銀ちゃんの愛する女の子
おいしい牛乳(恋人)
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【(31)嘘と本当】
———あ~、どこ行くかなぁ~、やっぱラブホかどーせなら。こんまま無理やり連れ込んで、なし崩しにコトに及んだとしても、今なら***は文句言えねぇだろうし……
最低なことを考えながら、銀時はスナックお登勢の前の通りを見回した。いちばん近いラブホテルはどこかと悩みながら、***の手首を強くにぎる。先日のように逃してたまるかと思うせいで、想像以上に力が入った。
背後から「ぃ、痛いッ」と、か細い悲鳴がして、ふり返るとガタガタ震える***と視線がかち合った。しかし、銀時が何か言う前に、***はパッと顔をそらしてうつむいた。
『ずっと銀ちゃんと一緒にいられるなら、私、どんなにツラくても耐えます』
ついさっきの***の声が耳によみがえる。強い意志のこもった声は、透きとおるほどはっきりと銀時の耳に届いた。何もかも聞いてモヤモヤは晴れていた。あの日、***が青ざめた理由も、怒りも疑いもせず空元気だったワケも、すべて分かって気分がいい。自己犠牲的といえるほど純粋な理由は、あまりにも***らしかった。
「ぎ、銀ちゃん、あのねッ、その、さっきお登勢さんと話してたことは何でもないから……わ、忘れてください!」
「はぁ?なに馬鹿なこと言ってんだよ。んなことできるわけねーだろ。どこが何でもねーんだよ。ガキみてぇにびゃーびゃー泣いて鼻水垂らしてたくせに。強がったって意味ねぇし。銀さんぜぇ~んぶ聞いちまったしぃ。いいかげん意地張んのやめろよ***~」
「っ……意地なんて張ってない!ほんとに何でもないです。お登勢さんが優しいから気がゆるんで、言いすぎちゃっただけで、その、ぁ、あんなの全部……ぜんぶ嘘ですから!」
「はぁぁ!?」
顔をふせたまま***が言った言葉に、プチッと堪忍袋の緒が切れた。この女、この期に及んでまだ言うか。むやみに俺を不安にさせといて、ババァにはあっさり胸の内を明かしやがって。
不機嫌に「オイ、こっち向けよ」と言うと、小さな肩がびくっと跳ねた。しかし***は首を振って、かたくなに銀時から目をそらす。長い髪の隙間から、呼吸に合わせて上下する鎖骨と華奢な首が見えた。その首をつかんで無理やりこちらを向かせたら、充血して潤んだ瞳のなかで、黒目がユラユラと泳いでいた。少し開いた薄紅色の唇は、嗚咽をもらす寸前のように震える。
青ざめた***のその顔は、あの日カフェの外にいた時と同じだった。
「やだッ、見ないでください!」
「っんでだよ!総一郎くんには見せたくせに!」
「え……、そ、総一郎くんって……?」
艶やかな顔で苦悶する***を、沖田に見られたことが腹立たしい。泣きだしそうな表情が、あのサディストをどれほど喜ばせたか、いともたやすく想像できた。
困惑した***がサッと髪を耳に掛ける。その仕草の色っぽさを自分以外の男が知っているのは不愉快極まりなかった。顔にビキビキと血管が浮き、奥歯をギリギリと噛んだ銀時を見て、***は不安げな声で「ぎ、銀ちゃん、怒ってますか?」と聞いた。怒っていないわけがなかった。
「***さぁ……んな真っ青んなってガタガタ震えて、なにがそんなに怖ぇんだよ?彼女失格とか足手まといとか、意味わかんねぇんだけど……なにそれ、んだよそれぇ?俺のことなんだと思ってんの?浮気疑われたくらいで、テメェの女を捨てるような薄情な男だと思ってんの?めっさ心外なんですけど、ごっさ傷つくんですけどぉぉぉ!」
「ちがうよ、そうじゃな、んぅッ!ゃ、やめてッ!」
反論する***の口を唇で塞ごうとした。しかし唇が触れたとたん、***は首を振って顔を背ける。震える手で口元を隠し、銀時をさえぎると「キ、キスはしたくない!」と言った。それを聞いた瞬間、脳天を殴られたかと思うほど、銀時はショックだった。
———は?したくない?今、キスしたくないっつった?オイオイオイオイ冗談だろ***、らしくねぇこと言うなって。いつもほんのちょっとしただけで大喜びして、ガキみてぇにすがりついてくるくせに。大好きな銀さんがしてやってんだぞ?避けてんじゃねーよコノヤロォォォ~~~!!!
焦りに駆られて銀時はますます***に迫った。細い腰を引き寄せて無理やり口づけようとしたが、***はイヤイヤと首を振り続けた。イラついた声で「なんなんだよ」とつぶやくと、***はギクッと身体を強張らせた。つかまれていない方の手で、銀時の肩を必死に押しとどめながら、蚊の鳴くような声で言った。
「だ、だめなの銀ちゃん……私、いまキスしちゃったら、こらえられなくなる……きっと全部、吐き出しちゃう。このドロドロした気持ちを、銀ちゃんに知られるのがすごく怖いの。こんなに醜い私を、銀ちゃんにだけは見られたくないっ……!」
瞳いっぱいに涙をためて、***は銀時を見つめた。溢れる感情を必死に抑えて我慢する顔は、ますます色っぽい。苦しそうに漏れる吐息はまるで情事のさなかのようだった。その顔を見て、その声を聞いた瞬間、銀時の頭のなかで「プチンッ」と何かが切れる音がした。
切れたのは理性の糸だった。
「クソッ……めんどくせーなッ!!」
「きゃッ!!ぎ、銀ちゃん、どこにっ……!?」
ホテルなんて流暢なことは言ってられない。いきなり***の腕を引いた銀時が、万事屋の階段を駆けのぼる。新八と神楽がいるから部屋には入れない。往来には夜でも人通りがある。
階段の折り返しを曲がった踊り場で、銀時は足を止めた。***の両肩をつかむと、通りからは見えない壁に抑えつける。強く押し付けられた***の背中から、帯がズリズリとこすれる音がした。
「わわッ、ぎんちゃっ、んんぅっ……!?」
呆気に取られた***に覆いかぶさり、間髪入れずに口づける。顔を背ける暇も与えなかった。きゅっと固く結ばれた***の唇を、銀時の尖った舌先がたやすく開く。
ふぁっ、と鳴いた***の瞳を見つめて、オレンジジュースの味の残る口の中を舐めまわす。苦しそうに細められた瞳が銀時を見つめ返した。
「ふっ、んっ……は、んぅうッ……!」
ずずっと一気に深く入れた舌で上あごを舐める。のどの奥で縮こまる小さな舌を引きずり出して何度も絡めた。***は両手で銀時の肩を押すがびくともしない。
混ざり合った互いの唾液から酒の味がするようになった頃、***の手から力が抜けた。征服した喜びに小さく笑った銀時は、入れた時と同じように勢いよく舌を引き抜いた。はぁっ、と息を吐いた***は顔を真っ赤にして、潤んだ瞳はとろんとしていた。
「はは、いい気味だな***、すっかりとろけちまって。キスしたくねぇとか言って、いざしたらこのザマかよ。いつまでも嘘ついて我慢してねーでさっさと全部吐き出せよ。ドロドロだろーがヘドロだろーが、俺は別に構わねぇから」
「~~~~~っぎ、銀ちゃ、でもっ、」
唾液まみれで光る唇を噛みしめて、なおも***は言いよどんだ。こうなったら意地でも言わせてやる。絶ッ対に全部吐き出させて、本音を引きずり出してやる。
そう決意すると、普段の死んだ魚のような目からは想像もできないほど眼光鋭く、銀時は***をギロリと睨みつけた。
「***、お前、俺がこーゆーことしてもいいのかよ」
「え……?こうゆうことって……」
「今したみてぇなキスを、俺が他の女にしてもいいのかって聞いてんだよ。奥まで舌突っ込んで、どっろどろになるまで舐めまわすよーなキスしても、***は気にしないでいられんの?」
「っっ……!!」
息を飲んだ***が怯えた目をした。切なげにかすれた声が小さく「それは」とか「だけど」とつぶやいたが、銀時は聞こえないフリをした。
「っんだよ、さっさと答えろよ。なぁ、いーの?キスどころかもっとすげぇこととか、***が知らねーようなエロいことを、よその女相手に俺がしても、お前は平気なのかって聞いてんだよ!!」
「ぎ、銀ちゃ、———ッきゃぁあ!!」
薄い肩をつかむ手に力を入れて、上から押すと***の膝はカクンッと折れた。よろけた小さな身体を階段に座らせて、向き合った銀時はひとつ下の段に膝をつく。ひざ頭で***の着物の裾を開いて、脚の間にぐいぐいと割り込むと、布がめくれて白い太ももが露わになった。
「ゃ、やめ、銀ちゃん、脚がっ……ぅわわわッ!」
襟の合わせ目をつかんで、思いきり引っ張る。帯から引っこ抜かれた左襟がたゆんで、なかの襦袢が丸見えになった。迷いなく差しこんだ銀時の右手は、薄い肌着のなかでブラを横にずらし、手のひら全体で乳房をぎゅうっと包んだ。
「ひゃぁあッ……な、ぎ、銀ちゃっ、こ、こんなとこでやだってば、っんぁ!」
「んな顔で言っても説得力ねぇよ***~。ホラ気持ちよくなってねーでちゃんと考えろって。こーやって俺が他の女のおっぱい揉んでても、お前笑っていられんの?」
「~~~~ッそ、なっ、なんで……ぎんちゃっ、ぁあんっ!ふっ、ん、やぁあッ———!」
胸を揉みしだく手に押されて、***の左肩から着物とブラジャーのストラップがすべり落ちた。ふるりとこぼれ落ちた左胸が外気に触れて鳥肌立つ。着物の上から右胸をむにむにと揉む。露わになった乳房は、わざとその先端だけに手のひらを押し当てて、円を描くようにくるくると撫でた。
「ひゃ、ぁぁっん……っっ……!」
「もう乳首勃ってる。っとに***ってやらしいよね~、こんな誰が来るかも分かんねぇ場所で、おっぱい揉まれて感じちゃってんだもんなぁ~」
「んぁあッ……ってぇ銀ちゃんが、んぅあッ!こ、こんなの、ゃだぁ、ぁあんッ!!」
胸の蕾からの刺激に震える***が、力の入らない手で銀時の手首をつかんで離そうとする。だが逆に、銀時の大きな手が***の両手首をつかんで、後ろの段差に押さえつけた。自然と背中が反って裸の乳房が、銀時の目の前に突き出される。硬くなって色づいたその先端に、迷いなく銀時はむしゃぶりついた。
「ひッぁあんッ!ゃあっ、ぎ、んちゃぁ……だめぇ!」
「嘘つけ***、ビンビンになった乳首噛まれんの好きなくせに。オラ、ちゃんと感じろよ~、んで想像してみ?俺が他の女の胸に噛みついてたらって」
「っ……~~~ッ!うっ——、うぅ゙、んぁぁあッ!」
薄いピンクの突起に舌を添えて強く吸い付くと、***は嗚咽まじりに喘いだ。涙でいっぱいの瞳は、信じられないものを見るような目で銀時を見つめる。ちゅううっと大きな音を立てて吸った後、軽く歯を立ててコリコリと甘噛みすると、***の背中が弓なりにのけ反った。
「ぁッん、やぁ、銀ちゃ、こ、声出ちゃうからっ……も、もぉ、やめてよぉっ!」
「あ゙ぁ゙~?…ったく、しょーがねぇな……ん、これ噛んどけ」
そう言って銀時は、***の肩からずり落ちた着物の袖を持ち上げて、震える口に押し込んだ。サラリとした布が***の口の奥まで入ってくる。
「ぅむっ!!んんぅ……ふ、ぅんぁッ!!?」
声どころから息まで出来ない***が、目を白黒とさせた。しかし、そんなことにもお構いなしで、銀時はするすると手を滑らせ、***の身体をまさぐりはじめる。
石のように硬くなった***の、見開かれた瞳には恐怖さえ浮かんでいるように見えた———
———う、嘘でしょ、銀ちゃん!ここ外だよ?こんな場所でキスなんて、胸を触るなんてダメなのにっ……そんな手つきで撫でないで!お願いだから、もうやめてよぉ……!!
その祈りも空しく、大きな手は***の身体を撫でまわし続けた。服の上から胸の谷間と下腹部に触れた手が、あられもなく開いた裾のなかに入ってくる。
必死に膝を閉じようとしたが、割り込んできた銀時の身体に阻まれた。その膝を折ってグイッと開脚させられたら、ますます恥ずかしい体勢になる。
「えっろい***のことだから、さんざん胸揉まれたせーで、ここももう湿ってんじゃねーの?」
「ッ………!!ふっ、んんっぅ———、」
口に入れられた袖を噛みながら、イヤイヤと首を振ったが、銀時の手は止まらない。襦袢の中に侵入してショーツに辿りつき、その指先はあっさりとクロッチ部分を探り当てた。秘部に当たった布がひやりと冷たくて、そこが濡れていることを確信した***は、あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうだった。
「ぶはッ……!んだよコレ、湿ってるどころかびっしょびしょじゃねぇか。オイオイ***~、おっぱい触られてそんな気持ちよかった?乳首噛まれて感じちゃった?こんな淫乱な身体になっちまってお前どーすんの?俺を他の女に譲るなんてもう出来ねーだろ?***の胸もこのびしょ濡れのトコも全部、こんなに敏感しちまったの俺だもんなぁ。ぜってぇムリだって、俺無しじゃお前生きてけねぇってぇ。なぁ言えよムリってぇぇ」
「うっ、うぅっ……ふぅ、んッ、ひ、んゃッ……ゔぅぅ~~~っ!!」
骨ばった指が下着の上から、濡れそぼったそこをくにゅくにゅとこすり上げた。割れ目にそって上下にさすられて、お腹の奥がじわじわと熱くなる。涙をぽたぽたと流しながら、こもった声で喘ぐ***を、銀時は楽しそうに眺めていた。
「もう諦めろよ、***」
「んっ、ッ———!!!」
太い親指がショーツをぐいっと横にずらす。驚いた***がその手を止めようとしても振り払われて、骨ばった指が直接、秘所に触れた。くちゅくちゅといやらしい音と一緒に、指先が何度も***の濡れたところを往復する。上の方の敏感な突起は軽くツンツンとされただけで、ぷっくりと膨らんだ。
「うっわ、えっろぉぉぉ~……ぱっかりM字開脚して、銀さんにやらしいとこ見せつけてんの?すげぇ濡れてるし、もーこのまま、指入れていい」
「んんぅうッ……!ふ、ぅん゙んっ———!!」
ごつごつとした中指の先端が、蜜口につぷんと挿しこまれる。ぴりっとした痛みが走って、***は歯を食いしばり、ぎゅっと目をつむった。
***、力抜け、という声と同時に大きな手が頭に伸びてくる。後頭部に手をそえて、銀時はゆっくりと***の頭を胸に抱き寄せた。
「大丈夫だから、***、力抜いてみ……どーやってやるか銀さん教えただろ?ホラはやく」
「っ、ふぅ、んっ……~~~~っっ、」
ぽんぽんと後ろ頭を撫でられて、***は銀時のシャツの胸元をぎゅっとつかんだ。息を吐けばいいんだ。そう思い出して必死に鼻から息を吐く。
「ん、そうそう、いい子」
フゥーッ、と一生懸命に息を吐いて力を抜いたら、耳元で優しい声がした。それと同時に蜜壺のなかの指が、ちゅぷちゅぷと奥へ進んでくる。和らいだ痛みの向こうから、膝がガクガク震えるほどの快感が襲ってきた。
「はっ、んんッ、ぅんッ……っ、ふ、ぅ、ん゙ぁッ!!」
「なぁ、気持ちいい?***んナカすげぇひくひくいってる。あんま入れたことねーのに、お前のココ、もう俺の指の形覚えちまってんな」
「んぅ、~~~~っ!!」
上機嫌に言われた言葉が恥ずかしくて、頭から湯気が出そうなほど顔が熱くなる。指は少しずつ速度を上げて、出たり入ったりする。その度に***の恥ずかしい所から愛液が溢れて、お尻の下の着物を濡らした。
「こことか、指曲げるとちょうど当たるし」
「んくぅッ!?んっっ、んぅぅう……っ、」
入り口近くでクイッと折られた銀時の指が、ざらついた上の所を押しあげた。ぐにゅっとめり込むほど強くそこを刺激されたら、視界がチカチカした。強すぎる快感が下腹部を貫いて脳天まで走り、つま先まできゅぅぅっとそり返る。
「っくぅぅんッ!……ん゙ぅぁ、———ッ!!」
———ダメッ、もう我慢できないっ……!!
自分の中が太い指を締めつけるのを感じながら、駆け巡る感覚に全身をゆだねようとした瞬間、指の動きが急に止まった。与えられ続けていた刺激がすっと薄れて、肩すかしを食らった***は「え」という顔をした。おずおずと顔を上げると、ニヤついた銀時が意地悪な声を出した。
「***、お前、今イキそうだったろ?イカせてもらえると思ってんの?まだだよ」
「っ……!?」
「俺さっきから聞いてんだけど。こーゆーことぜんぶ***じゃなくて他の女にしてたらどーなんだって。俺の指で自分以外の女が気持ちよくなってんの想像しても、お前へーきなのかよ?」
「~~~~~ッ、ふぅ、うっ、ぅんんッ……んくッ!」
イカせて欲しかったらちゃんと答えろ、と言って銀時は、***を見つめたまま再び指を動かしはじめた。
さっきよりもっと速く、じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てて律動する。蜜口の上の膨らんだ突起まで親指の腹で撫でられたら、下腹部の奥に焦げつくような感覚がどんどん溜まっていく。
「んぅっ~~~~!ふっ、くぅ……ひッ、ひぃんぁ、ひっ、んぅぁッ……!!」
もう楽になりたい。身体の奥がうずいてしかたがなくて、破裂しそうな熱を今すぐ吐き出したい。涙でぼやける視界で銀時を見上げ、出せない声で必死に、銀ちゃんと呼んだ。
「んー、なに、あ、言える?もう言えそう?こんなこと他のヤツにしたら嫌だって、ちゃんと言えんの?銀ちゃんが気持ちよくすんのは***だけにしてって、さっさと言えよコノヤロォ~……」
にじんだ視界の銀時は焦っているような顔をしていた。意地悪な声がやけに切実で、***は何度もこくこくと頷いた。指の動きは止めずに、銀時はもう一方の手で***の口から袖を引き抜いた。唾液でぐっしょりと濡れた布が、ぼたっと重たい音を立てて落ちた。
ヨダレを垂らすだらしない顔を見られたくない。でも解放されたい気持ちのほうが上回って、***は銀時の胸元にぎゅっとすがりつくと、赤い瞳を見つめて震える声を漏らした。
「はぁッ……あっ、いゃ、やだぁあ……銀ちゃぁッ、ほ、ほかの人に、こっなこと、しないで、~~~~っき、きもちいぃ、の、ぁたしだけっ……、やぁッ、ぎんちゃ、ぁぁあ、~~~~っっ!!」
「ハッ、上出来」
「んむぅうっ!!?」
なんとか言い切ると銀時に深く口付けられた。
唇をすべて覆われて、息も声も奪われてしまう。蜜壺のなかの指がぐんっと奥まで入ってくる。狭いところを押し広げて行ったり来たりする指に、身体中の感覚が支配された。切ないほど熱い気持ちよさに全身がぶるぶると痙攣する。
筋張った指の第二関節が曲がり、手前の方のくぼみにくにゅりと触れる。びくんっと***が跳ねているうちに、一気に深く入ってきた指が、うずいて仕方がない奥まったところを強く押す。くり返される抜き差しに追い詰められて、ついに***は限界に達した。
「っっ……~~~~ふっ、ぅ゙っ、ひぃっく、ん゙ん゙ん゙ぅうううぁっ、————!!!」
絶頂を迎えた瞬間の悲鳴のような喘ぎ声は、銀時に全て飲みこまれた。びくびくと収縮した内壁が、長い指の根元から先までをしぼり上げている。あられもなく開いた脚と腰を震わせて果てた***が、カクンッと脱力すると同時に唇が解放された。濡れそぼったそこから指がゆっくりと引き抜かれていく。
「はぁ、あ、んっ……ふぁッ、ぁあっ…!」
「ははッ、指ちぎれそーなんですけど……***んナカは正直に“銀ちゃん行かないでぇ”ってきゅうきゅう締めつけてくるくせに、お前なかなか言わねぇんだもんなぁ~~~…っとに、どんだけ待たせりゃ気がすむんだっつーのぉぉぉ!」
ずるりと引き抜かれた指は愛液まみれだ。それを銀時が躊躇なく口に含む。羞恥心に真っ赤な顔を背けようとすると「ちゃんと見ろ」と止められた。とろりとした蜜液のまとわりつく指を、ゆっくりと舐める銀時の瞳は、ひどく熱を帯びている。
———イヤだよ、銀ちゃん……そんな目で他の人を見ないでよ。私、考えただけで胸が苦しくて、死んじゃいそうだよ……
他の誰にも銀時を渡したくない。例えそれが役に立つとしても、とても我慢できそうにない。それだけは言うまいと耐えてきたのに、身体をぐずぐずに溶かされたら心まで弱くなった。
***を見つめる熱い視線が、耳元でささやく甘い声が、壊れやすいものを扱うように触れてくれる手が、他の誰かのものになるなんて、想像するだけで———
「き、気が狂いそう……銀ちゃん、私、嫉妬と不安と、銀ちゃんのことをひとりじめしたい気持ちでいっぱいで、頭がおかしくなっちゃいそうだったの、もうずっと前から……」
「っ……!!」
弱々しい涙声でそう言うと、銀時は一瞬驚いたような顔をして息を飲んだ。「んだよ」というつぶやきは不機嫌で少し気まずそうだった。
こんな目にあって気まずいのはこっちだ。だらしない顔をさらして、秘密を引きずりだされて、恥ずかしさと後ろめたさに逃げ出したい。なのに果てたばかりで全く力が入らない。
ぐったりとした身体もたれたら、銀時の手が動いて、ずり落ちた袖を戻して襟を合わせた。乱れた裾を閉じて***の脚を隠す。おでこを肩に預けるように***は引き寄せられて、背中に回った腕でぎゅうっと強く抱きしめられた。
「っだよぉ、今さらかよぉ、遅ぇんだよ***~……耳にたこができそうなくれぇ銀ちゃん大好きって言って、いつでもひっついてくるくせに、ようやく気が狂うなんて遅すぎるだろ。ったくよ~、こちとらお前のせーでとっくの昔に頭がイかれてるっつーの。大好きな彼氏が女といたら、すっとんで来て“銀ちゃんの馬鹿!”っていつもみたいに怒鳴りちらしゃーいいだろーが。そんなんで俺がお前を嫌いになったりするわけねーだろ馬鹿」
「っっ……そ、そんなのしたくたって出来ないよ。だって銀ちゃんは、」
「万事屋だから?んなこと関係ねーよ。いいか***、耳の穴かっぽじってよーく聞け」
そう言って銀時は***のほほを両手で強くつかんだ。顔を寄せて視線を合わせた赤い瞳は真剣だったが、その声はいつもよりうんと優しかった。
「確かに困ってるヤツ助けんのが万事屋だけど、俺ァ***が嫌がるよーなことはしたくねぇよ。お前がそれを望んでなくてもそんなこた関係ない。テメェの女を悲しませてまで仕事するほど勤勉でも真面目でもねーから。なぁ、ものっそい都合のいいこと言うけど、俺ァあん時***に殴られたかったわ。カフェで女と居たのに、お前がヘラヘラ笑うからめっさ不安だったんですけど。俺ってコイツの彼氏だよね?ってごっさ心配になったんですけどぉ~。こう見えて銀さんハートはガラスのハートだからね?嘘つかれると結構凹むからね?そこんとこちゃんと分かれよ!俺の彼女ならよぉぉ~~!!」
「っっ~~~~、そ、そんなっ、嘘なんて、」
本音を隠していただけで、嘘をついたつもりはなかった。それが銀時を不安にさせるなんて微塵も思わなかったから。言葉を失って口をぱくぱくとさせていたら、銀時が切なそうに目を細めて口を開いた。
「ババァと話してんの聞いて思ったけど、お前自分のことを俺の彼女だって言う時、いっつもあんな自信なさそーなの? ‟私は銀ちゃんの、か、彼女”ってさぁ。俺の彼女ってことにまだ慣れてねーの?んじゃ、俺が彼氏っつーことにも馴染んでねぇってこと?いい加減にしろって***~~……俺はキスもやらしいことも全部、お前にしかしたくねぇんだよ、すっげぇ前からず~っとそうなんだっつーの……だから***も、俺のこと彼氏だってちゃんと自信持てよコノヤロォォ~……」
切ない表情と言葉に、***の胸は痛いほど締め付けられた。あぁもう無理だ、と思った時にはすでに嗚咽が漏れていた。噛みしめた唇がひどく震える。大きな涙粒がほほを伝って口に入りしょっぱい。あたたかい両手で顔を包まれたまま、***はキッと睨むように目を細めた。
「ぎ、んちゃっ、の、ばかぁぁぁ~~~!!!」
小さなこぶしを振り上げて銀時の胸をトンッと叩く。一度叩いたら止まらなくなって、筋肉質な胸板を両手でポカポカと殴り続ける。痛がりもせず何も言わない銀時を見つめて、号泣する***の唇からは勝手に声が飛び出していった。
「あっ、あのカフェに銀ちゃんが居たの、すごく嫌だった!一緒に行こうって約束したのに、他の人と行くなんて最低と思った!ものすごく悲しかった!ガラスの窓割って銀ちゃんを殴りたいくらい怒ってました!そ、それに……それに差し入れのプリン食べて、おいしいって言わないで欲しかった!私が……彼女の私が作ったプリンの方が、銀ちゃんはおいしいもん……他の人より私の方が銀ちゃんのことよく分かってます!だから、よその女の人のことなんて、もう考えないでよ!銀ちゃんは私のだもん、私の彼氏だもん!!私がいちばん銀ちゃんのこと好きだもんッ!!!」
うわぁぁぁん、と声を上げた***を、銀時はゲラゲラと笑いながら強く抱き寄せた。頭上から「なにお前、そんなこと気にしてたのかよ、馬鹿じゃねーの」という心底嬉しそうな声が降ってきた。
寄せられた胸に顔をうずめたら、ドクドクという力強い鼓動が聞こえる。深く息を吸うと銀時の匂いがする。抱きしめる腕の温かさと力強さに、心のつかえが取れて涙がますます溢れだした。
「オイィィィ***~~!そーゆーのが嫌だったんなら早く言えっつーのぉぉぉ~~!銀さんはお前の彼氏だから、ちゃんと受けとめっから安心しろよ。ドロドロだろーとヘドロだろーとウンコだろーと、テメェの彼女の醜いトコも汚ぇトコも全部まるごと引き受けんのが彼氏だろーが、なぁ、分かってますかぁぁ!?」
声もなく何度もうなずいた***の頭を、大きな手がやさしく撫でた。長い髪の上をサラサラと降りていった手は、嗚咽と一緒に震える***の背中を、ぽんぽんと叩く。辛抱強く銀時は***が泣き止むまでそれをくり返してくれた。
ようやく涙が止まった頃、髪を撫でていた銀時の手の動きが変わった。***の首や肩に垂れる黒髪をその長い指がすくって、ひと房にまとめた。器用にくるくると束ねて、うなじの少し上のあたりにお団子を作ると、懐から出した何かをさして留めた。
「えっ……ぁ、あの銀ちゃん、これは……?」
少し身体を離した***が後ろ手で髪に触れると、そこには沖田の前に落としてきてしまった簪があった。ウサギの飾りに指先が触れて、チリンッと鈴が鳴る。
「沖田くんがお前に渡しとけってさぁ~~~、なーなー***さぁ、あん時あのドS王子になんかされたぁ?王子みてーな顔してアレ実は魔王みてぇな男だからね?チワワだと思って油断してっとケルベロスだったみてーなことになるからね?弟みてぇに***になついてんの、銀さん結構気にしてっからねぇぇ!?」
「えっ、そ、総悟くん?総悟くんには何もされてないよ?あの日はただ着物を選ぶのを手伝ってもらって、それで……」
言いよどんだ***を「それで何だよ、何したんだよ、何されたんだよ」と銀時は疑うような目で見た。
えっと、と悩んだ***は少し恥じらいながら、首を傾げて口を開いた。
「総悟くんには、銀ちゃんが何のパフェ食べてたか教えてもらっただけです。一緒に行こうねって約束した時に、銀ちゃんレインボータワーパフェかメガスペシャルチョコサンデー食べるって言ってたでしょう?その、もし他の人とそれを食べちゃってたら、すごくヤダなぁって思って、それで総悟くんに教えてもらったの……あ、でも、イチゴパフェでしたよね?それなら良かったって私、自分に言い聞かせて……って、うわぁぁああッ!!な、何ですか急に!?」
「何ってキスだよ、***がカワイイことばっか言うから、したくなった」
「っっ……!!!」
喋っている途中でいきなり顔が近づいてきて、驚いた***は目を見開いた。ぼわぁっとほっぺたを赤くして、迫ってきた堅い胸を手で抑えて拒んだら、銀時は不機嫌そうに唇を尖らせた。ぐいぐいと顔を寄せられて鼻先同士がちょんっと当たる。わぁっ、と叫んだ***がますます赤くなると、ニヤついた声で銀時は言った。
「オイ、***、キスしたいって言えよ。イチゴみてぇに真っ赤な顔して、ほんとはキスしたくてたまんねぇんだろ?」
「やっ……あ、ちょっ、でもッ……」
ここは外だから。人が来るかもしれないから。と色々な言いわけが浮かぶのに言葉にできない。見つめ合ってくっつきそうでくっつかない唇から甘い吐息を感じたら、どうしようもなく触れたくなってしまう。
あわあわと困り果てた***が、片手で髪を耳に掛けようとすると、銀時の手がそれを上から押さえつけた。耳元を手でつかんで上を向かされて、早く言えよ***、と急かされる。
こんなセリフはあまり言わないから、死にそうなほど恥ずかしい。首まで赤く染まった***は、それでもじっと銀時を見上げて、かすれた弱々しい声でささやいた。
「し、したい、キスしたい……私、銀ちゃんとキスしたいです……その、できればいっぱいした、んぅっ!」
泣きそうなほど震える声が途切れる。かさついた唇と涙に濡れた唇がぴたりと触れ合った瞬間、***の細い腕がするりと銀時の首に巻きついた。
いつか教えられた通りに小さく唇を開いたら、銀時は声もなく笑った。そして***がしてほしいと願う通りに、奥の方まで舌をさしこんで、うん優しく触れてくれた。
顔の角度を変えるたびに深まっていくキスに、***の頭の奥は騒がしいほどビリビリとしびれた。
———ねぇ、銀ちゃん、私もうとっくに気が狂ってたのかもしれない……彼氏彼女とか付き合うとか何も知らなかったのに、キスもその先も全部、銀ちゃんが教えてくれるから、私どんどん欲張りになっちゃうの……きっと私もう銀ちゃんのこと離せない。ねぇ、それでもいいの?こんな私でいいの?いつか銀ちゃんを困らせちゃうけど、それでも私が彼女でいいの……?
胸騒ぎを消したくて、***は細い指を銀髪に絡めた。どんどん口づけは激しくなる。腫れそうなほど唇を舐めたり噛んだりされて、舌を絡められているうちに、思考回路が麻痺して***は何も考えられなくなった。
「ふぁ、っぎ、ちゃ、んぅ……」
「***ッ、は、っ……」
呼び合う名前すら飲み込んで、濃密なキスはなかなか終わらない。ただ送り込まれる銀時の吐息が、触れ合う唇や舌の温度が嬉しい。甘苦しいキスが狂おしいほど愛しくて、***は泣きたくなるくらい幸せだった。
夕飯が出来たと呼びに出てきた神楽と新八に、見つかってしまうのは数分後。
狂ったように大騒ぎする子どもたちに、大人ふたりがそろって怒られるのは、また別のお話。
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【(31)嘘と本当】
‟彼と彼女の大狂騒 下篇” end
おとなしくなんてなれない
☆指定年齢に満たない方はご遠慮ください
☆性的描写を含むため、苦手な方はお戻りください
【(31)嘘と本当】
———あ~、どこ行くかなぁ~、やっぱラブホかどーせなら。こんまま無理やり連れ込んで、なし崩しにコトに及んだとしても、今なら***は文句言えねぇだろうし……
最低なことを考えながら、銀時はスナックお登勢の前の通りを見回した。いちばん近いラブホテルはどこかと悩みながら、***の手首を強くにぎる。先日のように逃してたまるかと思うせいで、想像以上に力が入った。
背後から「ぃ、痛いッ」と、か細い悲鳴がして、ふり返るとガタガタ震える***と視線がかち合った。しかし、銀時が何か言う前に、***はパッと顔をそらしてうつむいた。
『ずっと銀ちゃんと一緒にいられるなら、私、どんなにツラくても耐えます』
ついさっきの***の声が耳によみがえる。強い意志のこもった声は、透きとおるほどはっきりと銀時の耳に届いた。何もかも聞いてモヤモヤは晴れていた。あの日、***が青ざめた理由も、怒りも疑いもせず空元気だったワケも、すべて分かって気分がいい。自己犠牲的といえるほど純粋な理由は、あまりにも***らしかった。
「ぎ、銀ちゃん、あのねッ、その、さっきお登勢さんと話してたことは何でもないから……わ、忘れてください!」
「はぁ?なに馬鹿なこと言ってんだよ。んなことできるわけねーだろ。どこが何でもねーんだよ。ガキみてぇにびゃーびゃー泣いて鼻水垂らしてたくせに。強がったって意味ねぇし。銀さんぜぇ~んぶ聞いちまったしぃ。いいかげん意地張んのやめろよ***~」
「っ……意地なんて張ってない!ほんとに何でもないです。お登勢さんが優しいから気がゆるんで、言いすぎちゃっただけで、その、ぁ、あんなの全部……ぜんぶ嘘ですから!」
「はぁぁ!?」
顔をふせたまま***が言った言葉に、プチッと堪忍袋の緒が切れた。この女、この期に及んでまだ言うか。むやみに俺を不安にさせといて、ババァにはあっさり胸の内を明かしやがって。
不機嫌に「オイ、こっち向けよ」と言うと、小さな肩がびくっと跳ねた。しかし***は首を振って、かたくなに銀時から目をそらす。長い髪の隙間から、呼吸に合わせて上下する鎖骨と華奢な首が見えた。その首をつかんで無理やりこちらを向かせたら、充血して潤んだ瞳のなかで、黒目がユラユラと泳いでいた。少し開いた薄紅色の唇は、嗚咽をもらす寸前のように震える。
青ざめた***のその顔は、あの日カフェの外にいた時と同じだった。
「やだッ、見ないでください!」
「っんでだよ!総一郎くんには見せたくせに!」
「え……、そ、総一郎くんって……?」
艶やかな顔で苦悶する***を、沖田に見られたことが腹立たしい。泣きだしそうな表情が、あのサディストをどれほど喜ばせたか、いともたやすく想像できた。
困惑した***がサッと髪を耳に掛ける。その仕草の色っぽさを自分以外の男が知っているのは不愉快極まりなかった。顔にビキビキと血管が浮き、奥歯をギリギリと噛んだ銀時を見て、***は不安げな声で「ぎ、銀ちゃん、怒ってますか?」と聞いた。怒っていないわけがなかった。
「***さぁ……んな真っ青んなってガタガタ震えて、なにがそんなに怖ぇんだよ?彼女失格とか足手まといとか、意味わかんねぇんだけど……なにそれ、んだよそれぇ?俺のことなんだと思ってんの?浮気疑われたくらいで、テメェの女を捨てるような薄情な男だと思ってんの?めっさ心外なんですけど、ごっさ傷つくんですけどぉぉぉ!」
「ちがうよ、そうじゃな、んぅッ!ゃ、やめてッ!」
反論する***の口を唇で塞ごうとした。しかし唇が触れたとたん、***は首を振って顔を背ける。震える手で口元を隠し、銀時をさえぎると「キ、キスはしたくない!」と言った。それを聞いた瞬間、脳天を殴られたかと思うほど、銀時はショックだった。
———は?したくない?今、キスしたくないっつった?オイオイオイオイ冗談だろ***、らしくねぇこと言うなって。いつもほんのちょっとしただけで大喜びして、ガキみてぇにすがりついてくるくせに。大好きな銀さんがしてやってんだぞ?避けてんじゃねーよコノヤロォォォ~~~!!!
焦りに駆られて銀時はますます***に迫った。細い腰を引き寄せて無理やり口づけようとしたが、***はイヤイヤと首を振り続けた。イラついた声で「なんなんだよ」とつぶやくと、***はギクッと身体を強張らせた。つかまれていない方の手で、銀時の肩を必死に押しとどめながら、蚊の鳴くような声で言った。
「だ、だめなの銀ちゃん……私、いまキスしちゃったら、こらえられなくなる……きっと全部、吐き出しちゃう。このドロドロした気持ちを、銀ちゃんに知られるのがすごく怖いの。こんなに醜い私を、銀ちゃんにだけは見られたくないっ……!」
瞳いっぱいに涙をためて、***は銀時を見つめた。溢れる感情を必死に抑えて我慢する顔は、ますます色っぽい。苦しそうに漏れる吐息はまるで情事のさなかのようだった。その顔を見て、その声を聞いた瞬間、銀時の頭のなかで「プチンッ」と何かが切れる音がした。
切れたのは理性の糸だった。
「クソッ……めんどくせーなッ!!」
「きゃッ!!ぎ、銀ちゃん、どこにっ……!?」
ホテルなんて流暢なことは言ってられない。いきなり***の腕を引いた銀時が、万事屋の階段を駆けのぼる。新八と神楽がいるから部屋には入れない。往来には夜でも人通りがある。
階段の折り返しを曲がった踊り場で、銀時は足を止めた。***の両肩をつかむと、通りからは見えない壁に抑えつける。強く押し付けられた***の背中から、帯がズリズリとこすれる音がした。
「わわッ、ぎんちゃっ、んんぅっ……!?」
呆気に取られた***に覆いかぶさり、間髪入れずに口づける。顔を背ける暇も与えなかった。きゅっと固く結ばれた***の唇を、銀時の尖った舌先がたやすく開く。
ふぁっ、と鳴いた***の瞳を見つめて、オレンジジュースの味の残る口の中を舐めまわす。苦しそうに細められた瞳が銀時を見つめ返した。
「ふっ、んっ……は、んぅうッ……!」
ずずっと一気に深く入れた舌で上あごを舐める。のどの奥で縮こまる小さな舌を引きずり出して何度も絡めた。***は両手で銀時の肩を押すがびくともしない。
混ざり合った互いの唾液から酒の味がするようになった頃、***の手から力が抜けた。征服した喜びに小さく笑った銀時は、入れた時と同じように勢いよく舌を引き抜いた。はぁっ、と息を吐いた***は顔を真っ赤にして、潤んだ瞳はとろんとしていた。
「はは、いい気味だな***、すっかりとろけちまって。キスしたくねぇとか言って、いざしたらこのザマかよ。いつまでも嘘ついて我慢してねーでさっさと全部吐き出せよ。ドロドロだろーがヘドロだろーが、俺は別に構わねぇから」
「~~~~~っぎ、銀ちゃ、でもっ、」
唾液まみれで光る唇を噛みしめて、なおも***は言いよどんだ。こうなったら意地でも言わせてやる。絶ッ対に全部吐き出させて、本音を引きずり出してやる。
そう決意すると、普段の死んだ魚のような目からは想像もできないほど眼光鋭く、銀時は***をギロリと睨みつけた。
「***、お前、俺がこーゆーことしてもいいのかよ」
「え……?こうゆうことって……」
「今したみてぇなキスを、俺が他の女にしてもいいのかって聞いてんだよ。奥まで舌突っ込んで、どっろどろになるまで舐めまわすよーなキスしても、***は気にしないでいられんの?」
「っっ……!!」
息を飲んだ***が怯えた目をした。切なげにかすれた声が小さく「それは」とか「だけど」とつぶやいたが、銀時は聞こえないフリをした。
「っんだよ、さっさと答えろよ。なぁ、いーの?キスどころかもっとすげぇこととか、***が知らねーようなエロいことを、よその女相手に俺がしても、お前は平気なのかって聞いてんだよ!!」
「ぎ、銀ちゃ、———ッきゃぁあ!!」
薄い肩をつかむ手に力を入れて、上から押すと***の膝はカクンッと折れた。よろけた小さな身体を階段に座らせて、向き合った銀時はひとつ下の段に膝をつく。ひざ頭で***の着物の裾を開いて、脚の間にぐいぐいと割り込むと、布がめくれて白い太ももが露わになった。
「ゃ、やめ、銀ちゃん、脚がっ……ぅわわわッ!」
襟の合わせ目をつかんで、思いきり引っ張る。帯から引っこ抜かれた左襟がたゆんで、なかの襦袢が丸見えになった。迷いなく差しこんだ銀時の右手は、薄い肌着のなかでブラを横にずらし、手のひら全体で乳房をぎゅうっと包んだ。
「ひゃぁあッ……な、ぎ、銀ちゃっ、こ、こんなとこでやだってば、っんぁ!」
「んな顔で言っても説得力ねぇよ***~。ホラ気持ちよくなってねーでちゃんと考えろって。こーやって俺が他の女のおっぱい揉んでても、お前笑っていられんの?」
「~~~~ッそ、なっ、なんで……ぎんちゃっ、ぁあんっ!ふっ、ん、やぁあッ———!」
胸を揉みしだく手に押されて、***の左肩から着物とブラジャーのストラップがすべり落ちた。ふるりとこぼれ落ちた左胸が外気に触れて鳥肌立つ。着物の上から右胸をむにむにと揉む。露わになった乳房は、わざとその先端だけに手のひらを押し当てて、円を描くようにくるくると撫でた。
「ひゃ、ぁぁっん……っっ……!」
「もう乳首勃ってる。っとに***ってやらしいよね~、こんな誰が来るかも分かんねぇ場所で、おっぱい揉まれて感じちゃってんだもんなぁ~」
「んぁあッ……ってぇ銀ちゃんが、んぅあッ!こ、こんなの、ゃだぁ、ぁあんッ!!」
胸の蕾からの刺激に震える***が、力の入らない手で銀時の手首をつかんで離そうとする。だが逆に、銀時の大きな手が***の両手首をつかんで、後ろの段差に押さえつけた。自然と背中が反って裸の乳房が、銀時の目の前に突き出される。硬くなって色づいたその先端に、迷いなく銀時はむしゃぶりついた。
「ひッぁあんッ!ゃあっ、ぎ、んちゃぁ……だめぇ!」
「嘘つけ***、ビンビンになった乳首噛まれんの好きなくせに。オラ、ちゃんと感じろよ~、んで想像してみ?俺が他の女の胸に噛みついてたらって」
「っ……~~~ッ!うっ——、うぅ゙、んぁぁあッ!」
薄いピンクの突起に舌を添えて強く吸い付くと、***は嗚咽まじりに喘いだ。涙でいっぱいの瞳は、信じられないものを見るような目で銀時を見つめる。ちゅううっと大きな音を立てて吸った後、軽く歯を立ててコリコリと甘噛みすると、***の背中が弓なりにのけ反った。
「ぁッん、やぁ、銀ちゃ、こ、声出ちゃうからっ……も、もぉ、やめてよぉっ!」
「あ゙ぁ゙~?…ったく、しょーがねぇな……ん、これ噛んどけ」
そう言って銀時は、***の肩からずり落ちた着物の袖を持ち上げて、震える口に押し込んだ。サラリとした布が***の口の奥まで入ってくる。
「ぅむっ!!んんぅ……ふ、ぅんぁッ!!?」
声どころから息まで出来ない***が、目を白黒とさせた。しかし、そんなことにもお構いなしで、銀時はするすると手を滑らせ、***の身体をまさぐりはじめる。
石のように硬くなった***の、見開かれた瞳には恐怖さえ浮かんでいるように見えた———
———う、嘘でしょ、銀ちゃん!ここ外だよ?こんな場所でキスなんて、胸を触るなんてダメなのにっ……そんな手つきで撫でないで!お願いだから、もうやめてよぉ……!!
その祈りも空しく、大きな手は***の身体を撫でまわし続けた。服の上から胸の谷間と下腹部に触れた手が、あられもなく開いた裾のなかに入ってくる。
必死に膝を閉じようとしたが、割り込んできた銀時の身体に阻まれた。その膝を折ってグイッと開脚させられたら、ますます恥ずかしい体勢になる。
「えっろい***のことだから、さんざん胸揉まれたせーで、ここももう湿ってんじゃねーの?」
「ッ………!!ふっ、んんっぅ———、」
口に入れられた袖を噛みながら、イヤイヤと首を振ったが、銀時の手は止まらない。襦袢の中に侵入してショーツに辿りつき、その指先はあっさりとクロッチ部分を探り当てた。秘部に当たった布がひやりと冷たくて、そこが濡れていることを確信した***は、あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうだった。
「ぶはッ……!んだよコレ、湿ってるどころかびっしょびしょじゃねぇか。オイオイ***~、おっぱい触られてそんな気持ちよかった?乳首噛まれて感じちゃった?こんな淫乱な身体になっちまってお前どーすんの?俺を他の女に譲るなんてもう出来ねーだろ?***の胸もこのびしょ濡れのトコも全部、こんなに敏感しちまったの俺だもんなぁ。ぜってぇムリだって、俺無しじゃお前生きてけねぇってぇ。なぁ言えよムリってぇぇ」
「うっ、うぅっ……ふぅ、んッ、ひ、んゃッ……ゔぅぅ~~~っ!!」
骨ばった指が下着の上から、濡れそぼったそこをくにゅくにゅとこすり上げた。割れ目にそって上下にさすられて、お腹の奥がじわじわと熱くなる。涙をぽたぽたと流しながら、こもった声で喘ぐ***を、銀時は楽しそうに眺めていた。
「もう諦めろよ、***」
「んっ、ッ———!!!」
太い親指がショーツをぐいっと横にずらす。驚いた***がその手を止めようとしても振り払われて、骨ばった指が直接、秘所に触れた。くちゅくちゅといやらしい音と一緒に、指先が何度も***の濡れたところを往復する。上の方の敏感な突起は軽くツンツンとされただけで、ぷっくりと膨らんだ。
「うっわ、えっろぉぉぉ~……ぱっかりM字開脚して、銀さんにやらしいとこ見せつけてんの?すげぇ濡れてるし、もーこのまま、指入れていい」
「んんぅうッ……!ふ、ぅん゙んっ———!!」
ごつごつとした中指の先端が、蜜口につぷんと挿しこまれる。ぴりっとした痛みが走って、***は歯を食いしばり、ぎゅっと目をつむった。
***、力抜け、という声と同時に大きな手が頭に伸びてくる。後頭部に手をそえて、銀時はゆっくりと***の頭を胸に抱き寄せた。
「大丈夫だから、***、力抜いてみ……どーやってやるか銀さん教えただろ?ホラはやく」
「っ、ふぅ、んっ……~~~~っっ、」
ぽんぽんと後ろ頭を撫でられて、***は銀時のシャツの胸元をぎゅっとつかんだ。息を吐けばいいんだ。そう思い出して必死に鼻から息を吐く。
「ん、そうそう、いい子」
フゥーッ、と一生懸命に息を吐いて力を抜いたら、耳元で優しい声がした。それと同時に蜜壺のなかの指が、ちゅぷちゅぷと奥へ進んでくる。和らいだ痛みの向こうから、膝がガクガク震えるほどの快感が襲ってきた。
「はっ、んんッ、ぅんッ……っ、ふ、ぅ、ん゙ぁッ!!」
「なぁ、気持ちいい?***んナカすげぇひくひくいってる。あんま入れたことねーのに、お前のココ、もう俺の指の形覚えちまってんな」
「んぅ、~~~~っ!!」
上機嫌に言われた言葉が恥ずかしくて、頭から湯気が出そうなほど顔が熱くなる。指は少しずつ速度を上げて、出たり入ったりする。その度に***の恥ずかしい所から愛液が溢れて、お尻の下の着物を濡らした。
「こことか、指曲げるとちょうど当たるし」
「んくぅッ!?んっっ、んぅぅう……っ、」
入り口近くでクイッと折られた銀時の指が、ざらついた上の所を押しあげた。ぐにゅっとめり込むほど強くそこを刺激されたら、視界がチカチカした。強すぎる快感が下腹部を貫いて脳天まで走り、つま先まできゅぅぅっとそり返る。
「っくぅぅんッ!……ん゙ぅぁ、———ッ!!」
———ダメッ、もう我慢できないっ……!!
自分の中が太い指を締めつけるのを感じながら、駆け巡る感覚に全身をゆだねようとした瞬間、指の動きが急に止まった。与えられ続けていた刺激がすっと薄れて、肩すかしを食らった***は「え」という顔をした。おずおずと顔を上げると、ニヤついた銀時が意地悪な声を出した。
「***、お前、今イキそうだったろ?イカせてもらえると思ってんの?まだだよ」
「っ……!?」
「俺さっきから聞いてんだけど。こーゆーことぜんぶ***じゃなくて他の女にしてたらどーなんだって。俺の指で自分以外の女が気持ちよくなってんの想像しても、お前へーきなのかよ?」
「~~~~~ッ、ふぅ、うっ、ぅんんッ……んくッ!」
イカせて欲しかったらちゃんと答えろ、と言って銀時は、***を見つめたまま再び指を動かしはじめた。
さっきよりもっと速く、じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てて律動する。蜜口の上の膨らんだ突起まで親指の腹で撫でられたら、下腹部の奥に焦げつくような感覚がどんどん溜まっていく。
「んぅっ~~~~!ふっ、くぅ……ひッ、ひぃんぁ、ひっ、んぅぁッ……!!」
もう楽になりたい。身体の奥がうずいてしかたがなくて、破裂しそうな熱を今すぐ吐き出したい。涙でぼやける視界で銀時を見上げ、出せない声で必死に、銀ちゃんと呼んだ。
「んー、なに、あ、言える?もう言えそう?こんなこと他のヤツにしたら嫌だって、ちゃんと言えんの?銀ちゃんが気持ちよくすんのは***だけにしてって、さっさと言えよコノヤロォ~……」
にじんだ視界の銀時は焦っているような顔をしていた。意地悪な声がやけに切実で、***は何度もこくこくと頷いた。指の動きは止めずに、銀時はもう一方の手で***の口から袖を引き抜いた。唾液でぐっしょりと濡れた布が、ぼたっと重たい音を立てて落ちた。
ヨダレを垂らすだらしない顔を見られたくない。でも解放されたい気持ちのほうが上回って、***は銀時の胸元にぎゅっとすがりつくと、赤い瞳を見つめて震える声を漏らした。
「はぁッ……あっ、いゃ、やだぁあ……銀ちゃぁッ、ほ、ほかの人に、こっなこと、しないで、~~~~っき、きもちいぃ、の、ぁたしだけっ……、やぁッ、ぎんちゃ、ぁぁあ、~~~~っっ!!」
「ハッ、上出来」
「んむぅうっ!!?」
なんとか言い切ると銀時に深く口付けられた。
唇をすべて覆われて、息も声も奪われてしまう。蜜壺のなかの指がぐんっと奥まで入ってくる。狭いところを押し広げて行ったり来たりする指に、身体中の感覚が支配された。切ないほど熱い気持ちよさに全身がぶるぶると痙攣する。
筋張った指の第二関節が曲がり、手前の方のくぼみにくにゅりと触れる。びくんっと***が跳ねているうちに、一気に深く入ってきた指が、うずいて仕方がない奥まったところを強く押す。くり返される抜き差しに追い詰められて、ついに***は限界に達した。
「っっ……~~~~ふっ、ぅ゙っ、ひぃっく、ん゙ん゙ん゙ぅうううぁっ、————!!!」
絶頂を迎えた瞬間の悲鳴のような喘ぎ声は、銀時に全て飲みこまれた。びくびくと収縮した内壁が、長い指の根元から先までをしぼり上げている。あられもなく開いた脚と腰を震わせて果てた***が、カクンッと脱力すると同時に唇が解放された。濡れそぼったそこから指がゆっくりと引き抜かれていく。
「はぁ、あ、んっ……ふぁッ、ぁあっ…!」
「ははッ、指ちぎれそーなんですけど……***んナカは正直に“銀ちゃん行かないでぇ”ってきゅうきゅう締めつけてくるくせに、お前なかなか言わねぇんだもんなぁ~~~…っとに、どんだけ待たせりゃ気がすむんだっつーのぉぉぉ!」
ずるりと引き抜かれた指は愛液まみれだ。それを銀時が躊躇なく口に含む。羞恥心に真っ赤な顔を背けようとすると「ちゃんと見ろ」と止められた。とろりとした蜜液のまとわりつく指を、ゆっくりと舐める銀時の瞳は、ひどく熱を帯びている。
———イヤだよ、銀ちゃん……そんな目で他の人を見ないでよ。私、考えただけで胸が苦しくて、死んじゃいそうだよ……
他の誰にも銀時を渡したくない。例えそれが役に立つとしても、とても我慢できそうにない。それだけは言うまいと耐えてきたのに、身体をぐずぐずに溶かされたら心まで弱くなった。
***を見つめる熱い視線が、耳元でささやく甘い声が、壊れやすいものを扱うように触れてくれる手が、他の誰かのものになるなんて、想像するだけで———
「き、気が狂いそう……銀ちゃん、私、嫉妬と不安と、銀ちゃんのことをひとりじめしたい気持ちでいっぱいで、頭がおかしくなっちゃいそうだったの、もうずっと前から……」
「っ……!!」
弱々しい涙声でそう言うと、銀時は一瞬驚いたような顔をして息を飲んだ。「んだよ」というつぶやきは不機嫌で少し気まずそうだった。
こんな目にあって気まずいのはこっちだ。だらしない顔をさらして、秘密を引きずりだされて、恥ずかしさと後ろめたさに逃げ出したい。なのに果てたばかりで全く力が入らない。
ぐったりとした身体もたれたら、銀時の手が動いて、ずり落ちた袖を戻して襟を合わせた。乱れた裾を閉じて***の脚を隠す。おでこを肩に預けるように***は引き寄せられて、背中に回った腕でぎゅうっと強く抱きしめられた。
「っだよぉ、今さらかよぉ、遅ぇんだよ***~……耳にたこができそうなくれぇ銀ちゃん大好きって言って、いつでもひっついてくるくせに、ようやく気が狂うなんて遅すぎるだろ。ったくよ~、こちとらお前のせーでとっくの昔に頭がイかれてるっつーの。大好きな彼氏が女といたら、すっとんで来て“銀ちゃんの馬鹿!”っていつもみたいに怒鳴りちらしゃーいいだろーが。そんなんで俺がお前を嫌いになったりするわけねーだろ馬鹿」
「っっ……そ、そんなのしたくたって出来ないよ。だって銀ちゃんは、」
「万事屋だから?んなこと関係ねーよ。いいか***、耳の穴かっぽじってよーく聞け」
そう言って銀時は***のほほを両手で強くつかんだ。顔を寄せて視線を合わせた赤い瞳は真剣だったが、その声はいつもよりうんと優しかった。
「確かに困ってるヤツ助けんのが万事屋だけど、俺ァ***が嫌がるよーなことはしたくねぇよ。お前がそれを望んでなくてもそんなこた関係ない。テメェの女を悲しませてまで仕事するほど勤勉でも真面目でもねーから。なぁ、ものっそい都合のいいこと言うけど、俺ァあん時***に殴られたかったわ。カフェで女と居たのに、お前がヘラヘラ笑うからめっさ不安だったんですけど。俺ってコイツの彼氏だよね?ってごっさ心配になったんですけどぉ~。こう見えて銀さんハートはガラスのハートだからね?嘘つかれると結構凹むからね?そこんとこちゃんと分かれよ!俺の彼女ならよぉぉ~~!!」
「っっ~~~~、そ、そんなっ、嘘なんて、」
本音を隠していただけで、嘘をついたつもりはなかった。それが銀時を不安にさせるなんて微塵も思わなかったから。言葉を失って口をぱくぱくとさせていたら、銀時が切なそうに目を細めて口を開いた。
「ババァと話してんの聞いて思ったけど、お前自分のことを俺の彼女だって言う時、いっつもあんな自信なさそーなの? ‟私は銀ちゃんの、か、彼女”ってさぁ。俺の彼女ってことにまだ慣れてねーの?んじゃ、俺が彼氏っつーことにも馴染んでねぇってこと?いい加減にしろって***~~……俺はキスもやらしいことも全部、お前にしかしたくねぇんだよ、すっげぇ前からず~っとそうなんだっつーの……だから***も、俺のこと彼氏だってちゃんと自信持てよコノヤロォォ~……」
切ない表情と言葉に、***の胸は痛いほど締め付けられた。あぁもう無理だ、と思った時にはすでに嗚咽が漏れていた。噛みしめた唇がひどく震える。大きな涙粒がほほを伝って口に入りしょっぱい。あたたかい両手で顔を包まれたまま、***はキッと睨むように目を細めた。
「ぎ、んちゃっ、の、ばかぁぁぁ~~~!!!」
小さなこぶしを振り上げて銀時の胸をトンッと叩く。一度叩いたら止まらなくなって、筋肉質な胸板を両手でポカポカと殴り続ける。痛がりもせず何も言わない銀時を見つめて、号泣する***の唇からは勝手に声が飛び出していった。
「あっ、あのカフェに銀ちゃんが居たの、すごく嫌だった!一緒に行こうって約束したのに、他の人と行くなんて最低と思った!ものすごく悲しかった!ガラスの窓割って銀ちゃんを殴りたいくらい怒ってました!そ、それに……それに差し入れのプリン食べて、おいしいって言わないで欲しかった!私が……彼女の私が作ったプリンの方が、銀ちゃんはおいしいもん……他の人より私の方が銀ちゃんのことよく分かってます!だから、よその女の人のことなんて、もう考えないでよ!銀ちゃんは私のだもん、私の彼氏だもん!!私がいちばん銀ちゃんのこと好きだもんッ!!!」
うわぁぁぁん、と声を上げた***を、銀時はゲラゲラと笑いながら強く抱き寄せた。頭上から「なにお前、そんなこと気にしてたのかよ、馬鹿じゃねーの」という心底嬉しそうな声が降ってきた。
寄せられた胸に顔をうずめたら、ドクドクという力強い鼓動が聞こえる。深く息を吸うと銀時の匂いがする。抱きしめる腕の温かさと力強さに、心のつかえが取れて涙がますます溢れだした。
「オイィィィ***~~!そーゆーのが嫌だったんなら早く言えっつーのぉぉぉ~~!銀さんはお前の彼氏だから、ちゃんと受けとめっから安心しろよ。ドロドロだろーとヘドロだろーとウンコだろーと、テメェの彼女の醜いトコも汚ぇトコも全部まるごと引き受けんのが彼氏だろーが、なぁ、分かってますかぁぁ!?」
声もなく何度もうなずいた***の頭を、大きな手がやさしく撫でた。長い髪の上をサラサラと降りていった手は、嗚咽と一緒に震える***の背中を、ぽんぽんと叩く。辛抱強く銀時は***が泣き止むまでそれをくり返してくれた。
ようやく涙が止まった頃、髪を撫でていた銀時の手の動きが変わった。***の首や肩に垂れる黒髪をその長い指がすくって、ひと房にまとめた。器用にくるくると束ねて、うなじの少し上のあたりにお団子を作ると、懐から出した何かをさして留めた。
「えっ……ぁ、あの銀ちゃん、これは……?」
少し身体を離した***が後ろ手で髪に触れると、そこには沖田の前に落としてきてしまった簪があった。ウサギの飾りに指先が触れて、チリンッと鈴が鳴る。
「沖田くんがお前に渡しとけってさぁ~~~、なーなー***さぁ、あん時あのドS王子になんかされたぁ?王子みてーな顔してアレ実は魔王みてぇな男だからね?チワワだと思って油断してっとケルベロスだったみてーなことになるからね?弟みてぇに***になついてんの、銀さん結構気にしてっからねぇぇ!?」
「えっ、そ、総悟くん?総悟くんには何もされてないよ?あの日はただ着物を選ぶのを手伝ってもらって、それで……」
言いよどんだ***を「それで何だよ、何したんだよ、何されたんだよ」と銀時は疑うような目で見た。
えっと、と悩んだ***は少し恥じらいながら、首を傾げて口を開いた。
「総悟くんには、銀ちゃんが何のパフェ食べてたか教えてもらっただけです。一緒に行こうねって約束した時に、銀ちゃんレインボータワーパフェかメガスペシャルチョコサンデー食べるって言ってたでしょう?その、もし他の人とそれを食べちゃってたら、すごくヤダなぁって思って、それで総悟くんに教えてもらったの……あ、でも、イチゴパフェでしたよね?それなら良かったって私、自分に言い聞かせて……って、うわぁぁああッ!!な、何ですか急に!?」
「何ってキスだよ、***がカワイイことばっか言うから、したくなった」
「っっ……!!!」
喋っている途中でいきなり顔が近づいてきて、驚いた***は目を見開いた。ぼわぁっとほっぺたを赤くして、迫ってきた堅い胸を手で抑えて拒んだら、銀時は不機嫌そうに唇を尖らせた。ぐいぐいと顔を寄せられて鼻先同士がちょんっと当たる。わぁっ、と叫んだ***がますます赤くなると、ニヤついた声で銀時は言った。
「オイ、***、キスしたいって言えよ。イチゴみてぇに真っ赤な顔して、ほんとはキスしたくてたまんねぇんだろ?」
「やっ……あ、ちょっ、でもッ……」
ここは外だから。人が来るかもしれないから。と色々な言いわけが浮かぶのに言葉にできない。見つめ合ってくっつきそうでくっつかない唇から甘い吐息を感じたら、どうしようもなく触れたくなってしまう。
あわあわと困り果てた***が、片手で髪を耳に掛けようとすると、銀時の手がそれを上から押さえつけた。耳元を手でつかんで上を向かされて、早く言えよ***、と急かされる。
こんなセリフはあまり言わないから、死にそうなほど恥ずかしい。首まで赤く染まった***は、それでもじっと銀時を見上げて、かすれた弱々しい声でささやいた。
「し、したい、キスしたい……私、銀ちゃんとキスしたいです……その、できればいっぱいした、んぅっ!」
泣きそうなほど震える声が途切れる。かさついた唇と涙に濡れた唇がぴたりと触れ合った瞬間、***の細い腕がするりと銀時の首に巻きついた。
いつか教えられた通りに小さく唇を開いたら、銀時は声もなく笑った。そして***がしてほしいと願う通りに、奥の方まで舌をさしこんで、うん優しく触れてくれた。
顔の角度を変えるたびに深まっていくキスに、***の頭の奥は騒がしいほどビリビリとしびれた。
———ねぇ、銀ちゃん、私もうとっくに気が狂ってたのかもしれない……彼氏彼女とか付き合うとか何も知らなかったのに、キスもその先も全部、銀ちゃんが教えてくれるから、私どんどん欲張りになっちゃうの……きっと私もう銀ちゃんのこと離せない。ねぇ、それでもいいの?こんな私でいいの?いつか銀ちゃんを困らせちゃうけど、それでも私が彼女でいいの……?
胸騒ぎを消したくて、***は細い指を銀髪に絡めた。どんどん口づけは激しくなる。腫れそうなほど唇を舐めたり噛んだりされて、舌を絡められているうちに、思考回路が麻痺して***は何も考えられなくなった。
「ふぁ、っぎ、ちゃ、んぅ……」
「***ッ、は、っ……」
呼び合う名前すら飲み込んで、濃密なキスはなかなか終わらない。ただ送り込まれる銀時の吐息が、触れ合う唇や舌の温度が嬉しい。甘苦しいキスが狂おしいほど愛しくて、***は泣きたくなるくらい幸せだった。
夕飯が出来たと呼びに出てきた神楽と新八に、見つかってしまうのは数分後。
狂ったように大騒ぎする子どもたちに、大人ふたりがそろって怒られるのは、また別のお話。
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【(31)嘘と本当】
‟彼と彼女の大狂騒 下篇” end
おとなしくなんてなれない