銀ちゃんの愛する女の子
おいしい牛乳(恋人)
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☆若干ですが大人向けな表現があります
☆ぬるいですが性的描写を含む為、苦手な方はお戻りください
【(24)ピンクのクマ】
「う~ん、と、取れないぃぃ……」
ロッカーとソファだけの誰もいない控え室。壁に沿って置かれた縦長のロッカーの前で、***は絡まる髪と格闘していた。酒の染みたドレスから早く着替えたいのに、ボタンが外せなくて脱げない。気が急くばかりでうまくいかずに「ああ、もう」と足踏みをしたら、ハイヒールがコツコツと床を鳴らした。
ガチャ、バタンッ———
背後で扉の音がして、振り返るとピンクのクマの着ぐるみがドアの前に立っていた。
「あ、えっと……、お疲れさまです?」
そう言って***はぎこちなく笑った。ピンクのクマが何も返さないので、気まずいまま再びロッカーの方に向き直る。すると後ろからゴソゴソと音がして、着ぐるみを脱いでいるのが分かった。早く着替えなければと焦った***が、もう髪が切れてもいい、そう思いながらボタンに指を掛けた瞬間だった———
ドガンッッッ!!!
「きゃぁッ!!な、に……、っっ!!!」
耳元で大きな音がして視線を上げると、急に現れた太い腕が***の顔のすぐ横で、ロッカーにめり込んでいた。薄いスチールの扉がべっこりと凹んでいる。
骨ばった握りこぶし、血管の浮いた手首、たくましい筋肉質な腕には見覚えがある。赤いライン入りの黒い半袖シャツが視界に入った途端、***はあまりの驚きに腰を抜かしそうになった。
「………っっ!!ぎ、銀ちゃんっ!!?」
「よぉ、***、お疲れさまでぇ~す」
ふり返ると目の前に銀時が立っていた。白い着流しはなく黒い上下の服とブーツ姿で。その後ろにクマの着ぐるみが抜け殻のように転がっている。顔の横に両手をつかれ、腕で身体を挟まれた***は口をあんぐりとさせた。こぼれた声があまりの驚きに震える。
「ぎぎぎ、銀ちゃんが、ななななんで、こっ、ここに、こんなとこに!?」
「オイオイオイィィ~~、それ***が俺に聞いちゃう?んなこと聞ける立場じゃねぇだろ、お前はぁ~!お前こそ、こんな店でそんな服着て、一体何やってんだよコノヤロー!!」
明らかに苛立つ声を聞いて初めて、自分が犯した間違いに***は気付いた。キャバクラで***が働くことを、心配性な銀時が許すはずがなかった。
———や、やってしまった……!銀ちゃんには今までに何度も、お前は無防備すぎて危険だって注意されたのに!それなのにこんな店で働くなんて馬鹿だって言われるっ……土方さんと同じくらい、いや、きっとそれ以上に銀ちゃんは怒ってるっ……!!
「や、こ、これはその……ひ、人が足りないからどうしてもって、た、頼まれちゃって」
「はぁぁ?お前、頼まれればこんな店でも働くの?男慣れもしてねぇ***が?キャバ嬢のマネして、客に色目使ったり身体触らせたりすんの?」
「そんなことしてない!ただ飲み物を運んだり……じょ、女給さんみたいなことしかしてない!」
「女給みてーなモンねぇ~……***さぁ、お前いま自分がどんな状況か分かってねぇだろ?俺めっさ怒ってんだけど。ごっさキレてんだけどぉ。そこらへん少しは分かってますかぁ?」
イラだつ銀時の態度に身体がすくむ。こんなに冷えた声は初めて聞いた。自分を見下ろす紅い瞳やシラケた表情だけで、怒っていることはよく分かる。しかし想像以上の恐ろしさに***は石のように固くなった。
「ぎ、銀ちゃん、ごめ、ごめんなさ」
「なんも分かってねぇくせに謝んじゃねぇよ……ったくよぉ~、***がこんなに悪い子だったとはねぇ~、銀さんびっくりなんですけどぉ」
「そんなっ、……うわぁッ!!」
身体ごとぶつかるように距離をつめられて、背中をロッカーに押し付けられる。後頭部や肘が当たって固い扉がガタガタと鳴る。指先が食い込むほど強く、銀時は***の両肩をつかんだ。ぶ厚い胸板と華奢な身体が何度もぶつかって、最後はぴたりとくっついた。胸を密着させて真上から見下ろされたら、もう逃げ場がない。
「俺はこんな店で働くようなアバズレと付き合った覚えはねぇんだけど。アレ、***って俺の彼女じゃなかったっけ?」
「なっ……!ぎ、銀ちゃんの彼女だよ!私は銀ちゃんの……、それに働く気なんてないし、ただのお手伝いだから」
「ただの手伝いでこんなやらしい服着ちまうんだ。ミニスカで足出して、ケバい化粧して、男にじろじろ見られても、***は平気なんだ」
「ぁ、う、えぇっと、そ、それは……っ、」
焦るばかりで言葉が出ない。こんなに怒っている銀時を見たのは初めてで、視線を合わせるのも***は恐ろしい。逃げるようにうつむいたら、いっそう低い声が降ってきた。
「オイ、目ぇそらすなって」
大きな手が首の上の方を前から掴む。首ごと顔を上に向かされたら、息苦しくて***の口は自然と開いた。
「ぁっ、や、ぎんちゃ、んんぅッ!!!」
前触れもなく唇に噛みつかれて、***は目を見開く。唇は大きく開いていて、躊躇なく入ってきた銀時の舌は、何かを探すように口の中をくまなく舐めまわした。
何度も顔の角度を変えて、銀時の舌が奥へと進んでくる。ガチガチと歯が当たって痛いのに、のどの奥の方をねっとりと舐められたら、眩暈のように頭が痺れた。
「ん、うぅっん!……ぁっ、ゃあっ、はぁッ」
銀時のぬらぬらとした舌が、***の小さな舌の付け根から先端まで、歯列を奥から前まで、ほほの内側を右から左まで這いまわる。触れた所からじわじわと浸食されていく。乱暴にされているのに身体がビクつくのが恥ずかしくて、顔が燃えるように熱くなった。
しかし、引っぱり出された舌先を銀時に強く噛まれた途端、***の背中にひゅっと恐怖が走る。とろけ始めていた頭が現実に引き戻された。
「ぃ゙っ……ひ、ぃ、ぃぁッ!?」
舌先に鈍い痛みが走り、キスをしたまま悲鳴を上げると、鉄の味が口に広がった。唇はくっつけたまま銀時が意地悪な声で「なに感じてんだよ」と言った。じゅるじゅると音を立てて、少し血の混じる唾液を吸われた後、ようやく長い口づけが終わった。
「はぁっぁ、ぎ、ぎんちゃっ、」
「……酒は、飲んでねぇみたいだな」
「の、んでな……ゎ、たし、お酒、飲めないっ……!」
「酒も飲めねぇヤツをこんな店に連れてきたのは、どこのどいつだ。あんだけキャバ嬢がいんのに人が足りねぇなんて嘘だろ。世間知らずな***をキャバクラなんざで働かせたゲス野郎は誰か、さっさと言えよ」
「………っ!!」
頭に姫子の顔が浮かんだが、***は口ごもった。あの人は万事屋の大切なお客さんだ。もし真実を教えたら、きっと銀時はこの先、姫子の依頼を受けなくなる。
ストーカー被害で困っている女の子を悪者にしたくない。か弱い女性を見捨てるようなことを、銀時にさせたくない。なにより万事屋の仕事の邪魔だけは、絶対にしたくない。だから***は、姫子の名前を言えなかった。
「し、知り合いが……知り合いの人がここで働いてるんです!それで忙しいから助けてって言われたんです!」
「ふぅ~ん、知り合いねぇ~…」
嘘ではないがこれ以上は言えない。目を泳がせながらも***は必死で訴えた。赤い瞳は疑わしげに***を詮索したが、やがて銀時は呆れたように溜息をついた。
「はぁぁ~、あっそぉ~、ま、別に誰でもいいけど……ところで***さん、そんな必死な顔してるとこ悪いんだけど、こっからが本番だからね?酒も飲んでねぇシラフで、キャバ嬢でもねぇ手伝いの女給のつもりでさぁ……お前は何で、あのニコチンマヨラーとキスしてんの?」
「へっ……!?キ、キスなんてしてない!!」
「してただろーが。完全にキスする寸前だったろーが。あの野郎からチューされんの、うっとりした顔で待ってただろーがお前はぁ!俺が酒ぶっかけなかったら、あのままアイツとキスしてたんだろーがコノヤロー!!」
その言葉にハッとして、***は控え室に来る直前のことを思い出した。土方は絡まった髪を解こうとしただけで、キスなんてしてない。銀時の勘違いを正そうと、***は首のボタンを手で指し示した。
「キ、キスなんかじゃない!これに髪が絡まったのを、取ってもらっただけです。お団子がほどけて、それで引っかかちゃったのを、土方さぁッ、んんぅっ!!?」
喋っている途中で再び銀時の唇に口を塞がれた。噛まれた舌先の腫れた傷を執拗に舐められて、チリチリとした痛みが走る。
「あの野郎の名前、気安く呼んでんじゃねぇよ」
「ぎ、ぎんちゃ……ぁ、ちょ、なっ、ぃ痛ッ——!」
さらに怒りを露わにした銀時の手が、襟元に伸びてくる。その手は金のボタンと絡まる髪を一緒につかんだ。
ブチッッッ!!
力任せに引っ張られたボタンが、襟から取れて床に転がる。切れた髪も数本パラパラと落ちていった。痛みに***が顔をしかめても、銀時の手は止まらなかった。
ビッ、ビリッ、ビリビリッッッッ———!!
「なっ……!ゃ、やだぁッ!ぎ、銀ちゃんっ!!!」
迷いなく振り下ろされた手によって、ドレスは襟の合わせ目から引き裂かれていく。薄い布はたやすく破れて、その亀裂が胸を斜めに横切り、太もも横のスリットまで数センチというところで止まった。ドレスの前が開いて白い肌と薄いピンク色の下着が露わになった。
「くそっ……触らせてんじゃねぇよ、この馬鹿!」
「ひゃ、ぁ、あぁっ……!!」
片胸を下着ごと銀時の手がつかんだ。強い力で乱暴に揉まれて痛いくらい。
いつかの夜に四畳半の部屋で、***に触れた銀時の手はもっともっと優しかった。まるで壊れやすい物を扱うみたいな繊細な手つきで、***の全てを包んでくれたのに。いまの銀時はあの夜とはまるで別人のよう。
「ぅうっ……ゃ、ぎ、ちゃ、痛っ、いたぃ!」
「わざと痛くしてんだよ。しちゃいけねーことしたのに、自覚もない***みてぇな悪い子は、こうやって痛めつけなきゃ分かんねぇだろ?」
———何が、何が分からないの?ここで働いたこと?無防備すぎて警戒心がなかったってこと?土方さんと一緒にいたこと?それとも……
考え込む***の首に銀時の顔が近づいてくる。首の横にがぶりと噛みつかれて、全身が飛び跳ねた。食べられるみたいに深く噛まれて「やだぁ」と叫んだ***は銀時の肩を両手で押し返した。その手首も強くつかまれて、ロッカーに縫い留めるように抑え付けられた。
「い゙ッ!……ぅう、ゃっ、~~~っ!!」
「ヤベ、歯形ついちまった」
***には見えない首筋に赤い歯形がくっきりとつく。さらに吸い付かれた鎖骨や肩に、赤い鬱血の痕がポツポツと出来た。ブラジャーの縁を銀時が口にくわえて、ぐいっとずり下ろす。こぼれ落ちた乳房に、そのままむしゃぶりつかれた。
「ゃぁあんッ!あっ、んぁ……ぎ、ぎん、ちゃ、やっ、~~~~っ、だ、めぇぇっ!!」
胸の先端をきゅうっと吸われる。あっという間に硬くなった桜色の尖りに歯を立てられて、ぐにぐにと噛まれる。痛いはずなのに銀時の熱い口の中で、敏感な蕾は気持ちよくなろうとした。意思に反して快感を追いかける身体に心がついていかない。
「っんだよこれ、痛くされてんのに感じてんじゃん。噛まれてんのに乳首硬くなってんじゃん。やっぱ***ってドMだよねぇ~。なぁなぁ、あのマヨラーにもおっぱい触られて、気持ちよかったぁ?」
「ひぃっ、……やっ、さ、わられて、なぃっ……!」
「触られてたじゃん、手で。当たってたじゃん、指が。俺ちゃーんと見てたし。アイツに胸つかまれた***が、とろんとした目でキスされんの待ってたとこぉ~」
「ま、ってな、ぃぁあんっ———!!」
反論しようとしても、また胸に吸い付かれてまともに喋れない。抵抗できない***の目の前で、銀時は白い胸元を噛んでは、次々に赤いキスマークを残していく。
経験したことのない乱暴さに***の心は恐怖で満たされた。大声を出して銀時を拒絶したい。それなのに、ふと浮かんだ思いに捕らわれて、***は指一本動かせなかった。
———どうして、どうして私……銀ちゃんのことを思い出さなかったんだろう……?真っ先に「銀ちゃんが嫌がるから働かない」って、どうして断らなかったんだろう?これじゃまるで銀ちゃんのこと忘れてたみたいで、彼女失格だって思われても仕方がない……どうしよう、どうしたらいいんだろう……
こんなに近くにいるのに、銀時の心がどんどん遠く離れていくようで、あまりの恐ろしさに呼吸が乱れた。涙が出そうだったが泣くのは卑怯に思えて、***は必死でこらえた。痛みの中から身体が勝手に快感を拾い上げるせいで、喘ぎ声ばかりが漏れる。
「やぁっん、~~~っっ、ぎ、んちゃ、ぁあんっ!」
銀時が怖いのに、唇はその名前を呼ぼうと何度も震えた。ずり下ろされたブラの上の白い乳房に銀色の髪が埋まるのを、ただ見つめるしか***にはできなかった。
真っ白な胸元に赤い花のような鬱血がいくつも散らばる。それを見てようやく、銀時の怒りはわずかに鎮まった。土方と***を見つけた時の激昂には、視界が霞んだ。大切な女を横取りされそうになった焦りと屈辱はあまりに強くて、なんとかして***をこの手に取り戻そうと必死だった。
胸を執拗に攻め立てる間ずっと、***は震える声で何度も銀時の名前を呼んだ。男性経験のない初心な***が必死で恐怖に耐えて、すがるようにその名を呼ぶことが、銀時の荒れ狂う心を少しずつ癒した。
———ああ、大丈夫だ。コイツ何もされてねぇや。酒も飲んでねぇし、キスもされてねぇ。***の言ったことに嘘はねぇ……っだよ、ちくしょー……心配させんじゃねぇっつーの。
ホッとする一方で、***をすぐに許してやる気にはどうしてもなれない。この店で働いていたことも、客たちにその姿を見られたことも、土方に触られたことも全部、1ミリの余地なく耐えがたかった。
***は俺の彼女で、コイツにとっていちばん大切なのは俺なのに、なに他の奴らに色っぽい姿を見せちゃってんの。そんなんぜってー許さねぇ。そう思う銀時の脳裏に、ニヤつく客や土方の顔がチラチラと浮かんで、冷めない怒りはくすぶり続けた。
「アイツに足も触ってもらったー?ヤニくせぇ上着かけてもらう前に、ふくらはぎスリスリされたんじゃねーの?それとも太ももにマヨネーズぶっかけられた?」
「そっ、そ、なこと、するわけないッ!やっ、銀ちゃ、な、何すッ……!?」
引き裂かれたドレスの亀裂を指でなぞり、わずかに繋がっている部分をつかむと思い切り引っ張った。ブチンッと派手な音を立てて服の裂け目とスリットが繋がり、ついに***のドレスの前は全部開いた。
膝をついてしゃがんだ銀時の目の前に、***のショーツと白い太ももが晒される。そこに顔を近づけようとしたら、自由になった***の両手が、銀色の髪を引っ張って止めた。
「や、だっ……銀ちゃん、もう、やめて」
「チッ、っんだよ、邪魔すんなっつーの!」
いらだって見上げると、***は破裂しそうなほど顔を真っ赤にしていた。その髪に手を伸ばし、ほどけていない方のお団子からリボンを引き抜く。華奢な両手首をまとめてつかみ、細いリボンを巻き付けてきつく結んだら、***は再び両手の自由を奪われた。
「ぅ、嘘ッ、銀ちゃん、こ、これっ、」
「あ゙?***が暴れっからだろーが。ったく、ギャーギャーギャーギャーうるせぇなコノヤロー。めんどくせぇからちったぁ黙ってろよ」
冷たく言い放つと、ビクッと震えた***は両手を胸に押し当てて口を結んだ。その手首を掴んで、ひきずるようにふたり掛けのソファまで連れて行く。軽く押しただけで、よろけた***の華奢な身体は仰向けに倒れた。
「きゃッ……!や、ま、待って!!」
「待たねぇっつーの……なぁ、***さぁ、すっげぇ~前に俺が言ったこと、もう忘れちまった?」
「え……?」
***の足の間を膝で割って、全身でのしかかる。結われた手首をつかみ、***の顔の前までその両手をひっぱり上げて、薬指の指輪を見るように促す。
「コレコレ、このやっすい指輪つけてやった時に、***は一生銀さんのモンって言ったよね?んで、お前嬉しそうに笑ってたよね?馬鹿みてぇにヘラヘラ喜んでたの、もう忘れた?銀ちゃん大好きってうるせーくらい言ってたのも、忘れちまったの?なぁ、そうだろ***、こんな店で働くってことは、他の男のモンになってもいいってことだろ?」
「っっ……、違うッ!!!」
その日いちばん大きな声で***は銀時に反論した。瞳の中の揺れる黒目に、怒りのような感情が渦巻いているのが見えた。
「全然ちがう……私はずっと銀ちゃんのものです!この先も一生、他の人のになんて絶対ならない!……ここで働いたことは間違いだけど、私の気持ちに変わりはないもん……わ、私は……私は銀ちゃんの彼女で、銀ちゃんのことがずっとずっと好きだもん!!」
普段ならこんなことを言う時、***の顔は真っ赤に染まる。しかし今、必死に叫ぶ姿に恥じらいはなかった。誠心誠意、全力でその思いを伝えていた。
真っすぐな***の純粋さが愛おしいのに、天然パーマのごとく曲がりくねった銀時の性根は、まだ満足しない。
「じゃぁ、ここで服全部ひん剥いてもいい。***がほんとに銀さんのもんなら、なんでも俺の好きなようにしていいってことだろ?」
「え、こ、ここでっ!?」
人が来ちゃうよ、と言って***は泣きそうな顔に戻った。部屋の鍵が閉まっていることは銀時しか知らない。
不安と恐怖と羞恥心の入り乱れた表情の***が、それでも拒めずに苦しむ姿を見るのが、銀時は楽しくて仕方がない。
「人が来ちまうから、声出すなよ***」
「ぎ、ぎんちゃ、あッ……!!」
膝を伸ばしたまま片足を持ち上げたら、開いたドレスの裾がめくれてショーツが丸出しになった。仰向けの***と目線は合わせたまま、ふくらはぎに噛みつく。突然の痛みに***は「んっ」と小さな声を上げた。
陶器のような肌に歯形がつく。綺麗なものを汚す背徳感は癖になりそうなほどの快感で、勢いづいた銀時は***の両脚の至る所に噛みつき、そして吸い付きを繰り返した。
「っん゙、ぅ、~~~~っ、ゃッ、んぁっ」
ふくらはぎから始まり膝へ、柔い膝裏と太ももの裏側へ、腰骨の上へ、小さなヘソと白い下腹部へと少しずつ銀時の唇はのぼっていく。所有物の印のような鬱血痕が増えて、そしてそれが増える度に***の顔は上気し、漏れる声が艶めいていった。
「あ~あ、足しか触ってねぇのに、気持ちよさそーな顔しちまって……このスケベが」
「ち、ちがっ……あ、っゃぁぁあッ!」
膝をつかんで足を開かせると、銀時は***のショーツに顔を近づけて、クロッチ部分に歯を立てた。ふわりとした恥丘を下着越しに何度も噛んで唾液を染みこませる。同時に舌を動かして割れ目を探し出そうとする。
「ぁぁあっ!ぁ、ゃッ、ぎ、銀ちゃ…だ、めぇ!」
「全然ダメじゃねぇだろ***、すっげぇ感じてるくせに。ほら、いっぱい舐めてやるから足開けって」
膝裏に手を入れて、ぐいっと更に持ち上げる。たっぷりと唾液をつけた舌で、下着越しに秘部を後ろから前まで舐め上げる。そのうちに濡れそぼったクロッチ部分に、割れ目の形が浮かんだ。じっとそこを見つめてから、尖らせた舌先で少し上の方にある小さな粒をぐにゅぐにゅと押し潰した。
「ひゃぁッ、あ、ッぎ、ぎんちゃ、そこ、やだッ!!」
「嘘つくなよ***、お前ここ触られんの好きだろ。ちょっと舐めただけで固くなってるし。この前だって俺にいじられて、気ぃ失うくらいひーひー言ってたじゃねーか」
「ゃ、うぁ……ッ、ぁっ、ふぁあッ!」
爆発しそうなほど赤くなった顔を、***は縛られた両手で隠していた。でも漏れ出る声は押さえきれない。
唾液で濡れたクロッチ部分を口に含んで、ずずっと吸い上げたら、かすかに愛液の味が混ざった。布越しにぷくりと主張するそこに口付けるように唇を押し当てて、もう一度強く吸ったら、***の内ももがビクビクと震えた。腰も浮き上がり小刻みに痙攣する。それを見た瞬間、銀時はそこから顔を離した。
「ははっ……もしかしてお前、ここでイくの?マジで?すっげぇな***~、お前ここどこか分かってる?こんな場所で犯されて、それで気持ちよくなって、処女のくせに簡単にイっちまうんだ~」
「ご、ごめんなさっ、銀ちゃ、ゆ、許してっ」
冷ややかで意地の悪い言葉に、***の身体はカチンと硬くなった。両手を顔の前で祈るように組み、涙目で銀時を見つめていた。その瞳には恥じらいと後ろめたさが混ざっていて、小さな唇はうわ言のように何度も「ごめんなさい」と繰り返した。
———あ~~あ~~、まぁたコイツはこーゆー顔しやがって……その顔がダメなんだって、なんで分かんねぇかな。んなエロい恰好で、目ぇとろんとしたまんまで、泣きそうな顔されちまったら、もっといじめたくなるに決まってんだろーがぁぁぁ……
唇に冷笑を浮かべたまま、銀時は身体を起こしてソファから立ち上がった。突然離れた距離に***は「え?」と不安げな声を出す。
「ったく、ドMの相手も楽じゃねぇな。ひとりでイキそうになってっとこ悪いけど、疲れたから俺もう帰るわ」
「え……、ぎ、銀ちゃん、待って、」
くるりと踵を返して、銀時はドアへと歩き出す。背後から「銀ちゃん」という泣きそうな声がする。カツンとヒールが床を打つ音がして、追いかけてくるのが分かった。銀時はさらに追い打ちをかけるように、背を向けたまま冷たい声で言い放った。
「土方くん、呼んできてやろーか?***が泣いて待ってるってさ。慰めてもらえよ、あの優しいマヨラーに」
「っっ………!!!」
息を飲む声が聞こえて、***の足音が止まる。手酷くしすぎた気もしたが、銀時は泣いてすがりつく恋人の姿が見たかった。どんなに無茶苦茶にされても、***が自分だけにしがみつくのを見て安心したかった。
扉の前で立ち止まり、その姿を見ようと意気揚々と振り返る。しかしそこに広がる光景に驚いて、銀時は言葉を失った。
「銀ちゃんの、馬鹿っっっ!!!」
「はっ……!!?」
確かに***の目は涙に潤んで今にも泣きそうだったが、すがりついてはこなかった。ただ銀時をじっと睨んで、ガクガク震える膝で必死に身体を支え、仁王立ちをしていた。
「わ、私は銀ちゃんの彼女だから、銀ちゃんと一緒に帰る!土方さんなんて呼ばない、泣いてなんかないっ、慰めてなんかもらわないっ!帰るもん、私もう帰りたい!銀ちゃんと一緒に帰りたい!!!」
「なっ……!?」
叫んだ***が勢いよく走ってきて、縛られた両手でぎゅっと銀時の服の胸元をつかんだ。突然、胸に飛び込んできた***を抱き留めて、予想外の出来事に銀時の方が面食らった。
「な、なんだよ***!お前そんな恰好で帰れるわけねぇだろ!パンツもおっぱいも丸見えなんだぞ?んな恰好で外出てみろ、完全に痴女だろ!どのキャバ嬢よりオメーがいちばん露出狂だろ!んな恰好、男どもに見せていいわけねーだろぉぉぉ!!!」
胸に抱きつく***が、赤らんだ顔を上げて銀時を見つめた。何度も唇を噛んで悩んでから、小さく「銀ちゃん」とつぶやいた声はあまりにも切実で。それは泣いてすがりつくよりもずっと、銀時を引き留めようと必死に見えた。
「銀ちゃん……私は、誰に見られたって、いい。私の身体はぜんぶ銀ちゃんのだから。他の誰のものにもならないから、だから見られたって構わないです。それに……いっぱい痕がついてるから大丈夫だもん。身体中に銀ちゃんのって証拠がいっぱいある……ひ、土方さんとか他の人にこの痕を見せてもいい。それで、私は銀ちゃんのですって言ったっていい。それくらいできるから、だから……」
そこまで言った途端、***の顔がくしゃっと歪んだ。涙がひと粒だけ、目尻からぽたりと落ちた。
「だから銀ちゃんお願い、私を置いてかないで……ひとりにしないでください……ワガママばっかりでごめんね、こんな店で働いちゃったのもごめんね、銀ちゃんが傷つくってすぐに思いつかない馬鹿な彼女でごめんね。もう、こんなこと二度としないから……だ、だから銀ちゃん、私のこと、き、嫌いにならないでっ……!」
うぅっ、と嗚咽のような声を上げる***を見下ろして、銀時は奥歯を噛みしめた。まさかこんなことを言われるとは思わなかった。胸元をつかむ小さな両手は、リボンが食い込む手首からぶるぶると震えていた。
「………ねぇよ」
「え………?」
「見せねぇっつったんだよ!!テメェの女の身体を、他の野郎にたやすく見せてたまるかよッッッ!!!」
大声に***が固まっているうちに、銀時は床に転がっていたクマの被り物を拾った。そのピンクの頭だけを、ずぼっと***に被せる。
控え室のロッカーには神楽たちに貸し出されたのと同じ、丈の長いダウンコートがあった。両手が縛られたままの***を、そのコートでくるんでジッパーを閉める。
「ちょ、えぇっ!?銀ちゃんっ!?ぅわわわッ!!!」
手のない身体にクマの頭で、ハイヒールを履いている摩訶不思議な状態になった***を横抱きに抱え上げて、銀時は部屋を飛び出した。
飛び出した廊下の途中で、煙草を吸う土方とかち合う。奇妙なクマを抱いて走ってくる銀時を見て、土方はぎょっとして目を見開いていた。
「なっ……、万事屋っ!?オイ、お前なんで、」
「ウチの***が世話んなったな。コレ、もう要らねぇから返すわ」
酒に濡れた黒いジャケットを思い切り投げつける。本当は殴りたかったが、***を抱いているからできない。
コートから飛び出すハイヒールを見て、土方はそれが***だと気付いてハッとする。赤い歯形のつく細いふくらはぎを見た後、軽蔑を込めた目で銀時をキッと睨んだ。
「万事屋……***に何しやがった」
「あ゙ぁ゙ぁ゙ッ!?オメェに関係ねぇだろーが……人の女に手ぇ出してんじゃねーよ、このニコチンコ野郎。若い女と見るとすぐにちょっかい出す変態野郎がいるって、警察呼ぶぞゴラァァァ!!」
そう叫んで銀時は再び走り出す。オイ!という土方の声が後ろから聞こえたが、無視して店を飛び出した。
———私のこと、き、嫌いにならないでっ……!
痛々しいほど必死な***の声が、耳に蘇る。
嫌いになんてなるわけない。好きで好きでどうしようもない。他の男に指一本でも触られたくないくらい。些細なことで膨らむ被害妄想で、何度も***をいじめて泣かせたくなるくらい。
外に出ても***は何も言わなかった。ただ厚手の上着の中でその華奢な身体が震えていた。それが寒さのせいなのか、自分のせいなのか、銀時には分からなかった。
真冬の風の中でも、銀時は寒さを全く感じなかった。ピンクのクマを必死に抱きしめて、夢中で夜を駆ける足はただ真っすぐに、万事屋へと向かっていた。
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【(24)ピンクのクマ】end
"ウォーアイニー(3)"
呼吸乱ス 夢ノ中 秘スル妄想 無茶苦茶
☆若干ですが大人向けな表現があります
☆ぬるいですが性的描写を含む為、苦手な方はお戻りください
【(24)ピンクのクマ】
「う~ん、と、取れないぃぃ……」
ロッカーとソファだけの誰もいない控え室。壁に沿って置かれた縦長のロッカーの前で、***は絡まる髪と格闘していた。酒の染みたドレスから早く着替えたいのに、ボタンが外せなくて脱げない。気が急くばかりでうまくいかずに「ああ、もう」と足踏みをしたら、ハイヒールがコツコツと床を鳴らした。
ガチャ、バタンッ———
背後で扉の音がして、振り返るとピンクのクマの着ぐるみがドアの前に立っていた。
「あ、えっと……、お疲れさまです?」
そう言って***はぎこちなく笑った。ピンクのクマが何も返さないので、気まずいまま再びロッカーの方に向き直る。すると後ろからゴソゴソと音がして、着ぐるみを脱いでいるのが分かった。早く着替えなければと焦った***が、もう髪が切れてもいい、そう思いながらボタンに指を掛けた瞬間だった———
ドガンッッッ!!!
「きゃぁッ!!な、に……、っっ!!!」
耳元で大きな音がして視線を上げると、急に現れた太い腕が***の顔のすぐ横で、ロッカーにめり込んでいた。薄いスチールの扉がべっこりと凹んでいる。
骨ばった握りこぶし、血管の浮いた手首、たくましい筋肉質な腕には見覚えがある。赤いライン入りの黒い半袖シャツが視界に入った途端、***はあまりの驚きに腰を抜かしそうになった。
「………っっ!!ぎ、銀ちゃんっ!!?」
「よぉ、***、お疲れさまでぇ~す」
ふり返ると目の前に銀時が立っていた。白い着流しはなく黒い上下の服とブーツ姿で。その後ろにクマの着ぐるみが抜け殻のように転がっている。顔の横に両手をつかれ、腕で身体を挟まれた***は口をあんぐりとさせた。こぼれた声があまりの驚きに震える。
「ぎぎぎ、銀ちゃんが、ななななんで、こっ、ここに、こんなとこに!?」
「オイオイオイィィ~~、それ***が俺に聞いちゃう?んなこと聞ける立場じゃねぇだろ、お前はぁ~!お前こそ、こんな店でそんな服着て、一体何やってんだよコノヤロー!!」
明らかに苛立つ声を聞いて初めて、自分が犯した間違いに***は気付いた。キャバクラで***が働くことを、心配性な銀時が許すはずがなかった。
———や、やってしまった……!銀ちゃんには今までに何度も、お前は無防備すぎて危険だって注意されたのに!それなのにこんな店で働くなんて馬鹿だって言われるっ……土方さんと同じくらい、いや、きっとそれ以上に銀ちゃんは怒ってるっ……!!
「や、こ、これはその……ひ、人が足りないからどうしてもって、た、頼まれちゃって」
「はぁぁ?お前、頼まれればこんな店でも働くの?男慣れもしてねぇ***が?キャバ嬢のマネして、客に色目使ったり身体触らせたりすんの?」
「そんなことしてない!ただ飲み物を運んだり……じょ、女給さんみたいなことしかしてない!」
「女給みてーなモンねぇ~……***さぁ、お前いま自分がどんな状況か分かってねぇだろ?俺めっさ怒ってんだけど。ごっさキレてんだけどぉ。そこらへん少しは分かってますかぁ?」
イラだつ銀時の態度に身体がすくむ。こんなに冷えた声は初めて聞いた。自分を見下ろす紅い瞳やシラケた表情だけで、怒っていることはよく分かる。しかし想像以上の恐ろしさに***は石のように固くなった。
「ぎ、銀ちゃん、ごめ、ごめんなさ」
「なんも分かってねぇくせに謝んじゃねぇよ……ったくよぉ~、***がこんなに悪い子だったとはねぇ~、銀さんびっくりなんですけどぉ」
「そんなっ、……うわぁッ!!」
身体ごとぶつかるように距離をつめられて、背中をロッカーに押し付けられる。後頭部や肘が当たって固い扉がガタガタと鳴る。指先が食い込むほど強く、銀時は***の両肩をつかんだ。ぶ厚い胸板と華奢な身体が何度もぶつかって、最後はぴたりとくっついた。胸を密着させて真上から見下ろされたら、もう逃げ場がない。
「俺はこんな店で働くようなアバズレと付き合った覚えはねぇんだけど。アレ、***って俺の彼女じゃなかったっけ?」
「なっ……!ぎ、銀ちゃんの彼女だよ!私は銀ちゃんの……、それに働く気なんてないし、ただのお手伝いだから」
「ただの手伝いでこんなやらしい服着ちまうんだ。ミニスカで足出して、ケバい化粧して、男にじろじろ見られても、***は平気なんだ」
「ぁ、う、えぇっと、そ、それは……っ、」
焦るばかりで言葉が出ない。こんなに怒っている銀時を見たのは初めてで、視線を合わせるのも***は恐ろしい。逃げるようにうつむいたら、いっそう低い声が降ってきた。
「オイ、目ぇそらすなって」
大きな手が首の上の方を前から掴む。首ごと顔を上に向かされたら、息苦しくて***の口は自然と開いた。
「ぁっ、や、ぎんちゃ、んんぅッ!!!」
前触れもなく唇に噛みつかれて、***は目を見開く。唇は大きく開いていて、躊躇なく入ってきた銀時の舌は、何かを探すように口の中をくまなく舐めまわした。
何度も顔の角度を変えて、銀時の舌が奥へと進んでくる。ガチガチと歯が当たって痛いのに、のどの奥の方をねっとりと舐められたら、眩暈のように頭が痺れた。
「ん、うぅっん!……ぁっ、ゃあっ、はぁッ」
銀時のぬらぬらとした舌が、***の小さな舌の付け根から先端まで、歯列を奥から前まで、ほほの内側を右から左まで這いまわる。触れた所からじわじわと浸食されていく。乱暴にされているのに身体がビクつくのが恥ずかしくて、顔が燃えるように熱くなった。
しかし、引っぱり出された舌先を銀時に強く噛まれた途端、***の背中にひゅっと恐怖が走る。とろけ始めていた頭が現実に引き戻された。
「ぃ゙っ……ひ、ぃ、ぃぁッ!?」
舌先に鈍い痛みが走り、キスをしたまま悲鳴を上げると、鉄の味が口に広がった。唇はくっつけたまま銀時が意地悪な声で「なに感じてんだよ」と言った。じゅるじゅると音を立てて、少し血の混じる唾液を吸われた後、ようやく長い口づけが終わった。
「はぁっぁ、ぎ、ぎんちゃっ、」
「……酒は、飲んでねぇみたいだな」
「の、んでな……ゎ、たし、お酒、飲めないっ……!」
「酒も飲めねぇヤツをこんな店に連れてきたのは、どこのどいつだ。あんだけキャバ嬢がいんのに人が足りねぇなんて嘘だろ。世間知らずな***をキャバクラなんざで働かせたゲス野郎は誰か、さっさと言えよ」
「………っ!!」
頭に姫子の顔が浮かんだが、***は口ごもった。あの人は万事屋の大切なお客さんだ。もし真実を教えたら、きっと銀時はこの先、姫子の依頼を受けなくなる。
ストーカー被害で困っている女の子を悪者にしたくない。か弱い女性を見捨てるようなことを、銀時にさせたくない。なにより万事屋の仕事の邪魔だけは、絶対にしたくない。だから***は、姫子の名前を言えなかった。
「し、知り合いが……知り合いの人がここで働いてるんです!それで忙しいから助けてって言われたんです!」
「ふぅ~ん、知り合いねぇ~…」
嘘ではないがこれ以上は言えない。目を泳がせながらも***は必死で訴えた。赤い瞳は疑わしげに***を詮索したが、やがて銀時は呆れたように溜息をついた。
「はぁぁ~、あっそぉ~、ま、別に誰でもいいけど……ところで***さん、そんな必死な顔してるとこ悪いんだけど、こっからが本番だからね?酒も飲んでねぇシラフで、キャバ嬢でもねぇ手伝いの女給のつもりでさぁ……お前は何で、あのニコチンマヨラーとキスしてんの?」
「へっ……!?キ、キスなんてしてない!!」
「してただろーが。完全にキスする寸前だったろーが。あの野郎からチューされんの、うっとりした顔で待ってただろーがお前はぁ!俺が酒ぶっかけなかったら、あのままアイツとキスしてたんだろーがコノヤロー!!」
その言葉にハッとして、***は控え室に来る直前のことを思い出した。土方は絡まった髪を解こうとしただけで、キスなんてしてない。銀時の勘違いを正そうと、***は首のボタンを手で指し示した。
「キ、キスなんかじゃない!これに髪が絡まったのを、取ってもらっただけです。お団子がほどけて、それで引っかかちゃったのを、土方さぁッ、んんぅっ!!?」
喋っている途中で再び銀時の唇に口を塞がれた。噛まれた舌先の腫れた傷を執拗に舐められて、チリチリとした痛みが走る。
「あの野郎の名前、気安く呼んでんじゃねぇよ」
「ぎ、ぎんちゃ……ぁ、ちょ、なっ、ぃ痛ッ——!」
さらに怒りを露わにした銀時の手が、襟元に伸びてくる。その手は金のボタンと絡まる髪を一緒につかんだ。
ブチッッッ!!
力任せに引っ張られたボタンが、襟から取れて床に転がる。切れた髪も数本パラパラと落ちていった。痛みに***が顔をしかめても、銀時の手は止まらなかった。
ビッ、ビリッ、ビリビリッッッッ———!!
「なっ……!ゃ、やだぁッ!ぎ、銀ちゃんっ!!!」
迷いなく振り下ろされた手によって、ドレスは襟の合わせ目から引き裂かれていく。薄い布はたやすく破れて、その亀裂が胸を斜めに横切り、太もも横のスリットまで数センチというところで止まった。ドレスの前が開いて白い肌と薄いピンク色の下着が露わになった。
「くそっ……触らせてんじゃねぇよ、この馬鹿!」
「ひゃ、ぁ、あぁっ……!!」
片胸を下着ごと銀時の手がつかんだ。強い力で乱暴に揉まれて痛いくらい。
いつかの夜に四畳半の部屋で、***に触れた銀時の手はもっともっと優しかった。まるで壊れやすい物を扱うみたいな繊細な手つきで、***の全てを包んでくれたのに。いまの銀時はあの夜とはまるで別人のよう。
「ぅうっ……ゃ、ぎ、ちゃ、痛っ、いたぃ!」
「わざと痛くしてんだよ。しちゃいけねーことしたのに、自覚もない***みてぇな悪い子は、こうやって痛めつけなきゃ分かんねぇだろ?」
———何が、何が分からないの?ここで働いたこと?無防備すぎて警戒心がなかったってこと?土方さんと一緒にいたこと?それとも……
考え込む***の首に銀時の顔が近づいてくる。首の横にがぶりと噛みつかれて、全身が飛び跳ねた。食べられるみたいに深く噛まれて「やだぁ」と叫んだ***は銀時の肩を両手で押し返した。その手首も強くつかまれて、ロッカーに縫い留めるように抑え付けられた。
「い゙ッ!……ぅう、ゃっ、~~~っ!!」
「ヤベ、歯形ついちまった」
***には見えない首筋に赤い歯形がくっきりとつく。さらに吸い付かれた鎖骨や肩に、赤い鬱血の痕がポツポツと出来た。ブラジャーの縁を銀時が口にくわえて、ぐいっとずり下ろす。こぼれ落ちた乳房に、そのままむしゃぶりつかれた。
「ゃぁあんッ!あっ、んぁ……ぎ、ぎん、ちゃ、やっ、~~~~っ、だ、めぇぇっ!!」
胸の先端をきゅうっと吸われる。あっという間に硬くなった桜色の尖りに歯を立てられて、ぐにぐにと噛まれる。痛いはずなのに銀時の熱い口の中で、敏感な蕾は気持ちよくなろうとした。意思に反して快感を追いかける身体に心がついていかない。
「っんだよこれ、痛くされてんのに感じてんじゃん。噛まれてんのに乳首硬くなってんじゃん。やっぱ***ってドMだよねぇ~。なぁなぁ、あのマヨラーにもおっぱい触られて、気持ちよかったぁ?」
「ひぃっ、……やっ、さ、わられて、なぃっ……!」
「触られてたじゃん、手で。当たってたじゃん、指が。俺ちゃーんと見てたし。アイツに胸つかまれた***が、とろんとした目でキスされんの待ってたとこぉ~」
「ま、ってな、ぃぁあんっ———!!」
反論しようとしても、また胸に吸い付かれてまともに喋れない。抵抗できない***の目の前で、銀時は白い胸元を噛んでは、次々に赤いキスマークを残していく。
経験したことのない乱暴さに***の心は恐怖で満たされた。大声を出して銀時を拒絶したい。それなのに、ふと浮かんだ思いに捕らわれて、***は指一本動かせなかった。
———どうして、どうして私……銀ちゃんのことを思い出さなかったんだろう……?真っ先に「銀ちゃんが嫌がるから働かない」って、どうして断らなかったんだろう?これじゃまるで銀ちゃんのこと忘れてたみたいで、彼女失格だって思われても仕方がない……どうしよう、どうしたらいいんだろう……
こんなに近くにいるのに、銀時の心がどんどん遠く離れていくようで、あまりの恐ろしさに呼吸が乱れた。涙が出そうだったが泣くのは卑怯に思えて、***は必死でこらえた。痛みの中から身体が勝手に快感を拾い上げるせいで、喘ぎ声ばかりが漏れる。
「やぁっん、~~~っっ、ぎ、んちゃ、ぁあんっ!」
銀時が怖いのに、唇はその名前を呼ぼうと何度も震えた。ずり下ろされたブラの上の白い乳房に銀色の髪が埋まるのを、ただ見つめるしか***にはできなかった。
真っ白な胸元に赤い花のような鬱血がいくつも散らばる。それを見てようやく、銀時の怒りはわずかに鎮まった。土方と***を見つけた時の激昂には、視界が霞んだ。大切な女を横取りされそうになった焦りと屈辱はあまりに強くて、なんとかして***をこの手に取り戻そうと必死だった。
胸を執拗に攻め立てる間ずっと、***は震える声で何度も銀時の名前を呼んだ。男性経験のない初心な***が必死で恐怖に耐えて、すがるようにその名を呼ぶことが、銀時の荒れ狂う心を少しずつ癒した。
———ああ、大丈夫だ。コイツ何もされてねぇや。酒も飲んでねぇし、キスもされてねぇ。***の言ったことに嘘はねぇ……っだよ、ちくしょー……心配させんじゃねぇっつーの。
ホッとする一方で、***をすぐに許してやる気にはどうしてもなれない。この店で働いていたことも、客たちにその姿を見られたことも、土方に触られたことも全部、1ミリの余地なく耐えがたかった。
***は俺の彼女で、コイツにとっていちばん大切なのは俺なのに、なに他の奴らに色っぽい姿を見せちゃってんの。そんなんぜってー許さねぇ。そう思う銀時の脳裏に、ニヤつく客や土方の顔がチラチラと浮かんで、冷めない怒りはくすぶり続けた。
「アイツに足も触ってもらったー?ヤニくせぇ上着かけてもらう前に、ふくらはぎスリスリされたんじゃねーの?それとも太ももにマヨネーズぶっかけられた?」
「そっ、そ、なこと、するわけないッ!やっ、銀ちゃ、な、何すッ……!?」
引き裂かれたドレスの亀裂を指でなぞり、わずかに繋がっている部分をつかむと思い切り引っ張った。ブチンッと派手な音を立てて服の裂け目とスリットが繋がり、ついに***のドレスの前は全部開いた。
膝をついてしゃがんだ銀時の目の前に、***のショーツと白い太ももが晒される。そこに顔を近づけようとしたら、自由になった***の両手が、銀色の髪を引っ張って止めた。
「や、だっ……銀ちゃん、もう、やめて」
「チッ、っんだよ、邪魔すんなっつーの!」
いらだって見上げると、***は破裂しそうなほど顔を真っ赤にしていた。その髪に手を伸ばし、ほどけていない方のお団子からリボンを引き抜く。華奢な両手首をまとめてつかみ、細いリボンを巻き付けてきつく結んだら、***は再び両手の自由を奪われた。
「ぅ、嘘ッ、銀ちゃん、こ、これっ、」
「あ゙?***が暴れっからだろーが。ったく、ギャーギャーギャーギャーうるせぇなコノヤロー。めんどくせぇからちったぁ黙ってろよ」
冷たく言い放つと、ビクッと震えた***は両手を胸に押し当てて口を結んだ。その手首を掴んで、ひきずるようにふたり掛けのソファまで連れて行く。軽く押しただけで、よろけた***の華奢な身体は仰向けに倒れた。
「きゃッ……!や、ま、待って!!」
「待たねぇっつーの……なぁ、***さぁ、すっげぇ~前に俺が言ったこと、もう忘れちまった?」
「え……?」
***の足の間を膝で割って、全身でのしかかる。結われた手首をつかみ、***の顔の前までその両手をひっぱり上げて、薬指の指輪を見るように促す。
「コレコレ、このやっすい指輪つけてやった時に、***は一生銀さんのモンって言ったよね?んで、お前嬉しそうに笑ってたよね?馬鹿みてぇにヘラヘラ喜んでたの、もう忘れた?銀ちゃん大好きってうるせーくらい言ってたのも、忘れちまったの?なぁ、そうだろ***、こんな店で働くってことは、他の男のモンになってもいいってことだろ?」
「っっ……、違うッ!!!」
その日いちばん大きな声で***は銀時に反論した。瞳の中の揺れる黒目に、怒りのような感情が渦巻いているのが見えた。
「全然ちがう……私はずっと銀ちゃんのものです!この先も一生、他の人のになんて絶対ならない!……ここで働いたことは間違いだけど、私の気持ちに変わりはないもん……わ、私は……私は銀ちゃんの彼女で、銀ちゃんのことがずっとずっと好きだもん!!」
普段ならこんなことを言う時、***の顔は真っ赤に染まる。しかし今、必死に叫ぶ姿に恥じらいはなかった。誠心誠意、全力でその思いを伝えていた。
真っすぐな***の純粋さが愛おしいのに、天然パーマのごとく曲がりくねった銀時の性根は、まだ満足しない。
「じゃぁ、ここで服全部ひん剥いてもいい。***がほんとに銀さんのもんなら、なんでも俺の好きなようにしていいってことだろ?」
「え、こ、ここでっ!?」
人が来ちゃうよ、と言って***は泣きそうな顔に戻った。部屋の鍵が閉まっていることは銀時しか知らない。
不安と恐怖と羞恥心の入り乱れた表情の***が、それでも拒めずに苦しむ姿を見るのが、銀時は楽しくて仕方がない。
「人が来ちまうから、声出すなよ***」
「ぎ、ぎんちゃ、あッ……!!」
膝を伸ばしたまま片足を持ち上げたら、開いたドレスの裾がめくれてショーツが丸出しになった。仰向けの***と目線は合わせたまま、ふくらはぎに噛みつく。突然の痛みに***は「んっ」と小さな声を上げた。
陶器のような肌に歯形がつく。綺麗なものを汚す背徳感は癖になりそうなほどの快感で、勢いづいた銀時は***の両脚の至る所に噛みつき、そして吸い付きを繰り返した。
「っん゙、ぅ、~~~~っ、ゃッ、んぁっ」
ふくらはぎから始まり膝へ、柔い膝裏と太ももの裏側へ、腰骨の上へ、小さなヘソと白い下腹部へと少しずつ銀時の唇はのぼっていく。所有物の印のような鬱血痕が増えて、そしてそれが増える度に***の顔は上気し、漏れる声が艶めいていった。
「あ~あ、足しか触ってねぇのに、気持ちよさそーな顔しちまって……このスケベが」
「ち、ちがっ……あ、っゃぁぁあッ!」
膝をつかんで足を開かせると、銀時は***のショーツに顔を近づけて、クロッチ部分に歯を立てた。ふわりとした恥丘を下着越しに何度も噛んで唾液を染みこませる。同時に舌を動かして割れ目を探し出そうとする。
「ぁぁあっ!ぁ、ゃッ、ぎ、銀ちゃ…だ、めぇ!」
「全然ダメじゃねぇだろ***、すっげぇ感じてるくせに。ほら、いっぱい舐めてやるから足開けって」
膝裏に手を入れて、ぐいっと更に持ち上げる。たっぷりと唾液をつけた舌で、下着越しに秘部を後ろから前まで舐め上げる。そのうちに濡れそぼったクロッチ部分に、割れ目の形が浮かんだ。じっとそこを見つめてから、尖らせた舌先で少し上の方にある小さな粒をぐにゅぐにゅと押し潰した。
「ひゃぁッ、あ、ッぎ、ぎんちゃ、そこ、やだッ!!」
「嘘つくなよ***、お前ここ触られんの好きだろ。ちょっと舐めただけで固くなってるし。この前だって俺にいじられて、気ぃ失うくらいひーひー言ってたじゃねーか」
「ゃ、うぁ……ッ、ぁっ、ふぁあッ!」
爆発しそうなほど赤くなった顔を、***は縛られた両手で隠していた。でも漏れ出る声は押さえきれない。
唾液で濡れたクロッチ部分を口に含んで、ずずっと吸い上げたら、かすかに愛液の味が混ざった。布越しにぷくりと主張するそこに口付けるように唇を押し当てて、もう一度強く吸ったら、***の内ももがビクビクと震えた。腰も浮き上がり小刻みに痙攣する。それを見た瞬間、銀時はそこから顔を離した。
「ははっ……もしかしてお前、ここでイくの?マジで?すっげぇな***~、お前ここどこか分かってる?こんな場所で犯されて、それで気持ちよくなって、処女のくせに簡単にイっちまうんだ~」
「ご、ごめんなさっ、銀ちゃ、ゆ、許してっ」
冷ややかで意地の悪い言葉に、***の身体はカチンと硬くなった。両手を顔の前で祈るように組み、涙目で銀時を見つめていた。その瞳には恥じらいと後ろめたさが混ざっていて、小さな唇はうわ言のように何度も「ごめんなさい」と繰り返した。
———あ~~あ~~、まぁたコイツはこーゆー顔しやがって……その顔がダメなんだって、なんで分かんねぇかな。んなエロい恰好で、目ぇとろんとしたまんまで、泣きそうな顔されちまったら、もっといじめたくなるに決まってんだろーがぁぁぁ……
唇に冷笑を浮かべたまま、銀時は身体を起こしてソファから立ち上がった。突然離れた距離に***は「え?」と不安げな声を出す。
「ったく、ドMの相手も楽じゃねぇな。ひとりでイキそうになってっとこ悪いけど、疲れたから俺もう帰るわ」
「え……、ぎ、銀ちゃん、待って、」
くるりと踵を返して、銀時はドアへと歩き出す。背後から「銀ちゃん」という泣きそうな声がする。カツンとヒールが床を打つ音がして、追いかけてくるのが分かった。銀時はさらに追い打ちをかけるように、背を向けたまま冷たい声で言い放った。
「土方くん、呼んできてやろーか?***が泣いて待ってるってさ。慰めてもらえよ、あの優しいマヨラーに」
「っっ………!!!」
息を飲む声が聞こえて、***の足音が止まる。手酷くしすぎた気もしたが、銀時は泣いてすがりつく恋人の姿が見たかった。どんなに無茶苦茶にされても、***が自分だけにしがみつくのを見て安心したかった。
扉の前で立ち止まり、その姿を見ようと意気揚々と振り返る。しかしそこに広がる光景に驚いて、銀時は言葉を失った。
「銀ちゃんの、馬鹿っっっ!!!」
「はっ……!!?」
確かに***の目は涙に潤んで今にも泣きそうだったが、すがりついてはこなかった。ただ銀時をじっと睨んで、ガクガク震える膝で必死に身体を支え、仁王立ちをしていた。
「わ、私は銀ちゃんの彼女だから、銀ちゃんと一緒に帰る!土方さんなんて呼ばない、泣いてなんかないっ、慰めてなんかもらわないっ!帰るもん、私もう帰りたい!銀ちゃんと一緒に帰りたい!!!」
「なっ……!?」
叫んだ***が勢いよく走ってきて、縛られた両手でぎゅっと銀時の服の胸元をつかんだ。突然、胸に飛び込んできた***を抱き留めて、予想外の出来事に銀時の方が面食らった。
「な、なんだよ***!お前そんな恰好で帰れるわけねぇだろ!パンツもおっぱいも丸見えなんだぞ?んな恰好で外出てみろ、完全に痴女だろ!どのキャバ嬢よりオメーがいちばん露出狂だろ!んな恰好、男どもに見せていいわけねーだろぉぉぉ!!!」
胸に抱きつく***が、赤らんだ顔を上げて銀時を見つめた。何度も唇を噛んで悩んでから、小さく「銀ちゃん」とつぶやいた声はあまりにも切実で。それは泣いてすがりつくよりもずっと、銀時を引き留めようと必死に見えた。
「銀ちゃん……私は、誰に見られたって、いい。私の身体はぜんぶ銀ちゃんのだから。他の誰のものにもならないから、だから見られたって構わないです。それに……いっぱい痕がついてるから大丈夫だもん。身体中に銀ちゃんのって証拠がいっぱいある……ひ、土方さんとか他の人にこの痕を見せてもいい。それで、私は銀ちゃんのですって言ったっていい。それくらいできるから、だから……」
そこまで言った途端、***の顔がくしゃっと歪んだ。涙がひと粒だけ、目尻からぽたりと落ちた。
「だから銀ちゃんお願い、私を置いてかないで……ひとりにしないでください……ワガママばっかりでごめんね、こんな店で働いちゃったのもごめんね、銀ちゃんが傷つくってすぐに思いつかない馬鹿な彼女でごめんね。もう、こんなこと二度としないから……だ、だから銀ちゃん、私のこと、き、嫌いにならないでっ……!」
うぅっ、と嗚咽のような声を上げる***を見下ろして、銀時は奥歯を噛みしめた。まさかこんなことを言われるとは思わなかった。胸元をつかむ小さな両手は、リボンが食い込む手首からぶるぶると震えていた。
「………ねぇよ」
「え………?」
「見せねぇっつったんだよ!!テメェの女の身体を、他の野郎にたやすく見せてたまるかよッッッ!!!」
大声に***が固まっているうちに、銀時は床に転がっていたクマの被り物を拾った。そのピンクの頭だけを、ずぼっと***に被せる。
控え室のロッカーには神楽たちに貸し出されたのと同じ、丈の長いダウンコートがあった。両手が縛られたままの***を、そのコートでくるんでジッパーを閉める。
「ちょ、えぇっ!?銀ちゃんっ!?ぅわわわッ!!!」
手のない身体にクマの頭で、ハイヒールを履いている摩訶不思議な状態になった***を横抱きに抱え上げて、銀時は部屋を飛び出した。
飛び出した廊下の途中で、煙草を吸う土方とかち合う。奇妙なクマを抱いて走ってくる銀時を見て、土方はぎょっとして目を見開いていた。
「なっ……、万事屋っ!?オイ、お前なんで、」
「ウチの***が世話んなったな。コレ、もう要らねぇから返すわ」
酒に濡れた黒いジャケットを思い切り投げつける。本当は殴りたかったが、***を抱いているからできない。
コートから飛び出すハイヒールを見て、土方はそれが***だと気付いてハッとする。赤い歯形のつく細いふくらはぎを見た後、軽蔑を込めた目で銀時をキッと睨んだ。
「万事屋……***に何しやがった」
「あ゙ぁ゙ぁ゙ッ!?オメェに関係ねぇだろーが……人の女に手ぇ出してんじゃねーよ、このニコチンコ野郎。若い女と見るとすぐにちょっかい出す変態野郎がいるって、警察呼ぶぞゴラァァァ!!」
そう叫んで銀時は再び走り出す。オイ!という土方の声が後ろから聞こえたが、無視して店を飛び出した。
———私のこと、き、嫌いにならないでっ……!
痛々しいほど必死な***の声が、耳に蘇る。
嫌いになんてなるわけない。好きで好きでどうしようもない。他の男に指一本でも触られたくないくらい。些細なことで膨らむ被害妄想で、何度も***をいじめて泣かせたくなるくらい。
外に出ても***は何も言わなかった。ただ厚手の上着の中でその華奢な身体が震えていた。それが寒さのせいなのか、自分のせいなのか、銀時には分からなかった。
真冬の風の中でも、銀時は寒さを全く感じなかった。ピンクのクマを必死に抱きしめて、夢中で夜を駆ける足はただ真っすぐに、万事屋へと向かっていた。
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【(24)ピンクのクマ】end
"ウォーアイニー(3)"
呼吸乱ス 夢ノ中 秘スル妄想 無茶苦茶