのは***のパンツだよ?男はみんな好きな女のパンツが見てぇ生き物だし?でもお前ミニスカはかねぇじゃん。だからしょーがねぇからテキトーな女のテキトーなパンツで我慢してんだろーが」
「パンツパンツって言いすぎ銀ちゃん、最低。この歳でミニスカなんてはけないもん。ごめんねパンツも見せられないつまんない彼女で。そんなにパンツが見たいなら、いつでもパンツ見せてくれる女の子と付き合えば」
「はぁぁぁぁ?なに言ってんのお前、意味わかんねーんんだけど」
それにお前だってパンツパンツって言いすぎじゃね、と言った銀ちゃんは少し怒った顔をした。
せっかくの日曜日で銀ちゃんと一緒にいられる貴重な1日なのに、どうして私はこんなに可愛くないんだろう。スマホを見ると待ち受け画像の、ネモフィラの花畑で頭に花をつけたまま寝てる銀ちゃんの写真の上に、18:30と時刻が出た。
日曜日がもうすぐ終わってしまう。サ〇エさん症候群っていうんだっけ、とぼんやり思った。明日からまた一週間が始まるという憂鬱と、明日は銀ちゃんに会えないという強い悲しみが襲ってくる。悲しくてやるせなくてイライラする。笑えないどころか泣きたいくらい。こんなに可愛くない顔を銀ちゃんに見られているのも、すごく嫌なのにどうしようもない。
私の部屋に帰ってきて、いつもどおりソファに横になろうとした銀ちゃんに向かって、言ってはいけない言葉を言ってしまった。
「ねぇ銀ちゃん、明日お仕事なんでしょ?無理して私と一緒にいなくていいよ。早く帰ったら?」
私がそう言った途端、銀ちゃんの顔は明らかに不機嫌になった。
「あっそ、じゃ帰るわ。なんか知んねぇけど、今日のお前全然可愛くねぇし」
そのまま銀ちゃんは私の横をすり抜けて、玄関へと向かった。すれ違いざまに見上げた銀ちゃんの顔はすごく怒っていた。冷たい目はもう私のことなんて見たくなさそうに、まっすぐにドアを見ていた。
私が真っ青になって、やってしまったと思った時にはもう、ブーツをはいた銀ちゃんがドアノブに手をかけていて、今にも部屋から出て行こうとしていた。
「……っ!や、やだぁっ!銀ちゃん、帰っちゃやだぁっ!!!」
銀ちゃんに駆け寄って裸足のまま玄関に降りて、後ろから背中に抱き着いた。もう自分でも何をしてるのか全然分からなかった。
「ご、ごめんね銀ちゃんっ、ふてくされた顔して可愛くなくてごめんねっ……早く帰ってなんて思ってないの……本当はもっと一緒にいたいのっ……明日、会えないなら……なおさら今もっと近くにいたいのに……自分でも何がしたいのか分からなくて……」
ドアの開く音は聞こえなかった。銀ちゃんが何も言わないから私はすごく怖くて、背中に押し付けた顔を上げることもできなかった。
「銀ちゃん……私、弱いから、いちにちだって銀ちゃんに会えないのが嫌だよ。今日も明日もその先もずっと、銀ちゃんと一緒にいたいって思っちゃうよ……1日くらい会えないのは、銀ちゃんにとっては大したことないかもしれないけど、私はすごくツライよ……こんなに弱い彼女でごめんね銀ちゃん、八つ当たりしてパンツも見せない可愛げのない彼女でごめんね……もうふてくされたりしないから、パ、パンツも見せるから……帰らないでよぉ」
何も言わない銀ちゃんは、身動きひとつせずに立っていると思っていたけど、ふと気付くと私が腕を回した大きな背中は、細かく震えていた。
「……え?あの、銀ちゃん?」
驚いた私は少し離れて顔を上げる。
「ぶっ……ぐっ、だははははははッ!!!!」
振り向いて私を見下ろした銀ちゃんは、涙を流して笑っていた。
「えぇぇぇぇっ!?な、なんで!?なんで笑うの!?私なにもおかしなこと言ってないよ!!!」
「ひぃーッ!ちょ、おま、それ以上笑わせんなって、死ぬっ、笑い死ぬ、***のせーで笑いすぎて腹がぶち破れて死ぬぅぅぅぅ!!!!」
「ちょっと!なんでよっ!笑わないでよぉ!!ひ、人が必死で謝ってるんだから、真剣に聞いてよ馬鹿ッ!!」
笑いつづける銀ちゃんが私の肩をつかんだまま膝から崩れ落ちて、重みに耐えきれなかった私も一緒に玄関に座り込んだ。ポケットからスマホが落ちてカタンッという音がした。
「あ~~~…死ぬかと思った……***、お前さぁ、自分がとんでもねぇこと言ってんの分かってる?」
「とんでもないことなんて言ってないよ。ただ、その……あ、明日会えないのが寂しいって言っただけだよ。だから不機嫌になっちゃってごめんねって謝っただけだもん……」
いや違くて、と言った銀ちゃんがふと私の顔に手を伸ばした。ほほに片手を添えて、その手の指でそっと私の唇を撫でた。
「なぁ……***、お前さ、コレこの口紅な、塗ってる時だれのこと思ってんの?」
「え……ぎ、銀ちゃんのことだよ。だってコレ好きでしょ?」
「うん、すげぇ好き。じゃ、コレは?コレつける時だれのこと考えてんの?」
そう言った銀ちゃんの指が私の耳のイヤリングを揺らした。
「銀ちゃんのこと考えてるよ。銀ちゃんからもらったイヤリングだもん」
「じゃあさ、このキスマーク見るたび誰のこと思い出す?」
「っ……、銀ちゃんだよっ、な、なんでそんなこと聞くの」
「そんじゃこの待ち受けのさ、頭に花つけて寝てるオッサン見てどうよ?どう思うよ?」
「す、好きだなって思うよ、スマホ見るたびに銀ちゃんに会いたいって思うよ。なにさっきから、恥ずかしいことばっかり聞かないでよ」
恥ずかしくてうつむきがちに私が答えると、銀ちゃんは声もなく笑った。その顔が嬉しそうで、全然怒っていなくてホッとする。
「***さぁ、お前は全然気づいてねーだろーけど、こう見えて銀さん結構必死だからね。お前が俺のこと考える時間より、俺が***のこと考えてる時間の方が多いからね。どうせお前はイヤリングやらスマホやらを見る時に“銀ちゃんに会いたいなぁ”って思う程度だろうけど、こちとら四六時中だからね。会ってる時も会ってねぇ時もずっと、お前がどうしてっか考えてるから。そんで、それがしゃくだから、お前の周りのありとあらゆる物に俺を思い出すなんかを残そうと必死になってんだからね。そんな銀さんの頑張りも知らねぇで……***さ~ん?1日会えないくらい俺にとっちゃ大したことないって言った?そんなわけねーだろ。1日どころか1秒だってキツいんですけど~、キツすぎてもう死にそ~なんですけどぉ~、***のせーで死にそうなんですけどぉ~、こりゃ***のパンツ見ないと無理だなぁ、銀さんもう全然ダメ、頭パーンになる寸前でぇ~す」
「なっ………!!!」
機関銃のように喋る銀ちゃんに言われたことに驚いて、私は固まってしまう。返す言葉もなく、ただ口をぱくぱくとしている私を見て、銀ちゃんは「ぶっ」と吹き出すと、腕を伸ばしてきて私をぎゅっと抱き寄せた。
玄関で座り込んだ銀ちゃんの足の間に、ぺたりと座った私は胸にもたれかかるように抱きしめられた。そしたら「ああ、銀ちゃんと一緒にいる」と思えてホッとして、ようやく不機嫌が消えて幸せに包まれた。
「まぁでもアレだな。明日会えねーってだけで***があんなにふてくされたってことは、銀さんの地道な努力はそれなりに身になってるっつーことだな」
「あ、あの、銀ちゃんっ、私だって銀ちゃんのこといっぱい考えてるよ。毎日毎秒ずっと銀ちゃんのこと考えてるもん」
「あ~ハイハイ、分かった分かった。そーゆーのいいから、分かってっから。***が銀さんのこと好きなのはよぉっく分かってっから。でも俺の方が好きだから。ふてくされた顔も可愛いって思っちまうくらいヤバイとこまできてっから……っつーことで***さん、さっさとパンツ見せよっか?」
「はっ!!?ヤ、ヤダよっ!!!」
「えぇぇぇぇぇっ!!?なんでだよ!!さっきパンツ見てほしいって言ってたじゃねーかよ!!!さっさと見せろよ***のパンツ!!!銀さんがこんまま帰っちまってもいいのか!!!」
「パンツ見てほしいなんて言ってないよ!か、帰らないでよぉ、馬鹿ぁッ!!!!」
抱き合ったまま笑ったり怒ったり忙しい。銀ちゃんとの日々は笑って泣いて怒って、色々な気持ちが溢れて忙しい。でもこんなに幸せな日々を、こんなに愛おしい日々を私は絶対に手放したくない。
「銀ちゃん」と呼ぶ私を「***」と呼び返す銀ちゃんのことを、私は明日も明後日もその先もずっと好きで、きっと今日よりもっと好きになっていくと思う。
「銀ちゃん、ずっと一緒にいてね」
「あ~?……ったりめぇだろ、嫌がってもいるわ」
そう言った私と銀ちゃんは、触れるだけのキスする。きっと明日も明後日も何度もキスをする。だって私は毎日ずっと、銀ちゃんのことが大好きだから。
---------------------------------------------------
【日曜日の銀ちゃん】end
『まいにち♡銀ちゃん』(10000hit記念作品)end
『まいにち♡銀ちゃん』をお読み頂きありがとうございます(*´꒳`*)♡
月曜日から日曜日までの7日間の銀ちゃん、いかがでしたでしょうか。
読んだ方が気に入ってくれますようにと祈りながら、おもちはこの7つのお話を書きました。
銀ちゃんとの日々の幸せなひとコマを丁寧に書くことができて、とても楽しかったです。リクエスト頂きました読者の方々にも心よりお礼申し上げます。皆さんのリクエストおかげで、おもちひとりでは書けなかった銀ちゃんとの幸せな時間をお話にすることができました。
おもちのサイト「Kiss & Cry」は今年3月生まれの新人サイトで、まだまだ赤ちゃんです。皆さんに見守って頂いて、少しでも面白いお話を書いて、素敵な夢小説サイトとして精進してまいりたいと思います。今後ともどうぞ、よろしくお願い致します。
10000hit、ありがとうございました:.* ♡(°´˘`°)/ ♡ *.:
(2019-7-28 / おもち)
「***~、お前なんなの?言っとくけどアレだよ?急に機嫌悪くなられんのが、男はいちばん嫌いなんだからね?お前ら女は、言わなくても分かれって思ってるかもしんねぇけど、男っつーのは言わなきゃ分かんねぇ馬鹿な生きものなんだってぇ。言わなくても分かれっつーのはそりゃそっちのエゴだろ。だから説明しろよ説明をよ~!いくら銀さんが優秀な彼氏でも、急にふてくされた顔されたら無理だって。お手上げだってぇ。どうすんのこれ?どうしたのこの子?うんこかな?それとも便秘かな?って思うだろうが普通よぉぉぉ」
「う、うんこでも便秘でもないよ馬鹿っ!そんなふうに思うの銀ちゃんだけだよ!それに別にふてくされてなんかないしっ!機嫌悪くないしっ!!ぜ~んぜん、怒ってなんかないしっ!!!」
嘘だ。本当は私すごく怒っていて、機嫌が悪くて、ふてくされた顔をしてる。自分でも分かってる。こどもっぽくて嫌だと思ってる。でも、どうしてもこのイライラが無視できなくて「大人になろうよ***」という理性的な心の声すら聞き入れられない。
日曜日は1日ずっと銀ちゃんと一緒にいられるから幸せ。目覚めてすぐ「今日は銀ちゃんに会える」と思ったらそれだけで笑顔になれた。バイクで迎えに来た銀ちゃんは、私が銀ちゃんお気に入りのコーラルピンクの口紅をつけていることにすぐ気づいて「おー、いいじゃん」と言った。飛び跳ねるくらい嬉しかった。
映画館で映画がはじまる前から銀ちゃんは、キャラメルポップコーンを食べていた。「甘さが足りねぇ」と言って食べている銀ちゃんを見て笑ったら、「お前が笑っただけでゆれるんだなソレ」と言って、少し嬉しそうに私の耳でゆれるティアドロップのイヤリングを見た。涙が出そうなほど胸がときめいた。
暗い映画館でスクリーンをじっと見ていたら、急に銀ちゃんが身を乗り出してきて、キャラメル味のキスをしてきた。長い指で私の耳の下のキスマークを撫でて、「つけたの三日前だから薄くなってんな、上書きしていい」と銀ちゃんはささやいた。私が答える前に首にチクリとした痛みが走って、息ができないほどドキドキした。
不機嫌になったきっかけはご飯を食べた後、街を歩いている時に銀ちゃんが何気なく言った言葉だった。
「あ、オレ明日仕事入ってっから会えねぇけど、会社終わり気ぃ付けて帰れよ***」
それはとてもささいなことで、銀ちゃんは私も見ずに言った。でもそれを聞いた途端、私の胸はさっと冷たくなって思考は停止した。目の前が一瞬で真っ暗になり歩けなくなった。突然立ち止まった私のせいで繋いでいた手が離れた。
「おい、どーした」
振り向いた銀ちゃんの声でハッとして「ううん、なんでもない」と言ったけど、全然笑えなかった。それまで他愛のない話をしていた口もつぐんで、何も話せなくなってしまった。そしてその後、悲しい気持ちはイライラへと変化して、銀ちゃんに八つ当たりをしてしまった。
パフェを食べに入ったカフェで、ミニスカートの店員さんを見た銀ちゃんが「お、パンツ見えた」と言った。いつものことで普段は全然気にしないのに、私の口は勝手に「最低」と言っていた。吐き捨てるみたいな私の声を聞いて、銀ちゃんはきょとんとしていた。
「なぁなぁ、お前なに怒ってんだよ。銀さんなんもしてねぇじゃん。確かにパンツ見たのは悪かったかもしんねぇけど、目の前にパンツがあったら男なら誰だってパンツ見るだろ。そりゃ、いちばん見てぇのは***のパンツだよ?男はみんな好きな女のパンツが見てぇ生き物だし?でもお前ミニスカはかねぇじゃん。だからしょーがねぇからテキトーな女のテキトーなパンツで我慢してんだろーが」
「パンツパンツって言いすぎ銀ちゃん、最低。この歳でミニスカなんてはけないもん。ごめんねパンツも見せられないつまんない彼女で。そんなにパンツが見たいなら、いつでもパンツ見せてくれる女の子と付き合えば」
「はぁぁぁぁ?なに言ってんのお前、意味わかんねーんんだけど」
それにお前だってパンツパンツって言いすぎじゃね、と言った銀ちゃんは少し怒った顔をした。
せっかくの日曜日で銀ちゃんと一緒にいられる貴重な1日なのに、どうして私はこんなに可愛くないんだろう。スマホを見ると待ち受け画像の、ネモフィラの花畑で頭に花をつけたまま寝てる銀ちゃんの写真の上に、18:30と時刻が出た。
日曜日がもうすぐ終わってしまう。サ〇エさん症候群っていうんだっけ、とぼんやり思った。明日からまた一週間が始まるという憂鬱と、明日は銀ちゃんに会えないという強い悲しみが襲ってくる。悲しくてやるせなくてイライラする。笑えないどころか泣きたいくらい。こんなに可愛くない顔を銀ちゃんに見られているのも、すごく嫌なのにどうしようもない。
私の部屋に帰ってきて、いつもどおりソファに横になろうとした銀ちゃんに向かって、言ってはいけない言葉を言ってしまった。
「ねぇ銀ちゃん、明日お仕事なんでしょ?無理して私と一緒にいなくていいよ。早く帰ったら?」
私がそう言った途端、銀ちゃんの顔は明らかに不機嫌になった。
「あっそ、じゃ帰るわ。なんか知んねぇけど、今日のお前全然可愛くねぇし」
そのまま銀ちゃんは私の横をすり抜けて、玄関へと向かった。すれ違いざまに見上げた銀ちゃんの顔はすごく怒っていた。冷たい目はもう私のことなんて見たくなさそうに、まっすぐにドアを見ていた。
私が真っ青になって、やってしまったと思った時にはもう、ブーツをはいた銀ちゃんがドアノブに手をかけていて、今にも部屋から出て行こうとしていた。
「……っ!や、やだぁっ!銀ちゃん、帰っちゃやだぁっ!!!」
銀ちゃんに駆け寄って裸足のまま玄関に降りて、後ろから背中に抱き着いた。もう自分でも何をしてるのか全然分からなかった。
「ご、ごめんね銀ちゃんっ、ふてくされた顔して可愛くなくてごめんねっ……早く帰ってなんて思ってないの……本当はもっと一緒にいたいのっ……明日、会えないなら……なおさら今もっと近くにいたいのに……自分でも何がしたいのか分からなくて……」
ドアの開く音は聞こえなかった。銀ちゃんが何も言わないから私はすごく怖くて、背中に押し付けた顔を上げることもできなかった。
「銀ちゃん……私、弱いから、いちにちだって銀ちゃんに会えないのが嫌だよ。今日も明日もその先もずっと、銀ちゃんと一緒にいたいって思っちゃうよ……1日くらい会えないのは、銀ちゃんにとっては大したことないかもしれないけど、私はすごくツライよ……こんなに弱い彼女でごめんね銀ちゃん、八つ当たりしてパンツも見せない可愛げのない彼女でごめんね……もうふてくされたりしないから、パ、パンツも見せるから……帰らないでよぉ」
何も言わない銀ちゃんは、身動きひとつせずに立っていると思っていたけど、ふと気付くと私が腕を回した大きな背中は、細かく震えていた。
「……え?あの、銀ちゃん?」
驚いた私は少し離れて顔を上げる。
「ぶっ……ぐっ、だははははははッ!!!!」
振り向いて私を見下ろした銀ちゃんは、涙を流して笑っていた。
「えぇぇぇぇっ!?な、なんで!?なんで笑うの!?私なにもおかしなこと言ってないよ!!!」
「ひぃーッ!ちょ、おま、それ以上笑わせんなって、死ぬっ、笑い死ぬ、***のせーで笑いすぎて腹がぶち破れて死ぬぅぅぅぅ!!!!」
「ちょっと!なんでよっ!笑わないでよぉ!!ひ、人が必死で謝ってるんだから、真剣に聞いてよ馬鹿ッ!!」
笑いつづける銀ちゃんが私の肩をつかんだまま膝から崩れ落ちて、重みに耐えきれなかった私も一緒に玄関に座り込んだ。ポケットからスマホが落ちてカタンッという音がした。
「あ~~~…死ぬかと思った……***、お前さぁ、自分がとんでもねぇこと言ってんの分かってる?」
「とんでもないことなんて言ってないよ。ただ、その……あ、明日会えないのが寂しいって言っただけだよ。だから不機嫌になっちゃってごめんねって謝っただけだもん……」
いや違くて、と言った銀ちゃんがふと私の顔に手を伸ばした。ほほに片手を添えて、その手の指でそっと私の唇を撫でた。
「なぁ……***、お前さ、コレこの口紅な、塗ってる時だれのこと思ってんの?」
「え……ぎ、銀ちゃんのことだよ。だってコレ好きでしょ?」
「うん、すげぇ好き。じゃ、コレは?コレつける時だれのこと考えてんの?」
そう言った銀ちゃんの指が私の耳のイヤリングを揺らした。
「銀ちゃんのこと考えてるよ。銀ちゃんからもらったイヤリングだもん」
「じゃあさ、このキスマーク見るたび誰のこと思い出す?」
「っ……、銀ちゃんだよっ、な、なんでそんなこと聞くの」
「そんじゃこの待ち受けのさ、頭に花つけて寝てるオッサン見てどうよ?どう思うよ?」
「す、好きだなって思うよ、スマホ見るたびに銀ちゃんに会いたいって思うよ。なにさっきから、恥ずかしいことばっかり聞かないでよ」
恥ずかしくてうつむきがちに私が答えると、銀ちゃんは声もなく笑った。その顔が嬉しそうで、全然怒っていなくてホッとする。
「***さぁ、お前は全然気づいてねーだろーけど、こう見えて銀さん結構必死だからね。お前が俺のこと考える時間より、俺が***のこと考えてる時間の方が多いからね。どうせお前はイヤリングやらスマホやらを見る時に“銀ちゃんに会いたいなぁ”って思う程度だろうけど、こちとら四六時中だからね。会ってる時も会ってねぇ時もずっと、お前がどうしてっか考えてるから。そんで、それがしゃくだから、お前の周りのありとあらゆる物に俺を思い出すなんかを残そうと必死になってんだからね。そんな銀さんの頑張りも知らねぇで……***さ~ん?1日会えないくらい俺にとっちゃ大したことないって言った?そんなわけねーだろ。1日どころか1秒だってキツいんですけど~、キツすぎてもう死にそ~なんですけどぉ~、***のせーで死にそうなんですけどぉ~、こりゃ***のパンツ見ないと無理だなぁ、銀さんもう全然ダメ、頭パーンになる寸前でぇ~す」
「なっ………!!!」
機関銃のように喋る銀ちゃんに言われたことに驚いて、私は固まってしまう。返す言葉もなく、ただ口をぱくぱくとしている私を見て、銀ちゃんは「ぶっ」と吹き出すと、腕を伸ばしてきて私をぎゅっと抱き寄せた。
玄関で座り込んだ銀ちゃんの足の間に、ぺたりと座った私は胸にもたれかかるように抱きしめられた。そしたら「ああ、銀ちゃんと一緒にいる」と思えてホッとして、ようやく不機嫌が消えて幸せに包まれた。
「まぁでもアレだな。明日会えねーってだけで***があんなにふてくされたってことは、銀さんの地道な努力はそれなりに身になってるっつーことだな」
「あ、あの、銀ちゃんっ、私だって銀ちゃんのこといっぱい考えてるよ。毎日毎秒ずっと銀ちゃんのこと考えてるもん」
「あ~ハイハイ、分かった分かった。そーゆーのいいから、分かってっから。***が銀さんのこと好きなのはよぉっく分かってっから。でも俺の方が好きだから。ふてくされた顔も可愛いって思っちまうくらいヤバイとこまできてっから……っつーことで***さん、さっさとパンツ見せよっか?」
「はっ!!?ヤ、ヤダよっ!!!」
「えぇぇぇぇぇっ!!?なんでだよ!!さっきパンツ見てほしいって言ってたじゃねーかよ!!!さっさと見せろよ***のパンツ!!!銀さんがこんまま帰っちまってもいいのか!!!」
「パンツ見てほしいなんて言ってないよ!か、帰らないでよぉ、馬鹿ぁッ!!!!」
抱き合ったまま笑ったり怒ったり忙しい。銀ちゃんとの日々は笑って泣いて怒って、色々な気持ちが溢れて忙しい。でもこんなに幸せな日々を、こんなに愛おしい日々を私は絶対に手放したくない。
「銀ちゃん」と呼ぶ私を「***」と呼び返す銀ちゃんのことを、私は明日も明後日もその先もずっと好きで、きっと今日よりもっと好きになっていくと思う。
「銀ちゃん、ずっと一緒にいてね」
「あ~?……ったりめぇだろ、嫌がってもいるわ」
そう言った私と銀ちゃんは、触れるだけのキスする。きっと明日も明後日も何度もキスをする。だって私は毎日ずっと、銀ちゃんのことが大好きだから。
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【日曜日の銀ちゃん】end
『まいにち♡銀ちゃん』(10000hit記念作品)end
『まいにち♡銀ちゃん』をお読み頂きありがとうございます(*´꒳`*)♡
月曜日から日曜日までの7日間の銀ちゃん、いかがでしたでしょうか。
読んだ方が気に入ってくれますようにと祈りながら、おもちはこの7つのお話を書きました。
銀ちゃんとの日々の幸せなひとコマを丁寧に書くことができて、とても楽しかったです。リクエスト頂きました読者の方々にも心よりお礼申し上げます。皆さんのリクエストおかげで、おもちひとりでは書けなかった銀ちゃんとの幸せな時間をお話にすることができました。
おもちのサイト「Kiss & Cry」は今年3月生まれの新人サイトで、まだまだ赤ちゃんです。皆さんに見守って頂いて、少しでも面白いお話を書いて、素敵な夢小説サイトとして精進してまいりたいと思います。今後ともどうぞ、よろしくお願い致します。
10000hit、ありがとうございました:.* ♡(°´˘`°)/ ♡ *.:
(2019-7-28 / おもち)
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